161. ひまわり(1970)
丘に広がる墓標、それと一面に広がるひまわりが重なり、花の一つ一つが、戦地に倒れた兵士の生死を表現していると、切々と伝わります。その一人一人に、その死を悲しむ肉親、友人たちがいて、それぞれに重く、悲しい物語がある筈で、このアントニオの物語も、そういう物語の一つなのでしょう。だから、ひまわりという題名がつけられているのだと思います。、、また、東西対立の時代、近代化されたソ連を写せという映像的無駄を甘受しつつ、ソ連ロケを敢行したのも、次に戦争が起これば、このひまわりが、再び血に染まるのだという、反戦のメッセージを伝えたかったからなのでしょう。、、ただ、判断に迷うのは、ソ連の駅での再会シーンです。もし私がソフィア・ローレンであったら、誰の旦那になっていようと、本当に生きていてくれたことが、うれしくて、うれしくて、思わず足の力が抜けて、その場にへなへなと崩れてしまうのではないかと思うのです。、、、だから、ここから先、ストーリーの論理が、戦争から恋愛に断絶的に転化するようで、、、。そこが素直に共感できないところです。 7点(2004-08-24 18:14:17) |
162. マスク(1994)
最初に見たのは、確か、飛行機の中、その後、幾度かテレビでも。、、、、何度見ても見飽きず、10年たっても色あせないのは、ダンス、衣装の色彩、細かな仕草などが、大胆でありつつ手を抜かず、丹念に作られているからなのでしょうか。、、、徹底してばかばかしい話を、めちゃくちゃ一生懸命に、みんなで頑張って盛り上げようとしている雰囲気が好きです。、、、警官が踊り出すシーンとか、キャバレーで踊るとことか、マスクが撃たれて演技するとことか、、、、、みんな大まじめにマスクにつきあって演じているわけで、、、、、、。娯楽映画の一つの極致だと思います。、、、、、マスクというのは、古今東西、どこにでもあるテーマなのでしょうが、娯楽に徹したアメリカバージョンというのもいいですね。 8点(2004-08-23 18:29:50) |
163. デイ・アフター・トゥモロー
飛行機の中で、飲んだくれて見たので、正しい鑑賞方法とはいえないし、、、、とりあえず、二時間ほど飛行時間を短縮してくれた感じで、その点には感謝しなきゃいけないし、、、、でも、見終えて思ったのは、「なんじゃ、こりゃぁぁぁ、、」ということでした。、、、、息子を助けに行って、その息子達がニューヨークで唯一の生存者になりました、助かって良かった、めでたしめでたし、、、、えっ、息子だけがたすかりゃそれでいいのかなぁ、、、。それで環境問題の方はどーなったのと思ったら、最後に、こんなにピュアな空気は見たことがないです、とかの付け足し。、、じゃぁ、放っておいて、大災害がおこれば、自動的に解決できるっていうのだろうか。、、、、それに図書館の本を焼くということは、文明に対する根底的な批判を含意するはずだけど、その含意を重く受け止めているとは思えなかったし、、、、、と、ぷんすかぷんとしつつ、暫しあって、、、、そっかー、アメリカじゃ、家族というのが一番大事な社会集団なんだぁ、ということが、よーくわかりました。会社、国家、学校、教会なんかの集団より、一番大事なのは家族だもんね、という価値意識を前提にしないと、この映画、全く意味不明のストーリーですものね。、、、、ということで、異文化の映画を評価することは難しいことなのだなぁと気づかせてくれた点でも、この映画には感謝しなければならないのかもしれません。、、、、、全然違う文化環境で創作された映像を自分の属す文化の価値基準で評価することは、その映像に対する適正な接近方法なのだろうか、、、、うーむ。、、、、そして、映像は確かに凄いから、よっ、いい出来だよ、パチパチパチとやらなきゃいけないのだろーか。、、、、再びうーむ。、、、、しかし、どーしても一点、許せない部分があり、この点にします。、、、、それはグーテンベルクの聖書。世界に数点伝えられているこの本は、ほんとーに美しく、神々しいものなのです。、、、、(つけたし、、、この映画は、結局、環境問題を手段、CG技術を示すことを目的としているようですが、それって本末転倒、目的と手段の転位ってやつてじゃないですかね。) 4点(2004-08-15 02:18:52)(良:1票) |
164. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
