1. ミッション:15
《ネタバレ》 こんな実験許されるのかなぁ?否、軍だったらやっちゃうのかなぁ?あの「es」を始めとして、ソリッドシチュエーション・スリラー、サイコサスペンスのひとつの形式として最早確立された感のある設定ですね。 3人それぞれに異なる事情。激しい拷問の末、娘への愛ゆえに敵にひれ伏してしまったホワイト、女性と子どもを爆撃してしまったオールズマン、仲間の死傷に重い責任を感じているディエゴ。直接的な説明口調になることなくそれぞれの背景が明かされていく過程が良いですね。死亡フラグの順番としては想定内ですが、密室の中で繰り広げられる心理戦を含めた争いには息が詰まる思いがします。 実際、ここまで大掛かりで尚且つ非道な実験があるのかどうかとか、ホワイトの脱出劇があまりに超人的だとか、些か非現実感が伴わないこともありませんが、ラストの後日談のアナログ風画質がそれを忘れさせてくれる良い意味での場違い的ハッピーエンド感を与えてくれます。 似通った作品が数多ある中、おそらくは(てか間違いなく)比較的低予算の本作。あくまでもエンタメ作品としてですが、見応えのある面白さでした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-07-19 10:49:31)★《新規》★ |
2. ブリック(2025)
《ネタバレ》 パニックサスペンスやサイコスリラーなどのジャンルで最早ひとつの定番となったソリッドシチュエーションもの。本作も基本的にはそのひとつですね。 特徴としては、何者かによってレンガで塞がれたアパートではあるものの、各部屋への移動は既設の通路などの与えられた手段ではなく、ドリルやハンマーで壁や床を破ることによってある程度は自由に行われること。次から次に脱出のために部屋を進んで行くのではなく、壁を破る度にテリトリーが広がって行く感じです。まぁ、そういう条件下での既存作もあったような気がしないでもありませんが、そのあたりに新鮮さを感じました。 壁を破るとその向こうには新たなメンバーがいて、次第に謎の解明に近付いていく。さながらRPGのようです。引き出しからアイテムが出て来たりもしますし。また、謎の解明に伴ってメンバーが抱える心の闇が明かされたりもしますが、主人公のカップル以外は今ひとつ説明不十分だったりもして、尺の短さ故のスピーディな展開と引き換えにドラマとしての奥深さやSFとしての緻密さと言ったものは犠牲にしてしまったように思えます。 面白いことは面白いです。緊張感が途切れることなく楽しめました。ただし、突き詰めて考えてしまうと疑問反論が目白押し。あくまでも娯楽作品として楽しむのであればおススメしてもいいかな?という1本でした。 ちなみに、ラストシーンは「猿の惑星」のオマージュでしょうか?このエンディングは好みです。これで伏線回収完了ですね。ちょっと意表を突かれました。なので+1です。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-07-18 14:11:36)《新規》 |
3. 秋の午後
《ネタバレ》 小津監督の「秋刀魚の味」をモチーフにしているということですが、婚期を逃しかけている独身女性の結婚とか結婚観についての物語というところ以外は特に共通項はないような?否、そこが本作のテーマなのでしょうからモチーフになっていることは間違いないのでしょうね。 法事の席で結婚についてのプレッシャーに晒され、場違いな日本文学専門の古書店で、店主に対して写真多めの料理本を売れとゴネるヒロインの姿には、何かしら社会の縮図的な意味合いが持たされているのかな?などと思えたりもしました。が、独身同士の二人の未来を暗示しつつ暖かな雰囲気の中で終了する物語は、あまり重く受け止めるべきではないのかもしれません。 なので、難しく考えすにシンプルにラブコメ的に受け入れて(観方としては軽過ぎかも知れませんが)、迷いつつも6点寄りの5点献上です。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-07-17 22:32:42)★《更新》★ |
4. 冬の蝶
