1. ビール・ストリートの恋人たち
《ネタバレ》 これは令和になって最初に観たやつ 嫁の休日出勤中に一人シャッター街のミニシアターで鑑賞。何というか殺伐とした設定でありながら甘いあまいテイストでした。映画の舞台は70年代ってことなんだけど、50〜60年代に盛り上がった公民権運動の名残りとかブラックパンサーの興隆する躍動感とかベトナム終戦後の影とかディスコ文化とか、そういった匂いはあまり感じませんでした。別に時代考証の憲兵するつもりはないのですが、なんかそういうとこあんまり重視してないのかななんてね。なんか韓流ドラマのノリみたいな感じ受けたんですよ。80〜90年代に観た黒人社会関連作品、スパイク・リーとかマリオ・ヴァン・ピープルズの作品てもっとドライでタイトな感じだったように思うから。ま、女性目線なのかな。ラブシーンも心なしかソフト。自己満全開で一方的な男性ぽい撮り方はしてない気がする。ピストン少なめ。それと、個人的に注目したのは白人男性から黒人女性が性的対象として見られていることに対する不快感というか恐怖感の表明(香水売り場でのテイスティング?のとこね)。あの感じはタランティーノのジャンゴでもあったけど、こっちの方がより女性の受ける感じ方を前面に出していて、今まで無視され隠されていたものがいよいよ白日の下に晒されたように思いました。私が今まで気づいてなかっただけかも知んないけどね。うんそう 、書いてて思ったけど全体の演出が男性とは異質な別のものに感じました。レイプ被害者のプエルトリカンに会いに行く下りもグダグダな感じだし、結局最後まで冤罪を晴らすでもなくズルズルいくから短気な男性的にはイラつかせる流れなんだけど、女性的にはありなのかな。今回は嫁と観てないから意見聞けなくてわかんないけど。でも男性からの評価は低そうな感じ。それをもって駄作とは思いませんが、うーんなんだろ、昨今のポリコレとかMeTooとかの影響でマイノリティに関わる表現の仕方に制約が出来てしまっているのでなければいいなと思います。 [映画館(字幕)] 5点(2019-05-14 21:07:53) |
2. グリーンブック
《ネタバレ》 嫁とシネコンのレイトショーで鑑賞。アメリカの公民権運動の時代が好みのテーマなので私の趣味に合わせてもらいました。うん、悪くなかったのですが、小綺麗というかなんか期待の手前くらいまでで終わっちゃう感じでですね。さわやかな友情モノというか、デート終わって門限までに玄関前に乗り付けてノータッチのままおやすみなさいみたいなね。思えば80年代から90年代にかけて何本か観てきた黒人社会やそれを含めたアメリカ社会を描いた作品、あれらに比べれば本当に軽い薄い味気ない印象です。50年代から60年代にかけての公民権運動の時代を実体験した世代が居なくなってしまったからなのか、昨今のポリコレによる自主規制なのか。ドンは黒人らしくない白人好みの黒人だし、トニーも下流の白人ながら優等生的な素直さで偏見をなくしてゆき、そして芽生える美しい友情…。いや実話がベースってことだし、一応南部社会の理不尽な差別・暴力や黒人社会の下衆い部分にも触れてましたが、全体的に「きれいなジャイアン」のような印象でなんだか素直に入って来ませんでした。こういうのが最近の流行りで作品賞とか取っちゃうんだ、どうなったんだアメリカ?てか、私が年老いただけなのか。 ま、悪くはないんですよ。 [映画館(字幕)] 6点(2019-05-14 09:57:18)(良:1票) |
3. 運び屋
平日のシネコンにて9:20からの回を鑑賞。貸切と思いきや意外に10人以上いたかな。うーんイーストウッド老けたな〜88歳か。志ん生の落語聞きに行ってるわけじゃないんだから、やっぱここは点数辛くなるわな。体力なくなったかな、なんかあっさりしてるんだ。掘り下げない、ひねらない、暴力描写もさらりとしてる。まあでも老人らしさっていうか、淡々とマイペースを崩さず何かあってもアクションじゃなく機知で切り抜ける、なかなか「やるなあ」ってのは感じる。老人相手だからかな、密売組織の若衆もなんだかんだいいながら親切なもんだ。そういう演出なの? イーストウッド監督作だからって期待すると肩透かし食らう。それなり良い映画なんだけどね。 [映画館(字幕)] 6点(2019-05-02 21:31:09) |
4. こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
《ネタバレ》 土曜の16:50からの回で、他に客も居ず嫁と2人ど真ん中のシートでワイワイ話しながら鑑賞(マナー良くない客)。 いきなり掴みから俺様かます鹿野さん(大泉洋)とキレる美咲(高畑充希)。まるでラブコメの王道じゃないか。 しかし状況としては生命予後的に極めてシリアス。教科書的には寿命20歳くらいまでのはず。だけど命を担保にして、ウンコを漏らしながらも自立を自由を人間らしさを求め人生を爆走する鹿野さん。…ふと思い起こせば三十数年前、人文法経済の合同校舎に貼り出されていたボランティア募集の文言にあった「私たちは何かしてもらったからって感謝はしない」「私たちは対等だ」云々、(うろ覚えだけど)インパクト強烈だった。おんもしろい募集だなぁ〜っとは思ったものの、当時バイトと麻雀と酒で忙しくて、ろくに講義に出る暇もなかった(まあバブル前の平均的な)学生のわたくし、スルーしてました。あれが障害者自立生活運動の走りだったんだなって今にして思う。語弊があるかもですが、「差別ハンターイ!」と連呼する市民団体の皆さんに車椅子を押してもらいながら行進することより、欲望全開で「バナナ食わなきゃ寝れねぇ〜」ってボランティア相手にわがままを通すこの生き方のほうが、反感買うだろうけど人の心揺さぶる。ただみんなが同じこと始めたら収拾つかない。大人しい羊の群れがいてこそ成り立つ。だから本当はもっと良いかたちがあるのかもです。 しかし美咲のキャラはちょっと古臭い感じがしたな(個人の感想です)。というか『おじさんが想像する理想の女の子』的な、なんか都合よく使われてる感じがしましたよっと。 [映画館(邦画)] 7点(2019-05-02 13:47:19) |
5. カメラを止めるな!
《ネタバレ》 夏休みとったのに嫁と休みが合わず、1人職場近くのシネコンにて鑑賞。ワンカット長回しがあるよってそこだけは聞いてたのね。したら、冒頭からべろーんって微妙に自主映画臭い長回しが、ありゃーなんか変な間とか唐突な展開とか同じアングルが妙に続くとか画面ブレるなとか、えぇぇぇこんなのがいいの?って、まあハズレ引いたかな的な諦めみたいなものが頭をよぎり、One Cut of the Deadのタイトルが流れる…っていうとこまでがまあ伏線なのね。そっからよ、お父さん監督大活躍!なんか、中島らも原作の『お父さんのバックドロップ』をちょっと思い出しました。早い、安い、品質そこそこなんて言ってたくせに、走り回るなんか力強い、情熱的な、そしてやっぱり好きなんだな映画。娘の真央さんも、はじめは空回りしてる熱血バカだったのが(まあみんな、多かれ少なかれ若い頃はこうだったよね)、どんどん居場所にフィットしてはまってく。ああ、お父さんの血なんだなって、みててうるうるしちゃうよね。てか、観客巻き込んで一緒に映画撮ってる感あって、もうね、観終わってよっしゃ打ち上げいくぞ〜感半端ないよね。 …ただね、お母さんの扱いが軽すぎるかなって、そのへんはちょっと娘世代、母世代から減点されそうかも。 [映画館(邦画)] 9点(2018-09-14 17:37:12) |
6. 万引き家族
《ネタバレ》 リベラルな嫁の希望によりレイトショーで鑑賞。公開前の前評判に政権批判を絡めたようなものや逆に感情的に叩くようなものが散見されたので、どんなもんかなと少し引き気味に観に行きました。リリーさん、期待通りのクズ感出してていいなー。樹木希林さん、あえて入れ歯なしのババア感出してて、おお、ぐいぐいきてるな。安藤サクラさん、クソだらしない食い方喋り方、うんうん。ちゃんと最低なモノは最低として撮してる。暖かい、でも下品、無責任。家族ぽいけど、どこまでが血縁なのかな…と、なかなか種明かしはされないまま。コソ泥的な罪をいくつも重ねながら、でも『〜であるべき!』みたいな価値観の押し付けはなく、『まあ、いいじゃん』ていう刹那的空気が流れ、やがて来る破綻の予感。