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1641.  最高殊勲夫人
ストーリーとしての結婚話よりも、その周辺のサラリーマンスケッチに“らしさ”があって楽しめる。この監督、なんか赤電話が好きだね。混みあってるとこが好きなんだな。エレベーターに通勤電車、若尾文子の噂が順次横に伝わっていく。店の中の混雑もある。アンミツ屋、トンカツ屋、ロカビリー喫茶。周辺でのコントとしてはテレビの本番直前にしゃっくりが始まってしまう主役、前衛書道のおっさん、ワッハッハと笑う、いつ死ぬかも知れないじゃない、と言われた直後に車に轢かれそうになったり。この映画全体がスピード感全開で走り抜けていくなか、若尾文子の本質的なおっとりしたスローなところが対比の妙味。お茶の水の脇を都電がゆっくり滑っていった。
[映画館(邦画)] 7点(2009-09-12 11:54:59)
1642.  セブン 《ネタバレ》 
ちょうどこれを見たのがオウム真理教事件の余熱まだ冷めやらぬころで、ケヴィン・スペイシーがオウムの“科学技術省長官”村井秀夫(路上で殺された人)にすごく似て見えた。なんか口もとがそっくりだし、とにかく雰囲気、彼らがかもす気味悪さが根元的に共通していた。当時やたらにテレビに登場したオウム関係者は、教祖も含めてほとんど俗物に見えたが、村井氏だけはもう完全にどっかにイッチゃってる感じがあった。あの現実を否定しきったものの安定が、この犯人にもある。この映画がいいのは、犯人と刑事のモーガン・フリーマンが鏡像関係になっていることで、どっちも現実のひどさにうんざりしていて、その結果、犯人は中世的な裁き手になろうとし、刑事は退職して現実と関わらなくしようとしている。紙一重なのだ。その設定に、ただの殺人狂もの映画と違ってリアルな怖さがあった。おそらく現実にうんざりしたことのない人なんていないだろうし、ならばちょっとした揺れで、自分を裁き手の安定した位置に置いてしまいたくなることも起こるかも知れない。実際村井秀夫という実例がちょっと前の日本にもあったのだ。その怖さ。映画としては、犯行シーンを描かないことで阿鼻叫喚ホラーにしてしまわなかったのが賢明で、ずっと降っていた陰気な雨がやみ、光り輝く中で七つの大罪の壁画が犯人の予定通りに完成するってのも、決まっている。
[映画館(字幕)] 9点(2009-09-11 12:06:20)(良:1票)
1643.  アメリカン・プレジデント
キャプラを意識してることは、中でその名が触れられてることでも確か。公と私の折り合いというのは、キャプラに限らず常にアメリカ映画のテーマだったわけで、「公」に浸されそうになる「私」を擁護する、けっして「滅私奉公」が出てこない健全さがいい。こういうの見ると、あちらの大統領ってのは日本の首相とは違うな、と感じる。半分「象徴」が入ってるみたい。話の中心点の置き所は間違っていないけど、展開がややギクシャク。やはりすぐに大統領が彼女をパーティに連れ出すってのは無理がある。どうしたって政治的判断の葛藤があるはずで、まあそこは設定としてクリアするとしても、彼女に夫なり恋人なりがいるかも知れないと一度も考えないのは傲慢に見える。冒頭の大統領がてきぱきと指示していくところは、長回しのワンカットで見たかった。アネット・ベニングって一見清楚で、でもよく見ると危なそう、ってとこがけっこう好きなの。マーチン・シーン、マイケル・J・フォックス、リチャード・ドレイファスと、代表作後パッとしなかった男優を集めて脇を固めてる。
[映画館(字幕)] 6点(2009-09-10 11:56:28)
1644.  レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで 《ネタバレ》 
