1701. 千年の祈り
《ネタバレ》 楽しみにしていたウェイン・ワン監督の新作です。アメリカで暮らす娘に会いに北京からアメリカにやって来た父。母は既にこの世を去っており父と娘、離れて暮らすたった二人の家族の再生の物語。よくあるテーマですが非常に静かな映画で、その静かさが心に残る映画でした。昔から寡黙だが娘の幸せを心から願っている父、亡くなった母にも自分にも話をしてくれないそんな父が不満で、更にある事情から父に心を開かない娘、そんな父と娘であっても、言葉が通じあわず片言の英語で会話するアメリカに来たばかりの中国人とイラン人であっても、心を開いてじっくりと語り合えば必ず分かりあえる。最初は顔をつき合わせて話ができずに壁越しの会話であってもいい。本当の事を語り始めた父、そして娘。この父と娘の対話はまだ始まったばかりですが、そのラストには父と娘の今後に確実に希望を感じさせてくれる映画でした。非常に地味で静かで90分にも満たない小品。苦味はあるけれど、その苦味も深い味わいのある佳作。 [映画館(字幕)] 7点(2010-01-19 17:50:09) |
1702. ル・バル
《ネタバレ》 映画はパリのとあるダンスホールから一歩も出ない。更にこの映画には台詞が一切無い。ダンスと音楽に衣装、俳優の仕草や表情だけで戦前から80年代までの流行、世相、パリに生きる人々の喜びや悲しみを見事に表現した作品です。 ダンスと音楽の間にさりげなく見せる笑いドコロ、ホロリとさせられるシーンを挿入するその見せ方、各時代が移り変わる際の見せ方も見事です。1つの狭いダンスホールの中のみで展開されているのが嘘のような壮大さすら感じさせる。 物語は戦前から始まりナチスの時代の暗い影が忍び寄り戦争の時代、そして終戦。ホールは歓喜の舞に包まれる。そこに戦場から傷ついて帰還した兵士が妻と再会し喜びのダンスを舞うシーンが感動的。戦後もフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースに扮した二人が登場しての華やかなミュージカルにロックンロールにビートルズにディスコブームと本作が作られた80年代に至る。 監督・脚本のエットーレ・スコラは過ぎ去った時代とその時代を生きた人々の記憶を作品ごとに様々な語り口で我々に見せてくれる。そんな中でも本作はパリのダンスホールが見つめてきた記憶を台詞を排した語り口で、世相や流行だけでなく人々の感情までもが生き生きと伝わってくる見事な映画です。 [ビデオ(字幕)] 9点(2010-01-16 20:20:20)(良:1票) |
1703. 幸せのレシピ
《ネタバレ》 オリジナルは未見です。最も印象に残ったのは子役のアビゲイルでした。この歳で早くもアカデミー賞にノミネート歴があるように勿論演技も上手なのですが、この子の持つ豊かな表情や透明感のある雰囲気がとてもいいですね。「私の中のあなた」でも大きくなったなあと感じたし、もうあっという間に子役を卒業していくでしょう。この先どんな女優になっていくのか楽しみでもありますが、今のうちにいっぱい映画に出てほしいとも思います。ストーリーの方はニックが登場した時点で誰にでも分かる方向に向かうのですが、悪意のある登場人物もいないし、安心して楽しめるロマンスでありホームドラマとなっています。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-16 20:10:12) |
1704. 恋愛準決勝戦
《ネタバレ》 フレッド・アステアの楽しさあふれる至芸を堪能できる作品です。まずは前半、トレーニング・ジムで。アステアの手にかかればどんなものでも見事なダンスのパートナーに早変わり!そしてあまりにも有名な壁や天井で踊るシーン。前半のアンとの食事中にアンが語った「自分が壁や天井をグルグル踊る姿をよく想像したものよ」と言う台詞。そしてアステア演じるトムはそう語ったアンの写真をパートナーに壁や天井をグルグル踊ってみせる。ダンスの素晴らしさとともにこの有名なシーンはトムのアンへの思いにあふれた素晴らしいシーンです。そして兄妹揃って人生のパートナーと出会い、ゴールインする大ハッピーエンド。こうなると分かっていても、やはりミュージカルは大ハッピーエンドで締めくくって欲しい。兄妹愛も微笑ましく素敵なとても楽しいハッピームービーです。 [DVD(字幕)] 8点(2010-01-16 12:06:13) |
