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161.  続・組織暴力 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。主演は前作同様に刑事を演じる丹波哲郎なのだが、実際見てみると渡辺文雄演じる裏とつながった氷屋の社長が主人公のように見え、彼がヤクザと手を結び、のし上がっていく物語になっていて、丹波哲郎の出番は比較的少なめな感じだった。渡辺文雄は前作でも悪役で出演していたが、今回もはまり役で、丹波哲郎の追及をのらりくらりとかわしていくふてぶてしさが素晴らしい。一方でさっき書いたように丹波哲郎の出番が少なめなためか、刑事たちの捜査に対する執念というものが前作より弱かった気がする。それでも本作は前作同様にヤクザを美化した内容にはなっていないのがこの時代の東映ヤクザ映画とは一線を画すところ。逮捕された直後の渡辺文雄をバックについていた柳永二郎演じる大物の命を受けた部下たちがあっさりと殺してしまうラストシーンにヤクザ社会の非情さというものがしっかりと描かれていて、のちの実録路線のヤクザ映画にも通じるところのある映画になっているのが良い。このラストシーンは前作のラストシーンよりも救いがなく、やるせない気持ちになり、茫然と立ち尽くしている丹波哲郎と同じく、見ている側も茫然とするしかないのだが、これは佐藤純彌監督をはじめとするスタッフの狙いなのだろう。そして、トカゲの尻尾切りのように悪人を捕まえても結局、まだその上がいて、悪は無くならないという社会的メッセージを感じとることができる。これがこの当時の佐藤監督の作風によるものなのかはわからないが、このシリーズは2作とも単なる東映のヤクザ映画ではなく、とても見ごたえのある社会派映画の傑作だったことは確か。
[DVD(邦画)] 8点(2019-06-07 00:09:49)
162.  ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 《ネタバレ》 
モンスターバースシリーズ3作目で、レジェンダリーゴジラシリーズとしては2作目。前作(2014「ゴジラ」)がイマイチだったのであまり期待をせずに映画館に行ったが、監督が変わったのが良かったのか、冒頭から出し惜しみをすることなくゴジラやモスラ、キングギドラが出てきて、怪獣同士の戦いも前作ほど画面の暗さを感じることなく、素直に楽しめたし、もちろん前作より面白かった。キングギドラの劇中での呼称が「モンスターゼロ」であるなど、オリジナルシリーズへのオマージュ(小ネタ?)もこれでもかというほど多い。登場する怪獣がゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラという「三大怪獣地球最大の決戦」と同じメンツなのだが、モスラは「三大怪獣地球最大の決戦」では見ることのなかった幼虫~繭~成虫という三段変化を見せてくれるのは嬉しかった(でも、チャン・ツィイーの双子設定はやりすぎだったかも。一人二役の小美人見てみたい気はするけど。)し、ラドンのソニックブームもしっかり描写されてるのも良い。それになんといってもアレンジされているとはいえ、伊福部昭と古関裕而の曲がハリウッド映画である本作にしっかり使われているのは、本当に東宝怪獣映画を好きなスタッフが作っているということをここにいちばん感じられる。ただ、人間ドラマに関しては前作と同じく家族の話を軸にしているが、やはり今回もこの部分がちょっと退屈に感じたし、ゴジラ単独ならまだしも、複数の怪獣が登場する作品では、よけいな人間ドラマを描かないほうが良いように感じた。前作ではムートーの設定に平成ギャオスの影響を感じたが、今回はメインとなる家族が息子をゴジラに殺された設定だったり、ゴジラをいったん倒したあとに、キングギドラを倒せるのがゴジラだけと分かったあとのやりとりが平成ガメラを思わせていて、やっぱりこのシリーズはガメラからも影響を受けていると改めて思った。まさかのオキシジェンデストロイヤーが登場し、前作から登場している芹沢(渡辺謙)という博士の存在から、だいたいこの芹沢博士の末路は想像がついたが、オリジナル1作目とは逆に核爆弾を使って自らの命と引き換えにゴジラを目覚めさせるという展開にそう来るかとビックリ。そのオキシジェンデストロイヤーや核爆弾の扱いも軽く、前作と同じくもう少しここらへんを慎重にやってほしかった。それに、広島原爆で父を失っていることが前作で語られていた芹沢が自らこういう行動をすることに対して少し違和感を感じる。怪獣が暴れまわるだけの映画としては満足できるレベルだけに7点をつけたいが、ここらへんがどうしても気になって1点マイナス。純粋な怪獣映画としてはモンスターバースとしての前作である「キングコング 髑髏島の巨神」のほうが潔さを感じるのだが、この差は何なんだろうか。次回作ではそのキングコングとゴジラの対決が描かれるとのことだが、日本の「キングコング対ゴジラ」が好きなだけに、果たしてどうなることやら。最後にもう少し、渡辺謙、離婚しなければ夫婦揃ってゴジラ、モスラ、キングギドラが一堂に会する映画に出演する俳優になれたのに。
[映画館(字幕)] 6点(2019-06-03 23:53:46)(良:1票)
163.  組織暴力(1967) 《ネタバレ》 