膨大な制作費に見合う収益を上げるには、原作を読んだ人も、読んでいない人も、楽しませるものではなくてはならない、、、「指輪物語」という題名をそのまま拝借する以上、原作をできる限り忠実に再現する必要がある、、、、という難しい方程式を10時間近くかけて解いたら、出てきた答えは限りなくゼロに近いものであった、、、、今はそんな気持ちです。、、、、、舞台芸術でも映像芸術でも、原作がある場合には、舞台、映像制作者の「解釈」が必ず介在します。あるいは、そういう解釈者の仲介なくして、古典的な原作は、現代に蘇ることはできないといってもよいでしょう。オペラにしても昔の衣装、舞台をそのまま忠実に踏襲するのは希だし、ギリシアで評判を得た蜷川のオイディプスも、勘九郎のニューヨークの舞台も、古典劇に対する自分たちの解釈を問うものであった筈です。、、、、、、で、この映画では、トールキンはどのように解釈されていたのでしょうか。、、、、、迫力ある戦闘、城の鳥瞰、闇に与するものの崩れた容姿、、、そんな解釈しか浮かび上がってきません。しかも、それらはみなどこかの映画で垣間見たことがあるような映像だと思います。、、、、なぜ、小さき者であるホビットに指輪が託されるのか、なぜ、スメアゴルに最後まで重要な役割が与えられるのか、フロドとサムの身分差をどう捉えるのか、王の血統をどう扱うのか、なぜ指輪を葬らねばならないのか、そしてそもそも指輪とは何なのか、、、、そうしたことの解釈の跡を、残念ながら映像から確認することは殆どできませんでした。、、、、、だから、見終えて、問いかけられたように感じるものは何もなく、残ったのは強いてあげれば、静かな怒りに似た感情なのです。、、、、そして何とも言い難い幕切れ、、、、、、フロドは、あの先の角を曲がれば、新しい世界が開けているかもしれないと歌いつつ、新しい冒険の途につくのではなかったかと、、、、、。 5点(2004-07-27 16:45:30)(良:6票) |
165. カルメン故郷に帰る
幾つかの点で、歴史的資料として朽ちることのない価値を持つ作品だと思います。、、、、、まず、廃線になって久しい草軽鉄道が人々の生活の中にとけ込んでいた姿を見ることができることは、鉄道ファンならずとも、好奇心をそそられることでしょう。今となっては、軽井沢から草津まで、鉄道が通っていたということはちょっと想像しにくいからです。、、、、、、第二に、軽井沢周辺、そしてそこからの浅間山の景観です。三笠から北軽井沢は、今は落葉松などが鬱蒼とし、浅間山の勇姿も木立の隙間からのぞかれる程度ですが、この映画を見ると、その周辺は開けた感じですし、浅間も存在感を示しています。有島武郎や堀辰雄が、その終焉の際に見た光景は、この映画に見る景色に近かったのだろうと思うと、想像力が刺激されます。、、、、、、、第三に、戦後すぐの雰囲気が生き生きと描写されている点です。小学校が地方の文化的、公的中心をなしていたこと、文化という言葉が流行語であったこと、オルガンが貴重なものであったことなどなどが、へえっ~という感じで伝わります、、、、、、。そして第四に、この映画が、最初のカラー映画であったこと。、、、、、、もちろん、それもこれも、高峰秀子、笠智衆、佐野周二、佐田啓二などが、昔っぽくても、しっかりとした演技をしているからこそです。 7点(2004-07-15 16:48:17) |
166. 八月の濡れた砂
最初に見たのは、中学か高校の時だったでしょうか。学校の講堂で、みんなで食い入るように見た記憶があります。、、、、もちろん男子校でした、、、、、。考えてみるとちょっとグロテスクですね。、、、、、内容的には、みたい、やりたい、したい、という意識に支配されている、リビドー爆発的男子の、ある夏の出来事を描いたもので、今からすれば、陳腐だし、セクハラそのものだし、、、、、。ただ、日頃の義務感から解放された、そしてややけだるい、夏の日常の雰囲気がよく表現されているし、また主人公が湘南の海辺をバイクで走っているところとか、70年代の空気が漂ってくるようです。、、、、、テーマは、人間の奥底の情念を描くことでブルジョワ的道徳の欺瞞性を暴露するということだったのでしょうか。あるいは、奥底には、不条理ということもあったのかもしれません。学生ならみんなカミュとか読んでいた頃です。、、、さらに、70年安保が去り、ある種の脱力感が漂う中、政治の季節が終わったということを告げた映画だったという解釈も成り立つのでしょう。日活はこの後、ロマンポルノ路線に突入してゆくことになります。、、、、、、、秀逸なのは、石川セリの主題歌。ラストシーン、テレサ野田の心を歌うように流れる歌は、小さくなってゆくヨットの映像とともにずっと記憶に残っています。そして、この歌が好きだった、今は亡き林美雄さんも。 8点(2004-07-15 09:55:42)(良:1票) |
167. ソフィーの選択
