1. ブラック・ダリア
《ネタバレ》 ジェームズ・エルロイの原作は、ロサンゼルス・ノワール四部作のなかでも、いちばんエンタメとしても時代ものとしても面白い。ただ、エルロイの原作の主役は、やっぱり1940年代から50年代の「都市としてのLA」そのもの。戦争と繁栄の背後でうごめく人たち。いろんな人種、階級、性的指向の人たちがハリウッドという華やかな舞台の影で欲望のままに突き進んだ先に訪れる悲劇。その夢と欲望を食って、醜く膨張するLAの姿こそ、エルロイの真骨頂だと思います。ただ、ブライアン・デ・パルマ監督の作風が、残念ながらその「都市もの」としてのエルロイ作品とうまくマッチしていないような。デ・パルマ監督はもっと人への執着が強く、奇妙な人びとが作り出す異様な空気をねっとりと描き出す。とくに、リンスコット家のディナーシーンは出色。前半のなぜか主人公目線のカメラでの家族紹介、一転して俯瞰的な視線からの会食シーン、そのなかで「さー破綻が来るぞ、来るぞ」という緊迫感がたまらない。ただ、全体をまとめるような都市への視線が弱く、どうしても各シーンがバラバラで、へんなシーンの寄せ集め映画になってしまったのでしょう。キャストも、全体的にうまくはまっておらず、こちらもチグハグ感が否めない。 一つ一つのシーンはなかなか面白く、全体としてはあまり退屈せずに楽しめたのですが(原作読んでるのも大きかったかも)、終わってみたら、結局なんだったのかという感じ。原作だったら、そこで浮かび上がる「暗黒都市LA」の姿が、残念ながら見えてこないのですよね。そこに、傑作『LAコンフィデンシャル』との違いもあったと思います。その点で残念な一作でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2024-08-10 18:10:21) |
2. ミュンヘン
《ネタバレ》 スピルバーグらしいヒューマニズムに満ちた暗殺スリラー映画。たぶん、このテーマだったら今ならもっと冷酷に徹したアクション・スリラーに仕上げることもできただろう。しかしスピルバーグは、登場人物たちの人間味を優先させ、それゆえに壊れていく主人公にフォーカスした悲劇に仕立て上げた。白眉だといえるのは、主人公たちが宿屋で敵と一夜を共にするシーン。ラジオの音楽で一触即発と思われた状況を救ったのは、なんとアメリカの黒人歌手アル・グリーンの「Let's Stay Together」! 1970年代という時代状況も考慮しながら、敵同士が意見を交わす本作でももっとも重要なシーンでの思わぬユーモアに少し心があたたかくなる。もちろん、だからこそその後に訪れる悲劇に打ちのめされるわけですが、このあたりのヒューマンな「甘さ」はスピルバーグならではです。その後の展開は復讐劇よりも、イスラエルという国家への疑念から、それまでかろうじて主人公を支えてきたものがガラガラと崩れ去る様のほうに力点が置かれるのですが、結局は「ユダヤ人」でも「パレスチナ人」でもなく「人間」としての描き方にこだわったスピルバーグらしい結末であったと思います。『シンドラーのリスト』や『プライベート・ライアン』と比べれば、物語的なバランスの悪さ、ヒューマニズムと復讐劇の噛み合わせの悪さは気になりますが、ある意味、21世紀になっても臆面なくこんな映画を撮れるスピルバーグの唯一無二さはむしろ貴重です。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-04-25 23:12:25) |
3. オアシス
《ネタバレ》 『バーニング劇場版』でイ・チャンドン監督を知った新参者です。事前情報ほぼなしでの鑑賞。冒頭のジョンドゥの奇行の数々でグッと惹きつけられ、いよいよヒロインのコンジュの登場で文字どおり度肝を抜かれました。この映画、個人的にはどうしても受け入れられない表現が2つあります。一つはいきなりの強姦未遂。もう一つはコンジュを「健常者」化する描写。ただ、これらの表現に多くの人が反発することは、この映画では織り込み済みであるようにも思いました。この違和感や嫌悪感こそが、人間関係が持ちうる醜悪さや恐怖であり、その醜悪さや恐怖のない「純愛」なんて存在しないのだ、というふうにも訴えているように見えました。