1. ラ・ジュテ
《ネタバレ》 名作と噂された本作にアマプラで漸く出逢えました。 物語としては、短編作品だけあってシンプルな構成のSFサスペンスですね。哲学的とも思える内容は、古典的なSF作品に通じるものも感じました。タイムパラドックス(正確には本作にはそれは登場しないような気もしますが)に関する想定が自分自身の理解するところと非常に近く、そのこともあって決して難解に感じることなく鑑賞することが出来たのだと思います。 ただ、本作の場合、特筆すべきはやはり「フォトロマン」と称される技法でしょう。モノクロ静止画を巧みに合成し、荘厳なBGMと冷静なナレーションに載せて演出する。恰も普通に動画を鑑賞しているかのような錯覚に陥ります。1962年(1958年製作との記載もあるようですが)というCGもVFXも殆ど一般的ではなかった時代に、これだけの映像を創り上げた技術は素晴らしく思います。中盤に一か所のみ(私には二か所に思えたのですが)挿し込まれる動画が非常に効果的。心憎い演出ですね。バンダム的風貌の「男」と素朴な美しさの漂う「女」のビジュアルも、モノクロ画面に溶け込んで魅力的だったと思います。 今の時代に最新技術を集結してリメイクしても、恐らくはここまでのシンプルな佳作を創り上げるのは難しいのではないかと。8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-07-07 14:09:57) |
2. 死霊の盆踊り
《ネタバレ》 ついに見つけました。GEOのコメディ旧作の棚で「悪魔の毒々モンスター」とかと並んで鎮座してたのを偶然にも発見!やっと見てしまいました。(←日本語が変) 正直な感想は「これは映画ではない」です。監督がDVDのおまけインタビューで言ってることは、こじつけっぽいし言い訳じみてるんだけど、確かに当時はTV産業が急成長を始めた時期だったし、少なからず映画産業はダメージを受けただろうし、零細映画館は経営上の危機を迎えていたのかもしれません。そんな中で、この堂々たる「見世物」の映像化は、短絡的で極めて限定的ではあるものの、ある種のカンフル剤として期待できたのかもしれません。実際、その頃は輸入ポルノが続々と上映されていた時代だったけれど、そこに行くのは少々敷居が高く、そう感じる人はストリップ小屋になんぞ行けよう筈もなく、この、映画の体裁を借りた「見世物」の長尺映像には、禁断の世界への秘密の抜け穴的価値があったかもしれません。だから、「これは映画ではない」と思うのです。 ただし、もしも少しでも本物の映画にしたいというクリエーターがこの作品に関わっていたら、結果は違っていたのかもしれません。様々な原因で死に至った女たちが、死後の世界で怨念を晴らすべく踊り狂う… このプロットは脚本と演出、そして構成がきちんとしていれば、かなり先鋭的でシュールなホラー作品になり得たと思います。また、当時の時代背景(政治的でも文化的でも)をきちんと踏まえたテーマに基づいて制作されていれば、社会派作品として重厚な作品にさえなり得たと思います。 でも、後悔先に立たず。結局、この作品はこのような形で世に現れてしまったのですね… 違う時代に、違う価値観の元で作られていれば、カルトムービーとしての意外な地位を築けたかも知れません。 ピッタリな直訳的邦題と、意外なほど美しく可愛らしいダンサーたちと、そして演技も何もあったもんじゃない俳優(?)さんたちと、ラストシーンの救急隊のデタラメな応急処置や怪我人の移送方法に免じて1点献上します。 [DVD(字幕)] 1点(2015-02-15 23:52:16)(良:1票) |
3. 地球最後の男
1964年製作?ん~、何だか更に10年以上古い感じがしますね。演技にしても、演出にしても、とにかく古臭い。それだけの理由で、観ずにリタイアした人は多いかもしれません。 しかしながら、ストーリーはしっかりしてますね。原作は読んでいませんが、あらすじを読む限り、原作のテーマに忠実と言う意味では、映画化された3作品中の一番なのかもしれません。 ラストシーン…これは意外な展開。と同時に、この作品の発する最も大きなメッセージは、そこにしっかりと込められています。製作年代を考えれば、かなり革新的な作品だったと言えるのでは? 古いけど新しい。B級作品のようでいて、B級とは言い切れない。作品の発する深いテーマに、しばし考えさせられてしまう1本です。 [DVD(字幕)] 7点(2008-08-02 01:55:57) |
