1. ザ・ハント(2020)
《ネタバレ》 それほど多くのレビュー数とも思えませんが、良くも悪くも既に皆さんに書き尽くされている感がありますね。社会風刺エッセンス付きブラックコメディテイストのホラー作品とでも言いましょうか、私は大いに気に入りました。 何となく最近メジャーなヒット作で見かけたような冒頭の主人公らしき人物の連続頓死模様。(どっちの作品が先だったかよく分かりませんが)これで一気に惹き付けられました。グロさもある程度デフォルメされていてキモさはなし。(個人的耐性があるだけかも)鉄条網を越えて逃げ込んだGSの善良そうな老夫婦も予想通り追う側。そしてまたもや主人公かもの一行は頓死。突如登場するヒロイン感イマイチなヒロイン。何故か無敵、何故かハイスキル。云々。書き続けると長々としたネタバレあらすじになりそうなので後は自粛します。 兎にも角にも切れ味鋭いぶっ飛んだと言うか吹っ切れたサバイバルアクションは最高ですね。ヒロインらしからぬヒロインの無敵さ加減も良好。表情がいい!躊躇も後悔も感じさせられない見事な顔芸。勿論この状況を楽しんでもいない。恐るべき自己客体視。気に入りました。ラスボスのヒラリーさんが霞むぐらいの存在感ですね。プロフィールがアフガン従軍経験ありのレンタカー店員としか明かされないあたりも潔し! 勿論、これがありがちなハント&サバイバルホラーだったらここまで面白くはなかったでしょう。中途半端感は否めないながらも米国内の二極化の縮図みたいな時事ネタを無造作にふりかけたからこその変則的な感情移入性。どっちにも肩入れしたくなりそうな展開。中途半端にふりかけているからこその味わいがあります。丸投げではない程度に観る者に投げつけて来る感じ。これもいいです。 さり気なく回収しているシャンパンネタやキャビアネタもお茶目なレベルで好印象。願わくば、個人的にはキャビアを口にしたCAが苦しんだりして実はキャビアには毒が入っていて、毒を入れたのは主催者側の反乱分子だったりとかもうひとひねりラストに加えたらとか思ったりもしましたがやっぱ蛇足かな? [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-25 10:30:44)《新規》 |
2. キャドー湖の失踪
《ネタバレ》 なんとも複雑怪奇なタイプリープ・サスペンス・スリラー。と言いたいところですが、相関図を書いてみると意外とシンプルでした。 予備知識なしで鑑賞したため、アンナの行方不明の理由は一体何?まさかのエイリアンアブダクション?だとしたら既視感あり過ぎて興覚めかも、などと考えながら観ていました。 当たらずしも遠からず、と言いましょうか、結局はSFテイスト。ただし、登場人物の関係性には程良くサプライズ感があり、多少の矛盾を感じつつも好感を持って観終えることが出来ました。バミューダトライアングルに代表されるようなミステリースポットの怪異をかなりミニマムに描いたという感じでしょうか。そこに家族の物語が上手く溶け込んでいます。 時を超え今再び時間を共有した父娘を待っていたのは父の死の衝撃。それを契機とするかの如く時空を繋ぐ特別な空間は閉ざされ、ワニの体と同じように文字通りの頼みの綱は切断されてしまう。しかし、それは同時にエリーの新しい家族を強く結びつける。思えば母娘の反目もまた、時空の歪みがもたらしたものだったのかも知れませんね。 良く練られた脚本とそれを生かす見応えのある演出に8点献上します。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-24 21:11:41)《新規》 |
3. ジュラシック・シャーク-3.0