佐藤純彌監督の手掛けたヤクザ映画を見るのが初めてだったのだが、面白かった。東映のヤクザ映画というと、ヤクザ同士の争いを描いた作品が多いが、この映画は丹波哲郎演じる刑事を主人公にすることで、決してヤクザを美化するような映画になっていないし、視点もあくまで第三者的でクールに描いていて、70年代後半以降の佐藤監督の大作映画の数々を見慣れていると、本当にこれがあの佐藤監督の映画なのかと思うほどだ。作劇としても見ごたえがあり、ヤクザの描き方もそうだが、中でもラスト近くの空港のシーン、目の前に拳銃密輸事件の黒幕(月形龍之介)がいるのに法が壁となって逮捕できないというのが非常にリアルで、今までヤクザ一掃と拳銃押収に執念を燃やしていた主人公同様、見ているこちら側にももどかしさを感じさせる脚本はすごいの一言。ほかにもヤクザの抗争に巻き込まれてなんの関係もない若い女性が両目を失明してしまうエピソードなどをきちんと描いているところが良い。また、最後の最後に兄の仇討に躍起になっていた千葉真一扮するチンピラの若者(千葉真一、このころから既にギラギラしていて熱い。)が黒幕たちの前に飛び出していく展開は、なかなかに来るものがあり、感動的だったし、それまで抑えられていた見ている側の感情もここで一気に爆発するかのようにカタルシスもものすごく感じられる。さらに、彼の最後の行動によって、本作はヤクザばかりではなく、警察にも批判的な目を向けていたのではないかと考えることができるようになっているのはやはり一筋縄ではいかないものがあり、紛れもなく本作は社会派映画の傑作だったと思う。佐藤監督と言えば大作映画(あるいは「北京原人」)の監督というイメージがどうしてもあるが、それとは違う一面を見るにはじゅうぶんだった。
[DVD(邦画)] 8点(2019-06-01 17:53:26)
164.  刑事コロンボ/もう一つの鍵<TVM> 《ネタバレ》 
久しぶりに見たコロンボ(小池朝雄のコロンボもかなり久しぶり。)だったのだが、とにかく犯人が胆略的で無計画&浅はかなだけのただの嫌なバカ女のため、純粋に推理ものとしての面白さがこれっぽっちも感じられず、当然ながらこの犯人との対決も盛り上がりようがなく、逆にこんな穴だらけの犯行なら別にわざわざコロンボが出て行かなくても解決できてしまうのではと思えるほどだ。(そう思わせてしまうのはちょっとやばくないか?)後期の新シリーズはつまらない作品が多いのだが、第7話という初期の作品でもこんなのあるんだと思ってしまったのが正直なところ。犯人の恋人役でレスリー・ニールセン(フランク・ドレビン警部)が出ていたことくらいしか見終わって印象に残らない。
[CS・衛星(吹替)] 3点(2019-05-26 18:10:52)
165.  多羅尾伴内 《ネタバレ》 
片岡千恵蔵のあたり役を小林旭主演でリメイクした鈴木則文監督の映画。「ある時は片目の運転手、またある時は・・・」、「しかしてその実体は・・・」というセリフは知っていても、元ネタは知らなかったのだが、これで知ることができた。映画としては荒唐無稽な感じで、そこが鈴木監督の映画らしいといえばそうなのだが、「トラック野郎」シリーズを見すぎのせいか、さすがにあんな熱気を帯びた作風ではなく、普通に小林旭のミステリーアクション映画といったふうなのがちょっと物足りない気もしないでもない。でも、江木俊夫扮するボンボン息子の乗ったスポーツカーと白バイ警官に扮した主人公との追跡劇は思わず「トラック野郎」のクライマックスの激走シーンを思い浮べた。そんな本作の見どころはやはり主人公の数々の変装で、小林旭の演技もそれぞれ違うので、彼のファンにはうれしい映画だろう。(実際、小林旭の主演映画を見るのが二本目な自分でもその演じ分けがけっこう楽しく、とくに違和感もなかった。)池部良演じる事件の依頼人の周辺人物を演じるのが天津敏や安部徹という東映作品ではおなじみの悪役俳優なのがいかにも怪しげに感じる。ロッカーの中の生首の石膏に驚くシーンはやっぱり金田一シリーズを意識してるんだろうなぁ。ステージで歌っていた女性歌手がワイヤが切れて体を真っ二つにされるシーンはなかなかショッキングだったが、本作の20年ほど前に実際にも宝塚歌劇でそういう事故があったということにも驚かされた。歌手に扮した主人公が「昔の名前で出ています」を歌うシーンをはじめ、ゲスト出演的な歌手(アン・ルイス、キャッツアイなど。)が歌うシーンも多く、歌謡映画としての側面もあるようで、そういう方面から見ても別の楽しさがある。
[DVD(邦画)] 6点(2019-05-25 16:34:21)
166.  クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん 《ネタバレ》 
ぎっくり腰の治療に行ったひろしがロボットになって帰ってくるというのが面白い設定だが、実はそのロボットはひろしの記憶と人格をコピーしただけの存在というのは賛否ありそうに感じるも、これにより本人をそのままコピーしたロボットは本人と言えるのかというSFによくあるテーマを扱った作品としての面白さもあり、素直に楽しむことができた。前半はロボットになったひろしが家族に受け入れられるまでを描いているが、しんのすけがすんなりと受け入れたのに対し、それをなかなか受け入れられずにいるみさえがドデカシティーでのしんのすけたちの事故をきっかけにロボひろしを受け入れられるようになるというのが良かった。しかし、後半の生身のひろしが復活したあとに、みさえがロボひろしの前を横切り、生身のひろしに駆け寄っていくシーンはロボひろしの切なさがなんとも言えず悲しかった。そんなロボひろしもしんのすけにとってはひろし同様とーちゃんに変わりなく、だからこそ、最後のひろしとロボひろしの腕相撲のシーンで「どっちのとーちゃんもがんばれ!」