1. オールド・ボーイ(2003)
謎の清算率100%・・。そんな触れ込みにウソはない。なぜ普通のサラリーマンが?なぜ監禁に?なぜ15年も?そして・・。それらがキレイに線になって行く。だからと言ってことの真相がコレじゃ~ねぇ。。投げっ放しの不快感は無いものの、それに代わる不快感に襲われる。ダメな作品じゃない。むしろイイ。不思議な浮遊感とかすかに催眠を与えるかのような音楽。それを引き戻す疾走感溢れる映像と演者。時折、ユーモアを交えて。なかなか素晴らしい出来だ。そして物語が進むと同時に、ズンズンと絶望の淵へといざなわれ・・ない。もう一歩、いや半歩で強烈な痛みを共に味わえたはず。・・この作品には色んな親切がある。だが、それは観る側には不親切に作用する場合もある。皮肉。・・変態やね、おれ。悪行をノートに書こう。 7点(2004-12-02 17:26:15) |
2. 殺人の追憶
郷愁を感じる風景や映像、そして俳優陣も素晴らしい。完成度の物凄く高い作品なのは間違いないんだけど、それだけに物凄いジレンマに襲われる。それは、刑事たちの事件へのジレンマであったりするんだけど。それだけじゃないん。軍事政権下というオーバーラップする歴史はあっても、刑事たちの理不尽な捜査や尋問には腹が立つ。立ちまくり。容疑者の家族は登場するものの、被害者の遺族は登場しない。(←全くな訳じゃないけど・・)。人間味溢れる刑事を描いたつもりなんだろうけど、被害者や遺族への思い入れが見えない分、あの執念の矛先を計りかねた。子供の駄々に見えてくる。いや、素晴らしい作品なんです。それだけに完璧を求めてしまうっていうか・・。ただ、様々なジレンマを観る側に感じさせるってこと。それだけ深遠で、闇の歴史を背負った作品なんでしょーね。。 8点(2004-11-14 22:17:23) |
3. ジョゼと虎と魚たち(2003)
ジョゼって実は物凄く弱い存在に思うんです。抑えた喋り方は感情を隠し、自分を守る殻を一生懸命に作ってるように見える。その頑な彼女から恒夫が感情を引き出していく様が、とても自然に描かれてる。手を握られただけで・・あの《間》に一緒にドキドキ!んで、初めて感情的になり、嫉妬を露わにする!いいじゃないですかぁ。ジョゼが《虎》を一番恐れてたのは本心だったんだろうけど、所詮は檻の中。それよりも恐ろしく逃げ出したいものに自分が囚われてしまった時、殻は脆くも鮮やかに破られる。《孤独》。恒夫への言葉。あれが彼女の本音だと思うし、気張らない姿だと思う。殻を破ってもらい、自らも勇気を持って破って、見せた素顔。護身用のトカレフじゃ引き出せないジョゼのなまの表情。そしてサガンがねぇ・・。とても印象強く、思い返すとなんとも切ない。ジョゼの内面は映し出してないようで、断片は散らばってんだよねぇ。なんか恒夫を無視したレビューになってますけど、物語が恒夫の目線なんで言わずもがなかな、なんて。ラストを語らせてもらうと、あの涙は彼の感情によって流れたのではなく、ジョゼの弱さを知っていたから溢れたんじゃないかな。ホテルでのジョゼのセリフを思い起こし(寝てた?)、でも意に沿えない自分がいる。彼女を思うが故に感情が昂ぶり、目を腫らしたんだと思う。そして、また気丈に振舞うジョゼ。そうであるほどにぼくは彼女の弱さを感じてしまい、切なかったんです。 9点(2004-09-16 00:04:20) |
4. ノー・マンズ・ランド(2001)
兵士同士の子供じみた擦り合いが、戦争の正義のなさを物語る。救いのないラストだからこそ、戦争の理不尽さを思い知らされる。イラクを見よ!アジア杯、そして五輪で彼らの代表であるサッカーチームが大活躍。スポーツは平和の象徴であり、希望の光になりえるのに。。・・ユーゴからはそれすらも奪われた。選手の無念はもちろん、戦禍に打ちひしがれた国民の悲しみ。そして、ぼくの寂しさ。全盛期のストイコビッチやサビチェビッチをアメリカの地で(ぼくはテレビで)、見たかったんだ。その真実がこれ??悲しくて、本当に残念でならない。 7点(2004-09-12 11:14:06) |
5. カンダハール
娘のサミラの作品(『ブラックボード』)同様に、渇きを凄く感じる映画だった。そして魅せられると言うよりも、〔リアル〕を一層際立たせる映像美。ファンタジーとも思える映像の数々に、そしてラストに、「もしも更に彼方に真実があるならば・・。」と途方に暮れたのでした。 10点(2004-09-10 19:59:30) |
