1. プロミシング・ヤング・ウーマン
《ネタバレ》 客観的にこの作品で正しいのは「証拠がなければ罰しない」という学部長?の一言だけなので、主人公が逆切れ前提で暴走している前半も、何やってんの、としか思わない。で、それは制作側も意識したのか、動画という第一級の証拠が登場するんだけど、7年間もそんなものがなぜ都合よく保存されていたのかとか、むしろ当時の調査手続でそれを(みんな持っていたはずなのに)誰も提供しなかったことの方が問題だろうとか、そっちの方が気になってしまう。●ただし、それとは別に、脚本の水準は一級品であり、復讐ゴリゴリで進むのかと思いきや途中で止めてしまうとか、ここぞというところで全面逆襲を食らうとか、トリッキーな部分の切れ味はかなりのもの。また、いろんな場面をばっさり省略する押し引きの手際にも好感が持てます。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2025-06-08 02:23:51)★《新規》★ |
2. ミナリ
《ネタバレ》 ある家族がどこかに移住して、そこで苦労したり失敗したりいろいろあって…という作品はこれまでにも多数あるが、その範囲内を出るものではありませんでした。おばあちゃんが途中から登場しますが、特に際立った何かがあったわけでもありません(花札とか面白いアイテムなのに、何でもっと使いこなさなかったのかな)。教会が再三登場するのも、あまり上手く絡んでいません。結局、一番インパクトがあったのって、最初の「何もないただの箱であるトレーラーハウス」の姿だったりして。 [DVD(字幕)] 5点(2025-06-07 01:38:14)★《新規》★ |
3. 櫻の園(1990)
《ネタバレ》 導入部はごちゃごちゃした女子高生トークが繰り広げられるだけだったのですが、各人物の個性が際立ってくる中盤から、ぐいぐい面白くなってきました。杉山と倉田が双極的に存在感を発揮して主役の(一見地味な)志水の内面を引っ張り出すという、理想的な形が築かれていますね。終盤、舞台用のメイクや衣装で、最初の制服とは別人集団が形成されていくのも、絵面として良い感じです。ただし、火災報知器ネタは不要だったと思うし、また、この作品のポイントは、いろんなところを想像に委ねている点にあるので(職員会議でどうのこうのとか)、杉山の友人3人組の登場も、いらなかったんじゃないかな。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-06-06 00:37:06)《新規》 |
4. 富士山頂(1970)
《ネタバレ》 撮り方は間違いなく誠実なのです。まず、工事ありきで始まるのではなく、大蔵省との予算取り折衝や発注説明会などのステップもきちんと描いています。いざ現場の準備に入ったら、とてつもないロケを駆使して、「ただ荷物を上げるだけ」がどれほど大変なのかということを存分に感じさせます。作業は黙々と行われ、余計な台詞もありません。裕ちゃんも勝新も、作為的に出番を作ることもなく、あくまでも「その中の一人」に徹していますし、それが逆に大自然の壮大さと課題の困難さを裏付けています。ですが、そのストイックさというか禁欲性のままに終わってしまったので(完成後のそれぞれの扱いがやたらそっけないところに顕著)、結局は超優秀な再現ドキュメンタリーにとどまったという気もします。この辺のバランスのとり方は本当に難しいですね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-06-05 00:21:59)《新規》 |
5. ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償
一つ一つのシーンには間違いなく迫力と重量感があるのに、一方で妙に細切れで、また視点もやたらぶれているという困った作品。本来は潜入者に軸足があるはずなのだが、その割にはその特殊極まりない立場や行動に関する葛藤とか恐怖があまり感じられず(FBI関係者と堂々と何度も会っているのも不思議)、一方で描写としては全体的なハンプトンや党の歴史を語ろうとしているようにも見える。カルーヤの存在感に、かなり助けられているのではないかと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-30 01:36:29) |
6. ファーザー
《ネタバレ》 認知症者の視線から作品を本当に作ってしまうという驚くべきコンセプト、そして主演にホプキンスを充てるという必殺技によって、すでに成功は約束されたようなものである。しかし、設定に溺れることなく、美術その他の画面構成を含めて丁寧に場面を積み重ねている。終盤には、さすがに拡散してきたかな?と一瞬思わないではないが、しかし、最後の病室のくだりが、強烈にストーリーを締めくくっている。そしていつしか、単に主人公がこうでしたというだけではなくて、制作側の主人公に対する静かな愛情まで感じさせていくのです。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-29 00:46:19) |
7. 未亡人、回る春
《ネタバレ》 エマニュエル・ベアール扮する未亡人が、若き男性と恋に落ちる!みたいな紹介文に思わず期待したのですが、そこまでの内容ではありませんでした。まずまともそうな男性と出会いの機会はあるも、そこはあっさり撤退してしまう。一方で乱交みたいな男女集団とか、なぜか出会い系サイトにまで手を出してしまって、しかも後者では前のめりに突っ込んでしまう。一貫性がないのはいいのですが、必然性がありません。つまり、制作側が思いついたシチュエーションを単に並べただけに見えてしまいます。ベアールのシニア的色っぽさは(特に地味目のメイクや衣装のときほど)悪くなかったので、何とも活用の仕切れなさだけが残りました。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-27 23:49:06) |