また、この二人の根源的な違和を抱えた関係性が、それぞれの親族たちが醸し出す、もっと世俗的で卑近な嫌悪感に囲まれる二重構造になってるのもうまい。この、どうにもならない人間関係の「負」の二重構造が、コンジュが持つ恐怖の象徴であった木の枝を取り除くというジョンドゥの行為の「美しさ」を際立たせています。ちなみに私は近親者にコンジュよりはやや軽めの脳性麻痺患者がいますが、その目で見るとムン・ソリの演技は「やり過ぎ」感がありましたが、障がい者の症状やふるまいには個人差も大きいので、コンジュのような女性はきっといると思うし、彼女の演技がもの凄いレベルにあるのは間違いないと思います。いまでも、この映画を受け入れてはいけないのだという意識は、私のなかのどこかにありますが、心に棘のように刺さった本作の忘れがたさ自体は、やはり評価するべきなのかと思っています。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-02-13 17:45:02)(良:1票) |
4. JSA
《ネタバレ》 そういえば、まだ見てなかった韓国映画の話題作。俳優陣はソン・ガンホにイ・ビョンホン、そして美しすぎるイ・ヨンエ。テーマは南北分断。ということで、アクション、エンタメの王道娯楽大作を期待して見始めてみたら、思ってたのと少し違う。淡々と、なんなら少しオフビート感ある、つかみ所のないキャラクターたち。そういえば、監督は今や巨匠のパク・チャヌク、一筋縄ではいかないらしい。でも物語が見えてくると、等身大を絵に描いたような4人の兵士みんなが好きになってしまう。南北対峙する国境地帯という政治的にも微妙なテーマを、ユーモアとサスペンスまぜこぜに包みこみ、そしてラスト30分では突然の緊張感MAXからの一大悲劇。この、全部盛りなのに見事な切り替えで1本の映画にしてしまう力業こそ、韓国映画の魅力でしょう。美しすぎるイ・ヨンエも南北分断後のもう一つの戦後史を背負うキャラということで、物語的な着地点はあったものの、やっぱり全体としては浮いてしまっていたのは残念。それだけ4人のアンサンブルが見事だったということかもしれない。そして、何よりも見事過ぎるラストのショット。うまい。恐れ入りました。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-01-20 16:38:26) |
5. ゼロの焦点(2009)
全体として台詞回しも音楽も演出も大仰で過剰。中谷美紀さんはもともと表情も演技もオーバーアクト気味なのに、序盤の登場シーンから最後まで「熱演」にアクセルをかけてしまい、コメディかコントのようだった。逆に受けの立場の広末涼子さんは、終始引き過ぎで芯の強さを伝えきれない。得意な役回りだった木村多江さんはいつもの木村多江さん。3人の女性の設定にせよ、その後のサスペンスドラマの定番となった「崖シーン」にせよ、いまや多くの映画やドラマの基本枠組を作ってしまった作品であるがゆえ、その基本枠組を21世紀にどのように表現するのかが問われた作品であろうけれど、そうしたメタな視線をできるだけ排除して、昭和的な「正統派」路線でいったのが正解だったのかどうか。もう一歩踏み込んだ再解釈が必要だったのでは。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-07-19 07:05:19)(良:1票) |
6. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
《ネタバレ》 テレビシリーズ、旧劇場版はリアルタイムから数年の周回遅れで鑑賞済だけれど、新劇場版は「序」を地上波で見て以来は仕事だ子育てだでまだ見てなかった・・・程度のエヴァ歴です。今回、新型コロナウィルスの感染防止のため外出自粛のさなかにYoutubeにて新劇場版シリーズ無料配信ということで、時間もあるしだったら久々に見てみるか、というわけで「序」から鑑賞。「序」は基本テレビシリーズどおりだったので、新しい映像技術で昔のエヴァを見るつもりで「破」を見てみたらびっくり。アスカは登場したと思ったら、あれよあれよと死んじゃう(?)