1. コングの復讐
《ネタバレ》 幼少の折、テレビに釘付けになったような記憶があって、えらい期待して再見したんだけど、どうもねえ。愛嬌があり可愛らしいぐらいこじんまりした息子が、事もあろうに、人間に助けられたり、人間を助けたり。あの容赦のないぐらい暴虐な親父が天国で泣いているよ。その親父が息子に対して、強くなるために繰り返しのトレーニングの重要性を諭すという点では、この邦題も解らなくない。「コングの復習」 [DVD(字幕)] 6点(2007-05-02 17:23:38)(笑:1票) |
2. 残菊物語(1939)
映画という芸術に対するひとつの回答があるような作品です。ひとつは、やはり構図ですね。例えば絵画における構図を思い浮かべると良いのかもしれない。名画が名画として成立しているのは画家が描き出す構図空間の見事さによります。映画でも同じです。主役、脇役、背景をどのように配置するかで全てが決まってしまう。そして、もうひとつが空間と観客の一体感です。例えば舞台演劇における役者と観客の一体感が良い例です。舞台では、常に観客が現実に起こっている状況の目撃者になっています。これを映画で実現するには長まわし以外にありません。空間が移動し役者が現実の時間と同時進行で動く状況が続けば、観客は今起こっている目撃者としての立場から、見事に中に入っていけるわけです。というわけで、すごい作品です。音声が聞き取りづらい点があったが、親切に字幕入りだった。って、英語の字幕じゃわかんないだろう。 [映画館(字幕)] 10点(2005-12-04 22:32:42)(良:2票) |
3. 乙女ごころ三人姉妹
《ネタバレ》 イニシャルKさん、すみません、先に投稿して。三姉妹の真ん中の姉が、自らの幸福など考えず、気丈に、横暴な母親と姉妹や弟子の間に入り彼女らのためにつくす姿が涙をさそう。後半、サスペンス風の展開になる所なんか予想してなかったんで思わず引き込まれてしまいました。長姉が病気の夫と田舎へ行く資金を得るため昔の知り合いのワルに依頼し、ワルがお金を奪うのが妹の恋人からなんですね。それを知るのは真ん中の姉のみ。辛いところです。自らも傷つき力つきんとする最後の終わり方が良いですねえ。全編を通して女性の細やかな心理がほんとに伝わってきますね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-23 15:06:04) |
4. 鶴八鶴次郎(1938)
弟子入り志願の娘(ボケぶりが笑える)を嫁に貰うという嘘を鶴次郎が言うときの鶴八の無神経な対応(内心は違っていた)や、ドサ周りで苦労したあとの鶴次郎の成長ぶりなんかは良かったですね。そして最後の喧嘩を売る場面とその理由の告白はグッと来ました。見方によっては自慢げに語っているような感じもしたけど、鶴八に対する愛を確かめているのだ、未練を断ち切るため自分へ言い聞かせているのだ、と思えば、許せますね。男を頼るしかない女ではなく、竹を割ったような性格の鶴八だから、よけい終わり方が秀逸に感じます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-18 00:21:25) |
5. 妻よ薔薇のやうに
これは名作ですねえ。女性の細やかな心理が見事に表現されている。何不自由ないOLの日常から、母のために妾のもとの父を訪ね、その家族に同情しつつも、やはり家族を第一に考えてと、揺れ動く主人公の心情が、彼女とかかわる脇役達との会話や表情を通して、すーと心に入ってくるのだ。しかも悲壮感や暗さが全くない。昭和10年頃という時代は、戦争、軍国主義、不況などと、暗いイメージしかないけれど、これは戦後に作られた間違った決め付けなのかもしれない。こんなに人々が生き生きとして、精神的に豊な時代だったとは。もしかしたら、昭和10年代って、日本人が今よりずっと輝いていた時代なのかも知れない。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-12 23:56:48) |
6. 駅馬車(1939)
歴史的名作でしょうね。たしかに、ネイティブ・アメリカンに対する偏見を理由に、評価を下げるひともいるでしょうが、全編を通して盛り込まれている娯楽的要素を描ききった、プロの仕事師達の見事な技を否定する者はいないだろう。リンゴーのカッコ良さと、酔っ払い医者のカッコ良さの対比や、娼婦と大尉の妻の女心の描き方なんか、見事と言うしかない。一番好きな西部劇を挙げるなら、他の作品になりますが、一番の西部劇と言われたら、この作品です。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-05-19 22:29:00) |
7. モロッコ
今の立場も将来の生活も全て捨てて、惚れた男を追って行く究極の女心を演じるディートリッヒ。愛する女のためにどんなことでもしてやり、決して見返りを求めない永遠のダンディズムを演じるマンジュー。これを名優の名演技による名画と言わずして、何を名画と言おう。ディートリッヒの足に10点、マンジューの渋さに10点、クーパーの伊達男ぶりに8点。平均すると10点。違うだろうって?いいじゃないか固いこと言わなくても。 10点(2004-12-04 20:33:57)(良:2票) |
8. キング・コング(1933)
「ピーター・ジャクソンがしくじったら、思いっきりぶん殴ってやれ、コング!」「ガルル(わかってるぜ。あの二人以上にぶっ飛ばしてやる。)」「そう言えば、最近ギラーミンとラウレンティスを見ないぞ」(キングコング76’に続く) 10点(2004-06-22 20:50:26)(笑:1票) |
9. 大いなる幻影(1937)
戦争が単なる殺し合いでなく、敵を憎んでいるわけでもない。国家に対する忠誠はあるものの、戦闘を離れれば敵兵でも人間として尊重する、紳士である軍人達が輝いている。現代の伝えられる戦争とは異質の人間的な振る舞いに新鮮さを感じる。しかし、戦争が生み出す悲劇とわずかな希望に生きていく支えを見いだす人々は、どの時代でも同じである。「戦争が終わったらここに戻ってくる」幻影であるとわかっていても言葉にすることが、人間の悲しさであり、素晴らしさかもしれない。 8点(2004-04-18 23:47:22)(良:1票) |
10. 椿姫(1937)
愛する人の父親から身を引いてくれと嘆願され、彼のためと自分に言い聞かせ嘘をつき離れようとしますが、心の中は、切ないほど愛する人を求めている椿姫マルグリット。この、病弱で男を頼りに生きていかなければならない悲劇のヒロインをグレタ・ガルボが見事に演じきっています。悲劇が愛を美しくし、二人の一途さが観る者の心を揺さぶります。この恋多きパリ社交界の花も、真に愛する人とめぐり逢いますが、幸福に縁がないまま、最後は、彼の腕のなかで息を引き取ります。引退後、公の場から姿を消して、映画で創り出したヒロイン像を守り通した伝説の名女優に愛をこめて乾杯! 9点(2004-04-02 00:47:39) |
11. 風と共に去りぬ
前半最後のスカーレットが神に誓う言葉の衝撃が、名曲とともに心に残っている。この強さはどこから来るのだろうか。私の常識では、自分を抑制できることこそ強さに結びつくが、わがままで勝手な人は、むしろ弱い面が多いと思っている。彼女のわがままは、自己主張や生きることへの執着と結びつき、どんな場面でも、あくまでも自分を中心として行動している結果なのかもしれない。いずれにしても、この場面は感動した。私の生きていく上での心の支えにもなっている。生きていくことは、きれい事ではない。戦いであり、常に勝つ努力をしていくことなのだ。たとえ傷ついても、明日また新たな気持ちで挑戦していけばいいのだ。 10点(2004-01-30 00:37:48)(良:1票) |