《ネタバレ》 流石のマーク・ポロニア監督。これは相当Z級感満載の作品ですね。 冒頭いきなりのCGなのかアニメなのか判断に窮するサメが登場。どう見ても空気を入れて膨らませているようなサメの背鰭が海面を彷徨う。しかも、登場カットごとに相当なレベルで大きさが異なるという巨大?ザメ。そして本作のヒロインである(褒め言葉かどうかギリギリ)ダイナマイトバディのモデルが登場。更には訳もなく凶暴でエロい窃盗団の女等々。全編通じてどこを取っても何かしら言いたくなる登場人物・脚本・演出ばかり。そして何とラストに殆ど脈絡なく監督の秘蔵っ子?シャーケンシュタインを連れて来るとは…。これにはもう脱帽あるのみです。 これはこれで楽しい!と声を大にして言いたいところですが、いくらなんでも観る者を選び過ぎですよね。いや、それでいいのだ!というサメ映画フリークスのみが賛辞を贈るであろう作品でした。だとしても、オープニング(エンド)ロールの異様な長さ(のんびりさ)は勘弁して欲しかったところです。 ちなみにプロットはほぼ「1」の焼き直し?監督が違うだけ?私はまだ「1」を観ていないのですが、乗りかかった船ならぬサメ。この際観ないといかんのでしょうね…。(「2」が配給されていないのにはホッとしますが) [インターネット(字幕)] 1点(2024-11-24 17:22:51)(良:1票) 《新規》 |
4. ツユクサ
《ネタバレ》 なんとも罪のない作品。それぞれに悲しみを抱えながらも自分なりの細やかな幸せを追い求める3人の中年女性。幼い恋心に初めての痛みを覚えた少年。苦しみから逃れるべく街を離れ仕事からも離れ心の平安を求めようとする中年男性。皆、新たな幸せを見つけて行く。悲劇は過去のこと。この先には幸せだけが待っている。そんな予感。 時にはこういう作品に首までどっぷり浸かって身を任せるのもいいかも。テーマソングがまたいいじゃないですか。ちょうど航平ぐらいの歳にリアタイで聴いた思い出のある楽曲。懐かしい。癒しのひと時でした。大人のファンタジーですね。6点献上します。 関係ありませんが、松重さんの食事シーンを見るとそこだけ別の作品に見えてしまいました。イメージ強っ!w [インターネット(邦画)] 6点(2024-11-18 22:33:37) |
5. 意のままに
《ネタバレ》 催眠療法というと、イコール催眠術と言うか、催眠状態の中で失われた記憶を取り戻す、というイメージ。本作でも警察側の手法として登場はしますが、犯人側の応用はちょっとばかり違うのですね。この場合はどちらかと言うとマインドコントロールなんでしょうか?てか、それさえ超えて別人格に入れ替えようとしている。これは恐いですね。 眠っている間に一体何をされているのか…。まぁミード博士は登場シーンから相当怪しい人物。普通なら近付かないでしょう、恐いから。実際ヒロインは当初拒否的。でも、お節介なお友たちの策略でお近付きになっちゃう。まぁ心が疲弊しきっていたジェンにしてみれば心のどこかで望んでいたのかも知れませんが。それでも、まさか博士が亡き妻との差し替えを図っているとは思いもしなかった訳です。実際に催眠術でどこまで出来るのかは知りませんけど。 そこに出て来る白馬の騎士の如き刑事。始めっから疑うことなく積極的に関与。お約束的にジェンが単独行動に走った時には、いつの間にやら彼も単独行動。で、お約束どおりに絶体絶命。短めの尺だけあってこのあたりの展開はすっ飛ばし気味です。 そして最終決戦。警察側の催眠療法士の仕込みが功を奏し?二転三転しつつもジェンと刑事が勝利する訳ですが、ここまで来ると相当現実離れしている感は否めない展開。う~ん、シリアスなサイコサスペンス的物語という出来映えではありますが、細かく見ていくと無理があり過ぎかもです。 ラストシーンの纏め具合は劇場用映画と言うよりTVドラマ的ですね。真面目に考えると、犠牲者も結構いるし重めのサイコサスペンス。ところが、ラストシーンに限らず全体的にかなり軽い雰囲気で作られています。 面白くないとは言いません。催眠術ネタってことで既視感も伴いますが、オリジナリティはキチンと保たれています。現実的に受け取らないであくまでもエンタメ系作品と言う風に受け入れれば、ハラハラドキドキと楽しめる作品ではありました。 ちなみに、原題ではストレート過ぎますが邦題はほぼネタバレ的?ちょっと考えもののような気がします。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-17 19:17:44) |
6. 見えざる手のある風景