1705. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草
本作以降、最終作までの4作品の中で別れと再会を繰り返すことになる寅さんとリリー。そんな2人の最初の別れ。「じゃあ、またどっかで会おっ!」「ああ、ニッポンのどこかでな」2人のこんな台詞がいいですね。様々な性格、事情のあるマドンナが登場しましたが、こんな台詞が似合うのはやっぱり、寅さんと同じく渡り鳥であるリリーだけです。「相合い傘」でもそうですが、この二人には北海道が似合う。夜汽車が似合う。とらやの2階で隣同士の部屋で「寅さ~ん」「あいよ」とやり取りし合う二人。月のきれいな夜空に響く二人の声。本作のお気に入りのシーンです。寅さんとリリー、この二人の間にしかない空気はやはりいいですね。そんなシリーズ第11作はリリー初登場の記念すべき作品です。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-01-14 20:53:13)(良:2票) |
1706. 歩いても 歩いても
《ネタバレ》 本当に何も起こらない離れて暮らす家族が久々に顔を揃えた実家での一日。そんな家族それぞれの抑えた好演が印象に残るキャストも、日本中のどこにでもあるような家族が揃う夏の帰省の一日を実に味わい深くしてくれた脚本も素晴らしい映画でした。どの家族の中にもあるであろう微妙な間。この映画の中の家族に流れる間は自分の家族と似ているようでもありますがやはり違う。しかしよく分かるのです。そして息子と父の微妙な関係は映画の中で劇的に変わることは無く、結局「いつか一緒に行こう」と言った野球にも行かなかった。しかし、この映画はこれでいいのだろう。観る者それぞれが自分の親や家族と本作の家族をだぶらせながら、家族を見つめ直すきっかけとなったりする映画ではないでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-01-14 20:47:01)(良:3票) |
1707. キッチン・ストーリー
《ネタバレ》 一面雪景色の厳しい北欧の冬。青みがかかった映像は美しくも寒々しさを余計に感じさせます。それとは対照的に、人の温もりに心が癒される映画でした。 テニスの審判席のような高い椅子から見下ろす観察者と観察される者。お互い話をしてはならないというルール。 しかしこんなルールが守れるはずがない。人は一人では生きていけない。そんな当たり前のことを改めて感じさせてくれる二人のオジサンの素敵な友情の物語でした。オジサン二人だけの誕生日パーティー。普通ならなんて冴えない誕生日なんだ、と思いますがこの不思議な映画を象徴するいいシーンでした。 ベント・ハーメル監督の作品を観るのはこれが2本目。いずれも主人公は年配のオジサン。何か不思議な感じの設定にいずれも厳しい北欧の冬が舞台。そこに感じさせてくれる人の温もりが嬉しい。なかなか観る機会が訪れませんが、機会があればぜひこの監督さんの他の映画も観てみたいと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-13 22:35:14) |
1708. ふたりのトスカーナ
《ネタバレ》 事故で両親を亡くした姉妹がトスカーナに住むお金持ちの伯父さんの家に預けられる所から話は始まる。前半はトスカーナ地方ののどかな風景、善良な人々と伯父さんの家族の描写に戦争の時代の話だということを忘れてしまうほどでした。しかし、嫌な予感はあった。家の中ではイタリア語を話さない伯父一家、どうやら伯父の信じる神は周りの人とは違う事、そして伯父さんに持ちかけられる「一緒にスイスに逃げましょう」という誘いなど。後半、ドイツ軍がやってきてからは伯父さんの自分の誇りと信念を守り通しナチスに屈しない高潔な人柄に「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ大佐の事を思い出しました。それゆえ最後はこんな事になるとは思わなかったので・・・。言葉もありません。久々に怒りがこみ上げてくる映画を観ました。しかも実話だったんですね。姉妹のその後については何も語られていませんが、彼女達の幸せを願わずにいられなかった。最後にこの邦題について一言。この映画にこの邦題は無い。 [DVD(吹替)] 7点(2010-01-11 19:11:18) |
