1801. ロスト・チルドレン
《ネタバレ》 初期のジャン・ピエール・ジュネの、その独特の映像美といつかは醒めると分かっている悪夢のようなストーリーは、若干荒削りさが目立つけれど、それでも十分に魅力的。良いですね、この湿潤でありながらどこか乾いた世界観、特に毒を注入するように訓練されたノミと、少女の流した涙が流れ流れてその少女を救うというところはとてもわくわくさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-12 17:15:41) |
1802. サマーウォーズ
《ネタバレ》 80年代に大量に作られた、ドタバタラブコメの現代版のような映画。やはり新しいのは、そのネット上の世界を表すシャープでポップな映像美だろう。現実とネットの世界がシンクロし、夏休みに訪れた田舎の裏山と世界の危機が同時進行で収斂されていく演出は確かに見事だった。ただ、その余りに童貞中高生が夢見そうなラブコメ世界は、個人的に辟易させられてしまったのでこの点数。 [DVD(字幕)] 6点(2012-08-12 11:00:21) |
1803. コンテイジョン
《ネタバレ》 丁寧に作られたパンデミック・スリラー映画。豪華な俳優人の抑えた演技が緊迫度を増していて、ソダーバーグの手堅い演出が光っている。映画が始まってから約二時間、緊張の糸が途切れないのがすごい。ただ、それが余りにも優等生なつくりに仕上がっていて、幾分物足りないようにも感じる。この群像劇のなかにもっと一人くらい人間的な壊れたキャラクターが欲しかった。監督が過去に撮った傑作「トラフィック」に出てくる、子供のために麻薬を売り捌く母親のような。 [DVD(字幕)] 6点(2012-08-12 10:49:28)(良:1票) |
1804. グリーン・ランタン
《ネタバレ》 なーんにも期待しないで観たせいか、そこそこ楽しめた。これまで手堅いアクション映画を手掛けてきたマーティン・キャンベル監督らしく、今作もまぁ突っ込みどころは多いけれど二時間飽きずに楽しめる。宇宙規模の大戦争と、いけてない科学者の横恋慕を同列に扱うのはさすがにどうかと思うけど。 [DVD(字幕)] 6点(2012-07-29 17:10:16) |
1805. ヒア アフター
さすがにイーストウッドも年を取ってしまったのか、死を変に神秘主義的に描き出したどちらかというと退屈な作品。これまでのイーストウッド作品は、その重厚なテーマをなるだけ宗教色を排除して描くところが魅力だったのだけど、これはちょっと宗教色が濃すぎてげんなりしてしまう。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-26 16:12:01) |
1806. グラン・トリノ
《ネタバレ》 妻に先立たれ、孤独を紛らわすために酒に溺れ、それが原因で家族から疎んじられると、ますます自分の殻へと引きこもり、そしてさらに酒に溺れてしまうという人生の終盤で悪循環に陥ってしまったイーストウッド演じる偏屈で頑固者の嫌な爺さん。そんな彼の自宅の隣に、アジア系の家族が引っ越してきたことから始まるヒューマンストーリー。ともすれば説教臭くなったり、建前だけの薄っぺらい映画になりがちな題材なのに、そこはさすがイーストウッド。どんなにゴミのような人間にだって、いつかは輝くような日が訪れるかもしれない。老い先短い命と引き換えに、偏屈な爺さんはささやかな決断を下し、そして最後は素晴らしいものを少年に遺すことが出来た。それがグラン・トリノだけではないことは、もちろん少年が一番よく分かっている。淡々としながら深く、静かでありながら熱い、慈愛に満ちた良作。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-26 16:07:16) |
1807. チェンジリング(2008)
子供を奪われた母親が陥っていく地獄のような世界を重厚に描き出している。見事なまでに女優魂を見せたアンジーが、そんな苛烈な現実を乗り越えようとする母の愛情を鬼気迫るような演技で表現している。そんな彼女を支えてくれたものは、ただ息子と会いたいという希望。人間の生きる力強さが、神々しいまでに胸に迫る。 [DVD(字幕)] 7点(2012-07-26 15:57:54) |
