1. 死ぬまでにしたい10のこと
《ネタバレ》 末期を迎える人間をお涙頂戴だけで纏めなかった監督のスタンスには好感を持った。只、描き方が不自然なように思う。自分の残り少ない余命を知ってしまった若年の女性が果たしてあんなに淡々と現実を捉えることができるのか。発狂してもがき苦しんだり、周囲の人間に励まされたりといったことが無いこと(医者は例外として)に嘘臭さを感じる。山本常朝も「武士道は死ぬことと見つけたり」といっているように、「死」を考えることは活き活きとした「生」を考えるに当たってのパラドキシカルなものであるのだから、「死」の告知は一念発起するための楔とはなるのであろう。しかしそうであるが為にその「死」の告知を彼女の分岐点として安易に使用した監督の短絡的思考が伺える。更に自分の置かれた環境への絶望と温かな家庭からえる幸せとの狭間で何も考えずに生きていた女性が、あんなにも活動的に生きれるのか? とも訝る。凡庸な女性が何らかの事件を契機に自分探しをする女性を描きたかったのなら「死」と云う簡単なモチーフを使わないほうがベターではなかっただろうか。「死」を間近にした時、あんなに我侭で偽善的な行動に出るのか、私は腑に落ちない。悲しい物語を淡々と見せることを狙った映画だが、それが為、粗が大きかったようだ。末期の話としたら物足りず、自分探し映画として観ても物足りない。(映画館) 4点(2004-03-26 17:40:47)(良:1票) |
2. きょうのできごと a day on the planet
《ネタバレ》 恋愛に積極すぎる女。自分の彼氏とその幼馴染を妬む女。努力もせずに夢を語る男。なよなよした男。怒りの為無関係なものに奴当たりする男。人間関係から一歩引いた男。いい人すぎる男……。ある男性の引っ越し祝いに集まった男女七名はそれぞれ憎めないながらも一癖あり、付き合うには大変なタイプ。更には、テレビの中の事件やもろもろが絡み合う典型的な群像劇。確かに、笑いや怒りや悲しみが要所要所に挟まれていおり、巧い映画と言及できる。しかし、それでも、否、それだからこそ物足りない。もともと群像劇はすきではないのかもしれない(PTAの「マグノリア」などは苦手。巧いな、と唸るけれど、好きか? とと割れれば答えはNOである)。終盤にある人物へと物語が収束するのなら、それはまたよいのであるが、それが無いのであまり余韻が残らない。辺に豪華な脇役も不必要だ。その人物(佐藤仁美や北村一輝)らがストーリーに絡むのかと注意してみても大して絡まない。観客を混乱させただけである。又、どこにでもある些細な出来事を映画にする技法は世界共通であるかもしれないし、それにより傑作となったものもあるが、今作がそれとは云えない。正直テレビで充分であろう。鯨の剥製のみに金がかかっているだけだ。このような日本映画の典型的系統である作品を今最も注目されている若手監督が撮らなければいけないい現状をもっ嘆くべきだ。巧い映画であったが、映画的魅力には欠けていた。多少辛口になりましたが、まあ好みの問題と云うことで御了承を。(映画館) 5点(2004-03-24 21:20:27) |
3. 藍色夏恋
《ネタバレ》 あー、恥ずかしかった。こういう映画で若干の不快感を生じてしまう齢となってしまったことに時の流れを感じます。だって、夜のプールやら、ラブレターを友達に託すやら、それを学校中に公開されて恥じをかくやら、青年が明るく運動神経が良くてちょっと助平でそれでもって何故か主人公に惚れている所やら、自転車やら、なんやらかんやらが恥ずかしいのですよ。定番の青春的記号を映画中にちりばめるのってある意味勇気が要りますよね。ベタすぎと批判されそうで。後半での急展開が少々趣深いものでしたが、それでも少々です。やはり全体として平凡な少女漫画を見せられているようで体がむず痒かったです。いやはや腐った大人になってしまいました。(映画館) 6点(2004-03-20 00:08:21)(良:1票) |