6. 酔っぱらった馬の時間
展開される過酷な世界に、成す術なく涙が溢れた。こんな経験は初めてでした。人は貧しいほどに助け合い生きているんだと言う事を殊更に痛感し、そして死と向かい合うことで己と孤独に対峙する。そんな中でも、マディをしっかと抱きアーメネの手を握り締めるアヨブの、地に足を付けた健気な姿に自然と涙する。・・なんといっても、潔いナチュラルな演出。。コレは驚嘆に値する!そして、あのラスト。左右を見渡し、少し戸惑いながらも踏み込んだ1歩は、一瞬であるかも知れないが希望に満ち満ちている。。 10点(2004-09-07 18:05:22) |
7. ディープ・ブルー(2003)
正直言いますと、もっと中立の立場で、神秘な世界を繋ぎ合わせた映像に全てを委ねて、浮遊感に浸りたかった。音楽は許そう。抑揚を付けるには必要。ナレーションも不可欠だと思う。欲を言えば、視点をもっと増やして欲しかった。シャチの捕食シーンはもうちょっと離れた位置から全体を見たかった。アップにして、あの臨場感と迫力を押し付けるのは・・。沖からシャチの側からも見たいと思いました。でも一番許せなかったのは、その場面を長々とスローモションで見せられたこと。な?すげーだろ?と言われてるみたい。アザラシを放り投げるシーンのスローは悪趣味以外の何物でもない。。作り手の、「こう見て!」な意図が感じれて一気に冷めてしまいました。最初、ぼくの目はランランに輝いてたはず!(タブン)これドキュメンタリーですけど、映像に手を加えてますよね?深海のシーンは素晴らしかった!けど、浮上場面は違和感アリアリです。素晴らしいシーンは多々あったんだけど・・。最後に一つ。海の生物の泳ぐ姿を見て食欲湧かないけど、イカにだけは食い気が・・。「活け造り食いてぇ~!」って思ったもん。イカって凄い。 6点(2004-09-05 20:46:20) |
8. ホテル・ハイビスカス
沖縄の明るさを存分に味わわせてくれる。そして味わい深い。置いてけぼり喰うと辛いかも。美恵子の喋りがちょっとした中毒症状を引き起こすんだわ。今度のケンジにいにいはハーフなんね。異母兄弟にあの母あり、な余貴美子が素敵。余所行き頭のおとうも負けてない。今回も沖縄愛に満ち満ちてるんだけど、快晴の乱れ打ちなしなところが良いよ。一癖二癖あって、あれよあれよなテンポが。沖縄も子供はせっかちなんか? 7点(2004-08-15 16:35:43) |
9. スチームボーイ STEAM BOY
最近の日本のアニメ映画はあんまり観てませんが(押井とか?)、哲学的で陰な感じのが多いと思うん。。コレは『AKIRA』の世界観は継承してないけど、安心して楽しめるワクドキを与えてくれるのではなかろうか?などと、予告を観て思った訳で・・。周りの評価も低かったし、モチベーション上がってもて(笑)んで、いざ始まると・・画面に圧倒され!!『AKIRA』漫画版では崩壊しそうなビル群を書き込みすぎてボツにしたと言う逸話を持つ大友氏。書き込みに対する情熱はまだ健在。なんとも細部にまで丁寧に描かれてる。車窓から~♪それだけでぼくは満足だったんですが、レイの顔が一瞬金田になったん♪嬉や~。。「おいおい・・」なユーモア(斉藤さん良かった)も含めてぼくも手塚氏を連想しました。タイトルもだよね??多々あるつっこみを差し引いても満足出来ました♪ 7点(2004-08-13 11:41:25) |
10. スイミング・プール
ラストでかなり「?」出ましたなぁ。なに?2人の女性の内と外の変化、プールサイドに立つ欲情の男たち。対照的なリアクション。日記と書きかけの原稿と、処分したはずの小説。十字架。諸々、後から拾い集めるのが楽しぃ。そして一気に加速するストーリー。複雑な心境にさせるスイッチやったけど、ぞくぞく来た!オゾン的な刺激は要所で。ん~、なるほど!って不確かな感触にニヤリ。終盤のランプリングの奇跡的な艶やかで清らかな美しさ、そしてラストの爽やかな笑みに。魅せるって部分、天才的だわ。ラストを見ちゃうとミステリアスな側面に囚われてしまいがち。全てを解き明かすより、内面に触れ・・引かれて、隠された部分にまた吸い寄せられる。観てる時、その後、と二重引力に見事に虜にされました。 7点(2004-07-24 11:19:22) |
