1. 女は二度決断する
《ネタバレ》 ダイアンクルーガー、本作に関して言えば、素晴らしい俳優。今まであまりご縁が無かったのであくまでも本作についてです。クールで芯が通った強い女性像は、ジョディフォスターを思わせる。似てはいないけど。 普通の幸せな家族が巻き込まれた悪夢のような事件。一生のうちに一番言われたくない言葉「DNA鑑定で身元の確認を。」もう泣き崩れるしかない。そして「あなたがちゃんとみてればあの子は…」これもきつい。 度々ドキュメンタリーのような撮り方の映像をはさみ、視聴者にまるで実話のように見せ、感情移入させる。 ネオナチやギリシャの極右団体など日本人にはあまりピンと来ないが、サムライのタトゥーを入れた主人公カティヤの魂の物語であることは痛いほど伝わった。 重たい題材を106分にまとめられたのは、全く無駄のないストーリーテリングだったから。多くの事は法廷で語られる形式をとり、犠牲になった家族の遺体など一切出さず、法廷での証言で聞かされる残酷な死因と現場の状況。それをただ黙って聞くしかないカティヤは、込み上げる悲しみと怒りで気が狂いそうになる。 凶器となった爆弾のことも法廷でレクチャー、彼女が元々エンジニア系が得意な点もさり気なく伝えられている。 彼女は決断したが、一度目は断念した。小鳥のせいか。 家族で行った海でのホームビデオを繰り返し見返すカティヤ。「ママもおいでよ」と言う夫と子供のセリフ。 事件以降ストレスで止まっていた生理が、来る。自分の信念と関係なく、時の経過は心と体を徐々に癒そうとしている。控訴して、このまま前向きに立ち直ることも出来るかもしれない、もう私は大丈夫かもしれないと正気を取り戻したうえでの「二度目の決断」だったんだと思う。誰も救われない、やるせない結末。それがテロなんだ。 [インターネット(字幕)] 9点(2025-01-30 18:07:49) |
2. レディ・バード
《ネタバレ》 故郷(田舎、ダサい)=母親(ウザい)。その呪縛から逃れるために、高校生は都会の大学に進学を希望する。そこで特段やりたい事があるわけでもないのに。これ凄くよく分かる。自分がまさにそれだったから。そして親元離れてその有難さに気づき、あろうことか郷土愛まで芽生え、パッとしないイケてない名前すら、自分の身の丈に合った程よい普通さにホッとする。心当たりあるわ~。 17歳とは、自分が思ってるより子供で、大人が思ってるより大人。そんな年頃だってのは全世界共通なのかもだけど、アメリカの土地勘や経済感覚はピンとこないので、そういう面が全て共感できるかって言うと難しい。でもそれは残念ながら観る側の問題なので仕方ないとする。 この世の終わりかと思うような身の回りの出来事も、自分はなんて不幸なんだろうと悲劇のヒロインに陥るときも、過ぎてしまえば何てことない。今は平凡な日常が送れている事をありがたく思う。そう言えば「有難い」とは、めったにない貴重なこと、って意味なんだな~としみじみ。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-12-09 14:25:22) |
3. スパイダーマン:スパイダーバース
《ネタバレ》 アニメの技術って凄い。MCUの実写作品に真っ向から勝負している。まあ実写映画と言っても大半はCGなので、アニメみたいなものだけど。もう全部これでいいじゃんというくらい映像は素晴らしい。で、そこにコミック寄りの表現が加わり、実写との差別化も出来てる。ただ多くの皆さんが言うとおり、主人公に魅力が無いというのは否めない。みんな大好きピーターパーカーを退けておいて跡継ぎがこの子?と物足りなさ、認めたくない気持ちが発動するのはごもっとも。しかしスパイダーマンというヒーローが目指すのは親愛なる隣人であるし、ピーターパーカーとはどこにでもいるごく普通の、無個性な少年の代名詞なのだから、この段階では問題ないと言える。そしてこの頼りない新人ヒーローを支えるのが、異次元でスパイダーマンとして活動している個性的なキャラクター達だからバランスが取れてるように思う。まさにマルチバースの考え方はアニメとも相性が良く、スパーダーマンノーウェイホームもしこたま感動させられたけど、こちらの方が先にやっていたんだな。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-19 10:58:38) |