し、レイが食事会を企画・・・!?と、どんどん予想外の展開に戸惑う。あ、「破」から完全新ストーリーなのね、とやっと気づいたくらいで終わってしまった。面白かったといえば面白かったけど、エヴァってこんな感じだったっけ、という戸惑いのほうが実は大きい。あと、合唱歌二連発は演出としてはかなりいただけない・・・。シーンに合わないBGMを流すのもエヴァ流といえばそうでしょうが、ああいうのは1作に1回限りでしょう。しかも二回目がクライマックスなので、あそこで気持ちがスーーっと作品から引いてしまったのが、本当に残念。 [インターネット(邦画)] 4点(2020-04-27 08:43:55) |
7. オーシャンズ11
サスペンス!だった瞬間は、金庫内の箱からカバンが落ちそうになるところと、イエンの手が抜けなくなったところという、全部イエン絡み。作戦そのものも結局は、彼の身体能力頼みじゃねーか。なのに3流キャストな扱いは、2001年当時のハリウッドにおけるアジア人俳優の地位を反映してるんだなあと悲しくなる。全体としては、ユルユルと当時の豪華俳優陣のファッションと会話を楽しむ映画です。ただ、やっぱりテリーの何が悪かったのかよくわからないせいでカタルシス不足。しかも根本原因と言っていいテスはなぜか最後ヒロイン扱い。ついでにいえば、ジュリア・ロバーツはやっぱり「雰囲気美人」であってけっして「美女」ではないのも見た目重視のこの作品としては残念なところ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-03-05 17:48:32)(良:1票) |
8. 俺たちニュースキャスター
《ネタバレ》 コメディにしては、1970年代のサンディエゴというマニアックな舞台設定だけど、男性中心の職場にやってきたキャリア志向美女をめぐるあれこれという展開はこの設定だからこそ笑えた(現代でやったら寒すぎる)。ラストのクレジット後のシーンが象徴するように「こんな時代があったんだよね」というちょっとほろ苦い絶妙の雰囲気で包まれた、でも徹底的にバカな映画。出色は、各放送局のアンカーたちのバトルロイヤル!これぞカメオ出演の手本というべき、思わずニヤリとしてしまう大物俳優の使い方が素敵! ルーク・ウィルソンも、ベン・スティラーも、ティム・ロビンスも楽しそう。燃える男、駆ける馬、ふっとぶ腕など演出もぶっ飛んでます。そして動物園のシーン、政治的に「リベラル派」として知られるティム・ロビンス演じる、これまたリベラルな志向の公共放送局PBSのアンカーにあんなことを言わせる&やらせるなんて! 風刺とおバカが絶妙にミックスしたSNL出身のアダム・マッケイ監督とウィル・フェレルのコンビだからこその楽しい90分でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-01-28 21:09:45) |
9. 運命じゃない人
《ネタバレ》 「アフタースクール」がよかったので、いつか見たいと思っていていたのだけれど、やっと見られた。予備知識ゼロ。冒頭の失恋した者どうしのちょっとダルい出会いエピソードから、探偵視点の第2幕に入って途端に転がり始める展開は本当にお見事。まさか、あのオープニングで最後に現代ヤクザの悲哀の物語になるとは思ってもみなかった。この方の映画の凄いなあと思うのは、これみよがしではない絶妙な伏線の張りめぐらせ方。たとえば、宮田くんのガッツポーズ脇を通り過ぎるクラウン。意識するほど見たわけじゃないけど、どこか意識下に残ってて、それで後半のヤグザ視点になった瞬間に急に意識上に現れて、あーっそうだったってなる。別に前半を1シーンも見逃さないぞという意気込みで見る必要は全くない。フツーに物語を楽しんでいても、意識しないうちにどこかで引っかかってる程度の絶妙さ。そんなシーンが2幕から3幕にかけて続けて登場するのが気持ちいい。登場人物に感情移入したり、エモーショナルに盛り上がるタイプの映画ではなく、キャストが弱い分脚本の技巧的な部分ばかりが目立ってしまうのが少し気になるけど(その点では「アフタースクール」のほうが好きかな)、限られた予算とキャストでこれだけやれたら十分。楽しませていただきました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-12-26 10:44:06)(良:1票) |