11. ドッペルゲンガー
なんじゃい、スっとぼけ!序盤のテイストはむちゃ好み。仁美ちゃんのお手伝い、家に上がり込んでのトンカチ・・2人役所も勿論、こんな笑いの間を持ってはるんやぁ~。楽しめました。ユースケが出てきてからは、少しダレもチラホラ。と言うか、擽られ少し置いてチクリ刺し。『M』ばりの口笛に、えっ?今、どっち?なんて、ドキっとするシーンが効果的に思考を繋ぐ。終盤はガラっとロードムービー。秘めたるパワーが一気に噴出、前面に。その辺、何やら一貫性を感じると同時に置いてけぼりも喰いました。やっぱ、あの耐久力にはちょっくしジレンマ。ひょっとして、みんなかい?・・そんな疑いはお門違い?鬱積の開放と、初心回顧。そんな螺旋を強烈に、やんわりと。変に山場を作った感も否めませんが。こんな純然たるパワーと、奇妙に癖になる強弱はお見事でやんした。効果音がやたら控えめで、トンカチが地味ぃ~に怖かったり。虚と実とその挟間の三面を見せつつ、離し、ドキっで一気に引き込む。また離し。揺れましたわ。 8点(2004-07-24 10:58:51) |
12. シティ・オブ・ゴッド
コレねぇ~、ここ最近観た中じゃ「効いたぁ~!!」ナンバーワンです(笑)だって、こんな環境なんだもん。。身を投じなきゃ腐ってしまう、殺らなきゃ殺られる。。そんなのが当たり前の世界。しかも陰惨さは欠片もなく、むしろ爽快感すら漂う。全然飽きが来ないのは、監督の力量の成せる業。天晴れ♪・・・無法地帯に神はなく、笑みを浮かべるのは恐れを知らぬ子供のみ。心を掻き毟られ、連鎖の渦に呑み込まれ・・。なのに、この気持ちよさ??気紛れ神様ショッキング!!いやぁ、たまげたぁ!この映画ただもんじゃねぇ(爆) 9点(2004-07-13 20:47:52) |
13. ロスト・イン・トランスレーション
日本と日本人の描き方に異を唱える必要は全くない。誇張と言うよりは受ける印象の度合いが違ったり、多少の誤解ってものを含んだ表現だろうから。そこを享受する必要も全くない。ただ、初っ端は戸惑います。どこまで真面目にやってんだ?ネオンのチョイス、演出と通訳、おばちゃんなコールガール、007ネタは面白いんだけど。テンポの違いは分かるし、孤独も多少は共感出来るんだけど決め手に欠ける。内面を描ききる訳でもなく終始、中立で中性的で抽象的。そこをセンス良しと取るか、無難にまとめたと取るか。ストーリーも演出も冒険せずな感は否めず、したがってぼくは断然後者です!日本が舞台でなければ全然違った感じ方出来たと思うし、異国の地に同じ疎外感を抱く二人の、友情ともほのかな束の間の恋路とも付かない心の揺れとその顛末をストレートに体感出来たかもしれない。現にアメリカなどでは、日本語に字幕を付けずに疑似体験的な見せ方をしてるとか。生憎、言葉も文字の意味も分かってしまうんでねぇ~、残念!! 6点(2004-07-11 10:29:23) |
14. トーク・トゥ・ハー
劇場鑑賞後は、ぼーぜん。。濃い~内容に、とてつもなく美しい映像は初っ端のダンスから。パンフ拝見すると、実話を積み重ねたとある。なるほど、否定は簡単だけどポンと捨てきれない理由はそこにあったのか。そして、監督の包容力(昔は好き勝手してはったなぁ・・)レッスン場でのアリシアの姿に涙。。ただ、男の視点は捨てられる筈も無く。女性に受け入れられるのかと、手当たり次第に薦めてみたら、意外と好評。愛の寓話。実際に当事者になるのは勘弁。納得。。ベニグノの行為は許されるものではないが、それによって奇跡がおきたのは事実・・。そこには一方的ながら愛があったのも事実。・・そしてラストが素晴らしい!!彼女の笑顔と二人の出会いに救われた。無声映画も良いよ。 9点(2004-06-11 22:48:59)(良:1票) |
15. 焼け石に水
オゾン初体験の作品。レンタルで『ホームドラマ』を躍起になって探してた時に、手始め感覚で拝見。コレが面白かった~!初めはちょっと・・って思ったけど、次第に虜に。他のオゾン作に比べると、ドぎつさはないかも知れない。でも、あのラスト。ちょっと分かる疎外感。んでも、まだヤルカ!?一線越して笑いに変える。こんなん待ってたよ~、って感じでした。 8点(2004-06-11 22:17:44) |