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プロフィール
コメント数 230
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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161.  蜜蜂と遠雷
まず脚本が弱い。べつの脚本家を立てるべきだったと思います。物語として何を伝えようとしているのかが最後まで見えませんでした。 映像は非常に美しいですが、映像そのものが何かを語れていたかといえば、かなり疑問です。「生活者の音楽」とか「世界が鳴っている」とか「世界が祝福している」といったことが、セリフとして語られることはあっても、映像じたいによって説得的に表現されることはありませんでした。「生活者」にかんしていえば、映像的には、松坂桃李よりも、むしろ眞島秀和のほうがはるかに「生活者」を感じさせました。 ムーンメドレーを連弾したときに、二人がどのような「月」のイマジネーションを飛翔させたのか。それも映像で語られることはありません。ただ二人の手と表情が映されただけです。「春と修羅」を演奏するときに、それぞれのピアニストは何を表現しようと試みたのか。それも映像としては何ひとつ語られません。やはり演者の手と表情が映されただけです。そもそも宮沢賢治の「春と修羅」の世界は何ひとつ映像化されていません。プロコフィエフやバルトークの協奏曲の演奏場面でも、描かれるのは演奏者の表情と聴衆の反応ばかりで、そもそも作曲家と演奏者が何を描こうとしたかはまったく見えてきません。 これでは「音楽を映画にした」とは言えないと思います。この映画自体が「世界が鳴っている」ことを十分に体現できていない。 音楽映画としての意義は、いかに「いい音楽を聴かせたかどうか」ではなく、いかに「映像で音楽を見せたかどうか」に求められるはずです。いい音楽を聴かせるだけなら、プロの奏者に演奏させれば済むことです。音楽映画であるためには、音楽がイメージとして観客に共有されなければなりません。演奏場面で手と表情を映すだけなら、普通のコンサート映像と同じです。顔だけ俳優に置き換えたにすぎません。 それぞれのピアニストが、どんな困難を、どのようにして乗り越えたのかも、映画を見ただけではほとんど理解できません。「蜜蜂」と「遠雷」が作品の表題である必然性も、映画を見ただけでは何も伝わりませんでした。「雨と馬」に至っては、まったくもって意味不明でした。これでは、たんに原作を読んだ人のためのイメージダイジェストでしかありません。映画を見ただけで「蜜蜂」が“天賦(ギフト)”を意味すると理解できる人は皆無でしょう。まして、スローモーションの「雨と馬」が、原体験としての“ギャロップのリズム”だと理解するのは絶対に不可能です。「雨と馬」のもったいぶった映像を流す暇があったら、「蜜蜂」と「遠雷」の意味の対比をもっと明確に示すべきだったでしょう。 扱き下ろすほどひどい作品ではありませんが、ポーランドの映画大学に学んだエリートの作品と期待しただけに、長いミュージックビデオのような内容には肩透かしを喰らいました。
[映画館(邦画)] 6点(2019-10-30 19:59:20)(良:2票)
162.  レ・ミゼラブル(2012)
アップの映像が多すぎます。歌っている時はほとんどアップで撮らえていました。しかし、いい表情を見せていたのはファンテーヌ役のアンハサウェイと、マリウス役のエディレッドメインくらいかなぁ。ほかの役者にかんしては、表情をアップでとらえる必然性をほとんど感じませんでした。もともとミュージカルというのは、役者のエネルギーが歌唱のほうへもっていかれてしまうため、表情や演技が、概して淡白もしくは大味になりがちなのだと思います。アップの映像に説得力が出てこないのは、そう考えれば当然です。チラシによると、本作では歌のリアリティを重視する演出手法をとったとのことですが、ならばなおさら、カメラを寄せて表情ばかり撮るのではなく、歌手たちの声の「響き」を彼らの肢体やその空間とともに大きく映像化すべきだったと思います。とくにエポニーヌの歌う「On My Own」は、実際の舞台で観る時のように、大胆なロングで撮ってほしかった! そのほうが、彼女の孤独感と、歌の力強さとを、より壮大なスケールで見せることができたはずです。何もかもをベタなアップの映像で繋いでしまったために、金太郎飴みたいに一本調子で、小説のあらすじを大雑把に映像化したような大味な映画になってしまった感じ。まあ、泣くことは泣きましたけどね、ああいう内容ですから。でも、映画そのものが興行成績を塗り替えるほどの傑作なのかというと、そうは思えませんでした。7点でもいいんだけど、辛めの6点。 