10. 回路
ダイヤルアップ時代を知る世代としては、あの「ピー・ギゴー・シュゴゴゴー」みたいな接続音はホラーだ。あの音が響くだけで、どこかに吸い込まれるようで十分怖いわけだけど、その恐怖を、「心霊」「幽霊」という日本の怖いお話に結びつけ、それを見事に映像化してると思う。へんな効果音をBGMに無駄に露出高めの(当時)若手女優さんたちが恐怖に顔をゆがめるという、アイドル・ホラー映画的な趣向も、世界滅亡という必要以上に壮大な物語も、なんだかほほえましく楽しめる。主演のはずの加藤晴彦が倒れた小雪を重そうに持ち上げる場面とかの妙な感じも、「生きる」ことに執着する彼のキャラクターを表すと思えば、どこか受け入れられてしまう。全体として、ジャパニーズ・ホラー特有の怖さと緩さが、行間を読め!系の黒沢清監督作品とうまく融合してる。「インターネット」の怖さとか、加藤晴彦の演技とか、今の時代に見ればちょっと残念な要素もあるけれど、それなりに楽しめると思う。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-07-01 14:11:05) |
11. 鴨川ホルモー
好きか嫌いかでいえば好きな映画です。大学という空間、それも京都の大学だからこそ生まれる「ワンダーワールド」?を描いた青春映画としてとても気持ちいい。個人的には、青龍会のお話は、その内部のゴタゴタも含めて、何やってるのかわかんないサークル、怪しげなサークルの1つ1つにある小さな青春物語のメタファーのようで、とても楽しかった。ただ、万城目学の小説はやっぱり映像化向きじゃない。本だからこそ生まれる世界観の豊かさみたいなのが彼の小説にはあるのだけれど、映像化されちゃうと、その豊かさが途端に平板でつまらないものになってしまう。この手の小説は、小説の世界を映像にする際に何らかの「解釈」が必要で、そこをすっとばして小説に書かれていたことをそのまま画にしてみたっていうのではダメなんだということを再確認しました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2016-05-11 00:11:44)(良:1票) |
12. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
《ネタバレ》 ポール・トーマス・アンダーソン監督の怪作。やっぱりこの監督は凄い。全体的には『マグノリア』などのやや過剰気味の演出から一転して静かで淡々としているけれど、そこはダニエル・デイ・ルイスの強烈すぎる存在感で十分におなかいっぱい(+ポール・ダノの「怪演」も満腹感を増幅させる)。このあたりは好みは分かれるところで、個人的には「やりすぎ」感のほうが先に来たかな。ただ、映画としての「力」は十分伝わる。これって「アメリカとは何か」を語る壮大な叙事詩だと思います。アメリカン・ドリームと資本の象徴としてのプレインビュー、土俗的で原理主義的な教会の象徴としてのイーライ。そして「血」では繋がらない息子との関係は、「血」ではなく「理念」で無理矢理「国」を作ろうとしてきたアメリカの理念そのもののよう。この3者の関係は、複雑に入り組みながら、結局は資本主義の強烈な欲望の前にどんどん破滅へと向かっていく。最後の「終わった」は、何の終わりを意味しているのだろうか。いろんな解釈ができるけれど、あれこれ考えるだけでも結構楽しい。 [DVD(字幕)] 7点(2016-03-19 11:23:09)(良:1票) |
13. ランボー/最後の戦場
