1. 凶悪
《ネタバレ》 「善人しか出てこない」と批評された評判の映画があったけれども、こちらは悪人しか出てこない。それでこの映画は後味が悪いのだ。主人公の記者にしたところで、正義感にあふれているように見えながら、私生活では認知症の母を一手に妻に押し付けているような悪人なのだった。そんな悪人だらけの映画だが、しかし役者リリー・フランキーの悪人ぶりは、皆さんの認めるとおりピカイチで、恐れいった。 [DVD(邦画)] 7点(2014-11-26 13:39:11) |
2. HK/変態仮面
久しぶりに見た、トコトンくだらなくて、かつ笑えるC級映画。この手の映画は、たいてい途中で早回しにして、投げ出すのが常だけれども、最後まで楽しく観れた。これは快作だ。傑作「悪魔の毒々モンスター」シリーズ以来、と言ってもいいかもしれない。 [DVD(邦画)] 9点(2014-09-26 15:12:01) |
3. 共喰い
《ネタバレ》 青山真治は、いたって真面目だ。同様の性的テーマでも、今村昌平だとどこか滑稽さ、おかしみをふくんでいたけれども、青山真治ではいたって真面目だ。(そういえば、今村昌平に『うなぎ』という一作がありましたな。)また、猟奇的な性行為と快感というテーマからは、大島渚の『愛のコリーダ』が思い出される。『愛のコリーダ』には、頽廃的性愛にどっぷりつかった主人公の男が、これから出陣してゆく兵士たちの行進を横目に、伏し目がちに道を通り過ぎるという、忘れがたい傑作シーンがあったけれども、こちらでは、戦争で片手をなくした中年女の述懐による、「あの人」と呼ぶ天皇批判がつけ加えられている。これは原作未読なのではっきりわからないが、なにやら取ってつけたようで、あざとい感じがした。 [DVD(邦画)] 6点(2014-06-25 11:09:30) |
4. 東京家族
小津安二郎がオリジナルを松竹で撮っていた頃、松竹の若い助監督たちは、小津の作品を「老残な」と評して、高くは評価していなかったという。そのうちの一人だった山田洋次も、例外じゃなかったはずだ。逆に言うと、山田洋次にしても小津ほどの老残さを持ち合わせていないのだ、ということがこのリメイクからはっきりわかる。しょせん映画作家としての資質が違うのだ。だから、部分的にセリフや情景が同じでも、まったく別の映画になっている。時代性の差以上にそうなのだ。なぜ山田洋次は、無謀にもあの古典的傑作をリメイクしようと思ったのか? うまくゆくはずもないことぐらい、はじめからわかっていなかったのだろうか? ところで、オリジナルの『東京物語』は、一見時間がゆったりながれているような印象を受けるけれども、実はとてもスピーディーに筋が展開してゆく、テンポのいい映画です。もう一度御覧になっていただきたい。オリジナルに比べると、本作はなんともテンポが悪い。 [地上波(邦画)] 3点(2014-05-16 04:25:11) |
5. 桐島、部活やめるってよ
ああ、この作品の構成手法は、まるで『去年マリエンバードで』じゃないの。こちらは、この間亡くなったアラン・レネの有名な問題作で、複数の視点から話があらためて語られ直す。アラン・レネは黒澤の『羅生門』に触発されたというから、そうすると原型は『羅生門』か。 それにしても、高校生活がいかに狭く閉ざされた世界か、そんなところがよく出ていましたね。たとえていえば、原野でなく、狭い動物園の中で生かされている動物たちのような。自分の高校時代を想いだしてみても、この国の高校という特殊な世界の、そうゆう変なところがよく描けていました。私としては、劇中の「いけてない」映画部の連中だけが感情移入できました。 [DVD(邦画)] 7点(2014-05-02 18:32:48) |
6. 許されざる者(2013)
なるほど、明治初期の官憲のアイヌに対する扱いには、この映画で描かれるような悪辣で、差別的で、抑圧的なところもあったにちがいないと思えます。けれども、あとは土台、話に無理がありましたね。なので、筋がわかりにくく、展開についてゆくのが苦痛でした。とはいえ、映画としての作りはしっかりしていました。それから、アイヌ人役の柳楽優弥がなかなか出色でした。ただ、撮影は申し分なかったのに、音楽が陳腐で、安っぽく、いただけませんでしたね。全体として惜しい作品。 [DVD(邦画)] 6点(2014-05-01 02:31:51) |