常に異なるジャンルに挑戦し成果を収めてきた監督だったけど、今回は『アメリカン・ビューティー』の姉妹篇みたいになっている。あの日常へのうんざり感が、アメリカの黄金時代だった50年代を背景に描かれていくのに驚いた(通勤サラリーマンの帽子の群れで時代を描く手ぎわ)。朝鮮戦争後からベトナム戦争までのアメリカって輝き渡ってるって印象だったけど、“絶望的な空しさ”も裏には潜んでいたのだ。その空しさから逃れるには、あと十数年後ならヒッピーコミューンって逃げ道もあっただろうが、この時代レボリューショナリー・ロードに住む若い夫婦にとっては、革命の本場パリを目指さなければならなかった。その「浅はかさ」を起動させるほどの空しさに捉えられているマクベス夫人としてのヒロイン。ダラダラしたくないという強迫観念が夫を追い立て、自身をも追い詰めていく。自分たちの革命を失敗させ、日常に最終的に縛り付けてしまうだろう錨としての胎児を子宮に抱えて、透明な笑顔を浮かべながら朝食の準備をする場に凄味があった。でもこの『タイタニック』の二人、『アメリカン・ビューティー』のK・スペイシーとA・ベニングのコンビに比べると、まあ若い世代なんだから仕方ないけど、すぐ怒鳴り合いになる演技がやや単調で(とりわけ眉間の皺ばかりが印象に残る亭主)、たとえ他人にはどんなに浅はかに見えようと当人にとっては切実なんだ、と感じられないのが欠点。…この二人は今回も大西洋の対岸に行き着けなかったわけだな。
[DVD(字幕)] 6点(2009-09-09 12:02:34)
1645.  レイジング・ブル
うまくやっていけない奴の話。それを嘲うでもなく聖化するでもなく、等身大で描いて、ほんと、どうしようもないなあ、と嘆かせるだけ。本人を普通のスピードで描き、本人が見た外界をスローモーションで描く部分がある。つまり噛み合ってないのよね。それが嫉妬という形で爆発する。嫉妬する男ってのはだいたい普通の映画の中では喜劇的要素なんだけど、この男の場合それはない。純粋嫉妬というか、それで唯一世間とつながっているの。被害妄想って言ってもいいのかな、まわりの人間が悪いわけでも、社会が悪いわけでもない、ただただこういう男がいる、ってことをネチっこく描き切っていく。弟の家に殴り込みにいくとこなんか圧巻でした。ラスト、妻にも弟にも見捨てられブクブクに太って、その無惨さはたしかに感動的なんだけど、正直、何でこんな男の人生に付き合わなくちゃいけないんだ、って感じもずっと抜けなかった。この監督の映画ではしばしば体験する気分。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-08 11:56:37)
1646.  クロッカーズ
死体死体死体の写真で始まる。ヤクの売人が胃弱ってのがおかしい。自分ではヤクをやらない代わりに、チョコナントカの中毒で胃弱になってるという設定で、文字通りしじゅう「ムカついている」。殺気立っている日常、いい子でいることが困難な雰囲気がひしひしと伝わってきた。一人一人が立ち直ろうと思っても、とうてい個人の努力では無理なのが分かる。チクリ屋と思われるのが一番怖く、そのためにさらにツッパってるとこを誇示しなければならないわけだ。死体のまわりで刑事が不謹慎なことをしゃべり続けるあたりも、実に日常らしい。この人の映画でときどき見せる滑らかな前方移動、台車にでも役者を乗せて運んでいるのか、あのヘンな感じ、非現実感を出したいのかよく分からないけど印象には残る。タトゥーロは、わざわざ彼が演じている意味がなかった。
[映画館(字幕)] 6点(2009-09-07 09:16:01)
1647.  いつか晴れた日に