《ネタバレ》 アマプラの見放題終了間際のリストで見つけて予備知識なしで鑑賞。思わず魅入ってしまいました。 舞台は近未来の地球。激しい戦争もなく?これぞ商機と見込んだ一部の階層主導の下、平和裏?にヴァ―ヴとかいうカニの変形と言うか尻顔と言うか奇妙なエイリアンの植民地と化した世界。激しい貧富の差のある人々の生活。貧しき者たちは占領前の身分や資産を失い苦難を強いられている、らしい。(特に貧困等に苦しむ姿は登場せず) ひとことで言えば現代社会を風刺したブラックコメディですね。エイリアンが侵略・征服のことを「上陸」と呼んでいるあたりは恰もアメリカ大陸の歴史のようにも窺えるし、環境破壊を批判し大上段からあなた方を救ったのですよみたいに言うのはまさに侵略戦争の論理にも通じるように思えるし、微に入り細に入りいろいろと興味深く鑑賞できる作品でした。 結局勝利を勝ち取ったかの如き抵抗は虚しく終わり、それでも戦い続けようとする姿が描かれてエンディングを迎える訳ですが、そのあたりも今の世界を支配する力や理念等々への失望感或いはアンチテーゼが込められていると感じました。まさに「見えざる手」への畏怖と言ったところでしょうか? カイリー・ロジャースさん演じるクロエの可愛らしさに+1点の8点献上です。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-15 00:23:04) |
7. みなに幸あれ
《ネタバレ》 冒頭はホラー仕立て。ところが中盤を待つまでもなくホラー感が薄れていきます。メタファー全開でテーマ性が前面に沸き立つと言うか、ゴリゴリの社会派作品の様相を呈して来ます。そして流れは一気に加速してホラーエッセンスを振りかけつつエンディングへ。うん、やっぱりテーマ性を感じざるを得ないです。勿論、ホラーにだってテーマ性はありますけれど、本作の場合は結果的にはギリギリでホラー風味になっている感じかな? これはお伽噺、或いは童話等に具体例があるように、人間の性と言うか生き方の本質と言うか、そういったものを異なる姿形に置き換えて表現していると個人的には大いに思うのですが、さりとて観る者に選択肢を与えていると言うか、シンプルにホラーとして観てもそれはそれで構わないですよみたいにしつつも、あくまでもテーマはあるんですからね、そっちを見て欲しいのですよ、と言った感じでしょうか。 と言ってみたものの、冒頭述べたとおりホラー作品にも当然の如く大いにテーマ性はある訳で、矢鱈驚かせてばっかのお化け屋敷的ホラーと同じぐらい社会派ホラーとかヒューマンドラマと呼ぶべきホラーだってある訳だし、なので本作もカテゴライズ上はあくまでもホラーなのでしょうね。 なんだか書けば書くほど混乱しそうで、言いたいことが纏まらなくなりそうです。まぁ、それだけ考えさせてくれる作品とも言える訳で、このテーマはホラー仕立てにすることでスッと入ってくるようにも思えて来たりして、何だよそれだったら本作の手法は正解じゃん!という考えに至ったところで筆を置きます。乱筆乱文失礼しました。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-11-11 00:27:49)(良:1票) |
8. 妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク
《ネタバレ》 イイじゃないですか~、コレ!いやもう全編通じてニコニコと好々爺の如き顔で鑑賞してしまいました。我ながら、傍から見てたらさぞかしキモかったことでしょう、きっと。 確かに冒頭のヒーローによるレイプ&殺戮シーンは考えもの。抜け忍なんだから(ってこともないかも知れませんが)もっとストイックな生き様でいて欲しいところ。これじゃ単なるエロい無法者。この描き方だけは要修正ですね。 でも、後は概ね満足。洋画・邦画を問わずこの手のトンデモ作品にありがちな演技だか何だか分からない、てか俳優だかエキストラだか分からないなんてことはなく、キチンとした俳優陣。アクションや殺陣はキレッキレじゃないですか。物語的にも若干オリジナリティ的には如何かとは思いつつも大いに練られたストーリー。派手な血糊やバラバラの人体なんかは、作品のテイストに合わせて敢えてチープな雰囲気にしてる感じ。サメの造形も満足です。口を開いたカットで中からエラ越しに外が見えてるのなんてクオリティ高いです。そんな訳で概ねどこをとっても及第点と評価したいです。 ただし、タイトルは考えものですね。恰も洋画トンデモB級作品の邦題の如きタイトル。邦画なんですから邦画としてのプライドを持ってカッコいいタイトルでキメて欲しかったです。それに、そもそもこれってサメ映画じゃないですよ。サメの出る忍者アクション作品?そこのところは只管残念!尺を延ばしてサメカットをマシマシして欲しかったかも。それもあってやや減点しての6点献上です。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-11-07 22:18:54)(良:1票) |
