1761. 総長の首
《ネタバレ》 ヤクザ映画っぽく作ってはいますが、キーパーソンが清水健太郎・ジョニー大倉・三浦洋一であるというのがミソ。つまり、格好良い活躍などまったくありません。むしろ、最初から敗北感というか挫折感が漂っています。まるで裏青春映画のようです。このキャスティングの一貫性は逆に見事です。ところがそこに無理して、まともなヤクザ映画っぽくするために鶴田さんとか梅宮さんとか成田さんとかをぶち込んでいるため、収拾がつかなくなっています。そもそも、西村晃はまだしも、丹波御大をクレジットしていてあの使い方って、ほとんど詐欺なのでは・・・。女優陣の絡み方はまあそれなりですが、ヒモにいいように使われるマキノ佐代子(これが映画デビュー作!)の存在感はいい感じです。 [DVD(邦画)] 5点(2021-12-29 01:02:02) |
1762. 3人のゴースト
クリスマス・キャロルベースという時点で、ストーリーの予想はついてしまうので、後はどう捻りやオリジナリティを入れるかになってくるのですが・・・気合が入っているとおぼしき部分がことごとく外していて、ひたすら演出側の自己満足を見せられているだけでした。役者やスタッフも、現場でやりにくかったんじゃないでしょうか。ビル・マーレイも、もっと小市民的な役でこそ本領を発揮するのに、こういう富豪系の役には合っていません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-12-28 02:07:10) |
1763. 天使のはらわた 赤い教室
《ネタバレ》 何かね、肝心の名美があんまり「堕ちてる」感じがしないんですよ。最初の村木との出会いのところで、すでに蓮っ葉というかぶっきらぼうというか、とにかく一般人的な雰囲気があまりないので、行きずりの男との肉食系セックスも、最後の乱交も、ああそうですか、にしか感じられない。ところどころ見られる長回しも、必然性や演出があって撮ったというよりも、ただ撮っただけに見えてしまう。 [DVD(邦画)] 5点(2021-12-10 02:05:31) |
1764. ドント・ブリーズ
《ネタバレ》 設定は完全にシチュエーション・コメディのはずなんだけど、それをさらに一ひねりしてホラーにしてしまったこの発想は上々。はたして、盲目のハンデがあるはずなのに異様に強い爺さんが現れ、しかし見られることだけはないという利点を生かして何とかしのぎきるあたりは、怖いはずなのにちょっとだけ可笑しいといういい感じの世界を提示しています。●が、途中でネタ切れしたのか、中盤からは爺さんがほとんどターミネーター状態になってしまって、初期設定の意味もなくなってしまったなー。ここからの展開ならば、爺さんは聴覚その他の感覚をいかにフル活用しているかとか、逆に戦闘力で劣る主人公たちはどう頭を使ってアドバンテージを生かしたかとか、その辺をどこまでも突いていってほしいのに。●あと、せっかくの大ネタである地下の人物については、心理の綾も含めてもっと活用できたんじゃないかと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-12-02 01:01:01) |
1765. レッド・ドラゴン(2002)
感想は誰もが思うであろうことと一緒。「これ単体ならまあまあなサスペンスなんだけど、『羊』という金字塔と比べてしまったら・・・。」●変に有名役者で周りを固めてしまったのも、かえって焦点をぼやかしていると思います。あくまでもレクターとクラリスの対決から芯をずらさなかった「羊」は、その意味でも優れていました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-12-01 00:11:20) |
1766. 決斗!一対三