4. The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
《ネタバレ》 南北戦争下において、南部にある森の中の女学園。そこは園長をリーダーとして統率が取られていた。そこに若い男が迷い込んだら。その時自然界で生態系が崩れるかのような現象が起こった。それまで敬虔な集団として行動していた女たちが、それぞれに男に興味を抱き、色めき立ち、欲情を押さえきれなくなる。次に嫉妬やマウント、承認欲求など、女の悪い癖が目立ってくる。7人の女は大人から子供まで、小奇麗な身なりで上品な立ち居振る舞いをしているのだが、女の強い業やずる賢さ、意地汚さのようなものが内側から現れている。女優たちの演技と巧みなカメラワーク、暗い部屋にろうそくの炎などの演出がそれを表現している。 ある事が切っ掛けで狂暴化した男を前に、再び女たちは統率を取り男を排除する。外来種を排除し、自然界が元どおりに浄化されるように。 学園を取り囲む深い森は、外部からの侵入を許さない隔離された聖域のように、神秘的で美しかった。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-26 16:09:55) |
5. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 面白い。想像していたものと違っていたが、良かったと思う。世の中舐め腐ったお子ちゃまたちが、悪知恵だけを駆使して難関受験を集団で乗り切る、みたいなのかと勝手に思っていた。タイ映画というのも観たことないし、あまり期待していなかったんだけど、これも想像を反して洗練された作品でした。 悪知恵といってもカンニングペーパー持ち込むとかそんな小賢しい作戦ではなく、主人公の勉強頭脳に全て掛かっている、というもの。ピアノコードにバーコード、スタイリッシュなカンニング大作戦は、そうやすやすとは行きません。涼しげな顔した天才少女が、冷や汗を滲ませ、鉛筆で嘔吐と、なかなかヒリヒリさせられる。しかしカンニングだけに終わらず、協力者の男子も紆余曲折あったりでストーリーを盛り上げる。バカップルや他の生徒も善良ではないが憎めなかったりするので、なぜかハラハラしながらもこの犯罪を応援している自分。たかが高校生のカンニングが、ここまで立派なクライムサスペンスに仕上がるとは想像以上でした。お父さんが最初から最後まで間違ってなかったのも、本作の良心として光っていた。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-21 14:48:47)(良:1票) |
6. ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
《ネタバレ》 高校生の頃の自分が人生のピークで、当時のダチを無理やり集めて、5人で昔やり残した伝説の「パブ巡り」完走を目指す。主人公ゲイリーだけが昔のまんまのテンションで、でもそんな彼がなぜそこまでパブ完走にこだわるのか。仲間たちを我が子のように可愛がっていた母が死んだことが引き金?と思ったら、死んだというのは嘘だった。別の奴からのいじめがトラウマのピーターに「過去の心の傷を治さないと、後々良くない」とか意味深な言葉をかけたりする。何?何か隠している?余命が短い?友人たちの目に自分の存在を残して去ろうと?それとも過去の自分と決別して友人たちとの関係を再構築しようとか? そんなヒューマニズムな展開を予想した私がバカでした。冒頭に出たまま、ただのアル中だった。そして完全にSFコメディだった。エドガー・ライト監督を知らなかったもので。勉強して出直します。 いきなりのトイレでバトルは凄い。ガシャーンて、陶器?首や肩関節の接続部分も単純な凹凸。青いし。面白いじゃないか。WTFってビジネス用語じゃないので要注意。青いロボットと、ロボットに支配されてる非ロボットの代名詞を考えようとか、メタボのアンディが強すぎるところも面白かった。戦いながらどうしてもビールを飲みたいゲイリーもかっこよかった。そのくらいです。ラストは全然良くない。結局何がしたかったんだか。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-08-20 15:21:20) |