[映画館(字幕)] 6点(2013-02-07 16:31:07)(良:1票)
163.  山椒大夫 《ネタバレ》 
世界的な評価の確立した名作に対して「7点」というのは、自分としてはやや低めの評価です。観る前のハードルが高すぎたのですが、駄作と言うほど悪いとは言えないものの、傑作と呼ぶ気にはなれません。宮川一夫のカメラと香川京子が申し分もなく美しいことに変わりないし、花柳喜章だって悪いとは思いません。じゃあ、いったい何が不満だったのか。おそらく、わたしは、鴎外の文章がもっていた非常に簡潔な叙事性と、前々作の「雨月物語」が強烈に放っていた神秘性とを、両方とも併せもったような世界に期待していたのだと思います。わたしが勝手に設定したそのハードルから見ると、この作品はごくフツーでした。いくつかの点で、鴎外の短編と違っている部分(安寿が妹である、巫女に騙される、姥竹が自殺ではない、厨子王に変節がある、山椒大夫に仕打ちが与えられる、最後に官位を捨ててしまう、地蔵の奇跡が描かれていない、等)がありますが、そうした変更を一概に悪いと言うつもりはありません。鴎外の小説じたい、もともとあった複数の伝説の翻案なのだし、たしかに小説どおりの展開にしていたら、かえってリアリティに欠けていたようにも思います。しかし、結果として現代的な意味での説得性が増しているぶん、おなじ中世の物語である「雨月物語」に感じられた理解を超越するような神秘性が薄まり、ややマンガじみた分かり易さに帰着した気がします。ヨーロッパの人たちにそのあたりがどう見えたのかは知りませんけど…。けっきょく総合的な意味でやっぱり最高傑作だって思うのは「近松物語」かなぁ。といいつつ、いまだに他の作品をレビューできていませんが。
[DVD(邦画)] 7点(2012-10-07 01:13:48)(良:1票)
164.  アンダーグラウンド(1995)
悲しい。イデオロギーとエゴ、金欲と愛欲にまみれた狂騒のうちに、それぞれの人生は、はかない幻のように終わってしまう。そして気がつけば、彼らの祖国もまた、まるで儚い人生と同じように、夢のように消え去ってしまう。 この映画の悲しみが、祖国愛を強く喚起するためのものだと解釈することはできます。そして、そういう解釈は政治性を帯びずにはいられません。私は、祖国というものは元来、人生と同じようにもろく儚いものなのだろうと思うけど、かりにそう納得したとしても、それはそれで、また逆の意味での政治性を帯びる。 この映画がはらんだ政治的主題を、日本人の自分がどう受け止めるべきかを考えるのは、正直とても難しいけれど、そういったテーマの難しさは措いたとしても、この作品の脚本の見事さと表現の力強さには感嘆せずにいられません。たんにバルカンブラスを聴かせるだけの映画じゃあなかったです。
[DVD(字幕)] 9点(2012-10-03 02:37:35)(良:1票)
165.  芙蓉鎮
約20年前に見た映画で記憶からこぼれていましたが、監督が亡くなったこともあり、ふたたび思い出して見る機会を得ました。とにかく骨太ですね。映像も骨太なら、物語も人物描写も骨太です。物語には善人も悪人も登場します。しかし、もはやそうした善悪を超えて、なんだか生きる人々の力強さそのものに心打たれてしまう。もう日本では見かけることのない、全力で生きることに立ち向かう人々の姿。とにもかくにも「人間を見た!!」という思いにさせられます。物語は歴史的背景を負っていますので複雑ですが、人物の描写はある意味で非常に単純明快だといえる。けれど、そうした単純な人々の生きざまと、それが織りなす社会のうねりを目にすると、かえって「個人の複雑な内面性」なんてものを描くことのほうがチャチで胡散臭いものに思えてくる。この映画には、台湾や香港映画ともまた少し違う、清濁すべてを併せ呑むような独特の豪快な手応えがあります。初見のときはあまりのボリュームにやや疲れてしまったのですが、何度みてもいい映画でした。
