1. 汚れなき悪戯
あまりにベタな宗教映画なのですが、迷いなく徹底しているので一種の爽快感さえあります。修道院に孤児が引き取られるような話は日常茶飯事だったのですが、どこかでこういった伝説が生まれるような雰囲気が修道院というところにはあります。キリスト教にとって小さな男の子つまり「幼な子」はイエスを想起させる存在であり、主と従が一気に逆転する転機でもあります。モノクロで質素な画面は、こうしたシンプルな物語を描くのにふさわしいと思います。わたしにとっては良質のキリスト教入門でした。近年リメイク版も作られたようですが。。。 7点(2004-02-12 22:45:23) |
2. 東京物語
さすがに名作です。わたくしごときがあらためて評すべきところなどありません。しかし、小津作品はこれ一本しか観ていません。名作だと認めながらも、なぜかその他の作品に触手が伸びないのです。どことなく「覗き見」しているような、後ろめたい感じがするのかもしれません。例のローアングルのせいかな。でも繰り返しておきますが、さすがの名作であります。 8点(2004-02-12 22:06:22) |
3. 大人は判ってくれない
子供が主人公の映画は、その舞台となっている町をより身近なものとして描き出してくれる。わたしにとりもっともパリっぽさを感じさせてくれたのが本作品だ。懐かしさすらなぜか感じさせるあのパリの街の真ん中で生活できた主人公たちに羨ましさすら感じる。じつに勝手な想像にすぎないことはわかっているのだが。なぜか町の印象が強く残った作品。それだけでも十分貴重である。 8点(2004-01-22 22:14:05) |
4. 眼下の敵
子どもの頃、なんどとなくTVで観た作品。ピリピリした心理戦ともいえる駆け引きが、ドンパチ系の戦争映画にはない人間の痛みを感じさせていたと思います。静と動、沈黙と轟音、この反復こそが戦争の緊張感を生み出すのでしょう。うるさいだけの映像は一見リアルにみえても、じつはうそだと思います。もっとも、本作品はこの意味でのリアルさを必ずしも追求したものではないと思いますが、登場している潜水艦のなかにもし自分がいたら、、、という緊張感は十分に感じました。 7点(2004-01-20 22:20:52) |
5. 田舎司祭の日記
教区司祭の哀しみを静かに謳いあげた映画。修道司祭のように修道院で観想三昧に浸ることが許されない教区司祭は、田舎の素朴な、しかしすでに近代人でもある庶民を相手に、腰が引けたままその死を看取るという損な役回りを一手に引き受けている。彼がいかに「奇跡」を引き起こすことができたとしても、結局は受け入れられることがない。それを予感しているため、つねに喜びよりも哀しみが先行してしまう。塀の上を恐々と進むような司祭の歩みを温かみ眼差しで描いていると思う。人の生死に同伴するとはかくも苦しき道なのか。思うこと多し。 9点(2004-01-17 22:37:47) |
6. 神の道化師、フランチェスコ
中世キリスト教最大の聖人アシジのフランシスコを描いた作品は何本かあるが、そのなかでおそらく唯一観るにたえるのがこの一本。モノクロの画面に登場するのは、どうやら本物の修道士たちらしい。これといった感情の起伏もなく、淡々と物語りは進む(いや、劇的な物語もあるのだが、この修道士たちにかかると淡々と、そして美しく描かれる)。フランシスコの接吻を受けたハンセン氏病患者が、そのまま何もなかったかのようにゆっくりと歩みゆく。その姿が画面から消えそうになったとき、彼はゆっくりと後ろを振返る。その視線が画面を観ているわたしにも突き刺さるようであった。 9点(2004-01-16 21:33:29) |