4. 終身犯
実話を元に丁寧に描き出された佳作ですね。私自身トリばかなので、バート・ランカスターとトリさんたちとの触れ合いを観ているだけで心が和んでしまいます。 ただ、単純に「スゴイ人」伝説として観るわけにはいかない重い題材であり、時代背景の違いや国情の違いなどはあるものの、現在でも十分に受け入れ得る問題提起を含んでいます。 罪と人。罪を憎んで人を憎まずと言いますが、果たして本当にそうなんでしょうか?この主人公は確かに大変な努力をし、ひとつの分野の頂点に立ち、多くの愛鳥家やトリさんたちに安心と幸福を与えたことでしょう。ある意味、彼は見事な「更生」を果たしたと言えます。でも、彼の犯した非道な殺人が、他者や社会に対して与えてしまった悲劇と憎しみを帳消しにするだけのものなのか?彼の偉業と彼の罪は引き換えに出来るものなのか?かと言って、刑務所の更生システムに乗り社会復帰し罪を繰り返す者たちと比較すれば、彼の更生度は並外れたものと言わざるを得ず、考えれば考えるほど難しい問題を孕んだ作品です。 それと原題ですけれど、彼はアルカトラズに移送される前に研究成果を評価されており、なんだか不似合いな題名のように思えてなりません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-09-16 09:29:38)(良:1票) |
5. 猿の惑星
小学生だった頃、この作品の記事を当時毎週読み耽っていた「少年マガジン」の巻頭カラー特集で見た覚えがあります。その時の衝撃は、それは大変なものでした。小学生の私にとって何が衝撃?そう、特殊メイクです。当時の常識では考えられないくらいのリアルさ。円谷プロの怪獣モノを熱心に見ていた私の目には、それはまるでホンモノのように映ったものです。(勿論、円谷プロの怪獣達を決して否定などしませんが…) そして映画館での衝撃、原作本を読んでの衝撃、とにかく全てにおいて衝撃的な作品でした。特にラストには唖然として声が出ない思いをしたものです。 そして今、あらためて観てみると… やはり古さは否めません。それは当然です。40年近く経っているんですから。映像、音楽、ストーリー展開…全てに古さを感じます。でも、だからこその凄さを感じます。当時の衝撃が蘇ります。そして何より、面白いです。すごく面白いです。極上のエンターテイメントは、時を越えるんですねぇ。 追伸:地上波初放映の時、日本語吹き替えにあたって、翻訳の方は猿達の一人称に苦労したようです。覚えてらっしゃる方いらっしゃるでしょうか?猿達は自分のことを「おいら」と言ってましたね。(笑) 9点(2004-09-25 19:51:46) |
6. 2001年宇宙の旅
映画史上、最高傑作を争う一本。ジャンルを超越した名作です。原作の素晴らしさを余すところなく表現した作品の一本とも言えます。 思えば30年ほど前、この作品を初めて観た時には衝撃を覚えました。当時の私にとって、映画というものは単に娯楽であって、決して自らの存在を問うような対象ではなかったからです。この作品は、観ている「その時」に感銘するのではなく、見終わった「その後」に感銘し、それが増幅していくという特別な影響力を持ちます。私自身、その持つ意義について、初めて真剣に議論した作品でもあります。 SF映画としても、30数年前にこれほどまでに将来の科学技術を具現化した作品は稀でしょう。少なくとも私は他に知りません。勿論、優れた原作に拠るところも大きいのですが。唯一、「無重力状態の宇宙船の中でストロー内のドリンクが下に落ちるのはオカシイ。」という意見を昔なにかで読みましたが、そんな指摘は何の意味もないですね。 10点(2004-09-25 07:23:12)(良:2票) |