ジェームズ・アイボリーにしろカズオ・イシグロにしろ、けっこうイギリス的な気分てのは非イギリス人によって継承されていて、台湾の監督がジェーン・オースティン撮ったって不思議はあるまい。クラシック音楽の担い手が西欧に限らなくなっているのと同じことだ。でイギリス的とは何ぞやというと、馬車の似合う風景、婚期を逸した娘、大団円の満足感、といったところか。ささやかな不幸とささやかな幸福の家庭劇、分別過多の娘も多感な娘も、それぞれ幸せを得ましたとさ、って。とかく“いいかげん”と見なされがちなハッピーエンドも、“大団円”としか呼べないようなツボにはまる正確さを伴えば、よしよし、と心が満ちる。一度陰った気持ちが曇りなく晴れ渡る。二度目に大佐に抱かれて雨の中を戻ってくる次女、反復の妙。画面の遠くの庭師たち、あるいは働く下僕らの足音など。もひとつハッとする瞬間がほしいという気もするが、そういうことするとレースの手触りのようなトーンの傷になってしまうのかも知れず、エドワードが女性二人を見るとこなども、実に淡々と、笑いを取ろうとしてないのが、かえって好感。イギリス的だ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-06 11:59:49)(良:1票)
1648.  エグザイル/絆 《ネタバレ》 
冒頭、男たちが黙って適度に配置されていくあたりが、もうこの監督の味。ドンパチよりも、そこに至る静けさの緊張が楽しい。レストランの場もそうだが、ここでは冒頭と違って広さが別の趣向となる。ヤミ医者のとこでのドンパチは滑稽味を加え、その後の悲痛と対照させている。金塊強奪の場に遭遇してのドンパチでは、ただ直立して撃つスタイル、ここも狭いヤミ医者の場の次ということで広さが対比される。繰り返されるドンパチでもいろいろ変化を持たせているわけだ。ここで絶対にドンパチが起こるぞ、と最初に映った段階で見ている者に確信させる吹き抜けのあるホテルで、ちゃんとラストでドンパチになる。ここも実際のドンパチより、その開始を告げる空缶のキックパスがいいわけで、『ザ・ミッション/非情の掟』の紙屑を思い出さずにはいられない。男たちの連帯。これをやるのならその前のちょっとクサい酒びんを渡しあうシーンは必要なかった。香港の密度と比べてマカオはいくぶん空気が拡散的で、話も中盤まとまりがほどけかけたような気がする。そのかわりポルトガルを経由してか中南米的なトーンが入ったのは、新味。ストーリーもややヒロイック度が過ぎてしまったようで、微妙に湿度が高めだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-05 11:55:46)(良:1票)
1649.  夏の嵐(1956)
原作は芥川賞にノミネートされた女子大生(深井迪子って人)の小説だそうで、つまり“女の太陽族もの”ってとこで中平にまわってきたのかも知れない。だから映画としてもわざと青臭さを残しているのかも。北原三枝がアップで「いくじなし」と叫んで海に走り、カメラは横に這いつつ波打ち寄せるストップモーション、となかなかいい導入。長回しが多く、北原と三橋達也が外で話し合ってて(街灯の脇で待ち伏せてる北原のカットも美しい)緊張が高まり、と二人の間のシグナルが矢印光らせて点滅し、列車が通過していく。こういうのはワンカットでないとずいぶん気が抜けてしまうものだ。ラスト近く、北原がベッドの向こうの床に横たわり、津川雅彦が右側に立っているのを、ベッド越しに捉えた構図。嵐の接近でカーテンが揺らぎ、書類が一枚一枚散っていく。こぼれたビールに点滅するネオン。話はつまらないが、当時の“クール”へ憧れる気分が横溢していた。爪を噛む少年は、もしや未来の唐十郎ですか?