9. ワッツ・インサイド
《ネタバレ》 人が入れ替わるという作品は洋の東西を問わず何作もありますが、本作はそれの集団発生版。しかも、人格が入れ替わっているがために過去の秘密が暴かれていく。映像的な表現も一工夫も二工夫も施されていてオリジナリティを感じることは出来ました。 が、何せ集団発生するし連続してシャッフルするしで、誰が誰だかを把握するのはかなり困難。正直なところ私は一回では分らず見直しが必要でした。(サブスク様様です) ネットで検索すると「誰々(実は誰々)」みたいに見た目と中身を書いてくれている方とか人物相関図を付けてくれている方とかいらっしゃって、観終わってからそういったレビューやブログを拝読すると漸く全体像が把握出来たという具合です。(有難や) つまり、アイディアは面白いし物語としてのオチも面白いのですが、ややこし過ぎて難解なのが最大の欠点の作品かと。メインテーマに直結する部分を敢えて難解にしているのは作品的にマイナスかなと思うところです。 とは言え結構楽しめたので甘めの7点献上です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-01 17:46:26) |
10. そこにいた男
《ネタバレ》 30分余りの尺にみっしりと詰め込まれた愛憎劇。恐いですね~。いろいろと恐い。 ひとつには男を愛し過ぎてしまった女の恐さ。後先考えずに貢ぎ続けた女は、真実を知った時、男の命を奪うことで男を永遠に自らのものにしようとする。男の妻は、夫の浮気を知りその相手に自らの存在を知らしめようと夫の体にメッセージを残す。どちらも恐い。 そして男の愚かさにも似た恐さ。気付けよ!結果考えろよ!愚かを通り越して恐いです。 実際にあった事件からインスピレーションを得て作られた作品とのことですが、それを聞くと尚更に恐くなります。ただし、ドロドロとした物語ではありますが、短編作品としてコンパクトに纏められていて、流血の事件なのに意外と陰惨さを感じさせない後味。その代わりにと言うか、ただただ恐さばかりが残る作品でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-11-01 17:09:08) |
11. ドミノ(2023)
《ネタバレ》 今更?という出遅れ加減ですが、予備知識なしで鑑賞。始めは超人モノ?と思いつつ観ていましたが、いや待てよ純粋に近未来SF?との思いに駆られ出し、主人公が12回も被験?していて彼を取り巻く全ては人為的に創り出されたものという段になって超人系近未来SF?みたいな感覚になり、結局は荒唐無稽でいいじゃん!みたく楽しみました。うん、満足です。 間違いなく荒唐無稽な物語です。ただし、誉め言葉です。流石ロバート・ロドリゲスさんですね。かなり無茶な設定とストーリーなのにキチンと(殆ど)破綻することなく纏め上げられている。ホント、流石です。既にご指摘がありますように「マトリックス」や「インセプション」の世界観を彷彿とさせる部分は大いにあるのですけれど、決して模倣とは感じさせない、寧ろオリジナリティを感じさせてくれました。 エンドロールのエピソードは若干力業的で続編ありき的(続編ないですよね?)ではありますが、単純にハッピーエンドで目出度し目出度しのエンディングよりベターですね。 ただ、かなり楽しめた作品ではありますが、正直なところベン・アフレックさんは個人的にイマイチ好きになれない俳優さんでして、本作におきましても(ご本人の責任はないにせよ)イマイチなキャラ設定と思えてしまい、その分興覚めしたこともあって7点献上に留めたいと思います。 ちなみに、原題はストレート過ぎてネタバレ的。邦題の方が謎めいていて気に入りました。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-10-29 16:17:38) |