と両方を応援する姿にぐっとくるものがあるし、泣ける。その後のロボひろしが家族をひろしに託して消えていくシーンも泣けて仕方なかった。(このシーンはロボひろしの視点のみで描かれているが、最初にロボひろしが家に帰るシーンも視点のみのワンカットで描かれていて、対になっているのが良い。)シーンが前後するが、しんのすけが正気を失ったロボひろしに拷問と称して嫌いなピーマンを大量に食べさせられるシーンも、しんのすけが家族を助けるために勇気を振り絞ってピーマンを全部食べる姿には思わず感動してしまった。もちろん、泣けるシーンばかりではなく、「クレヨンしんちゃん」らしいバカバカしさも健在で、中でもクライマックスの最終決戦で五木ひろしロボが登場して、コロッケの声で「契り」を歌い始めるシーンはついこの間の連休に五木ひろしの「契り」が主題歌になっている「大日本帝国」を見たばかりだったこともあって、かなり笑ってしまった。父ゆれ同盟というのもバカバカしいネーミングだが、それが、「父よ、勇気で立ち上がれ」の略称なのは何か世の父親たちに対するメッセージとも解釈できて、そういう父親たちへのエールとも取れるネーミングで、そう考えると奥の深いネーミングだと思えてくる。こういうバカバカしさの中にも深さが感じられるのも「クレヨンしんちゃん」の良いところだ。
[DVD(邦画)] 8点(2019-05-11 23:46:41)
167.  アナと雪の女王/家族の思い出
「アナと雪の女王」のスピンオフ第2作で、マスコット的キャラクターである雪だるまのオラフを主人公にしている。内容はオラフがエルサとアナのためにクリスマスの伝統を捜しに行くというものだが、全編オラフを中心としたPVを見ているような印象があるものの、ほかのディズニー短編と比較して上映時間22分と、30分アニメ一本分くらいの長さがあるためか、起承転結がしっかりしていてそこそこ面白く、オラフのキャラクターとしての魅力もよく出ている。「アナと雪の女王」本編を見終わって本当に直後に見たためか、舞台の街の雪景色を見て、またエルサと思うところだったが、舞台がクリスマスなので、冬の時期に降る自然の雪なんだと思いなおし、ちょっと感慨深い気持ちになった。
[地上波(吹替)] 6点(2019-05-06 22:52:37)
168.  アナと雪の女王 《ネタバレ》 
公開当時にすごく話題になったディズニーアニメだが今更初めて見た。(嗚呼、天邪鬼。)すでに公開から5年も経っていて、有名な「ありのままで」をはじめ、劇中楽曲はすべてどこかで聴いたことある曲ばかりで、その面ではあまり初めて見る映画という気はしなかったのだが、それでも思っていたよりは面白かった。アナが猪突猛進な明るいキャラクターに描かれているのに対し、手に触れたものすべてを凍らせる魔法の力を持っているエルサはそれがために長い間、閉ざされた城の一室に軟禁状態というのがかわいそうで仕方がなく、両親にもっとほかになかったのかと問いつめたくなるのだが、このおかげでエルサに感情移入しながら見ることができた。エルサが「レット・イット・ゴー」を歌うシーンがけっしてハッピーなシーンではなく、むしろ正体が露見し、山に逃げ、孤独な身となった状態で歌われていることに、今までこのシーン「だけ」をテレビで本作を取り上げる度に何回も見ているとビックリしてしまうのだが、もう隠し事はやめてありのままの自分でいたいというエルサの気持ちがすごくこめられていて、ここでこの歌を流したのは正解だと思った。(話題になっているからってちょっとこのシーンはテレビで流しすぎていたように思う。)アナが出会ってすぐの王子と婚約するという展開はすごいのだが、この王子が己の私利私欲のために動いている本作の悪役というのは、なんか時代が変わったなあという感想を持った。映画のテーマとしては「レット・イット・ゴー」の歌詞にもあるようにありのままを受け入れる大切さというのもあると思うのだが、それ以上にエルサとアナの確執と和解がテーマとなっている点が面白く、アナにかけられたエルサの魔法を溶かす真実の愛というのが王子とのキスといった異性との愛ではなく、エルサとアナがお互いを思う心だというのが、本作がエルサとアナという姉妹の物語であることを強く感じさせるものとなっている。(普通にアナとクリストフが結ばれることによってアナにかけられたエルサの魔法が解けると思ってたからちょっと意外な感じはしたけど。)ラストの町中の氷が溶けていくシーンは圧巻で、まさに大団円という感じで映画的なカタルシスもちゃんとあるし、ディズニーらしいハッピーエンドなのも良い。どうしても「レット・イット・ゴー」の部分(だけ?)が話題になる本作だが、ヒットした理由はそこだけにあるのではないと感じることができ、それだけでも見て良かったと思える映画だった。ちょっと甘めかもしれないけど、7点を。
[地上波(吹替)] 7点(2019-05-06 18:45:45)(良:1票)
169.  大日本帝国 《ネタバレ》 