[映画館(邦画)] 6点(2009-09-04 12:02:39)
1650.  狙われた男(1956)
中平の初監督作として気合いが感じられる(『狂った果実』が急企画で割り込んだが、先に製作されたのはこっちらしい)。主人公が路地を歩いていくと、闇の中からヌッと襲撃者が歩き出すあたりのサスペンス。市村俊幸が犬を蹴るとこでも、カメラが変な動きをするし、その後の出ていくブーちゃんに主人公が声を掛けるとこのカメラの回り込みも面白い。それ以上に思ったことは、このころ若手監督に量産してた脚本家としての新藤兼人の重要さ。社会派としての新藤さんは前科者に対する仕打ちというようなところにメッセージを置いたんだろうけど、映画人としての新藤さんもキッチリとした仕事をしていて、大した話でもないものをソツなく展開している。こういうソツのなさが日本映画の黄金時代ということなのだ。何人もの噂話場面を並列していくようなところに、この人の趣味があるような。ロケでは東銀座の風景にうっとりさせられる。人が暮らす人情小路がまだ銀座にも存在してたんだ。ちょっと『裏窓』の気分があり、あと殺人の直後の美容院の渦巻きを強調したりとか、殺された女がカーテンつかんだりしてたけど、まだ『めまい』も『サイコ』も作られていない。
[映画館(邦画)] 7点(2009-09-03 12:08:00)
1651.  街燈
旗照夫のシャンソンが流れて始まる。落とした定期券から、銀座のブティックをめぐる人間模様の話へ広がり、合い間に学生小沢昭一が笑いをとっていく。銀座の記録としては、火の見やぐらから火事を発見するシーンがあった(火事のシーンは、特殊技術がなかったせいか消防法がうるさくなかったのか、結構迫力)。まだ靴みがきの子どもがいた(みがくシャッシャッという音がドラムの、あれ何て言うの、さきっぽが金属の小さなほうきみたいになってるヤツ、あの音になっていく)。中原早苗のことを子どもたちがパン助みたいな格好だと言った。昭和30年代前半はまだまだ濃く“戦後”であったのだ。そして銀座という街が、単なる背景でなく、こういう人間模様を織りなすのに適した場所であったのだなあ。
[映画館(邦画)] 6点(2009-09-02 11:57:38)
1652.  殺したのは誰だ
“玉突き事故”って言葉があるくらいで、車とビリヤードはイメージの世界では接近している。この映画、保険金詐欺の話なんだけど、車の事故とビリヤードが実際に重ねられるところがミソ。どっちも金を賭けてのぶつけっこ。ロータリーへぶつけようとして逸れるところ、あるいはぐるっとまわってもう一度迫るあたりは、完全にビリヤードと対比されている。中央に据えたカメラの回転にあわせて幾多の車が走っていくのなんかも、ビリヤード的。車が夢や憧れだった時代、犯罪と遊びがどっちも日常からの解放を夢として差し出してくれた時代だ。当時のちょっとシャレた“イカす”感じが伝わってくる。この監督作品は銀座界隈をよく記録しておいてくれてるのが嬉しく、アタマには並木座が映った。小林旭が若々しい青年だったが、デビューしたてのころだな。
[映画館(邦画)] 6点(2009-09-01 11:56:42)
1653.  歩いても 歩いても
このシナリオは、そうとう手間が掛かってるんじゃないか。さりげない言葉の採集に時間を掛け、それの構築にも時間を掛けていそう。それだけの成果が上がっている。大勢の中で言われた言葉へのこだわり・言い返せなかった文句が、二人になったときに不意にこぼれるのが、ザクッザクッと映画に刻みを入れて、表面では何も起こらない時間に確かな手触りを与えている。そのくすぶってる場所としての家族。「おばあちゃんちじゃないぞ、俺が建てた家だ」とか「それ(トウモロコシで気の利いたこと)を言ったのは兄貴じゃなくて俺」とか。その遅れて言い返せた言葉とは別に、“ちょっと間に合わなかった”言葉も山のようにあり、でもそこにこそ一回限りの家族の会話の味が、後悔が懐かしさに変質しつつ隠されている。