1808. 硫黄島からの手紙
かつての敵国人であるイーストウッドが、戦時下の日本人を変に美化するでも逆に貶めるわけでもなく、極めて中立的に描写することで日本人監督とはまた違った客観的なメンタリティを描きだしている。良い部分も悪い部分も含めて、誰もが愛する人が住む祖国を守るために戦っていたのだという、そんな当たり前のことを思い出させてくれたイーストウッドにただ感謝するばかり。 [DVD(字幕)] 7点(2012-07-26 15:48:24) |
1809. 父親たちの星条旗
あの有名な写真の裏に隠された真実を巡る戦争映画なんだけど、後半はその後、復員してからの生活に焦点が移る。そのせいかテーマがぶれてしまったような印象をもった。姉妹編の「硫黄島からの手紙」との関連性もいまひとつ感じられず、イーストウッド作品としてはあまり出来は良くなかった。「手紙」のために作られた試作品といった印象。 [DVD(字幕)] 4点(2012-07-26 15:41:18) |
1810. ミリオンダラー・ベイビー
《ネタバレ》 どうしようもない貧困家庭に育ち、出口の見えない閉塞状況をひたすら這いずり回るように生きてきたマギー。そんな八方ふさがりの自分の人生から必死に這い上がろうと、彼女は偶然出合った老トレーナー・フランキーと共に女子ボクシングの世界でチャンスを掴もうとする。だが、彼女を待ち受ける現実はどこまでも苛烈で残酷だった。前半の絵に描いたようなサクセスストーリーから一転、物語はひたすら奈落に突き落とすかのように陰鬱な展開へと突き進んでいく。多様な解釈が可能な本作のなかで、もっとも重要なテーマは恐らく〝神の不在〟だろう。神なき現代社会において、人にとって〝赦し〟とはなんであるのか。極限の苦難に苦しむ彼女のために、血反吐を吐くほどの懊悩を重ねたフランキーは、最後、彼女が望んだ〝赦し〟という名の罪を犯す。神の定めた倫理に背いてまで、罪を背負う決心をした彼の決断は、永遠に答えなど出ない深い問題を僕らの心に突きつけてくる。正直、重たい作品で観終わったあとの絶望感は半端じゃないけど、それでも現代という不確かな時代に生きる者なら、一度は観ておくべき、イーストウッドの傑作だ。だからといって、カップルで観るとかは、止めといたほうがいいだろうけど(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-26 15:34:45) |
1811. トゥルー・クライム(1999)
手堅く作られた、社会派サスペンス。イーストウッド監督作品としては、珍しくエンタメ要素の強い作品なので、比較的気軽に楽しめる。最後は少々ご都合主義に過ぎるきらいもあるが、最後まで緊張感を持って観ることができる良作。 [DVD(字幕)] 6点(2012-07-26 15:15:08) |
1812. パーフェクト・ワールド
《ネタバレ》 冷酷無比な脱獄犯に誘拐された少年、アメリカののどかな田舎の風景の中で2人はただひたすら無軌道な逃亡の旅を続けてゆく。社会から脱落したどうしようない犯罪者であるケビン・コスナー演じる主人公だが、次第にその少年にとって一生忘れられないであろう大切なことを教えてくれる。だが、彼は凶悪な犯罪者として射殺される。どんな人間も、人によっては大切な人になれるという、いかにもイーストウッドらしい深いテーマをもった作品。冒頭からループする、ケビン・コスナーの最期の満足気な死顔がとても印象深い余韻を残してくれます。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-26 15:11:33) |
1813. ウィンターズ・ボーン
確かに一人の少女が過酷な状況のなか、必死に生きる姿を変に美化することもなく淡々と描くところは好感が持てる。その背景として閑散とした冬の地方社会が象徴的に描かれ、ほとんど効果音のない演出方法と相まって独特の雰囲気を醸成している。しかしこれは好みの問題でもあるのだけれど、いかんせん展開がたるい。個人的には、一人の少女の力強い生命力のようなものを、もっとエネルギッシュに描いてほしかった。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-26 15:03:26) |
