1. タクシードライバー(1976)
タクシードライバーの冷え冷えとした視線を通してさらけ出されたアメリカの恥部。売春婦やポン引きを「クズ」と言い捨てるペシミスティックな主人公は、しかし端からみれば同様に、ポルノを見て自分を慰めているような孤独な「クズ」でしかない。しかし彼が周囲と決定的に違った点は、彼には「自分は何者でもない」という焦燥感があったことだ。私にはこの「nothing」という焦燥感が痛いほど分かる。そして彼は拳銃に執着する。拳銃を通して、病める社会に反撃し、自己実現していく。髪をモヒカンにしたあの一件で、みごと「男」になったのである。あっぱれ。「セックスの貪欲さ」という点では、ニューヨークも日本も然程変らないと思うが、このような批判的視線を持ち得、それがヒットするだけ、アメリカ人のほうがまだまともなのかもしれない。 9点(2004-07-24 18:18:20)(良:1票) |
2. 候補者ビル・マッケイ
現代の批判家マイケルムーアが直球勝負で、ある特定の個人を名指しで批判し、恥をかかせてしまっているのに対し、この作品では明らかな悪者が誰もいない。恥をかく人間も誰もいない。しかし確実に敵=「政治屋」を追い詰めている。その静謐で地に足の付いた批判的視線は見事である。間抜けな候補者も、レッドフォードのハンサムで聡明な個性によって決して滑稽には映らない。選挙の舞台裏を暴露し、武器を持たずに攻撃を仕掛けるその手口は、相当に知的なテロである。 6点(2004-07-01 14:44:40) |
3. スケアクロウ
オープニングのピーンと張った静寂がこの映画の力を物語っている。遠藤周作の文章に「心がしーんとする瞬間」という一節がある。散文的でだらしなく薄汚れた日常生活にも、「しーん」とした何かが入り込んでくることがある。その「しーん」とした人生の時は、多くの場合苦しみと共に訪れる。そういう苦しみを多少でも持っている人間には、他の「しーん」としたものと、幸せに酔っている時には気付かない交流が成立する、といった内容であった。私にとってこの映画はまさに、辛く苦い「人生の時」に交流し得た心震える存在であった。辛さから回復してみると会話は少しずつ消えていった。しかし傑作であることに変わりはない。図らずもこのような人生の時が訪れた者にとって、この作品は、その心をふたたび覚醒させるような底力を持った「しーん」とした秀作である。 8点(2004-06-23 21:30:43)(良:1票) |
4. 大いなる勇者
ロバートレッドフォードはこの作品が一番自分に近いと言っていたそうです。静かでストイックな男の姿は、今の私には強すぎて逞しすぎて眩しすぎる人間像でした。でも人間は最終的にはジョンソンの様に、暇つぶしをするように淡々と孤独と闘って生きていかなければならないと思っている私にとって、もっと年をとって一人ぼっちになったとき、きっと傍に置いておきたい作品であり、さらに評価も上がるのだと思います。現代的な優男から無骨な山男までこなすレッドフォードの個性が見事。 7点(2004-06-21 07:19:24) |
5. 華麗なるギャツビー(1974)
上流階級の皆さんに、ものすごい俗物根性を見させてもらった。華やかな衣装やギャツビーとデイジーの見目麗しさに目を奪われてしまうけれど、その裏側に潜む階級社会の醜悪さに寒気がした。「バカが多いよ」と終始冷徹に彼らを眺めつづけるニックが印象的。そのバカの皆さんの前ではあくまでも感じ良く振舞っている彼の態度が、皮肉っぽくて好きだ。映画で見るより文学で感じた方が面白そうなテーマ。成り上がり者のギャツビーはもっと胡散臭い気がするし。原作を是非読んでみたいと思います。 6点(2004-06-19 14:42:14) |
6. 追憶(1973)
ハベルの人間性がすごく好きです。彼の一連の行動を、イージーで流されちゃってる人、とみる人もいるかもしれませんが(なにしろ当人のロバートレッドフォードがこの役柄に「芯がない」という理由で出演依頼をずっと拒んでいたというくらいだから)、ハベルはノンポリという確固たる主義の持ち主。そして周囲からの嘲笑の的であった偏狭の不美人(失礼!)を、嫌悪することもなく、かといっていい気にもさせず、時にはたしなめながら許容してくれていた。こんないい男、ちょっといないと思います。互いのスタイルを貫き愛し合いながらも別れを選ぶ2人は、恋愛としては悲恋だけれど、生き方としては私の理想です。ケイティーの髪振り乱したカッコ悪さは、自分の恥ずかしい日々とかなり重なり、赤面シーン満載でした。 9点(2004-06-18 20:10:50)(良:1票) |
7. ひまわり(1970)
ソフィアローレンとウクライナ娘の180度正反対の個性。見るからに性格がよく品行方正なウクライナ娘、善人であり偉いのは確かにこの娘だと思います。でも私はソフィアローレン扮するジョバンナの愚かさにこそ強い魅力を感じました。私も彼女同様の愚かな女だからかも知れませんが、私が魅力を感じる女性像って弱く脆く愚かなダメ人間なんですよね。私も最愛の男の生死さえ分からない状況で、理性的な判断をする自信はありませんし、取り乱すのが正常の人間らしい反応のようにも思います。現時点では少なくとも、戦争という運命に翻弄され苦悩する女性像を、戦争を知らない能天気な自分が非難することだけはできない気がします。私はこういう前のめりに情熱的に生きている、一般的には手におえないと言われてしまうような女性像が非常に好きです。最後には唇を結んで彼を見送る気丈さを見せたジョバンナは、十分偉かったと思いますよ。 7点(2004-06-16 18:56:30)(良:4票) |
8. 華麗なるヒコーキ野郎
とにかく私にとって、ジョージロイヒルとロバートレッドフォードとイーディスヘッド(スタイリスト)、このトリオは最強なんです。ジョージロイヒルの洒脱さと無頓着さ、ロバートレッドフォードの抜群のカッコ良さと知的な存在感、イーディスヘッドのシンプルで媚びのないセクシーな服装。私の思う「粋」を具体化してるというか、私の理想なんです。作品そのものは、That's男のロマン映画ですね。ちょっぴりセンチでユーモラスで。自然体で暖かいジョージロイヒル監督、大好きです。私は理詰めの知識人より、やんちゃで向こう見ずでおバカなこいつら、はっきりいって好きですね。でも男のロマンてのはどうしてこうも女に背を向けたところでしか成り立たないのでしょう・・・しょぼ~ん 9点(2004-06-15 22:41:54)(良:2票) |
9. スティング
これに10点入れなくて何に入れるの!?脚本、音楽、キャスティング、衣装・・・どれをとっても最強!何度見ても飽きない!まさに傑作中の傑作、ここ30年間で最高の作品!! 10点(2004-06-14 20:18:44) |