4. ファム・ファタール(2002)
《ネタバレ》 テレ朝の温泉デカ(勝手に命名)並に挟まるお色気シーンを味わいまして、改めて映画監督をそこはかとなく妬みました。「そこもっといやらしくケツ振って―」なんて演技指導してるんですよ。手取り足取り。蛇の衣装も不必要だし、酒場でのお色気ダンスも意味無いし。リビドー満載です。後半の水野晴郎ばりの大どんでん返しにもおもわず仰け反りました。このファム・ファタールは超能力者なのかと。好き勝手に作っていていいです。この監督はそんなに好きではなかったけれども今作でお気に入りとなりました。それにしても最大の被害者はトラックのおっちゃんでしょう。娘がいるのに人身事故の加害者となってしまって……。(ビデオ) 8点(2004-03-19 23:55:47)(良:1票) |
5. 真夜中の虹
《ネタバレ》 貧乏や不幸が好きなんでしょうね。この監督。でもそれが不幸せに見えないんですよ。何ででしょう。あまりにもご都合主義なんだからでしょうか。この監督の作品を観ると、身の回りの不要なものを捨てたくなります。デカダン的な生活をしたくなるのです。でも日本じゃしにくいですよね。周りの眼が……。メキシコへの船へと向かうシーンで終わりますが、本当は監督さん、この先も考えてたようですね。でもあそこで閉めたほうがよかったとおもいます。明るい望みが射す陰気な雰囲気に満ちた映画です! (ビデオ) 8点(2004-03-12 00:07:10)(良:1票) |
6. 浮き雲(1996)
《ネタバレ》 バスの運転手にキス。フィンランドってどんな国だよ! と一人突っ込んでいると、この二人は夫婦であることが分かる。おいおい何プチドッキリやってるの、と監督の思惑にまんまとはまる。所々に可笑しさを誘うシーンがある。夫の解雇をトランプで決めるシーン(そんなアホな!)。映画館のもぎりのお姉ちゃんに悪態をつく夫(妹かよ! 又騙された)。回転資金をカジノで稼ごうとする(やめろって)。愛想の無いレストラン(「いらっしゃいませ」は日本の文化か?)。監督の掌で遊ばれながら、私はこの短いお話にぐいぐいのめりこんで行った。そしてラストの夫婦のカット。無表情なオウティネンが笑ってるようにみえる。かー、いい話だ。アホな日本人が海外旅行やブランドものや学歴でしか幸せを叶えられないのに反して、この貧乏の極地にいる二人はそれをしっかり掴んだ。見習わなくちゃいけないんじゃない、こういうの。それにしても支配人は銀行には金を払えず、なんで新規の回転資金は出せるの? こういう詮索は無粋か。 (ビデオ) 9点(2004-03-09 21:59:57)(良:1票) |
7. チャンプ(1979)
《ネタバレ》 いやー、王道の佳作ですね。親子もの。この手のはあまり母親―子供という関係性では語られませんね。 女親は愛情があって当たり前なのかもしれませんね。その点、世間では子供に冷たい父親なんてのも存在しますから それとのギャップでより映画にすると感動が引き立つのかもしれません。それにしても子役の子は役者ですね。 フェイ・ダナウェイに引き取られそうになったシーンでは止めど無く涙が零れました。号泣です。 その後の競馬場でのジョン・ボイドとの再開のシーンは時間経過が急すぎるきらいもありますが、まあそれは良いとしましょう。 しかし、ジョン・ボイドのあの顎はボクシング選手としては天性のものですね。頑丈にできすぎ!。(ビデオ) 9点(2004-03-09 00:21:18) |
8. 遠い空の向こうに