あるいは墓参りの帰り、暗黙の了解のように二組の母子に自然に分かれ、どっちも他方の前では交わせない会話が紡がれる、そのスリル。不意に顔を覗かせる残酷さと怖さ。「隠れて聴く曲ぐらい誰にだってありますよ」と妻の夏川結衣にあんな含み笑い顔で言われた日には、夫たるもの気になって仕方がないでしょうなあ。こっちの「普通であること」と人の「普通でないこと」がときに重なりあい、するとその場の時間が急にボッテリと厚みを増す。「普通」を形作っているものの裏には、なんとたくさんの折れ曲がった思いが複雑に絡み合っていることか。最近の日本映画でこれだけ詰まってる時間を味わった作品はなかった。原田芳雄はおそらくまだかくしゃくとした老年を描くために起用されたのだろうが、かつての無頼を演じてたイメージが残ってて、たしかに夫婦の過去を思えば似合ってはいるのだが、現在の父としてはもう少し固いぐらいの実直さを出せる役者でもよかったかも知れない(「“すばる”は演歌じゃありませんよ」の語り口は絶品だったけど)。それとラストが付いたことで、見ているほうがその後を自由に想像する楽しみはなくなってしまった。でも傑作です。
[DVD(邦画)] 9点(2009-08-31 12:15:54)(良:2票)
1654.  ヘブンズ・プリズナー 《ネタバレ》 
ハードボイルド系の男って、けっこう演歌的にうじうじしているものなのかも知れない。なんか影が必要なのだ。この場合もとアル中であり、話半ばで妻を殺される。過去を引きずる影がじめじめと出来上がる。冒頭はなかなか良かった。教会の懺悔のあとカメラがえんえんと河を下り、海上の舟に近づいていくの。おそらく南部のけだるさと暑苦しさが味わいになってるのだろうが、アメリカ人でない私にはよく分からん。見せ場としては一応途中で悪い奴を街中追い掛けるのがあるけど、この手の作品は静けさをうまく出すことのほうが見せどころだから、一つ間違うとこのようにダラダラしてしまうんだ。「てめえが生きてるのは、俺の機嫌がいいからだぜ」なんてセリフがかっこよく、いつか使ってみたいものだが、なかなかそういうセリフにふさわしい状況が訪れてくれない。
[映画館(字幕)] 6点(2009-08-30 12:01:32)(笑:1票)
1655.  エル・スール 《ネタバレ》 
最初は客席の後ろのドアがちゃんと閉まってないのかと思ってた。画面右上隅のあいまいな光が徐々に自己主張してきて、窓らしいと分かる。と中央に何やらモヤーッとした物体が浮かんできてベッドになっていく。犬の吠え声。たまらない導入です。そして光と影のドラマが展開する、というより光が差し込むことと陰っていくことのドラマ。これを見たころはスペイン内戦に無知で(いや今だってよくは知らないけど)、そのためにかえって父と娘の孤独が感応し合う話として、純粋に人間のドラマとして感動できた。この変わり者の父、南に父親や愛人を残してきたというより、そういった憎しみとか恋愛とかのわずらわしい感情を捨ててきたんだ。でもその分、娘への愛情が過剰に深まってしまった。これを愛情というか、同志愛というか、微妙なものだけど。娘の初聖体拝受式の日に、まるで彼女の成長を認めたくないかのように猟銃を撃ちまくる(カトリックへの鬱憤もあったのかも知れない)。そして娘を一個の他者として認めざるを得なくなったときに、猟銃は自分に向けられる。式の時は「父が私のために来てくれた」と喜ぶ娘、ラストでは「フランス語の授業はさぼれんかね」とまで言う父を残して娘は去る(娘にすがるような父のこの言葉に私は泣きそうになった、喫茶室のシークエンスが本作の白眉)。式の時は一緒に踊るけど、ラストで踊っているのは別の新婚カップル。娘は行方不明になったときベッドの下ではらばいになっていたけど、父は行方不明になったあと川岸で冷たく横たわっている。二人は相似形を作ったり対称形を作ったりしながら孤独を呼応しあう。だからどうしたほうがいい、と説教しているわけではなく、映画はただ見つめている。なのにこの父は強烈に印象に残る。80年代初めに紹介された映画でオメロ・アントヌッティぐらい名作率の高かった俳優はなく、喫茶室の場はあの石くれのような彼だからこそ泣けてくるのだろう。