《ネタバレ》 いや、ちょっと待て。この邦題は、ミスリードを通り越して、インチキレベルです。大体、一対三とか言っていながら、三人目はどこ行ったんだよ。●ただし、中盤でロージーのヘルプで上手いこと逃げ切り、そこから力をためて逆襲が・・・と思っていたら、何と堂々たる年月ドラマに自信満々に突入する展開にびっくり。これはこれで面白いです。●そして、ここぞというところであっさり裁判になって、あっさり刑に服するのにもびっくりしたなあ。大体あの親父、「裁判が不公正だったら、自分が銃をぶっ放して助けに行く」とか言ってなかったっけ?●で、根本的な難点は、主人公がそれほど魅力的でないということなんですよね。特に前半、いろんな危機が一気に迫っているのに、「ジェーンに会いに行くんだ!」とか固執しているところは、どこまでおめでたいんだ、と思ってしまいます。と同時に、描写としても危機を矮小化してしまい、スリルを削いでいます。作中の登場人物同様、ロージーの献身的な美しさ(と色気)に大きく救われています。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-11-28 02:05:54) |
1767. 清須会議
《ネタバレ》 この人が監督である時点で、時代劇ではなくコスプレ現代劇になることは分かっているので、そこはまあいい。●で、前半にじっくりと登場人物の相関関係を醸成しておいて、後半はひたすら会議!会議!になるかと思っていたら、肝心の会議はごくあっさりの切り上げでがっかり。わざわざ「会議中、滝川一益が必死でこっちに向かっている」という設定&描写までしているんだから、「話がまとまりそうになったところに一益が到着して、そこで当然のようにちゃぶ台返し+議論のやり直し」くらいは誰でも期待します。また、いろいろ含みを持たせている丹羽長秀とか池田恒興なんかも、進行に従ってあれこれ態度を変えるとか、逆に変に妙なところにこだわるとか、もっとアヤのつけようはあったと思うけど。●それと、会議の冒頭で、2つ目の議題として「領地配分」の件が挙がっていたと思いますが(そして、前半のシーンでも伏線的に言及されていますが)、これはどこへ行ったの?当然、跡目の件が片付いたところで、今度はこっちの件で紛糾、みたいな展開を期待したのに・・・。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-11-21 02:27:11)(良:1票) |
1768. フォート・ブロックの決斗
《ネタバレ》 ウエスタンの体裁をとってはいますが、実際には、カウボーイ上がりの社会内出世物語です。大体、この主人公は、最初から金のことばかり口にしています(笑)。銃撃戦も決闘もほとんど登場しません。それはそれで面白いのですが、逆にそっちの方に振れているわけでもなく、中途半端感が漂っています。また、この展開なのだったら、キーポイントの女性2人をもう少し効果的に使ってほしいところでした。最後はまあ、定石通り敵役との対決にはなるのですが、それも迫力が今ひとつです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-11-16 02:31:30) |
1769. 昭和おんな博徒
《ネタバレ》 江波杏子が理不尽に夫を殺され、その復讐を行っていく。と、実にシンプルこの上ないストーリーなので、あとは流れに身を任せていればよいわけなのです。●しかしこういう復讐ものって、いかにその一瞬にそれまでの背景の重みと情念を込めるかが勝負なのですが、最初の雨中の一刃が死ぬほど格好良い(その後の汽車での手洗いも込み)のに比べ、その後がどうも・・・。渡辺文雄の場面なんて、そこまで回りくどくしないといけないか?逆に、場数と経験を積んだことによって、冒頭よりも冷静かつ迅速に本懐を遂げられるはずでは?と思ったり、最後の大田原については、みんなの前で説明的な説明をしてしまうのがかえって無粋に感じたり(これから大田原の晴れ舞台というところで、舞台裏かどこかで容赦なく一閃、とかの方がよかったと思う)。●それとこのタイトルの割に、博打のシーンがほとんどなかった気が・・・。 [DVD(邦画)] 5点(2021-11-15 00:30:07) |
1770. 緋牡丹博徒 仁義通します