12. 迷霊怪談集
《ネタバレ》 如何にもアジアンなホラー作品。本邦の怪談話に通じるテイストを備えつつ、香港やインドネシア、タイなどの東南アジア圏のホラーの色彩も強く感じられます。雰囲気は結構好きです。 ただし、さほど恐くはないし、目を背けたくなるような残虐描写もあまりない。寧ろ、かなり入り組んだストーリーで、よく考えないと解りにくい部分も多々あるような。そのあたりは、ストレート直球的な欧米系ホラーと大きく異なるように思えます。 三つのお話それぞれに共通するのは、じわじわと迫って来る悲劇性。一話目は美に執着し過ぎてしまった女優。二話目はマジシャンを目指した結果悲劇に心を蝕まれてしまった父子。三話目は突如幸せな暮らしを奪われた少女。それぞれに決して抜け出すことが叶わない深い悲しみに彩られた物語。やりきれないものがありますね。 強いて残念な点と言えば、二話目と三話目が同様の仕掛けになっているところでしょうか。そこはもうひと工夫欲しかったところです。それと、全体の進行役的な冒頭とエンディングに登場するエピソードは少しばかり軽かったかも。ホラーあるある的なラストは、中身の三つのお話に今ひとつそぐわないような気がします。三話を際立たせるための一つの手法なのかも知れませんが。 コロナ禍後のベトナムで大ヒットしたというホラー・アンソロジー。邦画ホラーがお好きな方にはお勧めかも知れません。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-24 15:35:38) |
13. 通夜のまえに
《ネタバレ》 主人公は自殺した同級生の自他ともに認める一番の親友。だったはずなのに、帰郷してみれば親友が結婚していたことさえも知らない。集まった同級生たちが知っていることも知らない。何故、自分には話してくれなかったのか?郷里を出てからも電話で互いのことを話し合っていたはずなのに。死が齎した現実の発露。困惑し戸惑う彼だったが、それ以上に混乱している遺族や同級生たち。彼は事態を収めるべく咄嗟にある嘘をつく。 そんな感じに纏めると一人の青年の死を契機として詳らかにされていく家族関係や人間関係の綻び、そして虚像をテーマにした作品かなとも思えるのですが、基本コメディータッチなのが少々気になりました。 否、少々じゃないです、大いに気になりました。何だか「死」と「死の齎したもの」が軽いんです。人の「死」やそれに伴う葬儀を扱った作品は少なからずあります。そして、中にはコメディ要素で彩られたヒット作もありますし、その場合は「死」というものを面白おかしく扱ったりデフォルメしたりして、「死」だからって暗くなる必要なんてない、誰にだって訪れることなのだ、という感じに製作されていたりします。ただし、明るく軽く「死」について語っていたとしても、どこか一線を踏み外すことがないよう考え抜かれているように思えます。そこが本作は違う。そう思えるのです。 遺された者の歪な関係性を直接的になり過ぎず描きたかったのか?それともシンプルに「死」を笑い飛ばしたかったのか?主人公が一所懸命に造る極彩色のトーテムポールが妙に悲しかったです。コメディのハズレっぷりはマイナス要因。3点献上です。 [インターネット(邦画)] 3点(2024-10-21 23:06:19) |
14. 全部ゲームのせい
《ネタバレ》 何だか冒頭から波長が合わないというか…思えばドイツのコメディ作品て観たことがあったっけか?そもそも少なめのドイツ発コメディ作品。ドイツ映画と言うと社会派ドラマであれアクションであれホラーであれ、硬派で重厚な作品ばかりが思い浮かび、「コメディあったの?」と言うぐらいに記憶が曖昧です。多分、ほぼ観ていないと思います。 台詞も仕草も肝心のストーリー展開も、何かこうスッと入って来ないのです。独特の雰囲気と流れがあって、一つひとつのギャグと言うかジョークと言うか、それがどうして可笑しいのか解るには解るんだけれど素直に笑いに結び付かない感じ。これはもう感性に合わないとしか言いようがないです。 当然の如く登場人物に全く感情移入出来ず、観終わってしまえば最新の六角形ラケットを手にした全裸卓球だけが記憶に残っている状況。 決して面白くないのではないと思うのです。ただ、自分には合わない。あ、それって面白くないってことですね。3点献上です。 [インターネット(字幕)] 3点(2024-10-21 22:23:09) |