《ネタバレ》 自然に囲まれた山奥の風景。聞こえるのは川のせせらぎや木々を吹き抜ける風の音。静かに流れる時間。ヒロインの脳裏に蘇る幼き日に兄と見た不思議な蝶の思い出。老い先短い祖母の口から語られる蝶の幻。更には兄が見つけてくれた蝶の亡骸。そして、再び都会に戻るヒロインの行方を遮る鹿の亡骸。 豊かな自然に囲まれた山村には、そこで生きる命もあれば当然死んでいく命もある。すべてを包み育みそして見守る大いなる自然。生き生きとした若い命のヒロイン。命を全うした蝶や鹿。そして今まさに死の淵に進みかけている祖母。直接的に語りかけて来るようなテーマ性は正直あまり感じられませんでしたが、静かにゆっくりと伝わって来るものがありました。クルマを降り、鹿の亡骸を路肩に除けるヒロインの姿が印象的。それは優しさなのか、自らの生きる道を求める姿なのか。後味の良い、居心地の良い作品でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-17 20:21:40)★《更新》★ |
5. 犬も食わねどチャーリーは笑う
《ネタバレ》 軽いノリで笑わせてくれるラブコメ作品を期待して予備知識なしで観始めたものの、中盤辺りから相当ヘヴィ。ブラックコメディどころかシリアスそのもの。何だかドンヨリした気分になってしまいました。 しかも、結婚式のスピーチの場面で何とか救われ、負けっこないだろう出版社の営業との喧嘩で負けちゃったりして更に安堵したところに、浅田美代ちゃん演じる夫の母親のマサカの爆弾発言で一気に逆戻り。あぁあヤッチマッタなぁ、え?このままバッドエンド?かと思いきや邦画コメディあるあるなドタバタ大騒ぎの後に、トドメとばかりに忘れかけていた伏線回収の力技であっさりハッピーエンド。そこまでの極シリアス感がなければ、それはそれで楽しめたかも知れませんが何だかなぁ…。 所詮は他人の夫と妻。そんなふたりがスレ違いを超えてより深く結び付いていく姿を描くのであれば、ちょっとメインエピソードが重過ぎた感が否めませんでした。ここら辺の受け止め方は個人差大だとは思いますが。ブラックコメディ、ダークコメディの類は好物な私ですが、重さと軽さの配分が自分にはどうにも合わず、少々低めの点数で失礼。 ちなみに、同感出来たのは「いい意味で」について。言い訳がましく使っちゃいがちです。免罪符にならない免罪符ですね。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-07-14 10:23:10)(良:1票) ★《更新》★ |
6. 素晴らしき、きのこの世界
《ネタバレ》 見応えありのドキュメンタリーですね。ナショジオの作家さんだけあってビジュアル面は申し分なし。内容的にもキノコについて知らなかったことが満載ですので、始終興味津々で楽しめました。 強いて言わせていただくならば、後半から終盤にかけてキノコの薬効や幻覚作用について重点が置かれ、個人的にはスピリチュアルな雰囲気を感じてしまったことで少しテンションが下がってしまったのが気になったかなと。ま、あくまでも個人的な趣味嗜好の範疇ですが。 とは言え、尺も程よく楽しくタメになる1本。良い刺激になりました。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-07-13 15:13:08) |
7. 栗の森のものがたり
《ネタバレ》 絵画のような美しく寂し気な森の風景。既に社会から忘れ去られたかのような土地に暮らす人々。時折映し出される華やいだ景色とそれを彩る音楽との対比。 決して大昔のお話でもないのに、まさにお伽噺、或いは昔話・寓話。重いです。けれども決して悲しみに圧し潰されるような話でもない。寧ろ心温まるお話のようにも思えます。 不確かながらも夫の消息を追い、マリオの好意に甘えつつ栗の森を離れてオーストラリアの地を目指したマルタは幸せな人生を送れたのでしょうか?全てを失いこの地に骨を埋めたマリオは安らかな眠りにつくことが出来たのでしょうか? ある意味特別な土地で起きた特別なお話。されど、その時代、その地であれば決して特別でもなかったかもしれないお話。今の時代の日本で生きる自分にとってはリアルに受け止め切れない物語ではありましたが、生きるということについて少なからず考えさせられた佳作でした。 決して華やかな色彩ではないにも関わらず、兎にも角にも美しいスクリーンに加点です。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-07-12 18:46:32) |
8. 人