[映画館(字幕)] 9点(2009-08-29 11:09:34)(良:1票)
1656.  ミ・ファミリア
似た題の『ラ・ファリミリア』はイタリアのお話、こっちはメキシコ系のアメリカのお話、どっちもカトリックの裏打ちがあって、やっぱり家族だね、って話。近代史。神話・伝説の時代からナツメロ的な時代、そして近過去へと、次第に輪郭がはっきりしてくる経過が面白い。神話の時代だと浮気をして妻に射殺されるというドラマチックな出来事も、検証してみると盲腸で死んだらしい、とか。30年代の強制送還のエピソードが最初のヤマで、渡河をじっと見守っていたフクロウが、戦後にも現われこの一家を見守る趣向、フクロウにはこういうイメージがある(今村版の『楢山節考』とか)。70年代にも強制送還のモチーフが繰り返され、ヤクザもんとなったジミーが、子への愛をよりどころに立ち直っていくところで幕、とにかく家族愛への圧倒的な信頼が全編にみなぎり、疑いを持たないところがラテンである。ラテン音楽は血が騒ぐ。
[映画館(字幕)] 6点(2009-08-28 12:00:43)
1657.  ナイト・オン・ザ・プラネット
同時刻の地球の異なる場所をつなげるってアイデアで、それを夜に設定したのが洒落てる。せっかくいろいろな国を回るのに、昼の風景を見せない。そのために観光映画になってしまう危険から逃れられた。昼を陸とするなら、夜は海だろう。夜は一つの大いなるものの顔をいろいろな角度から見せてくれる。昼の会話がつまるところ社会の会話になってしまうのに対して、夜は人が組織を離れてしゃべり出す。人間という大いなるものが、会話を始める。一番ジャームッシュらしさが出ていたのはNY篇だろうが、パリ篇のリリシズムが、彼の別の世界の発見として嬉しかった。差別の問題を微妙に隠しながら、夜のせいでちょっと饒舌になっている運転手と客の会話。たぶん昼だったら遠慮してしまうような話題にも触れ、しかし別に偏見に関する論議が始まるわけでもなく、被差別者同士で共感し合うわけでもなく、あくまで運転手と客の距離が節度を持って保たれながら、そのちょっと饒舌になってる気配がいい。べたつかないんだけど不誠実ではない会話。そこでこの車内に満ちてくるのが、これが面白いんだけども、もう一振れすれば怪談にでもなりそうな神秘的な雰囲気なのだ。運転手にとって後部座席ってのは、密室で後ろから見られ続けていてもともと気味の悪いものだろう。しかもこの盲人の客は、見られている以上に何かを見ているようなのだ。NY篇が不完全な言葉を通してのコミュニケーションの物語だったとすれば、このパリ篇は妨げられた視線を超えてのコミュニケーションの物語ということになる。これを怪談めいた雰囲気を通して叙情性に持っていったあたりがツボ。楽しかった。そしてヘルシンキ篇で夜明けを迎え、個人の時間が消え、時計の針がただ時を消化していく退屈な昼の半球に入っていく。そう、この時間日本では昼の12:07というリリシズムのかけらもない時間なのだ。せめてその時刻に合わせてレビューを登録するのが、この映画に対する敬意の表明になるだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-27 12:07:20)(良:1票)
1658.  アントニオ・ダス・モルテス 《ネタバレ》 