8. 荒野に生きる
《ネタバレ》 狩猟民の一団が旅をする中で、ある者が熊に襲われて動けなくなり、隊長から見捨てられ、しかし奇跡的な復活を遂げて復讐に向かう・・・って、これ、イニャリトゥ/ディカプリオの「レヴェナント」そのままでは?と思っていたら、何とモデルは同一でした。こんな先行作品があったんですね。こちらは、凝った撮影テクニックなどはないものの、それだけに手作り感の生々しさがあります。序盤などは、話の性質上、主人公はひたすらじっと倒れているか、のたうち回っているかなのですが、その動きのなさを凌駕するほどのじっと湧き出る迫力があります。中盤以降は今度は追いかけるだけなのですが、そこにも一本の筋があります。ただ、途中から先住民の襲撃というのもあるのですが、これとの関係は今ひとつ整理されていなくて、クライマックスになるはずの部分も、両者が重複して物語のパワーが削ぎ落とされている気はします。ラストは急に純朴にまとまってしまうのですが、これはこの時代の作品ならでは、かも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-05-26 23:13:12) |
9. フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
《ネタバレ》 いや、これ、躾がなってない我が儘な悪たれ児童と、躾ができないモラルレス親の生活を、何で延々と見せられ続けなければならんの?としか思えませんでした。生活が困窮しているから?いや、そのことと礼節や道徳とは別ですよ。通常だったら敵役の流れになるはずの児童家庭局の人たちが正義の味方に見えてしまう時点で、何かがずれているのではないでしょうか。もっともその局の人たちも、対象児童の迅速な確保という一番の基本的任務ができていない無能集団ではあるわけですが。 [DVD(字幕)] 2点(2025-05-24 01:09:05) |
10. ラブレター(1945)
《ネタバレ》 導入部でいきなり手紙の代筆云々から始まって、おおこれは「シラノ」系の正統派ラブロマンスか、と期待させる。しかし、中盤からは一気に記憶喪失方面に重心がシフトして、さあ主人公はどうする、という方向に集約されてしまう。これはこれで出来が良いものの、手紙の記憶自体がないんだったらそれを巡る心理の綾もそもそもないわけで、せっかくの初期設定が生かしきれなかったのではと思います。さらに登場人物の混乱は加速していき、終盤はほとんどサスペンス映画の趣です。まあ、すべては最後にあのハッピーな着地をさせるためであり、その強引さは悪くないのですけどね。 [DVD(字幕)] 6点(2025-05-20 01:56:00) |
11. ビューティフル(2009)
《ネタバレ》 どうということのない住宅街に、隣家の挑発的な少女、不審な謎の家、そこにずっといる女性、と不穏な要素がじわじわと示されていく。この辺の、日常生活の範囲内にじわっと浮き出てくるスリルはなかなかでした。後半はそれを踏まえていろいろ行動が開始されるのですが、結局最後は、拡げた世界を畳みきれなくて、ありがち方面に逃げてしまった感じ。トリック的なオチの一幕についても、伏線もなければ必然性もなく、あまり機能していませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-19 00:46:28) |
12. 懲役太郎 まむしの兄弟
《ネタバレ》 主人公2人が兄弟分ということであれこれやっていくのですが、とにかく徹底しているのは、この2人の脳内空っぽぶりというか、何も考えてなさというか、理性的判断がおよそゼロだということです。佐藤友美宅で最後に弟分が襲いかかるくだりなんて、誰も描こうとしないようなあまりの単細胞ぶりにクラクラします。しかし、敵方に何度叩かれてもしつこく食い下がる執念深さ(と生命力)だけは一流で、それがタイトルにもある呼称につながっていくわけですね。その辺でふと気づくと、この2人は常にペアルックであるのが、局所的に微妙にスタイリッシュ(?)で、ちょっと笑えます。あと、彫の光景にきちんと時間をとっているのは、なかなかポイントが高いと言えます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-05-18 01:59:01) |
13. スペースポリス
宇宙人がハンバーガーショップを足がかりに地球征服を企む、という馬鹿馬鹿しい設定は一応魅力的なのですが、中身は何もありませんでした。ただの殴り書きかと思う脚本のスカスカさからどうしようもないのですが、全体で統一されている映像の汚さにもびっくり。この人たち、作っていて何かまずいと思わなかったんだろうか・・・。 [DVD(邦画)] 1点(2025-05-17 01:51:39) |
14. 心の指紋