「二百三高地」に続く東映の大作戦争映画で、本作では太平洋戦争の開戦から戦後の東京裁判までを描いている。舛田利雄監督と脚本の笠原和夫、音楽の山本直純をはじめ、「二百三高地」と同じスタッフが手掛けていて、出演者も丹波哲郎、あおい輝彦、夏目雅子など「二百三高地」にも出演していた人が多く、二番煎じ感も強いのだが、「二百三高地」が旅順での戦いを通して日露戦争を分かりやすく描いていたのに対し、本作は3時間だれることなく見れるものの、焦点が定まらずに散漫とした印象が残り、映画としてはかなり大味な出来のように思う。しかし、本作は「大日本帝国」というインパクトのあるタイトルもさることながら、天皇(本作が俳優が演じる今上天皇が本格的に登場した初めての映画だそう。)の戦争責任に言及した部分が多く、こんな映画、よく作れたなと思うほどで、それにいちばん驚かされる。中でもあおい輝彦演じる床屋の妻(関根恵子)のセリフである「天皇は戦争に行くの?」とか玉音放送を聞いた住民が「天皇が話をするだけで戦争が終わるのなら、もっと早くしてほしかった。」とつぶやくのは今まで見た日本の戦争映画でも聞いたことがないような言葉でちょっと衝撃を受けてしまった。恋人(夏目雅子)の助命嘆願を拒否した江上(篠田三郎)が銃殺されるシーンの最後の言葉は天皇賛美とも天皇批判ともとれるようになっているが、笠原和夫の著書などを読むと批判の意を込めているようで、その徹底した天皇批判ぶりはすごい。東映はこの後、天皇を描く映画を企画して、宮内庁からクレームがついてぽしゃったというエピソードがあるのだが、それも本作を見ればうなずける話。最初に書いたように「二百三高地」と同じ出演者が多いのだが、あおい輝彦の相手役が夏目雅子ではなく関根恵子で、夏目雅子は篠田三郎の相手役と、それぞれ「二百三高地」に出演していなかった役者の相手役になっているのはよく考えられた配役。でも、江上が戦地で出会う恋人そっくりの現地の女性に恋人の面影を見て抱いてしまうという展開は分からなくはないけど、不倫のように映ってしまうし、この役を夏目雅子が二役で演じているのもなにか違和感を感じる。一方の関根恵子は戦時下をおさな子を抱えて何があっても生き抜くという強い決意を秘めた女性を演じていて、それがすごくハマっていて素直に良い女優だなあと思った。東条役の丹波哲郎も良かったんだけど、ちょっと彼に丸刈りは似合わないかな。でもやっぱり本作を見終わって印象に残るのはさっきも書いた天皇の戦争責任に関する言及の多さで、果たしてこの映画を平成から令和への改元をまたいで見てしまったのは良かったのかどうかと思ってしまう。
[DVD(邦画)] 6点(2019-05-01 23:50:08)
170.  ルパン三世 グッバイ・パートナー〈TVM〉 《ネタバレ》 
6年ぶりのオリジナル新作によるテレビスペシャル(前作の「イタリアン・ゲーム」はやっぱり第4シリーズの宣伝目的が主だったのね。)で、ルパンの相棒である次元がルパンを裏切って敵に回るということが大きくフィーチャーされ、タイトルもわざわざ「グッバイ・パートナー」となっているが、どうせ完全に裏切るわきゃーないと冷めて見ていたら案の定で、しかも次元の裏切り行為の理由が早い段階であっさり明かされてしまい、後半はタイトルと内容が合っていないのはなんとかしてほしかった。全体的な印象もいつものようなまあこんなもんだろうという感じでとくに何も期待をしてなかったのでそれ以外は気にならないが、このタイトルにした以上、せめて次元を終盤近くまで敵として描く必要はあったと思う。旧声優陣での最後の作品が「LAST JOB」というタイトルだったので、ひょっとしたら本作で小林清志の次元は最後という意味でのタイトルかと深読みしてみたが、そうでもなさそうなので、何を考えてこのタイトルにしたのかよく分からない。ショパンの曲が絡んでいるので「ショパン 別れの調べ」とかいくらでもほかにタイトルのつけようはあったと思う。先日亡くなられたシリーズの原作者 モンキー・パンチさんのご冥福を。
[地上波(邦画)] 5点(2019-04-23 00:06:08)
171.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ 《ネタバレ》 
劇場版シリーズ第12作。「雲黒斎の野望」と「アッパレ!戦国大合戦」の2本で時代劇をやっている劇場版シリーズだが、それに対して今回は西部劇になっているのは理にかなっていて、前2作のようなタイムスリップという要素を使わず、さびれた映画館で上映中の映画の中に入り込むという「カイロの紫のバラ」や「ラスト・アクション・ヒーロー」で用いられた手法を使うことで違いを出している。なので、作中の西部劇の世界はあくまで映画の中の世界ということで、「アッパレ!戦国大合戦」のようなリアル路線でなくてもそんなに気にならないし、逆に映画の中だから何でもありという荒唐無稽さが楽しく、とくに終盤のたたみかけるようなアクションはいかにも劇場版「クレヨンしんちゃん」らしい躍動感があって圧巻だった。そんな終盤とは違って前半は舞台となる西部劇映画の世界での日常を淡々と描いていて、この部分が冗長という意見もあるのだが、とくにそうは感じずに見れた。映画の世界でしんのすけ以外のカスカベ防衛隊の面々が現実世界の記憶を失って映画の世界の住人として生活している中、ボーちゃんだけは完全に映画の世界に染まらずにいるというのがなんかボーちゃんらしくていい。馬で引きずられる老人や、しんのすけとみさえが気絶するまで暴行されるなどバイオレンス度が高めなのは子供も見る映画としてはどうかと思うものの、このシリーズは監督の作風や趣味・嗜好がもろに出るので、水島努監督のそれが出た結果なのだと思えば一応理解はできる。今回登場する悪役である知事の名前がジャスティス・ラブというのがなかなかだし、声を演じているのが小林清志というのもなにかこだわりを感じる。声と言えばチョイ役で登場する荒野の七人。セリフのある三人は実際に「荒野の七人」の吹き替え版で同じ役を演じていた小林修、内海賢二、大塚周夫の三人を起用しているのも「クレヨンしんちゃん」らしいところだが、ジャスティスの部下である保安隊隊長と副隊長の声を演じているのが二人とも「ターミネーター」1作目のDVDと最初のテレビ放送版でそれぞれT800の吹き替えを演じていた声優(玄田哲章と大友龍三郎。)