初枝(樹木)の死を見越したように、みんなで海に。そして初枝の死とともに様々なものが崩れていく。そう、祥太にはわかってた。この安らぎはいっときの逃げ場なだけ。その先には何もない。だからゆりまでコソ泥の仲間になんて出来ない。終わらせなきゃいけない家族だったんだ。 パンフにあったと思ったけど、これタイトルはあくまで仮だったはずで、監督は『声に出して呼んで』みたいなのにしたかったのにプロデューサーの希望で『万引〜』になったとか。なんか色々、映画作るのも大変だ。治(リリー)が「おとうさん」てよばれたかったって下りがあったけど甘いよなぁ。最後に祥太を見送ってバスを追いかける場面あったけど、引きずっててるのは治。祥太は未来を見てる。ほんとは会いに行っちゃいけないよ。そして祥太もゆりも普通の世界に戻っていく。 この映画について、作品の中身と乖離したようなレビューやらインタビューやら様々に垂れ流されていますが、私が見る限りそういうイデオロギー論争を喚起するような内容ではないかと思います。パルムドールって言われてもピンときませんが。うーむ、点数辛いかな。 [映画館(邦画)] 6点(2018-07-22 16:20:48)(笑:1票) |
7. 愛、アムール
《ネタバレ》 先に封切りの『ハッピーエンド』を観てしまい、後追いでレンタル。ついつい繰り返し鑑賞3度。観る程にずしんとくる。泣ける。冒頭はドライな現実、そして時間軸を大きく戻して事の始まりから。経済的にも文化的にも、愛情面でも満ち足りた豊かな老後。翳りの兆しは虚血発作、手術の失敗、右片麻痺、車椅子での在宅復帰。先行きの不安。アンヌからそれとなく何度か出されるサイン。終わらせたい。目を背け足搔くジョルジュ。介護する姿を周りは無責任に感動してみたり、高所から傍観して批判してみたり。やがてアンヌは人格も崩壊し負担は大きくのしかかってくる。介護に外部の力を頼ろうにも、所詮育った環境、教育や文化レベルが違う相手のそれは見当はずれ、ある面虐待ですらある。しかしもはや自分の手には負えなくなっていく。破綻は見えている。ジョルジュは諦めず、それ故に追い詰められる。それでも必死にもがき抗う。孤独。娘のエヴァはこのままじゃダメだと言う。それはわかる。ではどうさせたい。ホスピスに送りただ自分が安堵したいのか。それをアンヌは望まない。ジョルジュも受け入れられない。 相手を自らの手にかけることが愛なのではない。愛に追い詰められて、選んだ手段がそれ。愛は命よりも前にあるから(©️オリジナル・ラブかよ)。 終わりに、在りし日のアンヌの白日夢、食器を洗い終えコートを羽織り出掛ける2人。ふたりはずっと一緒。(この後『ハッピーエンド』に続く…のかな。) ハネケ映画だから心に痛い。でもこれは嫌な痛みじゃない。安っぽく音楽で盛り上げたりしないで、ただ淡々と紡がれていく物語。好きだ。 [DVD(字幕)] 9点(2018-05-04 13:47:35) |
8. スリー・ビルボード
《ネタバレ》 このところTwitterで読んで意識してきたこと。ひとつは、実社会は暴力が支配しているということ。もうひとつ、正しさは暴力の免罪符ではないということ。この映画を観ながらそのことを考えてました。レイプは暴力、さらに焼き殺してる。捜査が進まないことに対し名指しで看板を立てるのも、法律ギリギリを狙った暴力でしょう。署長が膵臓がんであることをわかってやってるなら尚更だ。紳士的で人格者なウィロビーの拳銃自殺は、それを周囲に見せつけることまで考えればまわりにとって暴力だ。ディクソンは幼稚で粗暴、コントロールできてない乱暴者。家を出て19歳と一緒になっちゃう元DV夫も乱暴だし、嫁の看板に放火するのは暴力。誤解とはいえ看板燃やされた腹いせに警察署に火炎瓶はないな。暴力が暴力を産む中、広告屋レッドのオレンジジュースで連鎖は止まる。ウィロビーの遺言もあってか、生まれ変わったようなディクソンは、もしかしたらいい警官になれたかもしれない。でも世の中そんなに甘くない。 暴力に対してただ単に無抵抗でいることは、消極的にとはいえそれを肯定することだ。だから泣き寝入りは論外。でも、変えられない状況を打開し抗議を示す行動は時として暴力となる。それは問題解決の手段としてベストじゃない。セカンドワーストかもしれない。暴力を重ねる愚かしさを許し合い、支え合って前に進む。 ラストでアイダホにドライブする2人は、どこかモヤモヤしたまま最後には思いとどまるのか。なんかそんな気がする。スッキリしないけどね。勧善懲悪のアクション映画よかこっちの方が現実的で余韻がある。 [映画館(字幕)] 6点(2018-04-15 14:53:40)(良:3票) |