《ネタバレ》 正直もういいだろうと思ってたし、残虐描写もすごいっていうので、未見でしたが、『クリード』見て以来、またスタローンが気になりだしたので、思い切って見てみました。前評判どおりのシリアスで残酷。グロ描写は苦手なので、拷問のような90分。そして、一時期ジャンル映画化していたアフリカ紛争ものにも通じる「ビルマ人の残虐性」をステレオタイプに強調してるところなど、素直に「よかった」と受け入れられない。軍が、白人だけをなぜ生かしていたのかなど(物語を進めるには必要でも)不可解な部分もある。ただ、この映画が凄いと思うのは、「キレイ事」と「暴力」との複雑な関係を丁寧に描いている点。この映画は善意あふれるNGOをある意味、嫌みたっぷりに描いていて、キレイごとを繰り返すマイケルが最後に人を殺すシーンは、ある種のカタルシスすらもたらします。でも、最後の大銃撃シーンの後の死体の山は、同時に暴力とか戦場とか「戦争」とは何なのかを雄弁に語っています。そして、最後に生き残ったサラがマイケルのもとにかけより、それをランボーが眺めるシーンが私たちに伝えるものは、AかBかという単純な選択ではない現実というものの重みです。「世界の現実」を描いたこの複雑な作品を、たった90分の「戦争映画」の傑作として、スタローンが自身の監督作品として作るなんて、2作目や3作目の頃には考えもしなかったこと。やっぱりスタローンという人は本当に面白いのだと認識を新たにしました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-02-24 12:17:16)(良:1票) |
14. ナイロビの蜂
《ネタバレ》 『シティ・オブ・ゴッド』のメイレレス監督ならではのスラムの風景とかアフリカの人たちの描き方はやっぱり魅力的。ラスト近くの少年を飛行機に乗せるかどうかという、ギリギリの状況の「究極の選択」の重みも上映後にずしりと胸につっかえる。ただ、やっぱりサスペンス部分が惜しい。常にこちらの一歩手前で誰かが新事実を教えてくれるので、サスペンス感は薄い。妻の正体みたいな謎もあまり深まらないし、イギリス政府からも監視されてるはずなのにあっさりとケニアに戻れたり、国連支援組織の飛行機に乗れちゃったり。まあ、一番おかしいのは、あんなに重要なこと、なんで手紙に、それも手書き&署名付きで書いちゃうかなあ・・・という事件の根幹に関わる部分だったりします(原作がそうなのかもしれないけど、現代という時代設定を考えればあれはない)。というわけで、社会派スリラーとしての詰めの甘さが残念で、手ぶれカメラ演出もあまり効果的とはいえず、序盤のスラムの映像以外にはメイレレス監督の力量もあまり活かせていないなあというところ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-01-24 22:44:16) |
15. 2012(2009)
《ネタバレ》 いやー、わかってて見る私が悪いのだとは思いますが・・・。序盤からの映像の洪水は「見世物」としての映画の本領ではある。ただ、映像が凄いから話がダメでもいい、ということではないのではないかと。映像すごくても、話もちゃんとしようっていう気概が全くないのはちょっと・・・。あと、エメリッヒさんの一つの傾向として、実はラストがしょぼいというのもあるのですが、今回のラストは全くスケール感がない「密室での水攻め」。それまでにすんごい映像ネタは使い果たしちゃったのかもしれないけど、もう少しバランスも考えましょう。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 3点(2014-08-24 08:58:56) |
16. (500)日のサマー
物語内の時間が前後して一回目はちょっと混乱したので(200~300日あたりの前後関係がごっちゃになった)二回見た。完全にトム目線のストーリーなので、後半のサマーの行動はちょっと理解できないものだけど、でもある意味「恋愛」とはそういうもの。自分目線でしか見えない世界で、相手が何を考えているのか、すくない材料から推測して一喜一憂しまくるもの。そういう姿を、あれこれの映像技法で楽しめます。恋愛があれば、人生はミュージカルにだってなるし、都合のいい妄想と現実とのギャップに引き裂かれるときだってある。それを本当に映像にするというアイデアの勝利(まあ、『アニー・ホール』という偉大な先達があるわけですが)。十分おっさんになった今ではやや達観しながら楽しめましたが、たぶんイケてなかった10代~20代の頃にみたら悶絶して即10点付けそうな、愛すべき作品です。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-08 02:38:39)(良:1票) |