根暗理系映画ですね。素晴らしいです。アメリカ人はなぜか知らないが典型的なマチズモ志向があるようで、 青春映画ではアメフトやらの選手がチアリーダーに囲まれているシーンが多いように思われます。 卒業パーティーのプロムに何不自由なく女の子を誘えてしまうような。 でも実際その理想像に当てはまらない若者もいるわけです。日本でもそうでしょう。 いわゆる「今時の若者」像と隔絶した世界で生きる人間のほうがマジョリティーではないでしょうか。 おたくとか、おたくとか、おたくとか。 それでこの映画は他の凡百の映画と一線を画しています。ロケットですよ。地味です。 大体こんな地味な素材で映画になるのかいぶかっていると、十分になってるんですね。 保守的な土地で現実とたたかう青年。親との確執。先生や周囲の大人との交流。友情。 素晴らしいです。どんなことでもそれに打ちこむ姿には心を打たれるんですね。 世の先生方、下らないお説教をする暇があるのならこの映画を生徒に見せて下さい。 「遠い空の向こうに」の中に明治の文豪や西洋の哲人に負けない力が含まれています。 (映画館) 10点(2004-03-06 18:45:26)(良:1票) |
9. HERO(2002)
登場人物の心の機微をスタイリッシュで美しい映像で切り取る稀代の名監督がアクション映画を撮る! 出演はジェット・リーやマギー・チャンといった国際的な俳優! これで心躍らせない映画ファンは皆無だろう。自分も2003年度、最も期待するものを観に映画館に足を運んだ。しかし、しかしである。裏切られた。期待していた分それはは尋常ではなかった。あまりにもチープすぎる。まず、あの脚本。単調すぎるが所以、途中何度も睡魔に襲われた。いくらアクション映画であり、映像が主であるといえどもあそこまで人を嘗めた話はない。嘘→妄想→真実と同じような話を換骨奪胎して進める手法。確かに「羅生門」で使われた手法であるが、今作では明らかに真実が明白なためそこにミステリー的興奮もない。冗長なだけ。更にはアクションシーンも延々と同じテンポで進み飽きる。最初のジェット・リー対ドニー・イェンのシーンには映画的興奮を覚えたが、それから大きく失速。加えて派手なCG処理はコントかとも思わせ失笑を禁じえなかった。監督の映画撮影のリズムはラブストーリーやヒューマンドラマには向いているのだが、アクション映画には適していないのだろう。本当に退屈だった。(映画館) 3点(2004-03-04 22:58:56)(良:2票) |
10. 嗤う伊右衛門
《ネタバレ》 ラストシーンはお岩が憑かれた様に疾走するシーンと並ぶこの物語の最も美しいシーンではないかと思うが、それがあまりにも酷い。あそこだけは原作に忠実にやってほしかったが、只の幽霊話になっていることに辟易した。全然納得がいかない。更にはザ・ベスト・オブ・蛇足と形容したくなる現代の東京の俯瞰図への移行。そんなのいらないって、監督さん。シメはお岩の骸を抱きながら嗤う伊右衛門のカットでいいじゃない。まさに画竜点睛を欠く。もっとも目を入れる前の龍の全体像すらも舞台演劇的な大仰な台詞回しや失笑を禁じえないスプラッター描写、侘び寂びの漂わないヌードシーン、原作読了者の自分にすら理解しにくい人物相関、お岩と伊右衛門の愛情描写の物足りなさなどにより歪んだ造形となっている。映画の雰囲気がちぐはぐしている。自分の大好きな小説だったのにとても残念だ。それでも映像化不可能といわれる京極作品を映画化してくれたことはは嬉しいのでこの点数。でも蜷川作品は2度と観ない。(映画館) 5点(2004-02-27 20:53:36)(良:1票) |
11. ナビィの恋
冒頭のひょっこりひょうたん島のテーマに思わず顔が綻ぶ。 お気に入りの女優の姿に魅入られる。 沖縄の蒼穹とブーケンビリアの色彩に吸い込まれる。 おばあの可愛らしさに癒される。 そして映画を通して包む沖縄民謡やアイルランド民謡に、 全く音楽の素養もない自分が酔いしれている。 そして、ナビィの恋に隠れたおじぃの無償の愛に目頭が熱くなる。 この映画は幸せに包まれている。何度でも観たくなるとびっきりの映画がここにある。(映画館) 9点(2004-02-26 23:30:11) |
12. 愛に関する短いフィルム