というのもツボだった。今回のしんのすけは中学生くらいのヒロイン・つばきに恋をするというのが新鮮なのだが、ここはもうちょっと突っ込んでほしかったかな。それでも、映画が終わって消えてしまったつばきを必死にさがすラストのしんのすけの姿には思わずうるっとさせられた。このラストを見てそれこそ「カイロの紫のバラ」のラストを思い出したのだが、このラストを見てやはり本作は西部劇よりも映画そのものを題材にしているのだとあらためて感じることができた。「オトナ帝国の逆襲」と「戦国大合戦」がすごすぎて逆に本作以降の劇場版シリーズに興味が持てなかった(「栄光のヤキニクロード」はこの二つの間で鑑賞済。)のだが、本作を見てやっぱり劇場版「クレヨンしんちゃん」は面白いと思った。また劇場版シリーズを少しづつ見ていきたい。
[DVD(邦画)] 8点(2019-04-19 00:29:37)
172.  青天の霹靂 《ネタバレ》 
劇団ひとりが自らの小説を原作に共同脚本と初監督を手掛けて映画化した作品と聞いてまた話題作りの映画なのだろうなあとタカをくくってまったく期待しないで見たのだが、これが予想を裏切る良い映画でビックリ。ストーリー的には人生に絶望した男が自分が生まれる前の過去にタイムスリップし、そこで自分の両親となる男女と出会い、今まで自分の知らなかった秘密を知っていくというシンプルでオーソドックスなものだが、あまり大きな話にせず、欲張らずにあくまでシンプルにまとめているのは好感が持てるし、お笑いタレントの初監督作らしからぬ安定感があり、やや唐突に感じる部分もあるのだが、とくに違和感を感じることもなく安心して見ることができた。主人公のマジシャン・晴夫は大泉洋が演じているが、やはりはまり役だったと思う。晴夫が胎盤剥離で入院した自分の母親となる悦子(柴咲コウ)に生まれてくる子供の未来を語るシーンは思わず泣かされてしまった。それに、子供を産めば命を失うリスクがある中で、それでも子供を産みたいという悦子のわが子を思う気持ちや母としての強さにもすごく感動してしまった。監督である劇団ひとり自身も晴夫の父親となるマジシャン役で出演しているが、主演ではないことにより、一歩引いた感があって前に出すぎていないのが良い。この父親である正太郎が、息子であることを隠し、ペペと名乗る晴夫とコンビを組むという展開が面白く、この二人のコンビぶりも良かった。それにしても、お笑いタレントが初監督作品で良作といえるものを作るのはまれだと思うのだが、間違いなく本作は良作で、言い過ぎになるかもしれないが、劇団ひとりには才能がじゅうぶんあると感じた。もともと嫌いというわけではない芸能人なのだが、監督としての次回作があればまた見たいと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2019-04-13 15:34:00)
173.  友よ、静かに瞑れ 《ネタバレ》 
崔洋一監督による藤竜也主演のハードボイルド映画。嫌疑をかけられた余命の少ない友人(林隆三)を救うために一人戦いを挑む男を描いていて、とにかく主演の藤竜也をはじめ、助演の原田芳雄や室田日出男など、登場する主要な男性キャストはどれも濃くて渋くてそしてカッコよく、いかにも男の映画という雰囲気バリバリなのが良いし、舞台となる沖縄の雰囲気も物語によく合っている。80年代半ばの角川映画だが、アイドル映画だけではなく、ちゃんとこういう大人の映画もあるのは抜かりない。予想よりも地味な作風で、正直言って退屈に感じる部分もなかったといえばうそになるのだが、この地味さも本作の良さにつながっているのだと思う。話の発端となる林隆三演じる坂口がなかなか登場せず、ラストになってようやく登場するという流れだが、むしろそれが良く、幼い息子の目の前で射殺されることで息子に男のいきざまを見せようとするのが良い。それに、坂口に一言もセリフがないのも相まってこのラストシーンは強烈な印象を残している。そして、息子である少年が苦手だったレモンをかじるいちばん最後のシーンは、この少年の成長を象徴しているようで印象深い。梅林茂によるテーマ音楽もものすごく耳に残る。
[DVD(邦画)] 6点(2019-04-06 22:36:28)
174.  トラック野郎 故郷特急便 《ネタバレ》 
シリーズ第10作。冒頭にシリーズ10本記念と表示される力の入れようで、いつもと違い、今までなかったマドンナに石川さゆりと森下愛子という二人を迎えている。(桃さんがマドンナに惚れた時に星が出るのもちゃんと二回ある。)病気になったジョナサン(愛川欽也)に代わって、母ちゃん(春川ますみ)が一時的に桃さん(菅原文太)とコンビを組んでジョナサン号を運転しているのはシリーズでも珍しい気がする。桃さんがライバル(原田大二郎)との喧嘩で「南国土佐を後にして」のレコードを割ってしまい、そのレコードを聴きたがっている風美子(森下愛子)の寝たきりの母親のために、その歌い手である結花(石川さゆり)を連れてきて歌わせるシーンは、桃さんらしい優しさがとてもよく出ていてよかった。今回のライバルは過去に闘犬で負けた過去があり、その相手を打ち負かしたいという一心で帰ってくるが、その相手を演じているのが安部徹というのは見ていてなんだか「網走番外地」シリーズを思い出してしまうが、さすがにそこまでワルではないのもなんか良い。(これが任侠映画だったら原田大二郎は間違いなく殺されている。)