1709. ブリジット・ジョーンズの日記
《ネタバレ》 ブリジットのキャラクターをどう思うか?が本作を好きになるかどうかの分かれ目になる映画ですね。想像とは違って結構品の無い面が目立ったのと、ラブコメの基本はハッピーエンドだと思っているのでラストはこれでいいのですが、本作のブリジットのキャラを考えると、それなりに色々あるものの最初から最後まで話が上手く行き過ぎでは?と感じました。ただ、ヒュー・グラントとコリン・ファースの脇を固める二人の男優は本作のキャラにはまっていたし、役作りのためにあそこまでしてくれたレネーには拍手!です。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-01-11 02:00:54)(良:1票) |
1710. 私を野球につれてって
ミュージカルとしても、野球映画としてもとても楽しい映画です。汽車での移動、ナイター照明も電光のスコアボードも無く、勿論各チームのマスコットキャラクターや凝った演出も無いMLB草創期のスタジアム、そんな時代を感じさせるユニフォームと帽子。「古き良き」という言葉がピッタリと当てはまる。昔からMLBが大好きだった自分にはこんな雰囲気がたまらなく嬉しい作品です。そして今MLBのスタジアムではセブンス・イニング・ストレッチで“take me out to the ballgame”が大合唱される。お年寄りや年配のファンも、子供や若い世代のファンもスタジアムで野球を楽しむファンがこの歌を大合唱する。恐らくアメリカでは世代を超えてこの映画が愛されているのでしょう。観るとそれも納得、古き良きアメリカと野球が描かれたとても楽しいミュージカルです。 [DVD(字幕)] 8点(2010-01-09 22:41:29)(良:1票) |
1711. ロビン・ウィリアムズのもしも私が大統領だったら・・・
《ネタバレ》 ロビン・ウィリアムス主演の日本未公開作です。全編に渡りロビンの個人技が炸裂する映画なのでそんなロビンが好きな方には楽しんでいただける映画だと思います。前半は政治を面白おかしく風刺し皮肉るトークショーのホストであるコメディアンの彼がひょんなことから大統領選に立候補する。候補者の討論会や演説で国民の心を掴んでいく様はまさにロビンの独壇場。とにかくしゃべりまくってくれるのですがその内容が良く出来ていて面白く笑わせてくれます。しかし電子投票システムの不備に端を発し、後半はサスペンスの様相を呈しガラリと展開が変わります。大統領選の前半もそんな後半も基本的に話は安易にうまく運びすぎる感はありますが、前後半通してロビンの持ち味がよく出ていてまさにロビン・ウィリアムス・ムービーとでも言うべき映画です。 [DVD(字幕)] 6点(2010-01-09 22:35:16) |
1712. 旅情(1955)
《ネタバレ》 何故か今まで見る機会が無かった作品ですが、これはいい映画でした。 僕は特にキャサリンが一人旅をする前半に強く惹かれました。水の都ヴェネチアの街並みや空と水の青の美しさを捉える映像の美しさ。そんな街を観光する彼女をカメラが捉える。運河からキャサリンが街並を見上げる。カメラのファインダーをのぞく。橋の上やホテルの窓から運河や街並みを見下ろす。その度にカメラは彼女の目線でヴェネチアの街を映し出す。 ヴェネチアの街の遠景、彼女の視線のすぐ先にあるヴェネチアの街、そんな素晴らしいカメラワークに、異国の地で自由な時間を満喫する表情、一人旅の淋しさを感じさせる物憂げな表情。キャサリンもまた自由に思うがまま演じているかのごとく表情を変え卓越した素晴らしい演技を披露してくれます。 台詞なんていらない、彼女の表情を観ているだけで十分と思えるほどでした。 中盤以降2人がサンマルコ広場で初めて出会うシーン、店での再会、そしてまたサンマルコ広場で。この出会いと再会の見せ方が見事で高揚する気持ちや心の揺れを演じる後半の彼女の演技もやはり素晴らしい。そんな彼女の魅力を存分に引き出し、実によく計算された演出をみせる巨匠リーンも見事です。 僕にとっての大切な映画がまた一つ増えました。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-01-08 18:33:55)(良:1票) |