《ネタバレ》 第1作の後半の舞台にして、堂万一家の本拠地である大阪に回帰しての最終作。中盤までは派手な衝突はそれほどないし、シリーズ見所の博打の場面もちょっとだけ。代わって、おたかさんの跡目を誰が継ぐのか問題が中心となっているし、お竜さんの動きも「説得による調整」ばかりになっているのが特徴的。それはいいとしても、登場人物の動きはかなりチグハグで、松方と長門さんの死ぬ順番はどう考えても逆だろと思うし、文太さんの動かし方も、ほかの人とバランスをとろうとしてかえって不自然になっている。熊虎親分が念願叶って(?)遂に殴り込み参戦!というのも、ある種のご褒美なのかもしれないが、やっぱり似合ってない(笑)。ラストもシリーズ大団円としては何とも中途半端で、実はまだ続編作るつもりだったのでは?と勘ぐってしまう。まあ、中盤の重要な場面で一瞬で場を引き締める千恵蔵さんの迫力は、さすがでしたけどね。 [DVD(邦画)] 5点(2021-11-13 01:18:53) |
1771. 斬る(1962)
《ネタバレ》 何とも不思議な作品。いろんなエピソードが継ぎ接ぎされているんだけど、継ぎ接ぎどころか、そもそもこのパートは完結しているのか?というレベルでさっさと先に行ってしまう。それでいてバラバラ感はなく、一応は一つのトーンでまとまっている(ように見える)。タイトルに反して爽快なチャンバラは見られない、じとっと濃い内容。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-11-07 18:23:52) |
1772. 新選組(1969)
《ネタバレ》 すでに散々指摘されているとおり、キャスティングの時点で大問題でしょ。新選組というのは、良くも悪くも一本気で青臭かったところに存在の意義があったわけで、それをこんな落ち着いた重厚な人たちが演じてはいけません。まあ、最後に錦ちゃんが出てきての(美味しいところを持っていきながらの)勇さんとの対決、そして勇さんの「ああ疲れた・・・」感を滲ませた最期は、味わいがありましたけど。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-11-01 01:54:06) |
1773. 女囚さそり けもの部屋
《ネタバレ》 いや、まあ、さすがにこれは破綻しすぎでしょ。前半は、誰がなぜそこにいるのかがさっぱり分からない。成田三樹夫扮する刑事も、いきなり腕を切られるだけで、背景がまったく存在しないので、さそりとの対決も盛り上がらない。意外にも、下水道に立てこもる後半の方がそこそこスリルがある。で、最後はなぜか刑務所に自ら潜入して復讐、なんだけど、これはやっぱりどうしても、さそりは刑務所内にいないと光らない、という考えあってのことだったんですかね。いずれにしても、せっかくの前2作の財産を全然使いこなせていませんでした。 [DVD(邦画)] 5点(2021-10-28 23:38:05) |
1774. 女囚さそり 第41雑居房
《ネタバレ》 前作では独特の実験性がほどよいスパイスになっていたのですが、さすがにここまで来ると演出過剰といわざるをえないのでは・・・。白石加代子の暴走気味の芝居も影響して、むしろ肝心のさそりが傍観者みたいになってしまっています。最初の、スプーンをくわえてひたすら削っていく口元のアップとか、そういうのをもっと見たかった。●ところで、囚人の過去(の犯罪)が一人ずつ歌に乗せて紹介されるくだりがありますが、まさか「シカゴ」の"Cell Block Tango"って、これが元ネタだったんじゃないだろうな・・・。 [DVD(邦画)] 5点(2021-10-25 01:32:48) |
1775. マイティ・ソー/ダーク・ワールド
《ネタバレ》 とにかく、敵がどういう存在で、何がしたいのかが分かりません。みんなが血眼になっているエーテルとやらに何の意味があるのかも分かりません。したがって、肝心のソーに目標はあっても目的はないので、ヒーローになっていないのです。最後に場所をあっちこっち飛ばしたりとか、キャンパスのその辺っぽいところで戦いが起こるとかいうのも、あえて狙ったのかもしれませんが、全然機能してないです。●唯一前作より良かったのは、ロキという人物をきちんと消化してみせたトム・ヒドルストンの芝居。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2021-10-16 01:12:15) |
1776. ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