《ネタバレ》 普段ありえない取り合わせの2人が、なぜか連れ立って逃避行、というと類作がいろいろあるわけですが、通り一遍の内容には陥っていない。まず、脱獄囚の方が、人格は粗暴でありながら見た目は童顔で(さすがに「まだ子供」はちょっと無理があるが)、しかも癌が進行中で体力も奪われつつあるという、問題の発生源でありながら逆に「おい大丈夫か?」と心配になってしまう設定。それが展開の先を見えなくするというスリリングな効果ももたらしています。また、エピソードとしても、後半で現れる謎のおばさん、目的地に着いたら実はそこは目的でも何でもなかった一幕、など、ナバホ関係地を舞台としてフルに使っています。一方で、肝心の主人公の医者は終盤までほとんど変化がなくて、芝居も押され気味だったりしますが。家族とか同僚とかの周辺人物も、ただいたというだけで、あまり活用されていませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-05-14 00:44:19) |
15. 大怪獣ガメラ
ガメラをどういう怪獣にしたいのかも分からないし(性能面においても内面においても)、それに対峙する人間側は、作戦も何もあったものではない。だから、戦闘映画にそもそもなっていない。価値があるとすれば、左卜全さんが登場していることと、浜村純さんに割と出番が多かったことと、吉田義夫さんが目立つ役で出ていること(最初だけですが)くらいかなあ・・・。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2025-05-12 21:26:54) |
16. ビューティフル(2007)
《ネタバレ》 ヒロインがストーカー(だけではない)被害に遭って、さあどうなる、というお話です。なぜかこの人には、知人だろうが通りすがりだろうが、接する男が次から次へと迫ってきます。前半は、その点に絞った一直線ぶりになかなか迫力があり、特に、路上で倒れたヒロインに通行人の男が続々と寄ってくるくだりなどは、じわじわと世界が浸食される不気味さがあります。後半は、段々と人格が危うくなっていく描写にシフトするのですが、これはこれで一貫しているものの、全体としては、収拾がつかない方向に進んでしまったかなあ。前半のような、一般生活にさらっと紛れ込んでいる恐怖感みたいなものを、もっと見たかったところでした。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-11 23:41:55) |
17. 木枯し紋次郎
《ネタバレ》 さて、どれだけニヒルでクールな紋次郎が大活躍するのか、と思って見始めたら、いきなり三宅島流刑から始まる。しかもそこから延々展開されるサバイバルでアドベンチャーな光景の数々。何か別の作品を見ているのではないか、との疑問が湧き上がることしきりでした。中盤でやっとこさ島抜けが成功し、一般の時代劇っぽくなってきますが、前半とのギャップは埋めようがありませんでした。あと、ヒロインが江波杏子というのは曲者感満載で、全部自力で解決できそうな雰囲気すら漂っていて、どう見てもあんなに一途で真摯な人物像には合ってないような気がするのですが・・・。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2025-05-10 17:47:22) |
18. カモン カモン
《ネタバレ》 ホアキン扮する主人公が、出先の各地に甥っ子を同行させる。のはいいんだが、そこで話が終わっている。全体の進行は、主人公が本業のインタビューを行うか、甥とあれこれやりとりをするか、姉に頼りない電話をするかのどれかです。その繰り返しです。何も変わってないはずなのに、最後はなぜかハッピーになっています。ホアキンも結局、どう演技していいか分かんなかったんじゃないのかなあ。子役との演技も、あまりかみ合ってなさそうだったし。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-05-03 01:14:58) |
19. 幼な子われらに生まれ
《ネタバレ》 単に、それぞれ離婚した男女(すでに子あり)が再婚しました、という設定だけなのに、そこから生まれる心理の綾をどこまでも追求している。よって、先が読めないし、どこまでもじわっとした重みに覆われている。そのまま破綻なくまとめ上げた腕は見事でした。特に、一個のぬいぐるみで長女の世界が反転するあのシーンには唸りました。実の父の中では今でも自分はそこで止まっていることを容赦なく思い知らされ、埋めようのないギャップを突きつけられ、現実に引き戻される。それを台詞なしで表現しきっています。●ただし、全体としては、キーパーソン的役割が段々と長女に集中し、ややバランスを欠いていたかも。逆に、実娘や寺島しのぶとの関係は、もう少しいろいろ見たかったところでした。あと、田中麗奈はメイクが妙に若くて、40歳(という作中設定)には見えませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-05-02 00:35:48) |
20. 世界にひとつの金メダル
《ネタバレ》 1988年のソウル・オリンピック馬術で金メダルを獲得したピエール・デュラン選手の伝記作品です。導入部からずっと、ただ筋を追っているだけのように見えていたのですが、結局最後までそれはさほど変わりませんでした。つまり、大会で勝った、負けた、その結果どうなった・・・が続いているだけなのです。途中である登場人物が主人公に対し「競技の話をしているだけで、馬と対話していない」と述べるくだりがありますが、もしかしてそれはこの制作者にもそのまま言えるのでは、と思ってしまいました。あと、いろんな国際大会での上位を目指している割には、ライバル国とかライバル選手が全然出てこないのも不思議です。まあ、馬術そのものをじっくり見る機会はこれまでなかったので、次から次へとその光景が見られることに関しては、その部分は楽しめはします。 [DVD(字幕)] 5点(2025-05-01 00:57:04) |