1713. モン・パリ
《ネタバレ》 男が妊娠する?それがどんなに社会や世間から好奇の目で見られようとも、こんな時こそ心の支えになり助け合っていけるのが夫婦愛であり家族愛。そんな時代は変われども不変のテーマをほのぼのとした笑いの中に、巷にあふれる体に良いはずがない加工食品や化学物質が人間の体に与える影響を男性の妊娠という形であらわすなどのユーモアのある社会風刺も効いていて、人間の優しさや、音楽やストーリーの中に随所にフランス映画らしさを感じるコメディです。フランスに行っても持ち味に変わり無しのマルチェロ・マストロヤンニに、やっぱりカトリーヌ・ドヌーブが素敵ですねえ。ラストシーンはありふれた結末に落ち着きますが、それまでの騒動が何事も無かったかのように捨てられたニュースを大々的に報じる新聞、そして前を向いて歩きだす家族の姿に鑑賞後の気分も爽快な作品でありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-01-07 13:30:46) |
1714. 望郷(1937)
今では世界遺産となっているアルジェのカスバ。その紹介映像のような冒頭のカスバの説明は余計ではありますが、巨大な迷宮のようなカスバ、そんなカスバの雑踏の奥深くで息をひそめて望郷の念を募らせて生きるペペ。そこに現れたパリからやって来たメトロの香りのする女。もうペペは惚れるしかない。最後も危険を承知であの行動に出るしかなかった・・・。そんなカスバとジャン・ギャバンが放つ魅力がたまらない。時に哀愁を漂わせ、時に凄んで見せるその面構え、映画の真ん中にどっかりと居座るその存在感はやはり圧倒的です。余りにも有名なラストシーン。「ギャビー!!」、船の汽笛、甲板上のギャビー、もう一人の女、そして・・・。やはり観る者の記憶に確かに刻まれる名ラストシーンです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-05 21:15:08) |
1715. 男はつらいよ 奮闘篇
《ネタバレ》 さて、今年は寅年。という訳で本年一発目の寅さんのレビューいきます!寅さんの2度の帰郷シーンがとても楽しい作品。1度目は寅さんのマネをするおいちゃん、2度目はバレバレの変装をしてご帰還の寅さんが大いに笑わせてくれます。まあ、コントみたいなシーンですが森川信さん、渥美清さんの絶品の芸は下手な芸人のコントより断然楽しいですよ。そして皆さんのレビューと同じく、駅での別れのシーンには何度見てもホロリとさせられます。更にその前の「お釣り落とすんじゃないよ」と釣銭を持たせる小さん師匠のラーメン屋のおじさんに月給前の淋しい懐から汽車賃を出してくれた駅前の交番の犬塚弘のお巡りさんといった人の優しさ、温かさがほっとさせてくれます。そんな駅で花子を見送るシーン、とらやで寅と花子が再会し、おいちゃん、おばちゃん、さくらがその様子を少し離れてそっと見つめるシーン、そして「寅ちゃんの嫁っこになるかなあ」のシーンの寅さん。これらのシーンに花子の笑顔、そこに流れる山本直純さんの音楽に心が温まります。出番は少ないですが、お菊さんに福士先生といった登場人物も心に残る作品です。 [ビデオ(邦画)] 7点(2010-01-04 20:33:22)(良:1票) |
1716. ホームボーイ
どこか影がある孤独な流れ者のボクサー。この頃のミッキー・ロークはこんな役を演じると見事なまでにはまる。自ら脚本も手掛け、これはミッキー・ロークの映画ではあるのですが、共演の演技派クリストファー・ウォーケンが場末のクラブで歌う売れない歌手というこれもまた当時の彼のハマリ役でした。そんな2人の友情モノ、ということでかなり期待感が高まる中で公開当時映画館で観ました。ストーリー的には平凡なものではありましたが、クラプトンの音楽が素晴らしく、この二人も期待通りで、タイプは全く違いますが、どこか影があり愁いを帯びた役を演じるとバツグンだった当時の二人。そんな2人の共演ということだけでも僕にとっては貴重な作品なのであります。 [映画館(字幕)] 5点(2010-01-02 01:06:47) |