《ネタバレ》 軽いタッチの幽霊コメディはTVドラマとか含めて多々あるとは思いますが、多くの場合は主人公が幽霊となって家族や恋人に会いに行くも、触れることはおろか姿も見てもらえないし声も届かない。そんな状況でいろいろなことが起き、幽霊の主人公が苦悩したり煩悶したり、そしてその末に安堵してあの世に旅立つ、みたいな展開が多いのでは? 本作はイキナリ母親が霊能力者というか、普通に幽霊が見えちゃう。だから、主人公は幽霊なのにお母さんと会話出来るし、挙句、先に帰宅していた数年前に故人となった父親までもがその輪に入る。てか、主人公が新たに輪に入るというのが正しいのかな? なので、幽霊話というよりも普通に繰り広げられる家族の会話。死んでんだか生きてんだか分からないというのが面白いですね。そして、その状況だからこその家族の在り方の振り返り。主人公が死んだことをひとつの転機にして、その生き様や家族との関係性を再検証するといったスタイルで話が進んで行きます。まぁ、死んじゃって幽霊なのは確定なので見えたり聞こえたりしても触れ合うことは出来ないという所はさり気なくキッチリ描かれているところは好感です。 結局、生きている者も死んでしまった者も何かしら心に抱いていたわだかまりのようなものが、ともに振り返ることで剥がれ落ちて行く。そして、死者は行くべきところへ、生者は新たなる一歩を踏み出す、そんなイメージで観終えました。ラストのスナップ撮影。母親の右の空間に居たであろう主人公(もしかしたら父親も)は、写り込んだ後に母親の見つめる天高く旅立って行ったのですね。良作でした。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-12 13:01:23)《更新》 |
9. なんで僕だけ
《ネタバレ》 小学生ぐらいの友だち関係アルアルなお話。仲良し四人組かと思いきや、4年生ともなれば個性も自己主張もそれぞれ。当然、さっきまで仲よく遊んでいたかと思えば、ふとしたきっかけで大喧嘩とか仲間外れとかが勃発、なんてことは日常茶飯事です。そんな日々だから学びもあるし成長もするし、些かくすぐったい言い方ですが友情だって育まれる訳ですね。子どもたちの心の成長を描いた作品は、勿論既に有名無名多々ある訳ですから、このテーマでの短編作品は結構ハードルが高かったのではないかと。 本作は少年の一人が所謂問題児。ここで表現されている内容だけでは問題を起こす背景については解り得ませんが、おそらくは彼自身か家庭環境かに何かしらの問題があるのでしょう。そしてそれを支えてくれているのが日々友だちと過ごしている大切な時間。おそらく3人は彼のことを漠然と理解していて、だからこそ付かず離れずの関係性を保っているように思えます。大人だったらこうはいかないのではないかと。子どもと大人の残酷性は全く異なる訳で。 短編作品ならではの、説明的になり過ぎない中から作品テーマがじわっと浮かんで来る良作でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-07-12 11:51:01) |
10. 老ナルキソス(2017)
《ネタバレ》 長編化作品については未見です。 短編作故に主人公の過去については推測することしか出来ませんが、おそらくはゲイについての理解は勿論、多様性について世間が殆ど振り向かなかった時代を生きて来た男性。今に至るまでも、誰にも言えない苦しみを抱えて来たことと思います。 そして現在。それでは誰もが彼のことを真に理解してくれるのかと言えば、そんなことはないのでしょう。今も彼は日々苦しみ、表向きの自己表現の手立てとしての絵本作家活動もままならない状況。しかも、その原因は世間の理解という外的要因ばかりではなく、寧ろ「老い」というものに直面した自分自身の内的要因が優って来ているようです。 そんな中、若いレオと出会ったことでより一層の苦しみを味わう主人公。外見は自分とは全く比較にならないほどに美しく、内面では自分を全く理解し得ない世代間のギャップ。自虐的にホームレスのような男をカネで買い、ある意味予想通りに手酷い仕打ちを受けてしまう主人公。 しかし、レオも若いなりに苦しみを背負って生きており、とりわけ父親のことを知らないで生きて来た彼にとって、主人公の苦しみに対しては理解出来ないまでも単なる同情心ではないある種のシンパシーが芽生えたようです。 ラストシーン。去り行くレオの後ろ姿にシャドーバッティングする主人公の笑顔には、私の理解力が足りないのか少々不可解な後味がありましたが(スッキリし過ぎじゃない?)、20分余りの短い尺にテーマが程良く凝縮された佳作であると思います。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-12 11:33:24) |