盗み見や窃盗をする男に恋心を寄せる女の気が知れない――と思うのは 時間も場所も異なるが為に生じるが故なのかもしれないが。 本当の純愛は法律や道徳をも突き破るものなのか。 それならばストーカーやセクハラなる言葉が生まれた現在は純愛は生まれない。 そうだとするならば純粋な情念を消失せしめた現在は罪深い。 しかし、それでもこの男女の行動は受け入れることが出来ない。 (映画館) 6点(2004-02-26 23:29:07) |
13. 阿修羅のごとく
所詮男と女の関係性にのみ阿修羅が潜んでいるのか。 原作者が女性なので女性のみが悪くかかれているが、 現実のところ、男に非があることが多々ある。 そればらばいっそう愛情なぞかなぐり捨てたくなる。 そう感じた。男女間のいざこざ以外の阿修羅(家族間の確執など) にもっと焦点が当てられていても良かったが、それでは散漫になるか。 女性の後ろめたい部分が良くかかれていると思うが、 それが顕在化されたであろう現在ではそれは希釈され衝撃は少なくなる。 現代を舞台にアレンジにしたほうがベターではなかっただろうか。 もし二昔ほど前を描くにしても深田恭子なる平成的な女優はミスキャストではなかっただろうか。 端々に挟まれた喜劇性は心地よく、大竹対桃井の修羅場は鬼気迫るものがあり滑稽ですらあった。 三女の恋愛もほほえましく、木村佳乃のいやらしさ(性的にも精神的にも)は良かった。 鑑賞後に不快感は生じなかったものの、 更に傑作となりうる素材を平凡な佳作とした映画だった。 (映画館) 7点(2004-02-26 23:26:53) |
14. ゼブラーマン
《ネタバレ》 ヒーローに憧れる男がリアルにいたらこんな感じなんだな、と妄想しながら脚本家の宮藤官九朗は物語を書いたのだろう。ヒーローものを御伽噺から現実へと近づけた作品としては「アンブレイカブル」や「スパイダーマン」などがあげられ、現に今作を観ながらそれら映画を思い返していた。序盤はくすっと笑えるシーンも多かった。しかし次第にギャグのからすべりがめだちだすと同時にストーリーも破綻していく。教頭の脚本に沿って何故現実も進行したのか? ゼブラーマンがヒーローとしての能力を発揮し出す原因は? 何故鈴木京香は正体に気付くのか? 私は「ヒーローものだからなんでもあり」との言いぐさは唾棄したい。ファンタジーだからこそ例えばヒーローへの能力付与に一定の説明が必要なのである(それは改造人間だから、不思議な実を食べた、超能力使いであるから、といったナンセンスな理由でもいい)。荒唐無稽だけでは物語りは収拾がつかないし、そこに違和感をおぼえる観客が出てくる。一貫した論理展開が、ありえない話しであるからこそ必要ではなかろうか。最後に空を飛び、敵を倒すシーンで涌き出すカタルシスによってこの作品への不名誉な低評価は免れえた。しかし、監督・脚本・主演とどれをとっても一流であり、この三者だからこそ作りえる最高の傑作を期待した私の願いは裏切られた。この無念を晴らすべく是非続編を製作してもらいたい。 (映画館) 7点(2004-02-25 22:54:10) |
15. 非・バランス
私はこの作品を昼日中に観ていた。百人ほど入る映画館には自分以外には数人しかいなくて「ああ人気ない映画なんだな」なんて思っていた。自分自身ロマンチズムに覆われた寓話的作品には食指が伸びないのだけれども、なぜかそのときインスピレーションが働いてこのチケットを買った。上映終了後、私は泣いていた。号泣していた。エンドロールが終わっても泣いていた。そんなこと初めてだった。少女の閉ざされた世界が菊チャンによって打破されたこと、いじめなんてつまらないことから吹っ切れたこと、そして、性別も年齢も棲む世界も違うこの二人の友情が素晴らしすぎて心が震えたんだと振りかえるが、なんでそんなにも泣いていたのか正直良く分かっていない。もう一度観ようとは思わない。アラが見えてしまいそうであり、素直に感動できなくなった自分がいそうであるから。しかし、この作品から受けた心の動きは今も残る。決して世間的には絶賛されてなくても、そこはかとなく愛着がある映画だ。 (映画館) 10点(2004-02-24 22:32:18) |