そして、やっぱり今回、いちばん良かったのはクライマックス、桃さんに惚れ、「あなたの奥さんになるの。」という結花に対して、彼女の夢であった歌手としての成功を後押しするためにあえて自分から身を引く桃さんの姿はこれまで以上にカッコよく、自分を犠牲にしても、惚れた相手の幸福を願う桃さんはそれでこそ男だ!と思わずにはいられないし、本当に熱くて素直に感動した。撮影中は次回作もやるつもりだったのが、いろいろあって結果的に今回が最終作となってしまったわけだが、このクライマックスの別れのシーンは本当に最終作のラストに相応しいもので、最後がこのラストで本当に良かったと心から思う。これでこのシリーズはすべて見終わったことになるのだが、やっぱり、桃さんの男としての生きざまにすごく憧れるし、シリーズ自体も「男はつらいよ」シリーズとは違った良さがあり、まさしく名シリーズだったと思う。これで終わってしまうのは惜しい気もするが、最後に、桃さん、ジョナサン、そして鈴木則文監督、素晴らしいシリーズを今までありがとうと心から感謝を言いたい。
[DVD(邦画)] 9点(2019-03-30 19:02:04)(良:1票)
175.  トラック野郎 熱風5000キロ 《ネタバレ》 
シリーズも終盤となる第9作で、鈴木則文監督が脚本にも参加している作品としてはこれが最後となる。今回はこれが映画デビュー作の小野みゆきをマドンナに迎えていて、演じる役柄は桃さん(菅原文太)と酒飲み対決をするような男勝りのキャラクターなのだが、男勝りの女性はシリーズ過去作にも登場していたが、それがマドンナとして登場するのは珍しい。前作ではなかったオープニングの「一番星ブルース」と桃さんがマドンナに惚れた時に星が見える演出が今回復活しているが、星の演出がマドンナとの初対面時ではないのも異色な感じ。そんな今回はいつもよりも桃さんの恋は全面には出ず、笑いも少なめというのが物足りないのだが、むしろ中盤から始まる社会派ドラマのようなゲスト陣(地井武男、金田龍之介)による確執を描いたシリアスな部分にけっこう力が入っていて、見ごたえもあった。しかし、こういう単なる喜劇に収まらない重いテーマも臆することなく取り上げている回もあるのがこのシリーズらしさでもあるのだが、今回はこの部分に桃さんらレギュラー陣がほとんど絡んでいないため、少し違和感もあったのも事実。今回、桃さんが一番星号を修理に出していて、必然的に桃さんがトラックを運転しているシーンが少ないのだが、これはこれでたまにはいいかと思えるし、以前、川谷拓三がトラック野郎ではないライバル役で出演していたが、今回の地井武男演じるライバルであるノサップは運転はするものの、彼自前のデコトラは出てこないというのが意表をついている。ほかにドラマとしては作業中の事故で死んでしまった仲間のトラック野郎の幼い娘と母親(二宮さよ子)の再会劇が描かれているが、ここにもう少し深みが欲しかった気もするし、この少女を母親の元へ送り届けるために修理を終えたばかりの一番星号で激走するクライマックスもいつもに比べてあっさりとした印象だったのはやっぱり何か物足りない。全体としてはシリーズの中ではイマイチな回かと思うものの、マドンナとノサップが牛の乳しぼりをしているときの会話を聞いた桃さんの勘違いからノサップと殴り合いを始める展開や、ドライブインでインベーダーゲームを押し付けられていた三番星(せんだみつお)がほかの客たちから袋叩きにされるシーンは、それにインベーダーゲームの画面を重ねたりしていて、いかにもこのシリーズらしいギャグシーンで、これらの部分はしっかりと笑うことができた。シリーズはあと一本で終わりなのだが、やっぱりそれが少しさびしく思う。ちなみに本作の公開時の同時上映は「酔拳」だったそうで、ジャッキー映画の日本初公開は日本映画とのカップリング上映だったんだなぁとしみじみ。
[DVD(邦画)] 6点(2019-03-21 23:29:18)
176.  妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。前作は山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ以前の作風のようなブラックさがあり、面白かったんだけど今更そこまで戻るのかという疑問も残った。3作目となる今回は1作目のような雰囲気に戻り、安心して見ていられる映画になっている。初期の山田監督のブラックな喜劇も個人的には好きなのだが、やはり、山田監督はブラックな作風よりもこういう安心して見れる作風の喜劇のほうが良い。それに、今回も「男はつらいよ」を思わせるシーンが多く、うたた寝をしている間に泥棒(笹野高史)に入られ、へそくりの大金を盗まれてしまった妻(夏川結衣)を夫である長男(西村雅彦)が責めるシーンなどはいかにも寅さん的(「そういう言い方はない」というセリフも「男はつらいよ」シリーズで何度も出てくる。)だし、1作目のレビューでも書いているが、家族が些細なことからすぐけんかになるのも「男はつらいよ」シリーズを思わせている。家に泥棒が入るというシチュエーションも山田監督が監督を手掛けた回ではなかったが「新 男はつらいよ」の財津一郎をつい思い出して笑ってしまった。そして次男(妻夫木聡)が妻(蒼井優)といっしょにおばあちゃんを捜しに行く場所がまさかの柴又というのがニクイ。これはもう、山田監督の「男はつらいよ」シリーズへの思い、ファンへの思いというものが感じずにはいられない。(このシーンではとらやの面々や御前様、源ちゃんらがどこからか出てくるのではとつい思ってしまった。)