、、少し不確かな記憶で、いい加減なことを書きます、ごめんなさい。、、、、、この映画で20年近く印象に残っているのは、三人で、橋のところでシャンパンを飲んで、グラスを海だか河だかに放擲するシーンです。映画の主題など忘れ、、、、、あれがやりたいっ、京浜島かベイブリッジあたりで、、、、と飲んだくれると、そう思い、仲間を募っていたものです。もちろん、結局、実現することはありませんでした。、、、、、クリスタルのグラスは、キラキラ輝き、しかしこの瞬間にも割れてしまいそうな脆さを内包し、自分が心の中で大切にしているもの、あるいはどうしても捨てることが出来ない業のようなものを、象徴してくれるように思います。、、、、、あの頃、私は、海に投げ捨ててしまいたい、何か貴重なものを心に抱えていたのかもしれません。、、、、そう考えると、もしかしたら、ゾフィーにとっての過去もそのような存在だったのかもしれないと、今、思えてきます。単に忌まわしいのではなく、それが自分とどこか一体化しているというか、、、、、。そうであれば、あの放り投げられたシャンパングラスは映画の結末を暗示していたのでしょう。、、、、単にホロコーストをテーマとした映画ではなかったと、今になって思うのです。 8点(2004-07-09 09:25:22) |
168. ダントン
ずいぶん昔に、岩波ホールで見ました。その時思ったのは、どうしてこの映画の題名は、「ロベスピエール」ではなくて、「ダントン」なのだろう、ということでした。ロベスピエールという権力者の苦悩の方が、生き生きと、説得力をもって表現され、「ダントン」は、単純ナイーブ、無責任、文句ばっか野郎にも受け取れたからです。、、、、、、それでも敢えて自由を高唱するダントンを評価しよう、どんなに苦悩していても権力者は権力者なのだ、というのがワイダのメッセージなのだと暫定的な解釈を与えてきたのですが、、、、、、、、、、それからずっと、もう一度見て考えてみたいと、新しいビデオ屋に行くと探すことにしているのですが、、、、、不幸にしてまだ巡り会えず、今日に至っている次第です。 7点(2004-07-06 11:24:02) |
169. ロックよ、静かに流れよ
もう10年以上前でしょうか、数人の知人と、酒を飲みながら、それぞれが推薦する映画をビデオ屋で借りてきて見ようではないか、という会を行いました。私が用意したのが、この「ロックよ~」でした。見ながら、私は涙をこらえるべく、がぶがぶ酒を飲んでいたのですが、ふと見ると知人達は、、、寝ていました、、、、、、、、、。私の好みでは、70年代の青春映画、といわれたら、「八月の濡れた砂」を、そして80年代の青春映画としては、この「ロックよ~」を推したいです。、、、、、、、岡本君や前田君がいま、上手に年をとったおじさんとして、もっとブラウン管(←ちと古い表現)に登場してくれたら、岡本君達の間で流れた15年と、見ている自分の中で流れた15年が重なり合って、もっと味わい深くなるのになぁ、、、。 7点(2004-07-05 19:27:08) |
170. 父よ
淡々としていて、途中で寝てしまいそうな作品。しかし、見終えた後、何か重たいものが残り、また、つまらないと思えたシーンが妙に記憶に残る。あぁ、これがフランス映画の伝統なのですね、、、、。 7点(2004-07-02 09:45:48) |
171. エリン・ブロコビッチ
映像としては、面白くないと思います。、、、、、しかし、公害被害者の無表情な演技をみていると、なんかrealityがあって、さすがアメリカの映画界の人的資源は滅茶滅茶豊富なのだなぁと感じさせ、、、、、また、500万ドル賠償金をせしめただの、ボーナスを200万ドルもらったのだのがハッピーエンド的に描かれているのをみると、それを幸福な結末と受け取るアメリカ的感性に、少しぎょっとしたり、、、、、またアメリカの市民生活の中で、法システムがどのような位置を占めているか納得させられたり、、、、、要するに、映画としてはつまらないのですが、社会学的素材としては、非常に興味深いものだと思います。 5点(2004-07-01 07:59:21)(良:3票) |
172. 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
映画というよりは、バラエティですよね。、、、、スマスマとか、めちゃイケみたいな。 3点(2004-06-27 16:13:33) |
173. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