15. そのままの君で
僅か11分半の尺の中に込められた思い。ちょっと個人的に過ぎるのかも。世代も違えば生まれ育った土地も違う。何もかもが異なる若者の心象風景に感情移入するのは土台無理。と言うか、作り手からも求められてはいないのかも知れません。 とは言え、何十年も前に自分にもあった(ような気がする)感覚が呼び覚まされくすぐられる11分半ではありました。 [インターネット(邦画)] 5点(2024-10-19 10:52:35) |
16. バーバリアン
《ネタバレ》 ノンストップ何でもありクリーチャー大暴れ風ホラー、とでも言いましょうか、既に皆さんの中にご意見もありますように前半は良くとも後半はまるで別世界の如き展開になり、これは評価が分かれても仕方ないですね。てか、後半で評価を落としても止むを得ずと言ったところです。 前半で怪しげな青年を登場させて好青年ぶりを大々的に披露し警戒心高めの彼女も心を許したあたりでは、「こいつヤバいだろ。絶対やらかすだろ。」みたいな鉄板的変態サスペンスホラーを予感させ、閉じ込められた彼女は謎の地下室を発見し、何とか逃げ出すも今度は彼が単独でそこに入って行った挙句彼女に助けを求めるなんてのは意外性も何もない定番的な展開ながらハラハラドキドキ。ところがサスペンスホラーかと思いきや謎の怪物風の女が登場し惨劇が…。そして画面暗転。次の瞬間には40年前の明るく美しい街の風景と育児用品を買い求める謎の男が登場、そして件の家。ここまでは丁寧な作りで良かったです。若干80年代にしてはクルマが古いですが。 後半、一気に雰囲気の変わるノー天気男の登場で作品テイストが別物に。ところが彼は件の家のオーナーで、突如それを売らざるを得ない境遇になっていくという予想もしなかった展開で強引に前半とリンクしていく訳ですね。そこから後は再び変態サイコサスペンス的なエッセンスも交えつつ謎の怪力母性愛女が暴れるという構造。確かに前半との落差ありです。が、強引ではあるものの辻褄は合わせてあり、変態男が生み出した悲劇の怪物の悲しい物語として幕を閉じる。うん、こう書いてみると悪くないかも。 正直なところ「んなワケねーだろ!」とか「行かないって!普通そこ入らないって!」などなどツッコミ入れながら結構楽しんで鑑賞しました。個人的満足感は高めの作品。作品の散らかり具合に合わせてレビューも散らかってしまいましたが、理詰めで鑑賞するには向かないものの、7点は献上したい作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-10-19 00:13:17) |
17. 落下の解剖学
《ネタバレ》 他にもご意見がありますとおり、私も予告編を見てサスペンス、あるいはミステリーの佳作と思って期待していました。もっともカンヌのパルムドールというところでそりゃ違うなという予感も並走していましたが。 夫の謎の転落死に係る法廷劇を中心に語られる本作。本作だけ見てフランスの法廷はなんと無秩序?!と決めつけてはいけないと解っていても、一歩間違えばコメディになりかねない揚げ足取りと口喧嘩の応酬。それはそれで楽しめましたが、次第に何だかドロドロの離婚裁判みたいな感じで夫が転落死していることが蚊帳の外みたくなってしまう瞬間まであったりして。録音データと再現フィルム?の場面の緊迫感には凄まじいものがありましたけれど。 結局、これまた既にご意見がありますが、「羅生門」の如く登場人物によって異なる見解が語られ、フランス語と英語が入り混じる中でのコミュニケーション不全も挿し込まれ、敢えて歪な演出と展開(大人と子どもの逆転と言うか、もっとも俯瞰、達観していたのは飼い犬と言うか)をもって語られる家族の日常と非日常を描いたヒューマンドラマといった印象でした。 奥さんの浮気相手は同性。