7. KUBO/クボ 二本の弦の秘密
《ネタバレ》 ストップモーションアニメであることを忘れてしまうくらい、CGアニメと見分けがつかないくらい高いクオリティですね。それでいて3Dでいいじゃんと思わせない味のある画面。その技術で日本の文化を不自然でなく上手に紹介し、「日本の夏」が持つ独特の哀愁までも表現している所に感嘆します。それが自然過ぎるんで観てる最中はこれといって感じられないほど、堂に入っちゃってる。そういうところがいろいろもったいない作品なんだと思う。 お話はよくある少年の冒険譚です。特殊能力を持って、重たい運命を背負わされ、果たすべき使命を与えられます。出自は謎が多く、悪に魂を売った身内が敵として少年を阻みます。ラスボスは、ハリーポッターの「あの人」レイフファインズ。そんなありがちなアドベンチャーをやっといて、落としどころは日本の夏、つまり「お盆文化」。不死の体を求めて怪物になることより、人間のまま死んでいく。死者は子孫たちから物語として語られることによって、永遠の命を与えられる。 メキシコの死者の祭り、欧米のイースター、日本のお盆。亡くなった人を思い出してひと時を過ごすという考えは共通している。つまり、思い出す人がいる限り、人の命は永遠という考え方。人々の温かい心が全てを救うというラストも良かった。 余談。なんでクワガタ?てなるけど、ほら彼らは日本の夏のヒーローでしょ。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-15 13:07:00)(良:1票) |
8. 世界にひとつのプレイブック
《ネタバレ》 共に心を病んだ男女が出会い、繰り広げる会話では互いに傷つけ合いながらも、その会話が知らず知らずのうちにセラピーの役割みたいになっているという。発病スイッチがいずれも結婚相手の喪失だったので、何だかんだあっても分かり合えたのは自然の流れでしょう。都合よく自分を安全な位置に置こうとするのも人間の本質としては、有りなのだから。 まともじゃない主人公の二人を囲む周りの「まとも」なはずの人たちが、実はそれぞれがみんなクレイジー。そしてラストは全員のそれぞれの思惑を強引に一まとめにしての、ダンス大会本番。目標点ジャストゲットで大歓喜は、出来過ぎてるけど素直に感動しました。ベタでいいです。結果が大切。 ジェニファーローレンスはいろんな役が出来る素晴らしい俳優だと思う。このまま真面目に映画演技を続けて行けばメリルストリープみたいな大女優になる素質がありましょう。オッパイ女優ではない(NGワードか?)。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-07 10:49:49) |
9. アリー/スター誕生
《ネタバレ》 シンガーソングライターの若きボスキャラアイコン、キャラの塊レディガガが、冒頭ではそのオーラを極力OFFして、普通の女の子に見えてるのが凄い。その対比に「大物スター」ブラッドリークーパー。まあ良しとしよう。「古い生き方は葬ろう」カッコいいじゃないか。この時点で二人とも絶妙に役に合っている。キャスティングは間違ってない。ガガはどんどんガガになっていく。ブラッドリーは本当にアル中のヤク中みたいだ。芸能界においての逆転は痛くて、授賞式は無様で、嫉妬し八つ当たりし、心の距離は離れたり縮まったり。それは全て夫ジャックの病気のせいなのだが、父や兄との関係なども語られ、とても気の毒な男だという事が分かる。夫婦の物語であり、一人の男の生涯の物語であり、夢を叶えたがその代償に最も大切なものを失った女の物語。ガガの力強い歌唱がぐいぐい入り込んでくる。素晴らしい歌声にホロリ。自分、音楽劇には弱いのです。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-08-02 14:22:13) |
10. LOGAN ローガン