9. シェイプ・オブ・ウォーター
《ネタバレ》 職場近くのシネコンのレイトショーで鑑賞。予告編のくたびれた感じのイライザに妙な色気を感じたもので。オープニングの水没した部屋は加藤久仁生監督の「つみきのいえ」を思い出しました。ファンタジー…っていうか、コミックを読む感じですね。全体的にカリカチュアライズされたキャラクター群。世の中がシンプルで暴力が今より容認されていた、ノスタルジックでいながら今見るとたしかにいびつなあの時代。時期としては少しズレてるかもだけど、「ブラックジャック」とかの手塚マンガに似てるなって思ったのよ。オナニーとか性交、血みどろのシーンもあったけど、それでもやっぱり手塚治虫な感じ。田中圭一ではなくて。目的はエロじゃない。人として繋がること、なのかな。ジャイルズよりもゼルダよりも、もっと強く、もっと近くに居たい。セックスは手段…だと思うんだけどねー。そもそも「話せない」「女性」が性的にアクティブであっちゃおかしいかな。あれは『私、生きてる!私は私のもの!』って叫んでたんだと思うよ。 それと、同じセックスでもストリックランド&嫁のセックスとイライザ&半魚人のセックスは見てて意味が全然違うのわかるよね。 でね、最後のシーン。半魚人…ていうか彼のヒーリング能力は、救いとか希望とかそんな感じ。バッドエンドではない、ハッピーエンドであってほしい、そんな希望をこめて。祈りなのかな。 [映画館(字幕)] 7点(2018-03-18 20:02:27)(良:2票) |
10. グレイテスト・ショーマン
《ネタバレ》 嫁と近所のシネコンで鑑賞。たまたまやってて時間潰しに入った感じ。期待してなくて、ミュージカルだからかストーリーもありがち展開してて、ああもうって、はじめは寝る気満々だったのね。でもフィリップ出てきてThe Other Side、ジェニー・リンドがNever Enough(圧倒!)、そして髭面レティのThis Is Me(パワフル!そして圧巻のモブダンス)。もうね、シートの肘掛握りしめて腰浮かせて半立ち。すごい高揚感。いゃーミュージカルってほんっとうにイイですねっっ‼︎て言いながら(故)水野晴郎に頬ずりしたくなるくらい。ダンスと音楽だけなら文句なし満点です。理屈っぽい嫁も黙って最後まで観てたし。 p.s. 翌週、嫁の出張中に再度レイトショーで鑑賞、やっぱいいなー。最初はストーリー部分の薄さが気になってたけど、2回目は適当に脳内補正して行間が埋まる感じでそれほど違和感無いかも。嫁に出先でOSTアルバム買ってもらいました。 [映画館(字幕)] 8点(2018-02-18 22:30:06)(良:1票) |
11. 未来を花束にして
《ネタバレ》 嫁に連れられ鑑賞。そのあとのスタバで正直な感想を言ってキレられ、論点ずらしてごまかしました。 ま、良作です。でも事前に英国の女性参政権の歴史について予習必要かな。いきなり暴力的なんだもん。なんだよ、テロ容認かよ、みたいな。ストーリーも編集カット多かったのかなんか飛び飛び感あります。最後のほうでバイオレットの娘を洗濯屋から外に連れ出してよそに紹介するとことかわけわかんない。なんか全体的に端折ってるようなイメージです。プロパガンダとは言わないまでも、何か政治的な主張をするための映画というの感じが強くて、『映画作品』的な印象が薄いです。てかさ、テロ礼讃でいいじゃん。既得権益者の集団をひっくり返すのは、やっぱテロだよ。そこ誤魔化すために歯切れ悪くなるんじゃかえってよくない。そのくらい追い詰められてたんだし。変にポリティカルコレクトネスにこだわってちゃ伝わらないよね。…って思ったの。 [映画館(字幕)] 5点(2017-03-20 19:54:52) |