11. SKIN 短編
《ネタバレ》 観ていて重い空気に包まれざるを得ない展開。まだまだ根強く米国社会に残っているのであろう差別主義。そして、ここで描かれているジェフリーのような人間は、家族や友人、ひいては国家を愛する(あるいは愛していると思い込んでいる)が故に、その意識に導かれるがままに行動し、躊躇うことなく暴力を振るってしまうのでしょう。 幼い愛息にライフル射撃を教えるジェフリーは、家族思いの良き父親なのかもしれません。が、ライフルの照準の向こう側にあるものは紛れもない差別の対象者たち。差別意識を幼年期から植え付けられているトロイには両親の教えや行為は絶対であり、彼にとって差別の対象に照準器を当てることは極めて自然な行動だったに違いありません。 ジェフリーの悲劇は本作を観る限りにおいては自ら招いた悲劇。しかし、より長いスパンでジェフリーという人物を眺めた場合、彼もまた差別意識を幼少期から刷り込まれていた一人に過ぎないのかも。彼の妻子はこの悲劇を受け止め切れるのか。出来るとしてもどう受け止めるのか。それは復讐心という意識に転じて更なる悲劇の連鎖の起点となって行くのか。とりわけトロイの心の崩壊が懸念されます。 対する黒人側にしても、白人を拉致し昏睡状態にして墨を入れるという異常な行動のすべてを目撃した少年は、この先一体何を考えて生きて行くのか。この連鎖はシンプルな1本の鎖ではなく、複雑に絡み合った鎖になって行くのか。全て氷解する日が来るとしても、まだまだ遠い未来のように思えてなりません。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-07-09 00:28:42) |
12. 悪い夏
《ネタバレ》 原作は未読です。 ちょっとばかり主人公が精神的に弱過ぎること(それって優しさじゃないんじゃない?)、行動が直情的過ぎること(子どもに感情移入したからって夜な夜な通えば100%バレるし、言い訳出来ないし)など、気になる点は散見されないこともないのですが、概ね納得出来る展開でした。 ただ、エンディングはどうなんでしょうか?ある意味ハッピーエンド?(少なくとも美空ちゃんにとっては)でも、金本が出所して来たらどうなることやら。梨華だって傷が癒えたらどう動くことやら。山田はダイジョブだろうけど。てか、なんだかホワッと緩めな着地点だったように思えてなりません。犯人つかまって良かったね、これで3人で幸せに暮らせるね、みたいな妙に呑気な雰囲気を感じてしまいました。獄中の高野に手紙を書く夢見る乙女状態の古川が一番それを象徴してるかも。 それと、「クズとワルしか出てこない」というコピーは少々イメージ違いました。確かにクズもワルも出て来るけど、「しか」ってことはないような。 とは言え、出演者の熱演、窓口での対応を始め綿密な取材に基いていることを感じさせる脚本等々、見応えのある1本でした。面白かった。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-08 00:08:24) |
13. ファンタズム(2014)<OV>
《ネタバレ》 少し勿体ないかな?と思えた作品です。物語自体は斬新であったり奇抜であったりはしないものの、安定感を感じることの出来る出来映え。なのに音声が悪過ぎ。音量も音質もです。もう少し整音とか出来なかったものでしょうか?台詞が聞き辛いことこの上なし。また、意図的なジャンプスケアなのか効果音のボリュームが声に比してデカ過ぎてボリューム調整しながら観賞しました。 それと少々雑と言うか適当と言うか、そんな演出がいくつか見受けられたことも気になりました。役者さんたちの演技に依るところもありそうですが、低予算故のセットのチープさとかもあるのかも。気になり出すとついついツッコミたくもなるものでして、観ながら「おいおい」「それ違うだろ」みたいに声に出てしまいました。 先に文句じみたことを言ってしまいましたが、話としてはホラーよりも家族ドラマに寄っていて、恐さよりもラストの悲しさの方が引き立っているように思えます。感涙レベルではないにしても、自分の過ちの重さ?に気付いてしまった父親の哀しみが余韻として残りました。 そう考えると、冒頭の学生失踪案件は要らなかったかも。続くシーンとのギャップを観客に感じさせる必要はないでしょうし。良い部分とよろしくない部分が混在する作品。総じてみれば平均的と言ったところでしょうか。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-07-05 23:39:06) |
14. ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
《ネタバレ》 これはホラーはホラーでも所謂怪談噺ではないような?まぁ確かに人を惑わし連れ去る魔の山の話ということで括れば怪談噺のようにも思えますが、主人公の心の闇を描いたサイコホラーのように思えました。 勝手な解釈かも知れませんが、恐らくは弟の姿を見失った日、主人公は弟の変わり果てた姿を見ていた。ただ、死というものを直視した経験が心にキツく蓋をしてしまい、単なる嘘ではなく彼の視界から弟の姿は消え去ったのではないでしょうか?もしかしたら、捜索活動の中で弟の亡骸は発見されたのかも知れないし、廃墟だって消え去ることなくちゃんと地図上にもあるのかも知れない。人間の心の防御行動として、弟に関するあらゆる記憶や事実が、主人公の心の中では徹底して消去されたり改竄されたりすることはあるように思えます。なんなら司の存在だって脳内だけかも。まぁ聞きかじりの知識に基づいた推測に過ぎませんが。 ただ、そういった解釈だと解決できない要素もないことはなく(美琴の存在と彼女の経験する事象はその最たるものですね)、魔の山の齎した災厄と捉えた方がシンプルかも知れませんね。洋画で言うなら悪魔モノ。悪魔が登場すれば何でもアリの全部伏線回収可能。その方が解り易いかな? でも、自分的にはサイコサスペンス的解釈の方が気に入ってます。ジャンプスケアや直接的表現を極力削ぎ落した映像表現は、その解釈の方が活きるような気がするので。あくまでも勝手な解釈をもとに7点献上です。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-07-04 14:30:21) |
15. ストレイ 犬が見た世界
《ネタバレ》 犬の目線で描かれると言うより(ラストの方でそういったカットもありますが)犬たちと人間たちをフラットに描いたドキュメンタリー。犬との対比で人間社会の問題点をあぶり出した作品と言うべきでしょうか。テーマとしては人間の方がメインのようです。 楽し気に街を行き交う人々、厳しい毎日を送る人々、行き場所を失った移民の少年たち、様々な人々の暮らしや会話が自由奔放に生きる野良犬たちの姿とともに映し出されます。ギリギリの生活の中でも犬たちへの優しい目線を失わない人々の姿に安心させられつつも、人間たちと変わらぬ、否、それ以上に苦しい生活を必死に送る野良犬たちの姿に愛おしさ、更には凛々しさを感じました。合間合間に挿し込まれる古代ギリシャの哲学者を始めとする先人の言葉には頷かされます。特に主義主張を声高に叫ぶような作品ではなく、問題を提起し、あるべき心構えを静かに提示する作品なのでしょう。 思えば野良犬とか野犬を見なくなって久しいです。子どもの頃にはまぁまぁいましたけどね。過去の反省からトルコでは殺処分を禁止したということは知りませんでした。とは言え、積極的に保護しているようなシーンはありませんでした。どのように対策しているのでしょうか?今の日本では野良猫の方が身近な課題のように思えますが、犬と猫では課題と対策もだいぶ違うでしょうけれど、何か学ぶべきことがあれば知りたかったところです。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-07-04 14:13:26) |
16. イマジナリー
《ネタバレ》 雰囲気はありますね。適度な恐さとテンポのいい展開。短めの尺ということもあってとりあえずは楽しめました。 ただ、基本的なところでは既視感のあるエピソードの数々。特に新鮮な驚きはなかったと言う感じです。引っ越した先の地下室の奥に放置されていた人形。すっかり魅入られた幼い女の子。一人二役で人形とお話している微笑ましい姿、と思いきやどうやらもう一人の声がする?いやいや待てよ、そもそもそんな人形なんてないのでは? 主人公の幼き日のエピソード、そして父親の現況、そして眼前に広がる異世界等々。いろいろと種蒔きしてどうやって回収するのか?クマさんの狙いはジェシカ?アリスはジェシカをおびき出すために利用した?なんだか回りくどいような、てか何でそこまで執着するの?すべては幼き日のジェシカの創り出した空想の世界?それとも外的な何かに因るもの?解らないなぁ…。 行方不明の筈の少年と母親、そしてクマさん再登場で一同避難という災厄はまだ終わってないですよ的ラストシーンも何だか回りくどいように思えました。やっぱり外的要因による現実世界での怪異なのでしょうか? 決して面白くない訳ではないのですが、今一つスッキリしない、恐いんだか何だかよく解らない作品。雰囲気は悪くないだけに少々残念でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-07-01 23:47:06) |
