1. ツバル
《ネタバレ》 どの登場人物も、とても愛らしく、個性的。役者、と言うよりは、本当にキャラクターと言う感じ。全編通して意外なほどコミカルで、なかなか笑えるシーンも多い。映像も、万華鏡を覗いているようにくるくる色調が変わって面白かった。ただ、この作品が一筋縄で行かないのは、盲目のおじいさんの存在。グレゴールに種明かしをされて、笑いながらテープを回したり止めたりして、亡くなってしまう。あそこからエンディングに続く流れ、新しいスタートに向かうときの希望だけではない、何とも言えない不安な気持ちになる。船から上がる黒い煙、夕日にも見える最後のショット。それでも、アントンとエヴァは双眼鏡を二人で覗き、船の心臓部にはおじいさんの象徴インペリアルの機械。3月といういい時期に観られてよかった、若さの讃歌。 9点(2004-03-20 10:12:00) |
2. ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ
《ネタバレ》 全体に漂う作為の匂い、作り物感には最後まで馴染めなかったが、その他は悪くなかった。構成も面白かった。ただ、ジャッキーの最後の台詞は、チェロ弾きの端くれとしてチェロを奪われたことの悲惨さのほうが感じられてしまって、あまり救いを感じられなかった。全編を取り巻く感情の描き方は見事。天才の孤独と、愛を求める気持ちが痛々しい。 8点(2004-03-12 20:15:53) |
3. ミュージック・オブ・ハート
《ネタバレ》 一緒に練習した仲間が死んだり、家庭の事情でやめなければならなくなったり、それから、旦那のことだったり、そういうものをラストの成功で全部放り出してしまっているのは、なかなかリアルだと思う。のだけれど、そこに至るまで、軌道に乗り始めたら希望一色で塗りつぶされてしまっていて、実話なのにご都合主義の匂いがしたのは否めない。メリル・ストリープ演じる先生のキャラクターにそれほど感情移入できなかったからかもしれないが。それと、編集の荒さが少し目立った。ただ、全員ちゃんと楽器を演奏していたのがいい。演奏は当てレコかもしれないが、手と音が合っているから、見ていて気持が良かった。 6点(2004-01-31 06:54:48)(良:1票) |
4. 時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!
《ネタバレ》 「ベルリン・天使の詩」の続編。「ベルリン~」同様、モノクロとカラーの入り交じる不思議な映像が魅力だが、壁のなくなったベルリンはより明るく、また全体的に「普通の映画」度が強くなったように思う。それでも、前作にあった詩的な雰囲気が全て失われたわけではない(薄くなったのは確かだが)。まわりの人間や時の流れの速さに圧倒され、図らずも悪と接近してしまうカシエルの葛藤が伝わってくるよう。最後に、ダミエルとマリオンを乗せたサーカスの船が霧のかかった川(独語でFluss)を下っていく。これは前作のダミエルの台詞にあった歴史の「流れ」(同じくFluss)、霧深いけれど、モノクロのこのシーン、天使は優しく見守っている。ちょっと長さを感じたけれど、「ベルリン~」を観た人だったら、観て損はないのでは。 7点(2004-01-13 19:10:27) |
5. ソナチネ(1993)
《ネタバレ》 これを観て、監督のバイク事故は、少なからず自殺を意識していたのではないか、と思ってしまった。疲れて、淋しくて、それでも弱音を吐く事の出来ない弱い男が、沖縄で幼稚な楽しい時を過ごす。「あんまり死ぬのが怖くなるとな、死にたくなっちゃうんだよ」と言う台詞に監督の気持ちが集約されている。死ぬのが怖いと思える幸福な気持ちのまま死にたい、と。女を残して自殺、なんて男の一方的なエゴであるが、エゴのない愛など薄っぺらなものだろう。心の中の深い部分でぐるぐると渦巻く心理的葛藤を、美しい画で描き出した名作。 9点(2003-12-31 10:35:55) |
6. HANA-BI
《ネタバレ》 邪魔なものを全て振り払って妻への愛に突き進む西刑事。妻子に逃げられ、感情のはけ口をひたすら絵に求め描き続ける堀部刑事。この二人の感情の流れが映像からばしばし伝わってくる、すごい映画。一方で愛する者(西夫妻の場合の子供、堀部刑事の場合の妻子)を失った悲しみが主調低音として流れる。そしてところどころに挿入される笑いの優しさ。驚くほど純粋な感情の映画。久石譲のメロディも、見事にマッチしている。エンディング曲はさながら二人へのレクイエムか。 10点(2003-11-05 19:03:05)(良:1票) |
7. ゴースト/ニューヨークの幻
《ネタバレ》 露骨な勧善懲悪と、ちょっとどぎついのは難だが、コインのシーンと乗り移ってダンスをするシーン、これだけで6点献上。あとの1点はギャグシーンに。全体的に、筋も分かりやすくてスッキリしている。最近のハリウッド映画のように、ムダにだらだら長いという事もない。なにより、あのCG、今のリアルすぎて気持ち悪いものと違い、味があって良かった。 7点(2003-08-24 17:30:02) |
8. あの夏、いちばん静かな海。
《ネタバレ》 台詞らしい台詞はほとんどなく、役者も決して上手くはない。それでもここまで引き付けられてしまうと言うのは、やはり監督の腕なのだと思う。ラスト近くで女の子が海へ向かって歩いていくシーン、きれいではないけど、美しい。あと、バス停のシーン、好きだなぁ。感動が押し寄せてくる、と言うより、さざ波のように静かに、サーッと何かが引いていくような感じがする。 音楽もなかなか。 9点(2003-08-15 00:08:07) |
9. 永遠と一日
《ネタバレ》 純粋に、映像、台詞、音楽の美しさに心を打たれ、映画に登場する多くの孤独な人間の翳のある美しさを素敵だと感じた。バスに乗り込んできた孤独な求道者たちが、何より印象に残る。最後にさす一瞬の光が切ない。 10点(2003-06-22 13:31:29) |
10. TAXi
なにより笑い飛ばすのに最適な映画です。あんまり深く考えてはいけませんね。つかみがいいので飽きません。ただカーチェイスはもうちょいスピード感が欲しいかなぁ。ジベール署長のキャラで+2点。 8点(2003-06-14 15:59:16) |
11. マトリックス
プロットは、SFとしてはありがちなものですね。その中に、「不思議の国のアリス」入れてみたり「白雪姫」入れてみたり聖書入れてみたり。さらに銃撃戦ありアクションありカンフーあり恋愛ありで、もうお腹いっぱい、という感じです。この作品のメッセージを伝えるのに、これだけ盛り沢山にする必要があっただろうか、というのが疑問。 さてVFXですが。やっぱりアニメーションの域を越えていないかなぁ、と。あえて意図してCG風に見せたシーンもあると思いますが、船に侵入してくるロボットなんかは、現実のはずなのに現実感がなくてちょっと興醒めです。ただ、ワイヤーアクションは楽しめました。「非現実」という設定で、それほど違和感もなく。 6点(2003-06-07 00:20:58) |