7. 真夏の方程式
《ネタバレ》 もうちょっとシャープな謎解きものを期待したのに、まるで月並みな人情ドラマ。テレビのなんとかサスペントとかと大差ない程度。血のつながり? 親子関係? あーあ、古くさい。せっかく旬の俳優を並べたのに、これではなあ。もったいない。制作サイドの才のなさが深刻。だいたいが、当初から問題のありかがわかってしまうような筋書きなんて、脚本家の無能の極み。 [DVD(邦画)] 3点(2014-04-25 23:53:28)(良:1票) |
8. 富士山頂(1970)
男くさい映画ですね。今ではこういう男くさい映画を撮るのは、『劒岳 点の記』の木村大作ぐらいになってしまったようだけれども、昔はけっこうあったようです。とくに、この石原裕次郎という人は、こういった男くさい映画の製作に、とことん血道をあげていたんですね。いや、良かったですよ。また今とちがって、この頃の日本映画は、名優と呼ばれるしっかりした俳優を、贅沢なぐらいふんだんに配することができたのですね。 [地上波(邦画)] 8点(2014-03-21 05:01:53) |
9. さよならドビュッシー
ううむ。このたらーっとして、しらーっとした演出はどうかならんのか。それに話が面白くない。退屈きわまる一本だった。 [DVD(邦画)] 3点(2013-11-20 04:41:05) |
10. 悪の教典
なんじゃこりゃ。サスペンスかと思っていると、荒唐無稽のホラー、スプラッタ、グロ、悪趣味、アクの強さ......。ああ、そういえばこれが三池崇史映画の持ち味だったな、と不覚にも途中で思い出した。それがお好きな方はどうか知らないが、しかし、それにしても内容がなさすぎる。 [DVD(邦画)] 2点(2013-11-20 04:09:22)(良:1票) |
11. アウトレイジ ビヨンド
これまでの北野映画にときどき見られたようなヒューマンっぽい甘さが払拭されて、すっきりドライなところがいい。いらん無駄なシーンもないし、最後まできっちり作られていて、これは北野映画のベストワンとみた。なにより俳優陣がハンパなく素晴らしい。 [DVD(邦画)] 9点(2013-11-18 01:33:46)(良:1票) |
12. 黄金を抱いて翔べ
《ネタバレ》 かなり前に原作を読んだのだけれど、印象がずいぶん違う。こんな話だったっけ?と途中で何度も思った。ハラハラさせる銀行襲撃のくだりは、大筋原作に沿っていたと思うが、西田敏行のおっちゃんが実は妻夫木聡の父親の神父だったというシーンは、あまりに唐突すぎて、映画だけではなんのことやら、原作を知らない観客にはわけがわからないのでは? あそこが最も高村薫らしい奥深いところだと思うのだが、映画ではなんともあっさり描かれる。その分、ヤクザとの抗争に時間が割かれていて、そこは『パッチギ』の監督らしいのかもしれない。しかし結果として、深みのない映画になってしまった。 [DVD(邦画)] 5点(2013-10-16 11:59:53) |
13. 天地明察
もっと地味でお堅い映画かと思いきや、意外に面白く最後まで観ることができた。たぶん、この監督は語りがうまいのだろう。ただ、語りのために脚色が過ぎて、史実から遠く離れるところも多々あるにちがいない。そんな感動娯楽作として割り切ってみれば、けっこうよくできていたように思う。 [DVD(邦画)] 8点(2013-07-17 05:51:37) |
14. 臨場 劇場版
作りや演技陣はしっかりしているのものの、どうもしっくりこない。原作・横山秀夫のところでクリックして、リストを見てみると、ああそうか、あの『半落ち』の原作者じゃないか。なるほど、犯行の謎解きに加えて、社会派的題材と、泣かせるシーン。この三本柱でできているところは、どちらも共通している。さらに話に決定的に無理があるところまでが、やはり共通しているじゃないの。そのため、どちらも泣かせはするが、やはり後味がすっきりしないのだ。 [DVD(邦画)] 5点(2013-06-21 09:52:26) |