17. サウンド・オブ・サイレンス(2023)
《ネタバレ》 なんだかいろんな既視感が続々ですね。音が流れるとアレが姿を現すとか、突然ヒロインが過去のある事件現場を追体験しちゃうとか、他にもいくつも登場します。 まぁそれらを繋ぎ合わせて新たなストーリーに仕立てることは決してダメとは言わないのですが、観終わってみれば斬新さとか新鮮さは感じられなかったと言うのが正直な感想です。 特にエンディングはよろしくないような。言葉は悪いのですが所謂蛇足というやつです。え、まだ続くの?え、更に続くの?え、もういっちょ??てな感じに引っ張られるのは明らかなマイナスイメージでした。 結局、呪い?の根本的原因は過去の事件ではなくてラジオ、てかそこに取り憑いたモノだということなのでしょう。事件や絵画ではなくてラジオに悪霊かなんかが取り憑いてるみたいな。個人的には、せめて泥棒オジサンが件のラジオをゴミ捨て場から持って帰るところで終わらせて欲しかった。それでも十分オープンエンド作品的に締め括れた気がします。エンディングで大幅に減点せざるを得ない1本でした。 [インターネット(字幕)] 3点(2025-06-30 11:28:17) |
18. 春の画 SHUNGA
《ネタバレ》 文化庁の補助金交付を受けて制作された作品だけあって、春画の持つ美術・芸術作品としての魅力について微に入り細に入り解説されている謂わば教本的ドキュメンタリーですね。 勿論18禁作品なので相当激しくエロティックです。アニメ化されると尚更です。実写では間違いなくモザイクの嵐。絵ならいいの?と思わないこともないのですが、美術作品として語る上では全体イメージは勿論のこと細部を拡大して技法を見せることも必要不可欠。間違ってもモザイクはあり得ないですね。ただし、とは言えエロ系がお嫌いな方は鑑賞注意です。 人間、てか日本人のエロ意識って昔も今も変わらないなぁ、それにしても思いっきりデフォルメしつつ表情は結構ステレオタイプで無機質な感じがするなぁ…などと漠然としたイメージだけを抱いていた春画の世界。そんなことはマルっきりないですね。デジタルの世界とは全く異なる次元における究極の感性と技術。大変勉強になりました。貴重な1本ですね。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-06-30 10:48:49) |
19. SING/シング:Thriller
《ネタバレ》 シンプルに楽しいショートフィルム。一応ストーリー性を持たせてはあるものの、殆どミュージックビデオ的構成。マイケル・ジャクソンの「スリラー」をモチーフにした「SING」のキャラクターによるミュージックビデオですね。パロディと見えなくもないのですが、作り手としては「SING」シリーズの1本というスタンスなのでしょう。うん、楽しい!繰り返し楽しめますね。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-06-27 17:21:53) |
20. Firecracker(原題)
《ネタバレ》 LGBTQや多様性の受容という考え方が市民権を得つつある時代と言っても、旧態依然とした思考や体質は根強く残っていることも事実。サムのことを気遣うあまり家族に紹介したがらないフェイは、うっかりと心にもない表現を口にしてしまう。一気に冷え切ってしまうサム。しかし、二人の互いを愛する思いは揺るがず、ともに社会に立ち向かおうとする姿で幕を閉じるショートフィルム。 主演の二人の自然体な演技が良いですね。さながら爆竹は、弾け輝き未来に向かって行く二人の姿のメタファーといった感じでしょうか。フェイの部屋でのみ語られる舞台劇のような物語。テーマを端的に表現した良作だとは思いますが、少々ストレート過ぎるとも感じられ、平均的な評価とさせていただきます。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-06-27 17:15:30) |