1. 八犬伝
《ネタバレ》 中学の頃に南総里見八犬伝の原文を読もうと試みた(当然挫折した)程度には八犬伝好きな人間です。本作がいわゆる「正典」ではなく山田風太郎の小説がベースだとは知らずに鑑賞しました。 なので「あれ?いくら端折ってるとはいえこんな展開だったっけ?馬琴本人が出てるのに原作捻じ曲げてない??」となることが何度かありました。 八犬士達は美形揃いで並べば華やかではあったけど、似たようなビジュアルであまり特徴が感じられず、これなら昔の八犬伝の方が個性豊かで楽しかったなあ。最低でも犬江親兵衛は子どもにしてくれればわかりやすかったのに。 犬士達が持つ珠の字の意味を解説しないのも釈然としなかった。この珠こそが八犬士の個性を表しているのに。 本作においては「実」の部分が重要で「虚」の部分はお飾りにしか過ぎないということか。 一方、「実」のパートはなかなか見応えがありました。 馬琴と北斎の毎度のやり取りは楽しいし、鶴屋南北との問答は現代の創作ものにも通ずる真理を突いていると思いました。 印象的だったのは妻の最期。ずっと夫に悪態をついていたけれど、夫と嫁がつきっきりでいることはやはり許せなかったのかと想像するとゾワッとした。 全体的には、楽しみにしていた八犬伝の物語パートに少なからずがっかりしたので評価は低めです。 「虚」と「実」が連動してうまいこと絡み合っていたらもう少し引き込まれたのでしょうが、そういう感じにも見えずちょっと残念でした。 [映画館(邦画)] 6点(2024-11-07 22:02:54) |
2. インサイド・ヘッド2
《ネタバレ》 前作と同じく、物語の主人公たちは「ある人間の感情」。すなわち感情が支配して人間を動かしていることを視覚的に表現した実験的な作品であるが、結局のところ感情たちが動くのは「人間がそう感じたから」である。 一時期、「不自然な現象は全部妖怪のせい」なんて言い訳が子どもたちの間で流行ったが、本作の感情たちと主であるライリーは一心同体であって、自分の心の中のモヤモヤを人のせいになんてできない。 ピュアなむき出しの感情で喜怒哀楽を表出してきた少女が大人の階段を上る。 自我が強くなり、ただ喜び悲しむのではなく、悩み、妬み、反発し、そんな自分自身が嫌になって感情が暴発する。 モヤモヤチクチクキリキリする気持ちをぶつけた先で相手の気持ちを理解することができ、再び穏やかな優しい感情が戻ってくる。 思春期を視覚で見る恥ずかしさったら。 本当によくできた作品だと思う。 ただひとつ残念なのは、ランスなんちゃらってゲームのキャラがあれっきりだったことかな。いつ再登場するかワクワクしてたのに。 [映画館(吹替)] 7点(2024-08-13 21:43:51) |
3. ゴールデンカムイ
《ネタバレ》 原作の大ファンです。実写化と聞いて不安しかありませんでした。 でも驚くほど原作に忠実で、なおかつ映画らしい見せ場も大胆に演出されており、楽しませてもらいました。 もともとこの漫画は映画っぽさを意識した作風ではあるものの、これを実際に映像化するのは相当大変。作者は背景から小物、動物の描写まで細部にものすごくこだわる人なので。 ただ原作をなぞっているだけでなく、主人公である杉元の生きざまとアイヌの思想がとても丁寧に描かれており、純粋なエンターテインメント作品でありつつ作品の根幹のテーマをはっきり浮き上がらせるつくりになっているところがファンとして嬉しかった。映画の最初と最後に杉元の全く同じカットがあるのですが、その眼差しが全く違うのが印象的でした。 本作は『導入編』でしかないので続編を強く望みます。 [映画館(邦画)] 8点(2024-01-27 19:19:40)(良:2票) |
4. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
《ネタバレ》 目玉おやじはイケメンだった。って言いたかった映画なのかな? タバコの描写に代表されるように、昭和の雰囲気を醸そうとしているのはわかる。時折差し挟まれる作者自身の戦争体験にも胸がひりつく。 が、やはりこれは令和の作品なんだなあ。 なかなかにエグイ設定や残酷描写の割に、重さも深みも今一つ感じられない人物造形やストーリー展開。スタッフはテレビシリーズの1期2期や墓場鬼太郎を観てないわけないと思うんだけど、まとう空気感がなんとなく軽いのはなんでだろう。 それでも単体の作品としてはテンポも良く、アクションシーンもかっこよくて楽しんで観られました。 なのに、最後の最後で『墓場鬼太郎』との繋がり方に一気に冷めた。ちょっと雑じゃないですか? ネタバレになるが墓場鬼太郎に出てくる水木氏は現在の目玉おやじが感傷に浸るような扱いはされない。そこに本作の大きな「嘘」がある。 いわゆるアナザーストーリーのつもりで観ていたのに、そこに繋げたことでせっかくの作品が急に安っぽく感じられてしまった。 [映画館(邦画)] 6点(2023-11-30 20:48:41) |