[映画館(字幕)] 9点(2011-10-14 03:31:05)(良:1票)
166.  バンデットQ 《ネタバレ》 
夢の冒険を終えて「元の世界」へ戻ってくる物語は数あれど、この映画の主人公は「元の世界」へ戻ることが出来ない。夢から醒めても、冒険は終わらない。現実に戻ったあとも、彼は「自由意志」の世界へ放り出されてしまいます。神さまは、あえてこの世界に「自由意志」の余地を残した。神は無慈悲にサイコロをふる。両親や家庭といった幻想をもあっさり消し去り、テリーギリアムは主人公の少年に「自由意志」の世界で生き続けることを命じます。実際、世の中には家庭にも両親にも頼ることのできない子供が沢山いるでしょう。「それでもどこかで、神さまは君のことを見てくれているよ!」ショーンコネリーの最後のウインクは、少年にそんなメッセージを残しているようです。非常にラディカルですが、ここに現代に生きるイギリス人の残酷なほどに独立心の強い宗教性が出ているのかもしれません。
[DVD(字幕)] 8点(2011-08-14 02:26:49)
167.  七瀬ふたたび
「出来のいいTVドラマ」と言ったら、あまり褒め言葉とはいえないかもしれないけど、けっこう満足して観ることができました。やたらと描きすぎず、物語の前提部分を思い切ってカットし、回想によって断片的に見せていくという手法の脚本は、シャープな感じで好きです。ただし平泉成の役どころはちょっとあっさり描きすぎかなあ、とは思う。テレパシーを文字イメージで表現したり、パラレルワールドを図解したりする映像については、違和感というほどのものはないけど、テレビっぽいのは否めない。映画的な表現としては、評価しにくい。また、CGの出来不出来とかはそんなに私は気にしませんけど、さすがに空を飛ぶシーンにはちょっと笑ってしまいました。せめて役者さんの表情だけでも、もう少し「飛翔感」が出せてればよかったですね。物語のメッセージを限定しすぎて押し付けずに、多様な読み方ができるように作ってあるのは良かったと思います。
[DVD(邦画)] 6点(2011-08-11 19:43:54)
168.  オキナワン チルダイ〈特別版〉
沖縄の「チルダイ」が本土資本によって買い占められようとしている、そんな危機的な事態が、のんびりとしたテンポではあれ、中心的なテーマとして描かれています。「チルダイ」というのは日本語の「気だるい」が沖縄風に訛ったもので、いわば「テーゲーでもなんくるない、沖縄特有のうちなぁタイム」とでもいうような、沖縄の社会や人々の怠惰な特性を表す言葉だとされています。しかし、私が見たところ、この映画における「チルダイ」は、「気だるい」というよりもむしろ、本土の言葉でいう「かったるい」の感覚に近い。すなわち、そこには少なからぬ暴力的な衝動が秘められていると感じました。前作の『オキナワン・ドリーム・ショー』に「死臭」のようなものが漂っていたとするなら、さしずめ本作には、そこはかとない「殺意」のようなものが漂っている。そして、それは本土に向けられたものであろうと私は考えずにいられませんでした。処女作の『サシングヮー』とこの作品こそが、高嶺剛の本質を強烈に感じさせる傑作であり、これ以降の劇場用作品ではそうした面が薄まっていくばかりで残念です。ちなみに『サシングヮー』は、ソクーロフの『ロシアン・エレジー』にも匹敵するような危険な傑作。
[映画館(邦画)] 9点(2011-07-29 08:12:20)
169.  おくりびと 《ネタバレ》 