15. 11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち
ひと言でいえば、学生運動として見た三島事件。以前に観た同じ監督による『実録・連合赤軍事件』と似たような雰囲気で、その続編といっていいのだろう。しかしそれに比べると、明らかに薄っぺらで、迫力もなく、これはつまり、若松孝二という映画作家には学生運動はよくわかっても、三島由紀夫はよく理解できていなかった、ということだと思う。 [DVD(邦画)] 4点(2013-05-04 16:07:44)(良:2票) |
16. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
三谷作品、またしても豪華俳優陣による高級学芸会。せいぜい「悪ふざけ」程度の、どうにも深みに欠けたドラマ。面白くもない「喜劇」。やるせないまでのリアリティの無さと、バカバカしさ。時間の無駄。ああ、こんなのお金はらってレンタルしてくるんじゃなかった。 [DVD(邦画)] 1点(2013-02-01 00:12:15) |
17. 冷たい熱帯魚
《ネタバレ》 ううむ、これははまるか、はまらないかで、はっきり評価が二分されるタイプの映画だろう。私ははまらなかった。なんとも悪趣味で、話に無理もある。しかし、演出の迫力は認める。それに、なんと例の尼崎のカリスマ女による連続殺人事件をすでに知っていたかのような話ではないか。そう考えると、低い点数はつけづらいなあ。 [DVD(邦画)] 7点(2012-11-29 18:28:02) |
18. ALWAYS 三丁目の夕日‘64
1964年と題名では押し出してはいるけれども、その時代性はあくまで背景にすぎず、描かれるテーマは、いよいよ時代いかんにかかわらないような、普遍的に親子間で繰り返されるドラマに集約されつつあると感じた。思わず小津安二郎が想い起こされて、結構でした。 それにつけても、薬師丸ひろ子は、若い時より数倍ぐっといい女優になんなすったなあ。 [DVD(邦画)] 9点(2012-11-25 03:07:29) |
19. 八日目の蝉
《ネタバレ》 いやおうなく自分の不幸な過去を否定して生きてきた者が、記憶をよみがえらす旅を通じて、ようやく過去を肯定するに至る。そこに至るまでの、現在と過去が繰り返し対照されてゆくところが秀逸だった。 それにしても、ここに出てくる男は、いずれもつまらない存在で、まったく影が薄い。また、堕胎したからといって、それで「空っぽになる」という感覚は、男にはどうしたって理解できない。そこでスタッフをみてみると、監督は男とはいえ、原作も脚本も女。そうか、これはまさに女性映画なのだ。これに比べれば、昔、1980年前後に一世を風靡した、いわゆる「女性映画」なるものは、しょせん男が女性客の動員をあてこんだ、男主導のエセ女性映画にすぎなかったとわかる。ここでは、男などいうものは、しょせん精子提供者以上のものではないのだ。 俳優陣では、関西弁の教祖の余貴美子が味があったほか、写真館主人の田中泯は、これといった動作もないのにかかわらず、不気味な存在感を漂わせていたのがすごかった。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-18 22:55:12) |
20. 乾いた花
これは「任侠映画」というより「ヤクザ映画」、いや、この冷めたかっこよさは、むしろ「フィルム・ノワール」。親分子分の内実を冷ややかに描いたところは、『仁義なき戦い』が1973年だから、それに先立つこと約10年。「実録もの」ではないが、そこは後に東京都知事になる作家の原作だけに、哲学的といってもいいような味わいを漂わす。それにつけても、池辺良のかっこよさと、加賀まりこの小悪魔ぶりといったらない。また、東野英治郎と宮口精二という名優による親分二人が、高級レストランでスープをともに下品に飲みながら、「マナーが違うぜ」と注意したりするシーンは傑作だった。それから、親分の歯医者通いシーンは、そうか、これが北野武『アウトレイジ』の元ネタのひとつなんだな、と気づく。 [DVD(邦画)] 9点(2012-03-07 02:40:44) |