1814. クロエ(2009)
《ネタバレ》 普通に旦那と寝たという証拠を求めていれば、そもそも起こらなかった話。主人公が頭悪すぎて、どうにもつまらない。そんな女に惹かれてしまうクロエの存在もあまりに説得力がない。最後も取ってつけたようなオチで興醒め。どうでもいいけど、今さらおばさん(ジュリアン・ムーア)のおっぱいは見たくない。 [DVD(字幕)] 3点(2012-07-14 21:31:03)(良:1票) |
1815. BIUTIFUL ビューティフル(2010)
《ネタバレ》 二時間半という長い物語なのに、その悲惨なあまり幸せとはいえない環境にめげず必死に生きる人々のエネルギーを生々しく描くことで、一気に見せきる監督の手腕はさすが。でも、ちょっと神秘主義に流れすぎているのではないか? [DVD(字幕)] 6点(2012-07-14 21:25:31) |
1816. メメント
《ネタバレ》 傑作「インセプション」を生みだしたノーラン監督の出世作。この作品でも、ちゃんと後に開花するテーマが十分に横溢している。自分が認識する世界が本当にちゃんと信頼できるのかという主題が、とても実験的な手法で描かれているのに、ちゃんと娯楽作品としてよく出来ている。 [DVD(字幕)] 7点(2012-07-07 22:33:31) |
1817. プレステージ(2006)
《ネタバレ》 うーん、なんだか設定に無理があるような……。瞬間移動のマジックをやりたいがためにノーベル賞級の発明をした主人公に、そのライバルの種は「実は双子でした」ってのはどうなんでしょうか?? [DVD(字幕)] 6点(2012-07-07 22:23:14) |
1818. インセプション
《ネタバレ》 これは面白い!!自分が認識する世界はどこまで信頼できるのだろうという、「われ思うゆえにわれあり」のような極めて哲学的なテーマを扱いながら、超一級の娯楽作品としても成功している凄い映画だった。人の夢の中へと入り込み、その人が将来、考えつくであろうアイデアを盗むことを生業としているディカプリオ演じる主人公コブ。恐らく映画でしか表現しえないだろう、そんな設定を最大限活かして、クリストファー・ノーラン監督は今まで誰も観たことがなかった世界を見事に映像化してみせた。第一層から第三層まであり、それぞれが全く違う世界で下に行けば行くほど時間の進み方も全く違ってくるという複雑な人間の深層心理の中を、コブたちはどんどんと奥深くへと沈み込んでいく。それを徹底的にスタイリッシュに、しかもアクション映画としても一級の迫力をも備えた映像で描き出す手腕は見事としか言いようがない。そこへ絡んでくる、コブ自身の亡き妻を巡る哀しい思い出もまた切なくて良い。そして最後、コマが止まるのかどうか、その寸前で終わるという、最高に格好良いラスト!!「このまま、コマが止まるかどうか?それを信じるのは君たちしだいなんだよ」観終えたあと、あまりの格好良さにしばらく痺れてしまったよ!! [DVD(字幕)] 10点(2012-07-07 22:16:32) |
1819. ファンタスティック Mr.FOX
《ネタバレ》 全体を覆う雰囲気は良いのだけど、展開が幾分か単調なため少々退屈な映画になってしまっている。それと暖かみのあるクレイアニメーションとシュールな世界観がいまいちマッチしていないような印象もあって、それほど乗り切れなかった。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-04 04:30:07) |
1820. シャンハイ(2010)
《ネタバレ》 第二次大戦前夜の様々な国の陰謀渦巻く上海を舞台にした、濃厚な政治ドラマ。という個人的に好きなテーマの映画なのだが、いまいち乗り切れなかった。やはりこの手の映画は、政治八割・恋愛二割くらいがちょうど良い配分だと思うのだけど、恋愛の比重が幾分か多すぎてバランスが悪くなってしまっている。豪華な俳優陣だけに残念な作品だった。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-04 04:25:31) |