遺体に丁寧な装いをして旅立ちの演出をする職人の技を、楽器を慈しんで音楽を奏でる人間の技に重ね合わせるというアイディアはなかなか洒落てるし、「白鳥」「鮭」「小石」といった最上川流域の素材をたんなる「風景」に終わらせず、テーマに結びつけて有機的に繋いでいく手腕といい、随分と器用な脚本だと思う。「遡上して産卵する鮭」「力尽きて死にゆく鮭」「塩焼きの白子(フグ)」といったメタファー、あるいは「飛来する白鳥」「旅立つ白鳥」「クリスマスのフライドチキン」といったメタファーを、産まれること、死ぬこと、食べて生きることに重ね合わせながら物語に厚みを与えていますね。石文のメッセージがお腹の赤ん坊に伝えられるラストシーンにまで、こうしたアイテムが抜かりなく行き届いていて、悪く言えば、ちょっと「小慣れた脚本」だとすらいえる。 ◇「汚らわしい!」と叫んだ妻の拒絶反応に対して賛否両論あるようですが、私には十分に理解できました。拒絶の理由のひとつは、音楽家から死体処理という職業への落差。その落差の大きさを主人公も感じていたがゆえに妻に真実を話せなかったわけですし、妻にとってもこの落差を知った衝撃は大きい。二つめは、真実を取繕った夫によって、夫婦の信頼が裏切られたこと、それ自体への拒絶です。そして三つめが、腐乱死体や自殺死体に触れることに対して一般的に抱く文字通りの「穢れ」の感覚であり、これも私は無理からぬことだと思う。それらが混然となった感情の中で「汚らわしい!」の叫びになったのだけれど、その中でももっとも重要なのは、あくまで「夫婦の信頼」の問題なのであって、それさえクリアできれば、職業の問題は夫婦間で十分に乗り越えられると考えたからこそ、妊娠した彼女は無条件で山形に戻ってきたのだと思います。 ◇もうひとつ重要なシーン。父のところへ行けと説得する同僚(余貴美子)や妻を振り切って、主人公がその場を走り去ろうとするシーン。あのまま走り続けても、彼に行く場所はありません。その彼をカメラは正面からとらえている。走れば走るほど、後方で妻の姿が遠ざかっていく。それを見れば、彼が引き返さざるを得ないことは理解できると思います。脚本の器用さが目立ってしまう本作品の中で、演出的にもっとも優れたシーンだと思いました。
[DVD(邦画)] 7点(2011-07-14 02:11:09)(良:1票)
170.  怪談昇り竜 《ネタバレ》 
お、面白い…(笑)。エロ、グロ、やくざ、拷問、化け猫、見世物小屋からアヘン窟まで、何から何までテンコ盛りのエンタテインメント。テンコ盛りといっても、そこに娯楽以上の意味は皆無だし、中身もまったくマンガじみた無内容な話ですが、しょーもないギャグを交えながら、それらを面白おかしく、テンポよく見せてくれる。60年代のどこか陰気な石井作品に比べると、ある意味、陽気で分かりやすいともいえる。内容の無さといい、無駄にグロい仕掛けといい、土方巽の安い小芝居といい、端的に言えばただの「アホ映画」なんだけど、梶芽衣子のきりりとした美しさ、その歌声による泣かせの怨歌、そしてオープニングとエンディングをつなぐ女どうしの粋な戦いの格好よさと耽美性とが、全体のアホっぽさをぴしっと引締めていて上手い。そのクールさに惚れて8点つけようかと思いましたが、はやる心をおさえて7点。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-12 06:06:02)
171.  第三の男 《ネタバレ》 
これは凄い。まさしく「噂に違わぬ」という映画でした。重厚な物語を、優しく柔らかい音楽と、ところどころに配されるユーモラスな演出で中和して見せてくれていますけど、やはり内容は非常にシリアスですね。トリックを凝らした脚本もよく出来ていますが、何といっても圧巻なのは、ハリーライムという極悪人をめぐる3人の心情を描いた人間表現の凄さ。こんな展開になるんですねえ…。予備知識をもたずに見たので、ラストシーンでは、思わず感嘆の声をあげてしまいました。直後に2度目を見ましたが、非常に緻密な作りになっているのをあらためて再認識。ヨーロッパ映画の実力を見せつけられました。ちなみに、HollyとHarryの名前が対比されてますが、何か意味があるんでしょうか?また、55年になってヒッチコックが“ハリーの死体”をめぐる喜劇を作っていますけど、これも何か影響関係があるのかしら? それから蛇足ですが、私がレンタルしたart stationというメーカーのDVDでは、字幕の翻訳ミスならぬ「タイプミス」と思えるような箇所がいくつかあり、ちょっと雑な仕事だなぁという印象をもちました。もちろん、作品の評価とは関係ありません。