教師・牧師らが途中までよく分からなかったし、状況も十分把握していたとは言えないので、つまり「良くわかんなかった映画」の部類に入るのだが、しかし不思議な面白さのある作品だったなあ。こういう作品がすでにあったとすると、アンゲロプロスの評価は少し割り引いといたほうがいいのかもしれない。伝説と現実の混交、幻想とリアリズムの隣り合わせ、といった南米文学でも見られる特徴に加え、心理の排除、技法的には音楽効果(儀式のスタイル)の重視、長回し、などなど。ギリシャとブラジルというかけ離れた土地で似たような世界が作られている。ブラジルにもギリシャに劣らぬ古い南米文化の蓄積があるわけだ。ストーリーだけを取り出してしまうと単純で、政府のイヌだった殺し屋が民衆の一員としての己れを自覚し、雇い主を殺すというもの。ちょっと設定を変えれば、そのまま日本の任侠映画にもなる。ここに伝説的な要素を加味し、逆に現実の政治状況を重ね合わせている。これどうも現代の話らしいんだ。アントニオのセリフに「神が世界を作り、悪魔が柵を作った」ってのがあった。
[映画館(字幕)] 7点(2009-08-26 12:03:47)
1659.  ケス 《ネタバレ》 
パブのシーンがあり、ののしり声が聞こえる家庭のシーンがあり、もうこの人の映画の環境がすぐに決まっていく。そういうウンザリする環境の中でも、なんとかウンザリせずに生きていく子どもの強みが描かれていく。サッカー授業のシーンのユーモア感覚。露骨に自分勝手にふるまい、しかもそれをカバーする無邪気さもない救いのない教師を、映画は笑いのめす。画面に得点が出るのもおかしい。ゴールを入れられるとシャワー攻め。あるいは学校での朝礼後の校長のオシオキ。ポイントは伝言に来た少年で、巻き添えにされていく経過が、厳しいユーモアになる。事実とフィクションの授業、ビリーがハヤブサについて語っているうちに次第に熱を帯びてくるさまを、少年の映像だけで描ききる勇気。そういうふうにビリーはいろんな種類の大人たちと関わり、それでも損なわれないものが浮き出されてくる。結末は、象徴的に捉えると暗く閉じたものに見えるが、映画の印象はそうでもない。なんとか彼はやっていくだろう、ケスの魂を抱いたままで、って感じ。「砂嵐の中のラクダのケツの穴みたいに締まり屋だ」ってセリフは、いつか使うために覚えておこうと思ったものだが、まだ使っていない。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-25 12:16:53)
1660.  ジャーマン+雨 《ネタバレ》 
考えてみれば、これ、かなり暗い話なんだ。変に過去の重圧を背負い込んでしまった女の子が押し潰されていく、って。もちろんいま“家系の存続”なんて自然主義文学のテーマみたいなものがマジで出てくるわけもなく、映画はユーモア系で押していくが、でもそれがパロディってのでもないようで、つまり作中のよっちゃんが人のトラウマを歌にしていったように、なにか「自然主義文学になってしまいかねない剣呑なもの」を「歌のようなもの」に変換していった映画なのだろう。違うかな。ドキュメントタッチのところが、ドッジボールの場など良く、そしておそらく本作最良の場、笛教室の子どもたちが勝手に遊んでいるシーンが素晴らしい。羽仁進の『教室の子供たち』のようなカメラを意識しない自由さで、マンガ本に色塗りをしている子、壁の落書き、風船遊び、国語の教科書を淡々と読み上げていく声、などが交響し盛り上げていく。ドキュメント調でありながら、未来の復興し得た林家の幻想のようでもあり、そしてこのシーンは白い光で閉じられる(この映画のほかのシーンは黒みで終わって次に続くようになっている)。田舎の風景の適度な広さが味わいで、家の玄関前とつながる隣りの畑の見通しの良さが心地よい。滋賀県だそうだ。ならラストで走ってたのは琵琶湖の岸か。
[DVD(邦画)] 6点(2009-08-24 12:02:59)(良:1票)
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