サブタイトルが戦前の成瀬巳喜男監督の映画のタイトルからの引用であることからも分かるように、長男が妻を迎えにいくクライマックスの大雨や稲妻、創作教室の先生(木場勝己)が朗読する林芙美子の小説など、成瀬監督を意識しているのが分かるし、山田監督が成瀬監督のファンで、受けた影響も大きい監督なんだというのがよく分かる。(成瀬作品、あまり見ていないのだが、本作を見終わって久しぶりに見たくなった。)それにしても、この映画に登場する平田家は家族になにか問題が起こるとすぐに家族会議を開くなどいつもながらにすごく団結していて、見ていていつもこういう家族っていいなと思うし、自分もこの家族の一員でいたい、そういう気持ちになってしまって、シリーズをずっと見ているからか、この家族がすごく身近な存在に感じる。このシリーズは母親も好きで一緒に見ることが多いのだが、長男の妻が家出するところから話が始まっている今回はこの長男の妻にとても共感したようで、見終わってすごく面白かったと言っていたし、ぼくも母親に対する感謝の気持ちでいっぱいになることができた。シリーズの次回作があるかはどうかは分からないが、もう2、3本はこのシリーズの新作を見たいなぁ。最後にこれも1作目のレビューでも書いたことなのだが、山田監督はシリアスな映画もいいのだが、いつまでも喜劇映画を撮り続ける監督であってほしい。心からそう思う。
[DVD(邦画)] 8点(2019-03-17 01:08:59)(良:3票)
177.  木更津キャッツアイ ワールドシリーズ 《ネタバレ》 
劇場版第2作にして完結編となる本作。前作「日本シリーズ」が、テレビドラマの劇場版にありがちなお祭り的な内容だったのに対して、今回はそういった部分はあまりなく、ストーリー的にはこのころの邦画でよく作られていた「黄泉がえり」系で、ついに死んでしまったぶっさん(岡田准一)が現世に帰ってきて、という筋立てだが、やはりぶっさんがただ死んで物語が完結するよりはこういうほうがこのシリーズらしいし、バンビ(櫻井翔)がぶっさんの「それを作れば彼が来る」という声を聞いたところから始まる「フィールド・オブ・ドリームス」そのまんまのような展開もこのシリーズらしく、(元ネタもちゃんと明かしている。)見ていて思わず笑ってしまう。本作は連ドラシリーズや「日本シリーズ」に比べればゆっくりとした普通のペースで進行し、むしろぶっさんが本格的に登場するまでが長いとさえ感じるのだが、見終わって考えてみれば、クライマックスのキャッツとぶっさんの別れをより印象的に見せるためだったのかもと思えてくる。回想で描かれるいまわの際のぶっさんと周囲の人々の中でただ一人彼を看取った父親(小日向文世)のやりとり、連ドラシリーズからずっとこの二人の微妙な関係を見てきたからこそここのシーンは来るものがあり、感動的だ。そしてそれはよみがえったぶっさんが父親にだけ見えない理由にもなっているというのが切ない。ぶっさん死んで三年がたち、バンビらほかのキャッツのメンバーも少し大人になっている。でも、死んでしまったぶっさんはあの時の仲間とワイワイやっていたころのままというズレが結果的に別れにつながるというのがリアルで、大切な人が死んでしまっても生きてる者はそれを乗り越えて今を一生懸命に生きなければならない、前に進んでいかなければならない、若い頃の仲間とのどんな楽しい日々でもいつかは必ず終わるという、ありきたりだが重要で道徳的なメッセージが心に残る。そして、これこそがクドカンがシリーズの最後に言いたかったことではないだろうかと感じるし、これを以って本当に「木更津キャッツアイ」の物語はキレイに完結したと思う。最初に連ドラ第1話を見た時にはとっつきにくい印象が強かったのだが、最後まで見て本当に良い作品に出会えたと思えたことが素直に嬉しい。それともう一つ、今まではメインの登場人物たちが草野球チームに所属している設定ながら、野球自体にはそれほどスポットが当たってなかった気がするのだが、本作では野球にもしっかりスポットがあてられていて、そのあたりにも最後であることを感じさせている。
[DVD(邦画)] 7点(2019-03-02 18:33:14)
178.  木更津キャッツアイ 日本シリーズ 《ネタバレ》 
クドカン脚本の大河ドラマ「いだてん」に合わせるようにしてこの連ドラシリーズを初めて見たのだが、最終回まで見終わった流れで劇場版である本作を鑑賞。連ドラシリーズは最初はちょっとどうなんと思っていたが、慣れるとハマるまではいかないものの、登場人物たちに愛着がわいてきてそこからは楽しく見た。(クドカン脚本の連ドラ、ほかには「あまちゃん」しか見てないけど、ひょっとしていつも最初のほうはこんな感じなのかな?)この劇場版もドラマとまったく同じノリで映画的な何かがあるわけではないが、連ドラを見慣れていると安心して見ていられる。でも、仕方がないとはいえ、一見さんお断りな感じはあって、完全にファンムービーの域を出ていないのは少々気にならないでもないし、連ドラでやっていた全体を野球の試合になぞらえ、全9話分を表と裏に分けるというのは連ドラだからこそなしえることで、それを本作でもやっているのは単発の映画作品では苦しい気がする。ぐっさん演じる山口先輩が韓国パブの経営を始めるというのは15年以上経った今見ると少し時代を感じてしまうものの、ぶっさん(岡田准一)がその韓国パブの従業員であるユッケ(ユン・ソナ)と恋に落ちるという展開は良かった。今回のゲストであるジョージ役の内村もはまり役。彼が整形しているという設定でオジー(古田新太)が再登場するのは多少の無理やり感もあるものの、このシリーズならまあいいかと思えてしまう。(自分がオジーけっこう好きというのもあるが。)しかし、やはりストーリー的には中盤あたりでクライマックスを迎えてしまったように感じてしまい、その後の「キャスト・アウェイ」を意識したような5人の漂着した島での生活シーンはやや間延びしているように感じるし、冒頭からうっちーの父(渡辺いっけい)が語っていた怪獣の登場するクライマックスもなにか浮いてしまっているように感じたのはちょっと残念だった。本作のラストシーンはドラマで描かれなかったぶっさんの死ではなく、ぶっさんとユッケの結婚写真撮影というのが微笑ましい。それに、なんだかんだ言ってこのシリーズのノリとバカさは嫌いにはなれない。次回の劇場版で最後らしいのだが、最後まできちんと見届けたいと思う。