5. ミステリと言う勿れ
《ネタバレ》 原作が好きなのでストーリーは知っており、TVドラマのテイストも知った上での鑑賞ですが、やはり人が動き喋ると楽しいです。 『犬神家の一族』つながりの役者さんで遊んでいたところが個人的にはツボ。 でもやっぱりこのシリーズは単発じゃなくTVドラマで時間かけて物語をじっくり追いたいなと思います。 [映画館(邦画)] 7点(2023-10-19 20:40:01) |
6. 怪物(2023)
《ネタバレ》 この内容に『怪物』というタイトルを充てた凄み。 人は同じものを見聞きしても受け取る側によって見え方聞こえ方がまるで違う。 結論を言えば、登場人物に怪物はいない。敢えて言えば教師たちか、同級生たちか、父親か。だが作中で彼らの視点描写がないだけで、彼らには彼らなりの道理があるのだろう。 みんな自分の価値観や正義感や今まで生きてきた経験値によってものを見ている。だが自分の見ているものが全て正しいとは限らない。これは現在のネットにおける歪んだ正義感を可視化した作品ではないだろうか。 少年たちは最後にどこへ行ったのだろう。作中最も美しい場面なのに、直前の場面とはつながっていないのだ。美しくとてつもなく悲しい場面だった。 [映画館(邦画)] 8点(2023-06-15 20:40:30) |
7. 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
《ネタバレ》 原作もドラマも知らなくて、ただ劇場の予告編で面白そうだったので鑑賞しました。 ルーヴルが舞台のミステリーってダ・ヴィンチコードみたいなものを期待したんだけど、別にルーヴルの必要性は感じなかった。 安藤政信目当てで観た部分もあるんだけど、もったいぶって登場した割にラスボスでもなかった。 ルーヴルの地下迷路なんて絶対迷って大パニックだ!とワクワクしたのにそんなこともなかった。 問題の絵もどんなどす黒い謎が隠されてるんだろうと思ったら、結局血筋の話だった。 導入の世界観は良かったのに、なんか無難な結末にまとまってしまって「日本映画だなあ」という印象でした。 [映画館(邦画)] 6点(2023-06-15 20:12:36) |
8. THE FIRST SLAM DUNK
《ネタバレ》 私にとって井上雄彦という漫画家は、才能溢れているけれどこだわりが強すぎてうまいこと物語を完結させる勇気がない人、という認識です。 この漫画家が自ら映画監督ということで、期待しすぎずに公開を楽しみにしていました。 アニメというより動く漫画を見ている気分でした。 ドラマティックだけど静か。音楽やセリフや解説で語るのではなく、人物の細かい動きや息づかいで感情を表し、クルクル変わるカメラワークで試合のスピード感を表現しており、目まぐるしく動き続ける試合の合間に静かな過去の場面を挟み込んでいく手法も実写映画みたいです。 そういう意味では子ども向けのアニメではないです。 また、原作に執着しすぎている人にも不満があるかもしれませんが、じゃあ原作未読の方が楽しめるかというと、総じて余計な説明がないため作品を語る上での大前提があってこその感動は薄いかもしれません。 私は、井上雄彦らしい芸術性の高い良作だと感じました。 [映画館(邦画)] 8点(2023-01-03 11:54:25) |
9. ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
《ネタバレ》 新旧の主人公が揃い踏みでそれだけでもう感無量。 6作やって全部展開がおんなじなのも安心して「来るぞ来るぞ」ってドキドキして観ていられます。 ただ今回はほぼ全員主役だから食べられちゃう人が少なくて、そこはもうちょっとドキドキさせてくれても良かったと思ったり思わなかったり。 今作の特筆すべきは恐竜以外のでっかいムシが大暴れしたところ。あれは気持ち悪すぎて良かった。 それとマルタ島の美しい街並みをメチャクチャにしていくスタンスが大好き。 それにしても、回を重ねるたびに恐竜が普通に地球上に浸透していくんだけど、今作で最後と言われてるけど結局根本的な解決無く終わっててこれでいいのか。 [映画館(吹替)] 8点(2022-08-17 23:04:01) |
10. コンフィデンスマンJP 英雄編
《ネタバレ》 今までのシリーズを一切見たことがなければ楽しめるんでしょうか。 1時間で完結するTVドラマならわかる。 どうせ全部嘘なんでしょって疑う前提で観る長編映画って…おもしろいの? [映画館(邦画)] 4点(2022-01-24 21:49:01) |