前半部分の、着想と音楽と映像が素晴らしいですね。、、、見た後、何日かして、ふと田舎の親父の声が聴きたくなって電話をしてしまいました。トトにとってアルフレートは父親ですものね。そんな気にさせてくれたというだけで、見てよかった。、、、、、、、、、、ただ、火事からアルフレートを救い出す場面から、なんか、もつと違う、もっと想像力豊かな展開があり得るのではないかという気持ちが、少しずつ強くなっていったことも確かです。、、、だって、小学校に行くかいかないかの子供が、大の大人をあんなに引きずれるとは思えないし、あれがなくったって、火事の後の後の話の展開は、あのままで理解できるし、、、、、。映画館だって、別にアメリカ風に爆破して取り壊す必要はないだろうし、、、、そう考えてくると、アルフレートが残したフィルムも、そこにどういうメッセージが込められているのか、今少し、しっくりこないのです。、、それに、神父の検閲フィルムは映画館と共に焼けた筈ですし、トトのコレクションも映像になるほど長いものではなかったし、そもそも目の見えないアルフレートがどうやってあのフィルムを編集したのだろうとも思っちゃうじゃないですか、、。結局、トトとアルフレート以外、生き生きとして存在感のある役どころがないというのが最大の難点なのかもしれません。 8点(2004-06-26 12:59:22)(良:1票) |
174. 十二人の怒れる男(1957)
映画学の教科書があるなら、第一ページで参照されるべき作品だと思います。「映画というと、どうしても目を奪う映像に関心が向きがちであるが、土台となるのは、やはり言葉のやりとり、展開なのだ、、、ほにゃらら、、」みたいな文脈で。、、、、そして政治学の入門書でも、参考とすべき映画として、まずあげられてもよいでしょう。民主主義とはどのようなものかを考える素材として。、、、、素晴らしいのは、人が異なる意見をぶつけ合い、議論する過程で、納得すれば自分の誤りを認めて意見を修正し、合意を形成してゆく過程が生き生きと描かれていることです。これは、ギリシアからの民主主義の伝統といえるのではないでしょうか。そして、この映画の主役は、言葉だ、といっても過言ではないと思います。、、、、、、いやほんと、この頃のアメリカ映画というのは凄い!!!!、、、この映画は、とてもヨーロッパではできないのではと思えてしまいますし、アメリカ社会の強さの秘密を明らかにしているとも考えられます。、、、、、、、、、ただし、その集団の一員なら何も感じなくなってしまうのかもしれませんが、集団の外に身を置いて想像してみると、手放しでは賞賛しにくいですよね。なんか洗いざらい話して、みんなで一つの意見にまとまらなきゃいけないみたいで、、、、。ある意味で宗教的というか、、、、。それにこの映画の場合、ふと気づくと、全員、白人で男ばかりだし。、、、、民主主義にはグロテスクなところもあるのだ、ということで、満点にするのは控えました。 9点(2004-06-25 10:56:25) |
175. キリング・フィールド
本当は望ましいことではないのでしょうけど、映像としての完成度ではなく、扱った題材だけで、高い評価を与えたいのです。、、、、、ユダヤ人迫害を描いた映像は、数多くあります。しかし、ポルポトの虐殺をテーマとする映像はどれだけあるのでしょう。、、、、1970年代の半ば、大阪万博も札幌五輪もとっくに終わり、長島が引退し、キャンディーズもそろそろ引退しようという、そんな頃ですよ、、、わずかの間に100万人もの人が、、、しかもアメリカ政府も中国政府も、ちゃんと知っていて、傍観、或いは支援したなんて、、、、、。ユダヤ人迫害の歴史は絶対に忘れてはならないことですが、残念なことに、今、そうした映像は、シャロンの蛮行に荷担する機能を果たしかねません。それに、イスラエルでユダヤ人の強権的支配が確立すれば、イエスが再臨すると本気で信じているキリスト教徒が何十万、或いはそれ以上もアメリカにいるなんて、、、、、。ムーア君でも誰でもいいから、シャロンの蛮行を告発する映像を作ってくださいっ。お願いしますっ。、、、、、、あれっ、本題と離れてしまった。ごめんなさい。 9点(2004-06-19 22:13:07) |
176. Wの悲劇