[DVD(邦画)] 5点(2019-02-21 01:25:49)
179.  明治天皇と日露大戦争 《ネタバレ》 
明治天皇を主役に日露戦争を描いた新東宝初のカラーかつシネスコの大作映画。(日本映画全体でもシネスコ映画は2作目だったとか。)先週に「二百三高地」を見たので本作もとりあえず見てみた。「南極物語」や「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」と同じく日本映画史上空前の大ヒット作だそうだが、戦後12年しか経っていない時期というのは、まだまだ戦争の記憶が生々しかったころだと思うのでこの映画がそういう大ヒットを飛ばしたというのはやはり少し不思議な感じがするのだが、勝ち戦を描いた映画を見て暗い時代を忘れようという人が多かったのではないかと感じる。俳優が演じる天皇が初めて映画に登場するというのも大きかったのだろう。アラカン演じる明治天皇は「二百三高地」で三船が演じる明治天皇と比べると、三船の明治天皇があくまで俳優その人だったのに対し、本作の明治天皇は俳優その人ではなく、ちゃんと役としてその偉大さを感じることができるし、戦場の兵士たちを思って夏でも冬服を着ていたなんてエピソードなども、かなり美化されているのかもしれないが、人間味のある描き方をされていたのが印象的だったし、もちろんアラカンもハマっている。天皇の描写以外はひたすら日露戦争の顛末に終始していて、戦場に駆り出される兵士たちのドラマが描かれないのはちょっと物足りなくもなく、前半の旅順での戦闘シーンがダイジェストのように見えてしまうのは「二百三高地」を見たばかりといのもあるのだろうなあ。逆に終盤の日本海大海戦のシーンのほうがスペクタクルとしては見ごたえがあった。このシーンで「軍艦マーチ」が流れて古澤憲吾監督の映画みたいだと思っていると、古澤監督は本作を手掛けた渡辺邦男監督の助監督を過去していたことがあると分かり、なるほどと感じる。「二百三高地」は公開当時、戦争賛美の右翼映画という論評もあったみたいだが、その傾向は「二百三高地」よりも20年以上前の作品である本作のほうが感じられるような気がする。とくに「勝った!勝った!」と浮かれたまま終わるエンディングは敗戦国の映画とは思えず、愕然とさせられた。なので、あまり高い評価はできない。「二百三高地」にも出演していた丹波哲郎と天知茂が本作にも出演しているのが面白いが、おそらく偶然だろう。
[DVD(邦画)] 5点(2019-01-10 00:52:46)
180.  二百三高地 《ネタバレ》 
日露戦争の旅順攻略を描いた東映の大作映画。どちらかと言えば再現ドラマに終始している印象が強いが、これがすごくよくできていて、日本が最後に勝った戦争がけっして圧勝ではなく、多大な犠牲を払ってようやく勝てたというのがよく分かる内容で、戦争の全体像もつかみやすい。戦闘シーンも迫力じゅうぶんで、中野照慶監督率いる東宝のチームが担当した特撮(中野監督の特撮、かなり久しぶりに見るけど、やっぱこの人は派手な爆発シーンがよく似合う。)も含めて見ごたえがあった。そのひたすら続く戦闘シーンは決して娯楽的に描かれているわけではなく、戦場の惨状や悲惨さをこれでもかと言わんばかりに描写し、戦争の意味を問いかけてくる構成はさすがにこのころの戦争映画らしいつくり。ドラマ部分はやっぱり深みが足らない感じなのだが、狂言回し的存在のあおい輝彦演じる親ロシアの教師が従軍して戦っているうちにロシアを完全に敵視し始めるのはけっこうリアリティがあるし、二人の息子をこの戦争で失った乃木希典(仲代達矢)の悲しみを静かに表現する演出も良かった。それになんといっても新沼謙治演じる豆腐屋の息子の逞しさが印象的。終結後、明治天皇(三船敏郎)に報告をしていた乃木がこの戦争で散った兵士たちのことを思って、次第に抑えきれなくなって号泣するのはさすがに違和感がすごいのだが、このラストシーンが三船と仲代という60年代の黒澤明監督の映画ではおなじみの二人の共演シーンだったのは嬉しく、その意味でこのラストシーンはとても印象に残る。三時間と長尺な作品だが、多少の中だるみ感はあるものの、それほど長さは感じずに見ることができた。ただ、やはり、前半部分終了時に主題歌である「防人の詩」を画面を暗転させて延々歌詞テロップ付きで流しているのは意味が分からず、ひいてしまった。さだまさしもこの歌も嫌いではないが、普通にすべて終わったあとエンディングで初めて流すだけで良かったのではないかと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2019-01-04 16:19:35)
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