《ネタバレ》 なんかね、肝心の登場人物たちがイラッとする人ばっかりで、何とか助かってほしいと思わせる存在ではないので、ゾンビが迫ってきてもハラハラしないんですよ。それと、テレビで割と詳しくああだこうだと状況が伝わってしまうのも、情報遮断ゆえの恐怖という味わいを削いでいます。回線がつながらない中でちょっとずつ映像が入って、断片的に分かる、とかの方が良かったと思います。●一方で、ゾンビの発生原因や個々の変異経過は一切無視しているのは素晴らしい。この的確な判断こそが伝説のスタートになりました。できれば道具は使わないでほしかったけどね。 [DVD(字幕)] 5点(2021-10-01 00:21:31) |
1777. インクレディブル・ハルク(2008)
《ネタバレ》 あんな異形の生物がどうやったらヒーローとして成り立つのかが想像できなかったのですが、つまりイメージはキング・コングだったのですね。エドワード・ノートンは、未知なる力を秘めつつじっと悩んで逡巡する人物像をなかなか的確に表現していたのですが、リヴ・タイラーがいつまでたっても大根なのが致命的でした。それと、「オレは強いアイツと闘いたい」などとまさに少年漫画のような台詞を堂々と吐いてしまうティム・ロスはむしろ純粋であり、ウィリアム・ハートの方がよっぽどワルではないでしょうか。その辺が何かバランスを壊しています。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2021-08-17 01:32:24) |
1778. 陽だまりのイレブン
《ネタバレ》 邦題からすれば、ジーコの下にサッカーチームが集い、修練と挫折と再起を経てさらに一致団結して・・・みたいな爽やかスポコンの流れを想像しますが、全然違っていました。まず、そもそも原題は「ジーコの冒険」。まだこっちの方が内容に近いです。しかし実際の中身はさらにぶっ飛んでいて、何か変な科学者とその手下が登場し、ジーコをコピーして二人にしてしまいます(!)。もうこの時点でまともなスポーツものというのはありえないのですが、その後「コピーすると性格が両極に分裂する」という都合の良い設定を生かして、厳しい指導と楽しい指導のそれぞれが展開される。ただ、このどちらも指導として間違いではないというか、実は両方必要である、というのがミソです。よって最後は、敵役チームのメンバーも合流して、みんなでサッカーをしよう、で美しくまとまっています。というわけで、中身はむしろ少年探偵団系(?)なのですが、ジーコの二役という貴重なものが割とたくさんみられたり、中心人物的な女の子(男の子としてチームに潜入)もキュートだったりして、それなりに見所もあります。 [DVD(字幕)] 5点(2021-08-06 01:05:23) |
1779. グレート・グローリー 大いなる勝利のために
1920年代のメキシコで起こった、時の政府によるキリスト教弾圧政策に対する反乱である「クリステロ」を描いた作品。こういうことがあったこと自体を知らなかったので、大いに勉強になりました。ただ、作品としては、いろいろ出てくる登場人物に個性がないのがどうにも難点。少年ホセの描写は丁寧ですが、逆に作品がホセに寄りかかった状態になっていると思う。何よりも、民衆の伝説であるはずのエンリケ将軍について、アンディ・ガルシアの存在感がないのはどういうことか。この人も、若い頃はとんがった存在感を全発散していたはずなのに、えらくおとなしくなってしまったものです。 [DVD(字幕)] 5点(2021-07-12 23:45:16) |
1780. 間違えられた男
《ネタバレ》 冤罪事件を対象とした映画は数あれど、拘置の細かい手続であるとか、護送の際の一連の風景であるとかをここまで丁寧に描出した作品って、ほとんどないのではないだろうか(後に周防監督が「それでもボクはやってない」でその究極を実現しましたが)。また、取調官が、わざとらしく怒鳴ったり威嚇したりするのではなく、あくまでも「真剣に間違っている」だけなのが、現実的な恐怖をにじみ出させている。そんなわけで、前半はヒッチコックらしからぬ正統的社会派系の内容なのですが、後半は今度は奥さんの錯乱に一気に焦点が移動して、しかもこれはこれで出来が良いため、結局何がテーマなのかが分からなくなっている。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-04 00:57:49) |