《ネタバレ》 もう一度見直してみて、思いました。いやぁ、実によくできている。・・・・最初の20-30分は退屈ですが、パトロンの腹上死あたりから、身代わりになる芝居の筋と、本編の筋が重なってきて、テンポも良くなってきます。・・・・・・居酒屋のシーンなど、かなりの長まわしも幾度か使っています。・・・・それと、ホテルの部屋の窓ガラスに薬師丸の顔を映して、実際とは違う自分を演技していることを象徴させるところが二度ほどあります。・・・・・・・最後のジャンプのシーンもいいですね。届かない天井のポスターは、実現しなかった夢を象徴しているのでしょうか。これも薬師丸というアイドルがかわいげにやるから、わざとらしくなく、実に自然にできています。・・・・・全体として、私たちの日常が、演技を軸として成立していることを鮮やかに示してくれました。また、朝の講演野外劇場、渋谷方面の都会の情景などなど、バブルの前の都会の情景をしっとりと伝えてくれます。・・・・・・・・・梨本まで出してきて、、、顔をおおった蜷川さんはわらっているのでしょうか、、、、娯楽性を保ちながら、ほんとによくできています。それに、アイドル映画というのは、それなりの内容がある場合、時間を経過してから見ると、その時代をよく引きずっていて、その時代には見えなかったものが色々と見え始めてきて、なかなか味わいが深くなるものですね。 [映画館(邦画)] 10点(2004-06-17 13:02:12) |
177. 風の谷のナウシカ
ずっと好きな映画でしたし、90年代半ばまで、自室の壁にはナウシカのピンナップをはっていました。------夏、クーラーのガンガンきいた部屋で、高電力消費・大画面テレビで、ナウシカを見る、、、、????、、、最近は、問題の解決は、こういう強さではなく、もう少し別の方にあるのではないか、などとふと思います。 8点(2004-06-17 12:46:30) |
178. 戦場のピアニスト
見飽きることのない、よく整った作品だと思います。、、、、、ただ、見終えて、何か素直に感動できないものが残るのです。、、、どうしてだろう。、、、、前半で最も印象的だったのは、集められた広場で父親がビスケットか何かを家族に切り分けるシーンです。それが家族にとって、いわば最後の晩餐であり、戦争と迫害で、何が失われてゆくのかを痛切に感じさせてくれました。、、、、、しかし、その家族について、その先は映像として触れられていません。シュピルマン氏が、家族をどのように思い、どう追悼したのかが描かれないと、どこか綺麗に話しが完結した感じがしないように感じられます、、、、、、。それとどうしてドイツ人将校が、ショパンを弾くユダヤ系ポーランド人を救おうという気になったのか、それもしっくりきませんでした。、、、、、ショパンといえばポーランドナショナリズムの象徴といっても良い存在です。あの緊張した場面で弾きはじめる嬰ハ短調ノクターンは、ポーランドの人達にとっては、国歌にもきこえるのではないでしょうか。、、、、それをどうしてドイツ人将校が許すのか。、、、ドイツ人将校の命乞いのシーンを重ねると、何か、ポーランドナショナリズムの勝利宣言にも受け取れてしまうのです。、、、、、、、、というか、監督や制作者に、ナチスとそれに荷担した人達を、絶対に許さない、という強い意志があり、その攻撃的な強い意志に、どこか同感できない部分が私にあるのかもしれません。 7点(2004-06-15 10:24:12) |
179. ラスト サムライ
横浜の街、笑みを売る花魁など、極めて印象的な映像が幾つかあった。全体のストーリー自体は薄っぺらく、そこに再現された歴史上の日本には違和感を覚えざるをえない。しかし、異文化のフィルターを通して示された過去の像を見つつ、「ふーむ」と思って考えてみると、自分達も伝統的に造られたフィルターを通じて過去を見ているのであって、その像が実物そのものなのではないと気付かせてくれる。(日本の時代劇に、もっと映像的な想像力があれば、取るに足らない映画になるのですが、、、、) 7点(2004-06-14 10:21:48) |
180. 12人の優しい日本人
原作でヘンリー・フォンダは、Let's talk moreほにゃらら、と冷静に理性的に語ります。そして、その一言が、原作のいわばライトモチーフになっていたように思います。本作で、相島さんは、女性的で、やや甲高い声で、「はなしましょ、ねえ、もっとはなしましょう、ほにゃらら」と切り出します。この場面で、どっと笑いが上がるなら、本作は成功なのだと思います。で、どうなんでしょう?????、、、、、芝居小屋なら十分にその可能性はあると思いますが、この映画でそれが可能なのだろうか????、、、、、、鼻血の場面も、芝居小屋でなら、抱腹絶倒ですよね。、、、、、、、笑いながら、ふと我に返ってみて、話すことを通じて合意を形成することの意味、真実とは藪の中にあるものではないかなど教えがすぅっと理解される。、、、、、、そうなったら本当に大成功です。、、、、で、出だしの映像のタッチが、「桜の園」じゃないですか。この映像だと、素直に笑いに入っていけない感じなんですよねえ。「桜の園」が好きだっただけに、、、。ということでこんな点にしてしまいました。 5点(2004-06-13 11:05:02)(笑:2票) |