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1.  穴(1960) 《ネタバレ》 
潜望鏡や砂時計など面白いアイディアはあるものの、穴を掘っているシーンにおける演出が素晴らしいです。穴を掘るシーンも鉄柵を切るシーンもほとんど役者の表情を映さず、頑強なコンクリートや鉄柵を長回しで映し出す。男達はひたすらコンクリートを打ち砕き続ける!頑強なコンクリートはなかなか穴が開かない、それでも打ち続ける!ひたすら打ち続ける!穴が開くまで打ち続ける!音楽はなく、セリフもなく、静寂のなかに響き渡る無機質な破壊音、狭い空間に充満する男達の熱気、これらが作り上げる緊張感は半端じゃない。観ている側も囚人達の一人になった感覚で「開け!開け!開け!」と念じてしまうこと間違いなし!脱獄映画は数多くあるものの、緊張感ではこの映画に勝てるものはないです。そして衝撃のラスト・・・ガスパールを情けない奴だと思う気持ちはあるが、責める気にもなれない。彼のしたことを正しいとは言えないまでも、間違っているとは言い切れない、ただ自分の選択に対する重苦しい結果だけが圧し掛かってくる。「情けない奴だ」とジョーは言うが弁解したりすることは許されない、ガスパールにできることは無言で自分の選択に対する結果を引き受けることだけだ。生きていくとは決断することだとすれば、こういうことなのだろう。 
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-06-09 19:03:18)
2.  ローズマリーの赤ちゃん
ローズマリーの妄想の方が良かったかもしれないが、こういうラストもOKかなと。観ていてやり過ぎにならないか途中不安だったけど良く纏まっていると思います。特に赤ん坊の映像を見せてしまうのかとヒヤヒヤ、あそこで赤ん坊を見せたら全てが崩れるとこでした。そこは監督も解っていたのかミア・フォローの表情で恐怖を演出するあたりは監督・俳優ともにお見事!見せ過ぎるどこかのホラー映画とは違う! それにしても、赤ん坊の泣き声は耳に付いて離れない・・・「イレイザー・ヘッド」が妊婦の夫が観てはいけない映画なら、これは妊婦さんが観てはいけない映画かも。何にしても、不気味な赤ん坊という意味では双璧をなしてると思う。 
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-06-05 16:37:57)
3.  サムライ(1967)
「いぬ」に続きメルヴィル作品を観賞するのは2作目です。所々にハッとさせられるシーンがあるものの、ノワールな雰囲気を作り出すこと全力を傾けたせいか、ストーリー性は弱く、話のテンポが遅い・・・アラン・ドロンが、ほとんど喋らないのも陰鬱な雰囲気を出すためだと思うが、雰囲気が出るより物語の単調さ、淡白さを強調してしまっている気がする。それに、暗黒街を生き抜く殺し屋にしては、アラン・ドロンが漂わす甘さ、繊細さみたいなものに違和感ありでした。趣味の問題だと思うが、殺し屋はハードボイルドであってこそ殺し屋で、アラン・ドロンのような甘いソフトクリームには似合わない。ただ、アラン・ドロンはこの系列の映画に結構出演しているし、単にアラン・ドロンが苦手ってこと?
[ビデオ(字幕)] 4点(2005-05-30 02:20:05)
4.  いぬ 《ネタバレ》 
仏のフィルム・ノワールを代表する作品らしいですが、その肩書きは伊達じゃなかったです。長く伸びる人影、揺れ動く電球、黒い影で覆われた顔など明暗の使い方、気だるさと色気を感じさせる音楽など抜群の雰囲気で、それだけ観れてしまいますが、映画終了後にストーリーを振り返ると、これも一級品だったことが解りました。暗黒街にどっぷり浸かっており、無表情で感情を表に出さないシリアンだが、その仮面の下には、人に言ったら笑われるような一面を持っている。この両面を持っているあたりは、ハードボイルド風味で好きです。モーリスに真相を打ち明けるシーンでも無表情で事実を淡々と述べるだけで、友情を感じさせることはない。そんな彼が「ポンチエリの道で誰かが匿ってくれと言うだろう、助けてやろう」と言いブイサインをする。この時の一瞬微笑んだようなベルモンドの表情と仕種は大好きです!これが暗黒街に生きている今の彼にできる精一杯の表現なんだろうと思う。暗黒街を抜け出す寸前で彼は銃弾に倒れるが、抜け出していたらどんな表情をするんだろうかと想像すると、せつなさで胸が苦しくなります。アメリカ映画に比べると演出は抑え気味で、ストーリーもやや複雑なため合わない人もいると思うけど、個人的にはかなりお気に入り作品です。 
[DVD(字幕)] 9点(2005-05-24 02:14:37)(良:1票)
5.  椿三十郎(1962)
どこか出来すぎかなと思うけど、それほど気にならずに見れました。それもこれも椿三十郎のキャラクターのおかげでしょう。自分のことを悪者だと言ってのける室戸にある種共感し、評価さえしているあたりが三十郎の魅力ですねー。ここが「遠山の金さん」や「水戸黄門」との差でしょう。単なる善人ではなく、自分のやりたいことをやりたいようにやる、それがたまたま良い行いになっただけで、ひょっとすれば悪に加担する室戸のようになってしまうかもしれない。そんな野性味を持った三十郎は魅力的だけど、そのままでは社会には適応できないし、無理に適応させれば室戸のようになってしまうのかも…それを解っているから自ら去っていく三十郎、かっこいい~~。しびれました!そんな三十郎を演じきった三船はさすが世界の三船です。お見事!
7点(2004-08-15 21:53:20)
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