《ネタバレ》 旧三部作やファーストジェネレーションまでがこのシリーズのピークで、かっこいいX-MENを観たいだけなら、この作品はやめといたほうがいいです。しかし過酷な運命を背負わされた孤高の人、ジェームス・ハウレット通称ウルヴァリンの末路を見届けない訳にはいかないのです。見るには相当の覚悟がいるのです。 この時間軸では、またもや辛い役回りの彼は、最後のジェダイならぬ最後のミュータントみたいな存在で、不老不死と思われていた彼でもやっぱり老いて、追われています。一緒に暮らすプロフェッサーはアルツハイマーで、地球上で最も危険な脳を自分で制御できないありさま。ミュータントあるあるみたいで、リアリティを感じます。子供にそんな事さすなよという目を覆いたくなるシーンが辛いけど、映画でほとんど描かれなかった少年期を間接的に見ているようにも思えます。不死身で生き続けることに疲れいつかは自ら命を絶とうとしていたウルヴァリンは、自分のクローンによって殺される。常に孤独と戦ってきて、その最期に初めて、親子の愛情という普通の人間が抱くごく当たり前の感情を知ることになる。「ああ、こういう感じか」と。温かいけどものすごく悲しい、ウルヴァリンの生きざまそのもののような作品になってました。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-23 17:39:44) |
11. X-MEN:フューチャー&パスト
《ネタバレ》 タイムリープ、からの二つ目の時間軸発生。マルチバースをX-MENシリーズに取り入れた記念すべき分岐点の作品。X-MENZEROにてウルヴァリンが200年ぐらい同じ外見であることが発表され、その能力を利用して精神タイムリープをさせて最悪の現在を正す、なんて巧いこと考えるもんです。その時代ではエグゼビアがたまたまクソ野郎になってたようで、未来の自分に説教されるところとか面白いし、時間は不変で何やっても変わらない、という説も、その説教のお陰で急に前向きなプロフェッサーになる。SFにご都合主義は必須です。いいんです。ピエトロ・ピーター・マキシモス、ここに出てたか。実は一番強いんじゃない? [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-22 16:09:45) |
12. デッドプール2
《ネタバレ》 前作でX-MEN入会を拒否ってたのに、あっさり「見習い」として加入。え? と思ったら勝手に私製チームの面接をして、ポンコツチームXフォースを結成。おバカ多めだけど、きっちり目的を達成し、すっかりファミリー。ヴァネッサと再会するシーンは感動。これ以上何を求めましょう。あとは「X-MEN ZERO」「フューチャー&パスト」「LOGAN」を復習すればいいのかな。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-19 11:19:30) |
13. デッドプール
《ネタバレ》 X‐MENシリーズ好きなのにまだ観てなかったので、近日公開の&ウルヴァリンを観るために鑑賞。いやー、意外にツボりました。面白かった。 主人公のウェインは元々普通の人間で、ミュータントでもなければヒーローでもない。自分より悪い奴を懲らしめて金をもらってるだけの人間。そう、人間だけど、金のためとは言え彼によって救われた者は、彼の事を「ヒーロー」と言う。そんな男がミュータントに改造され、戦う。それは世のためでもなければ金のためでもない。自分の顔を取り戻すため、恋人のため。そして最終的には復讐と復縁。全然ヒーローじゃない。ミュータントは能力を生かしてチームに入ればヒーロー。入らなければ、ただの変わり者。2観なきゃ、まだ何も語れないな。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-07-15 11:45:50) |
14. 君の名は。(2016)