[DVD(字幕)] 9点(2011-06-13 00:24:41)(良:2票)
172.  スティング 《ネタバレ》 
ラグタイムの音楽とともに描かれる、猥雑ながらも洒脱な感じのシカゴの町はとても魅力的だし、演出も見事で、役者の演技も素晴らしい。楽しめる映画ではある。ただ、こういう「技巧的な脚本」をどう評価するかについて、私はちょっと微妙ですね…。カラクリを弄するあまり、人間描写の深みはほとんど感じられないし(たまたま一緒にレンタルしたのが「第三の男」だったので、つい比べてしまったってのもある)、観客に疑問をもたせたまま、最後の最後まで真相を明かさないわけですが、最後になってすべての疑問が晴れるのかというと、けっこう色んなモヤモヤが残ってしまう。見終わった後であれこれと振り返ってしまうぶんだけ、かえって脚本の疑問点が浮かび上がってしまうんですね(脚本の緻密さという点でも、つい「第三の男」と比較してしまいました)。たとえば、サリーノは自室ではフッカーを殺害しなかったわけですが、なぜ白昼堂々、通りの真ん中で、ボディガードにも目撃された状況の中で殺害を試みるのか解せないし、ボディガードの側から見れば、それ以前にも殺し屋を排除しなければならないシチュエーションはあったんじゃないかとも思えてくる。あと、これはよく指摘されることだと思うけど、ロネガンは殺し屋のサリーノを差し向けてまでフッカーの殺害に固執しているのに、目の前にフッカーがいることには最後まで気づかないんですね。フッカー殺害の進展状況については報告が逐一あがってきているはずだし、直近の者もいつも傍にいるんですが、誰も目の前にいるのがフッカーだと気づかないのは、ずっと不自然に感じるわけです。その疑問が最後まで晴れない。むしろ、正体がバレた上で、あらためてフッカーとロネガンが手を組むという展開のほうが納得しやすいんじゃないかと思えます。そのほうが、ラストの「死んだフリ」も効果的に生きる気がするんですね。そうじゃないと、レッドフォード(フッカー)はいつまでたっても殺し屋に追われ続けるんじゃないかしら?と心配になります。
[DVD(字幕)] 6点(2011-06-12 23:12:54)(良:1票)
173.  サウンド・オブ・ミュージック 《ネタバレ》 
修道院で手がつけられないほどのお転婆で、なおかつ自然児でもあった主人公が、厳格な父の規律に縛られて生活している子供たちを解放してあげようと奮闘する前半。そして後半では、人間らしい気持ちを取り戻した子供たちの父親が、今度は市民たちを規律で縛ろうとするナチスに抵抗して、祖国オーストリアに培われた自由な文化や誇りを守るために、その支配下から逃れようとする。前半部と後半部の、このテーマ上の有機的なつながりが、あまりに歌や踊りに比重が置かれすぎるためか、やや見えにくくなってしまってる気もする。前半は楽しいのに後半が暗くて重たいだとか、逆に後半は見応えがあるのに前半部が漫画じみているだとか、あるいは、お転婆な設定のわりに主人公はかなり理知的なんじゃないの?とか、そのへんが破綻してるように見えてしまっても仕方ないかも。とはいえ、ミュージカルが苦手な私でもとりあえず楽しむことはできました。なによりトラップ大佐がとても魅力的!実際のオーストリアでは、ナチスの併合に対する抵抗はそれほど強くなかったらしいし、トラップ大佐の人物像がよくもわるくも現実とずいぶん違っているとかいう話もあるらしいけど、かりにそれらがフィクションだとしても、祖国の文化や自由を愛し、芸術的な素養にも富んだ誇り高い男性像はとても素敵で、素直に惹かれました。前妻を失った彼の傷心が、なぜ子供たちを規律で縛ることになってしまったのか、そのあたりの彼の心情を少し垣間見せてほしかった気もしますが・・。大佐を演じたクリストファー・プラマーが当時若干36歳だったというので驚きです。
[DVD(字幕)] 6点(2011-06-04 12:11:23)(良:1票)
174.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