1717. ラスト・ショー
前半は当時のウキウキするようなヒットナンバーがちりばめられる中、若者の心のときめきや痛みが描かれるというアメリカ映画の青春群像劇の定番の見せ方とは異なった寂れた田舎町の青春群像が続きますが、作品全体を通して見ると決して楽しい映画ではないですが、それだけでは終わらない非常に奥の深さを感じさせてくれる映画でした。楽しみも無く未来もないどうしようもない寂れた田舎町の若者と彼らを取り囲む大人達のドラマとその演技も非常に見応えのある作品でした。鑑賞後は本作でオスカーを獲ることとなるベン・ジョンソン、クロリス・リーチマンをはじめとする、そんな大人達のドラマとその味わい深い演技が印象に残ります。そんな町と、その人間模様とモノクロの映像が実によく合っている作品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2009-12-29 15:25:05) |
1718. 雨に唄えば
《ネタバレ》 今までに何度も何度も楽しませてもらった映画です。レインコートと傘で3人が歌うオープニングから楽しさいっぱいです。序盤の歌とバイオリンとタップダンスの2人に、楽しい首なし人形との共演「笑わせろ!」に「グ~ッモーニン!」に土砂降りの雨に、他にも作品を楽しく鮮やかに彩る素晴らしい至芸を心から堪能できます。サイレントからトーキーへの映画という文化の一大過渡期における、映画に声という新たな要素が加わったことがもたらす残酷な一面や吹き替えの誕生、撮影現場や舞台裏の試行錯誤を最高の至芸に乗せて華麗に、そして楽しく見せる映画の話術が見事です。(ただ後半に若干長く感じられる所もありますが)そしてきつい役を見事に演じきったジーン・ヘイゲンに拍手です。憂鬱な雨の朝なんかは家を出る前に本作の一番の見せ場を思い出してグ~~ッモーニング♪とセットで口ずさんでみたりすればちょっとイイ気分になれるかもしれませんね。 [DVD(字幕)] 9点(2009-12-27 20:10:08) |
1719. 嘆きのテレーズ
《ネタバレ》 登場人物の誰にも感情移入できず、魅力も感じない。しかし映画としては原作の知識は全く無いですが、その登場人物の設定がよく練られていて、特に旅行から戻ってきてからの展開にはぐいぐいと引き込まれました。サスペンスを無理に盛り上げようと過剰な音楽や演出は抑えられた落ち着いた雰囲気ながらも緊張感を持続しつつラストに向かって盛り上がっていくサスペンスドラマとしての構成が素晴らしい。ラストでトラックが突っ込んでくるところはちょっと強引だったものの水兵の男の死に際の台詞、そして恐らくは結局誰も得をせず幸せにもなれないであろう、あのいかにもフランス映画らしい余韻を残す幕切れも見事でした。 [DVD(字幕)] 8点(2009-12-25 23:41:37) |
1720. 男はつらいよ 望郷篇
《ネタバレ》 まずは冒頭、おいちゃんの葬儀騒動で笑わせてくれますが、それ以降は北海道に再び旅に出るまでの間に裏の工場の職工をバカにしたり、さくらに本気で説教されたり、それでも懲りずに「上手くいったぞ!」と登と旅に出ていく寅さんの地道な暮らしとは程遠い情けなさをこれでもかと描き、北海道では寅さんのルーツであるヤクザなテキヤ稼業の一面を見せながら地道な暮らしの大切さに気付くことになる出来事を見せる。ここまでには、いつになく笑いの要素が少なくシリアスな描写が印象的です。再び帰郷後、地道な暮らしを目指して額に汗して油まみれになって働こうと奮闘する寅さんとその中に寅さんの恋が描かれ、いつも通りフラれるとあっさり旅に出てしまう。ラストは登と再会して何も変わって無い寅さんの姿で終わり、やはり寅さんに地道な暮らしは無理だったんだなあ…。という事になるのですが、そんな寅さんの平凡で地道な暮らしへの憧れと、その心の移り変わりを辿っていく話の流れが実に素晴らしい作品だと思います。 [ビデオ(邦画)] 8点(2009-12-24 14:19:47)(良:2票) |