17. 愛のむきだし
《ネタバレ》 とにかく密度の濃い4時間。冒頭の1時間半は何がしたいのかわからず、ひたすらボレロでもうやめようかとも思ったけど、満島ひかりと安藤サクラの登場で俄然盛り上がり、主人公一家の崩壊あたりですっかりハマってました。確信犯的にチープな映像の合間に魂を持っていかれるシーンがちりばめられていて、とにかく気が抜けない。ちょっとエミール・クストリッツァの映画みたいだとか思ってしまったりもした。あと、ユウがヨーコを新興宗教から救うだけで終わらず、最後はヨーコがユウを精神病棟から救うというところには、人の心を何かの枠にはめようとする「施設」vs「むきだし」状態の愛という構図が見えて、この映画のシンプルなメッセージみたいなものを感じることができた。そして、西島、満島、安藤の3人は本当にすばらしかった。監督の才気と若い俳優のエネルギーが見事に結晶化した快作であり怪作。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-10-01 09:36:20) |
18. マイレージ、マイライフ
《ネタバレ》 主人公のマイルを貯めるのが楽しみな気持ち、なんとなくわかる。いつも混雑して長蛇の列ができるカウンターやセキュリティ・チェックを、さっとスマートにカードをかざすだけでスムーズに通り過ぎる。スタッフが自分の名前を呼んでくれる。いや、冷静に考えれば「何でこんな事に」と思うようなことだが、自分の仕事や生活の「スタイル」の結果として積み上がるマイルという数字を眺めるのは、きっと快感なんだろうなと思う。そういう彼を揺さぶる2人の女性がいい。正論をぶつける部下と、同じ価値観を共有する(と思ってた)大人の女性。そこから浮き彫りになっていく、主人公の生活の「空虚」。そういう主人公の仕事がリストラ通告というのもいい。実際には、仕事で直面する人間や社会のもっともドロドロした部分と、空の上の世界とそこから眺める各都市の風景の対比。「空の上(Up in the Air)」の「空虚」に気づいてしまった主人公の今後は明確には示されないが、たぶん同じような生活を送りながら、彼のなかでは何かが決定的に変わっている、そんな生き方を彼は模索していくんだろうと思わせる。大きな展開や感動的なエピソードがなくても十分に楽しめる佳作。この映画の監督が映画公開時はまだ32歳で、しかもあのアイヴァン・ライトマンの息子だったというのに驚き・・・。さらに、この映画の「大人の女性」ヴェラ・ファーミガが、自分と同い年だったというのに、さらに驚愕・・。若い(と言っておきたい)スタッフが作り上げた大人の映画。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 7点(2013-09-16 22:59:38)(良:1票) |
19. ワイルド・スピード/MAX
なんかシリアスなんですけど・・・。しかも、ヴィン・ディーゼルがシリアス演技をしようとしてる・・・。しかもカーアクション不足・・・。せっかく彼が復帰するので、思いっきり車バカのおバカ映画にしてほしかったなあ。ただ、ラストのラストでやっとおバカ解禁になったみたいで、次作にも手を出してしまいそう。ある意味、制作側の思うツボですね。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 4点(2013-08-12 12:35:01) |
20. ワイルド・スピードX2
ヴィン・ディーゼルの退場とともに車バカの対決という前作の設定はどこかへ行ってしまい不安なスタートでしたが、王道B級アクション映画に見事に生まれ変わりました。カーシーンになるとキレて楽しそうなポール・ウォーカー、無駄にセクシーなエヴァ・メンデスは一見の価値あり。デヴォンさんは・・・(以下略)。ただ監督が、ジョン・シングルトン・・・。『ボーイズン・ザ・フッド』に涙した自分としては、なぜか複雑な心境です。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 5点(2013-08-12 12:27:31) |