家族全員に襲いかかる(かなりお笑いじみた)それぞれの破滅。戦場、留置所、ひき逃げ、強盗による連れ去り。そんな「プチ破滅」をくぐり抜けて、辛うじて帰還した家族たち。もともとあった問題は何も解決していない。夫はたいした仕事に就けないし、妻が生き甲斐を得たわけでもないし、長男が家に帰ってきたわけでもない。けれど、何となく、戻ってきた家族たちは生きる力を獲得したようにも見える。あるいは、家族の安らぎを再発見したようにも見える。あまりに「家」のシーンが美しすぎるので、中流の設定のわりに上等な家に見えてしまうほどなのですが、それは、この映画が「家」というものに対して肯定的であるがゆえなのでしょう。したがって、「プチ破滅」から帰還した親子がふたたび食卓を共にするシーンこそ、実質的な結末と考えてよいのだろうと思います。とはいえ、綺麗なピアノの演奏を終え、家族3人が衆目の中を歩き去ってゆくラストもまた(これも笑えるんだけど)、なかなか気の利いた演出になっていました。あえて言えば、作品のメッセージがやや「内向き」だというふうに見えなくもない。戦争、心中、自殺といった死があふれる世界から、辛うじて自分たちだけが家へ逃げもどり生き延びる、という物語ですからね・・。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-16 23:43:01)
175.  ションベン・ライダー
まぎれもないアクション映画ですね。抽象的で映像的な架空のアクションではなく、本物のリアルなアクションが、あらゆるシーンで炸裂しているさまを目撃できます。河合美智子の長い手脚とその運動能力の高さは、現在の彼女からはとても信じられません!『翔んだカップル』における鶴見辰吾と甲乙つけがたいほどの素晴らしさがあります。「イジメっ子を救出するため」というより、むしろ「監督にOKをもらうため」だけに、ワケもわからず死物狂いで運動し続ける彼女たちの必死さがビシビシ伝わってくるので、なんとも言葉にならない感動をおぼえます。男の子のように動き回った河合美智子が、最後の主題歌で切ない少女の心境を歌うあたりには、相米独特のロリコン趣味を感じますが、ちょっと惹かれます‥。のちのオーロラ輝子さんからは想像できないような、儚くも、正しい美しさにあふれています。『台風クラブ』の世界観がちょっと苦手だったので避けていた作品ですが、これは痛快でした。
[DVD(邦画)] 9点(2009-02-03 13:59:52)(良:1票)
176.  Little DJ 小さな恋の物語
この監督の映像には、やっぱりエロスがあります。冒頭の広末も色っぽかったし、子供でさえ、この監督が撮るとエロティックになる。ただ、いかんせん作品の題材がこの監督の作風に合っていないと思う。この監督は、子供を撮るよりオトナを撮ったほうがいいし、のどかな田舎を撮るより、猥雑な都会(せめて地方都市)を撮ったほうがいい。優等生の子供よりも、品行の悪いオトナを見せてほしい。真っ直ぐな純粋さよりも、やや歪んだ欲望を魅力的に映してほしい。この物語で撮るとしても、神木君じゃなく、麻由子ちゃんを中心に据えて語るほうが良かったのでは・・と思います。麻由子ちゃんの視点から、少年(神木君)の儚い生の一瞬の輝きとか、病室の人々の様々な悲哀を眺める方が、監督のもつ映像の美しさや独特の湿度感を生かせたのではないでしょうか。劇中に出てくるシュガーベイブやキャンディーズなどの曲も、監督の作風からはいまいち浮いています。
[ビデオ(邦画)] 5点(2008-11-11 14:23:59)
177.  翔んだカップル オリジナル版
これは力のある映画ですねえ。映画の力に満ちている、というより「映画の力」以外のものを全く何も使っていない(笑)。その潔さというか、大胆さというか、投げやりな感じがスゴイです。原作は読んでいませんが、おそらく、1話分のエピソードをワンシーン(さすがにワンカットではない)で撮るというように説話を積み重ねているんだと思います。前後関係を補足することなく、各エピソードをワンシーンの役者の動きだけで描いて、それが終わると唐突にまた次のエピソードをワンシーンで描く。こちゃこちゃした編集は一切無し。ブツ切りのシーンを数本並べただけで出来上がり、みたいな。細かい設定が知りたけりゃ原作のマンガでも読んどけよ、みたいな。アイドル主演のマンガ映画なんぞを、細かく丁寧に構成する気なんか毛頭ねえんだよ、みたいな(笑)。ある意味、オリジナル脚本のとき以上に、相米のオレ流が炸裂している気がします。薬師丸ひろ子の演技も、鶴見辰吾の演技も、本当に生きていて、これまで見たものの中では最良でした。個人的には、歌がダサいとこも好きでした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-11-11 13:45:12)(良:1票)