冒頭登場する取材者とのやり取りも同性愛的な雰囲気が込められている。その設定って必要だったんだろうか?交通事故で息子が背負った視覚障害という設定って必要だったんだろうか?そのあたりを挿し込むことによる長尺化って必要だったんだろうか?いろいろと疑問もあり、控えめに6点献上としておきます。 追記1 作品中ダニエルが奏でる「アストゥリアス」は、個人的にはギターアレンジとして大好きな楽曲。ダニエルの心情を表現するのに効果的に使われていて好印象でした。エンディングのピアノ曲も然り。冒頭、夫が鳴らしている大音量の楽曲もまた然り。音楽性については秀逸と思いました。 追記2 スヌープがアスピリンを与えられて仮死状態の如くなっているシーン。どうやって撮影したのか?かなり演技力の高いワンちゃんだとは思いつつ、あの目の演技までは無理なのでは?と思うと痛々しくて堪らなかったです。目はCG? [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-18 09:40:10) |
18. アイミタガイ
原作未読で試写会にて鑑賞しました。封切り前なのでネタバレなしで感想のみ書かせていただきます。 キャスティングの妙ですね。ヒロインを始めとして、一人ひとりの出演者がそれぞれの役の機微を丁寧に演じ上げていることによって、作品中に描かれている以上に物語の背景が浮かび上がって来る感じ。 公式サイトのあらすじにもありますように、ヒロインを軸として人と人との繋がりが描かれていく物語ですが、全ての出演者がヒロイン同様に軸となっていく構成で、それぞれに感情移入出来る感涙の物語でした。 [試写会(邦画)] 8点(2024-10-09 16:08:26) |
19. パラメディック -闇の救急救命士-
《ネタバレ》 なんとも恐いと言うか愚かと言うか、おぞましき物語ですね。ストーカーここに極まれりといった感じ。 ただ、よくよく考えると結構無理がありますね。車イスにやっと慣れて来た彼が、神出鬼没に行動していくらスレンダーとは言え彼女をベッドまで運んで拘束したりして、どんだけ時間かけてんだろう?みたいなアリエネー感は多々ありますし、野暮なことを言えばそもそもどうやって生活維持(経済面や家事雑事等々)してんだ?みたいに。 終盤、いくら正当防衛だとしても重要容疑者の彼女があっさり殺人犯の彼の病室に入れて、しかも引き取りを許可されるというあり得ない設定。結構啞然モノですが、結末に繋げて締めるには致し方ないと言ったところでしょうね。 救急救命士としてのスキルやコネを超利己的な犯罪に使いまくるという、日々必死に活動している救急隊員に対して極めて失礼な作品ではありますが、ラストの主客逆転の恐ろしさに意外性と爽快感も感じたりして甘めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-09 15:52:09) |
20. 告白 コンフェッション
《ネタバレ》 大学在学中の悲劇を共有し親友として生きて来た浅井とジヨン。でも待てよ?そもそも何故ジヨンはさゆりを殺そうとした?横恋慕とは言え愛していたのでは?彼女に馬鹿にされたと思ったから?衝動的な殺意にまで及ぶ感情?また、その一方で、浅井は恋人のさゆりの死をどうやって受け止めてどうやって克服したのかをジヨン以外の周囲にどのように理解されていた?17年前の事故の在りようと言うか顛末が今ひとつスッキリ入って来なかったです。 ところが一転、終盤の浅井の告白によって全てが腑に落ちます。二人の男の二つの告白。命を諦めた瞬間に一人が封印を剥がし、それによってもう一人の封印も剝がれていく。緊張感溢れる展開と演出は見応え十分でした。空想の産物とは言え、ジヨンのシャイニングばりの錯乱ぶりには鬼気迫るものがあります。二階と一階での鬼ごっこ&かくれんぼ状態はちょっと可笑しかったですけれど。 短い尺にみっしりと納まったサスペンスとミステリー。いろいろな作品を観て来た後では意外性には欠けましたが(特に浅井の告白)、短い尺でキッチリ纏められた佳作に7点献上します。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-10-09 15:37:20) |