16. 処刑人
映画館で結構前に観たんだけれど、めちゃめちゃ興奮した覚えがある。特に便器落下のシーンがカッチョ良すぎた。この兄弟最高! 2が上映されるとかされないとかの話しもあるようなので期待。それにしてもこの兄弟この作品のあといまいち露出してないんだよな。特に兄貴のほうが。アメリカでは人気ないのかな? (映画館) 9点(2004-02-24 21:47:09) |
17. 浮草
なんでそんなに絶賛されのだろう……。平々凡々な作品じゃないのかな。監督が死んでから持ち上げられすぎな気がするんだけれど。反面この作品の良さがわからない自分に落胆。くやしいです。まあ、自分が若いから幼稚だから面白さが分からないと考えて暫しの間、小津作品は観ないでおきます。封印です。 (ビデオ) 5点(2004-02-24 21:41:57)(良:1票) |
18. SWEET SIXTEEN
やりきれない。リアムは単純に母親と暮らしたかっただけなのに……。ドラッグやナイフや盗みや殺人に覆われているけれども、ここには家族への真摯な愛情が充満している。それはとても心地が良い。しかし、只家族で暮らしたいだけなのに周りからの妨害の所為で、もがき苦しむリアム。先進国の一つである英国にはまだ以前として階層社会があり、そこから抜け出すのはこれほどまでに至難の業なのか。ここまで少年が苦しまなければならないのか。ここではたと思う。そんな悲惨な現状から抜け出すために、犯罪に手を染めるのは悪なのであろうか、と。あまりにも純粋なリアムの行動にそれを糾弾する言葉を私は持たない。――それにしてもこれに引きかえると日本のなんと平和なことか。追記 ビデオじゃなく映画館で観るべきだった。恐るべしケン・ローチ! (ビデオ) 9点(2004-02-23 22:15:49)(良:1票) |
19. 秋刀魚の味(1962)
駄目だ。分からん。なんでこの監督がこれほどまでに崇められているのか、さっぱりわからん。NASAの陰謀なのか。みんなスカラー波を浴びているのか……。確かに日本の古き良き時代を切り取った映画であり、「なんか懐かしいな」と若輩者の私にも感じさせてはくれるのだが――それだけなのである。テレビで流れていても不思議でないレベルではなかろうかとも思う。それとも自分の審美眼を疑うべきなのか。己の観客としての低俗さを嘆くべきなのか。もしかしたらもっと年をとれば分かるのだろうか……。私も早くこの映画の良さが分かる年になりたい。 と、以前評したのだけれど笠智衆が娘と我が身を想う心情と岩下志麻の美しさを今になってホンワカと思い返したのでプラス一点。 (ビデオ) 6点(2004-02-22 19:30:15) |
20. シベリア超特急
この映画に点をつけるのはかなり悩んだ。10点か0点で。映画界に侃侃諤諤を大論争を巻き起こした今作は「北京原人」と並んで世紀の傑作といえるであろう。幾星霜を越えて後、まだ話題にのぼるのであるのだから。しかし、翻って考えてみるとここまで「物語」の体をなしてない映画も稀有である。アームチェアディテクティブを演じる山下閣下はシックスセンスを持するが如くたちどころに犯人を当てていく――なんの調査もなしに。そこまで知っていたら被害者を救ってあげれば良かったのに、とおもわなくもない。ちんけなセット。場違いかともとれるかたせ梨乃。列車上での神業的な格闘。加えて最後の自己陶酔極まりないオチ……。そこで私ははたと気付く。こんなんでいいのなら自分でも映画を撮れるのではないか。そうか、これは今一歩勇気を出せないでいる映画監督予備軍への応援歌なのか、と。決して「マレーの虎」こと山下将軍と水野監督の容姿がクリソツだったことから発生した大仮装大会ではないのだと。まあ、どうこう考えても0点だけれども。 (ビデオ) 0点(2004-02-22 00:14:40)(良:2票) |