178.  檸檬のころ
たとえ退屈で地味な田舎の風景であっても、それを濃密な情感によって表現できてこそ映画の力だと思う。けれど、この作品では、退屈なものを本当に退屈なまま表現してしまってる。多用される沈黙には意味らしきものを感じない。「ただ淡々と描く」と言えばもっともらしいけれど、そうした手法だけに依存しても、それによって表現すべき必然性が伴っていなければ意味が無い。たしかに映像はそれらしく撮ってあるけれど、外見だけ映画らしく繕ってしまったような悪い例。
[DVD(邦画)] 5点(2008-10-26 14:49:55)
179.  ゲゲゲの鬼太郎(2007)
高尾が舞台?の映画ということで興味もってましたが、たしかに高尾ってあんな感じです(笑)。楽しかったので、6点。ねずみ男と目玉おやじは素晴らしいし、微妙にトンチンカンで先の読めない(≒読みようがない)展開も楽しいし、「世界が寛容であるためには間が抜けていることも大事だ」という妖怪ならではのメッセージは得心させるものがあった。ただし、演出はちょっと不満がある。導入部は、もっと怪しげにグイグイ物語世界に引き込んだほうがいい。事務的に前提を並べるだけでは、子供映画としてもツマラナイと思う。また、B級の安っぽさってのは、ワザとらしいほどの「味わい」があってこそだと思うけど、その点が意外に淡白というか、平板で物足りない気がする。そして役者についていえば、室井滋や神戸浩のように「いかにも妖怪らしく」演じる人もいれば、 寛平や獅童や西田のように、ことさら「妖怪風」を出すでもなく、フツーに演じる人もいる。でも、やっぱり私は紋切り型なくらいワザとらしく演じてもらったほうが楽しめるなぁ、と思います。 もっとも、「妖怪らしさ」ってのも、じつは人間らしさと同じように、時代とともに変わるものかもしれませんけれど。 
[地上波(邦画)] 6点(2008-07-09 17:34:51)(良:1票)
180.  バリー・リンドン 《ネタバレ》 
なるほど。物語がシンメトリーになっているんですね。素朴で勇敢なアイルランド人の成り上がりの前半生/巧緻で傲慢な似非貴族の没落の後半生。一部と二部はまるで別の映画でした。一般に、技術的・美術的な側面から、後半部の映像が高く評価されているみたいですが、どちらかというと前半のほうが面白かったです。純朴で勇猛なアイルランド人の、愚かしくも愛すべき人生をユーモアをこめて描くのかと思いきや、後半はそういうことじゃなくなっていくわけですね。主役のライアン・オニールは、前半部ではアイルランドの純朴な青年役がピッタリだと思ったのに、後半では存在感が物足りなくなってしまった気もする。現地では、「そもそもアメリカ人俳優にアイルランド人気質は表現できない」との批判もあったようです。結局のところ、これは大きい映画だったのか、小さい映画だったのか分からない。いわば、もっとも偉大な表現によって、もっとも卑小なものを描いたってことなんでしょう。面白くて、見応えがあって、造りも完璧なのに、いつもテーマの核心部分が“空虚”なのが、どうしようもなくキューブリックらしさだなと思います。最後は、善人も悪人も、アイルランド人もイングランド人もドイツ人も、死んでしまえば皆同じ。きっとこの監督にしてみれば、過去の人も未来の人も、原始人も暴力野郎も、死んでしまえば皆同じなんでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2008-01-27 19:09:32)
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