《ネタバレ》 いわゆるボーイミーツガールものです。このボーイとガールは互いが中身と外身という状態で出会っていて、外身と外身はなかなか会うことが出来ない。どこの誰かも分からない。お前は誰だ?不思議な出会いに興味がそそられない訳がない。 スマホが頻繫に出てくるのに使うのはメモアプリだけで通話はしないとかね、ツッコミどころも挙がりますが、そもそも人と人が入れ替わるって現象が有り得ん話なんだから、細かいところは目をつむりましょう。 寝てるときに観る「夢」って、ほんとこれ自分の想像力でこんな複雑な物語が!?て思うことがある。登場人物は第一人称の「自分」が自分とは似ても似つかない人間で、何か警告めいたストーリーの時もある。そして目覚めてから数分、いや数十秒で記憶から抜け落ちてゆく。その感覚がこの作品の根底にあるとすれば、序盤はあくまで夢の中だけで交流し合う二人という設定でも十分だとも思うが、週に2~3回のペースで実際に入れ替わっている。その方がエモーショナルだけより刺激的で面白いっちゃ面白い。 で、単なるボーイミーツガールの恋物語かと思いきや、このガールは神社の巫女の血筋で、たぶん何百年も前から変えられない彗星落下災害から町民を救うべく、代々備わった能力を駆使してきたという壮大なスケールのお話だったというわけです。私が寝てる間に無意識にひねり出しているストーリーとは訳が違う(当たり前)。脱帽です。ラストもいい。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-07-01 13:46:29) |
15. 人魚の眠る家
《ネタバレ》 原作読後の鑑賞です。映画では母とマッドサイエンティストの狂気が悪目立ちしてる。もちろん原作の方もそのように読者をリードしている部分もあるが、考えるべきは家族が(特に子供などが突然に)脳死という状態に陥った時の事。事故で突然動けなくなった我が子が死んだか死んでないのか、それは脳死判定を行えばほぼ確定される状況なのに、その「判定テスト」は、臓器提供を表明しないと実行されないというルール。逆説でしか「死」を受け入れない日本の法律がおかしいのではないかという問題提起を、本作は前提レベルでスルーし、家族の話と狂気の部分をクローズアップして描いている。まあそれはそれでよい。そのレベルでのストーリーテリングで描こうというのならそれでもまあ良い。少しでも脳死を考える材料にはなっているから。 動かない幼子を中心に、登場人物はそれぞれの立場でものを言う。「あの子は生きている。まだ死んでなんかない」「自分の体を使って生活した方が生きる喜びを感じる」「延命措置は虚しい行為なのではないか」「技術の進歩にも超えてはならない一線がある」どれも間違ってない。個人の意見だ。 でもこんなに難しい問題を、個人が選ぶ権利として当事者に丸投げしている法律がやっぱり一番の問題。そしてこんな曖昧な法律の下、今後技術の進歩と倫理観はどう折り合いを付けていくのか。法律、政治、医学や技術開発が調和を取って、例えば政治では止められない人口減少の問題なども考えなくてはならない時代なのだろうと、原作を読んだときはそんな事まで考えてしまった。映画の方は、役者の演技はそれぞれとても良く、だからこそ単に悲しく切ない物語に留まってしまったように思う。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-06-28 14:04:20) |
16. シェフ 三ツ星フードトラック始めました
インスタの料理動画みたいだなと思っていたら、やはりSNSがサブテーマのように使われていた。今時だけど、だからこそもう何年かしたら古臭く感じちゃうのかな。ストーリーは順調過ぎて物足りなかった。悪い人が出て来ない。ダスティンホフマンだって「ストーンズのライブでサティスファクションが聴けなかったら客は満足するか?」というもっともな考えを持つオーナーだし、元妻も理解者でめちゃめちゃ綺麗。人気料理評論家にSNSで酷評されて傷ついたって言われてもねぇ。素直な子供と明るい大人、ラテンの音楽が全てかな。あとは、アイアンマンメイトがチョイ役で観られるところ。美味しいものは美味しい、良いものは良い、という単純な理論は納得だ。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-06-07 12:36:00) |
17. ラ・ラ・ランド
《ネタバレ》 ミュージカルがちの人と苦手の人、両方が厳しい見方をする作品。確かにミュージカル映画とは言ってますが、ジーンケリーと比べちゃかわいそう。あちらは筋金入りですから。こちらのミュージカルパートはあくまでも、二人にとって「夢を追う」姿の象徴的存在で、脳内妄想の範ちゅうを超えてないレベルです。現実はもっと厳しいもので、ぶつかり合い、すれ違い、傷つけ合い、ハッピーなミュージカルのようにはいかない。カラフルな色使いのロマンチックなラブストーリーは非現実。夢を見ることは非現実的だけど、夢のためにやりたくない仕事をして、妥協して、挫折するのは現実。この矛盾の狭間に生きるのが夢追い人。ミュージカルという不条理にはぴったりな題材だと思う。 二人はそれぞれ夢を叶えることが出来たけど、何て切ないラストでしょう。あの走馬灯はどちらの脳内を走ったものなんだろう。あるいは二人の脳裏に同時に現れたものだとしても、二人は別々の道に戻っていくのです。あー、切ない。 良くも悪くもこちらのレビューのようにみんなが自分の人生観や恋愛観、映画愛、ミュージカル愛を自由に語り合ってもまだまだ語ることがありそうな作品であることは確か。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-13 15:01:27)(良:1票) |
18. 20センチュリー・ウーマン
《ネタバレ》 それぞれみんな色んな事情があって、色んな価値観や好みがあって、時代もどんどん変わっていく。でも親子の愛は変わってはならないもの。そして価値観や好みの違いも一旦受け入れて、うん、何かいいかもってなったら、ちょっとハッピーじゃないですか。 登場人物は主に5人。母と息子と2人の女子とおっさん。男2人はまあ置いといて。メインは女たちです。原題は複数形なので。母は子離れできない重たい女でもあるけど、それを自分で分かってて、普遍的なものと変化していくものを自然に選別できる、知性と柔軟性のある女性。なかなか複雑で素敵な人物です。他2人の女性もそれぞれ自分を持った強い女性なんだけど、みんな互いに優しい。そこが良い。息子は幸せもんだ。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-04-10 17:48:31)(良:1票) |
19. アメリカン・ハッスル
実話を基にした詐欺師ものなので、どうしてもその騙しの行方を追いかけて「うーん、そういう事件があったのか」と自分の知識向上を求めたくもなるが、途中からあきらめた。これ人間を楽しむ方のやつだって。うん、とっても楽しめた。出演者全員良かった。この手の作品でも、各々の思いとか、思い通りにならない辛さとか、しっかり人間味を表現することを諦めてない感じ、巧いと思う。デニーロ出てきてからは、更に囮捜査の緊迫感も加わって、最後まで楽しめました。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-03-06 11:51:10) |
20. きみはいい子
《ネタバレ》 ストレスがストレスを産むストレス社会。やってはいけない事がどんどん増えていって、この世はもうストレス飽和状態。生きずらい世の中だから他人に関わらないようにするしかない。こんな事をずっとやっていて、それでいつ平和が訪れるのでしょうか。「親が子供を抱きしめて、ポンポンて優しくする。そうされた子供は親の真似をして他者に優しくなる。親が子供を可愛がれば世界は平和になる。親って凄い仕事だよ。」というようなセリフがあったけど、まさにそれに尽きると思う。ミクロがマクロを作り上げる平和の基本理論だ。3本のエピソードをがっつり絡ませるでもなく微妙に絡ませ、全体的に、というか最終的に子育ての意義を見つめ直すきっかけとなる、まとまった作品だった。中でも池脇千鶴演じるガサツで愚鈍なママ友の役どころが素晴らしかった。最初は背景に溶け込んでしまいそうなさり気ない演技で脇役に徹してた池脇さん、またその演出が凄い。最後は全部持って行った。ラストの岡野先生がどうなったのかが気になるが、虐待父に立ち向かう勇気を見せたのは確かだ。まずはその勇気が大切なんだ。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-02-25 17:04:53) |