1. ゴジラ(1954)
後の怪獣映画を観ると、この作品は正に偶然と奇跡の賜だったのかもしれません。レベルの低い特撮技術のなかで、いかにそれらしく見せるかの工夫と、着ぐるみが重すぎて素早く動けなかったことがもたらした、ゴジラのスケール感。そして、居丈高に反戦・反核を唱えていないのに、作品全体から伝わってくる平和への思い。これがすべて意図されたものだったら、その後のゴジラシリーズももっと違った展開があったのかもしれませんが、その後の作品を見るにつけ、本作が如何に奇跡的な出来だったのかと思いを新たにします。日本映画としては奇跡としかいいようのない本作に対し迷わず10点献上です。 [映画館(邦画)] 10点(2006-12-23 02:10:01)(良:1票) |
2. 上流社会
昔からテレビ放映を何回も見て名画座で見て最近はDVDを買って見ているお気に入りの作品です。基本的にお気楽コメディーでなんのひねりもないうえに、他のMGMミュージカルと違いまともなダンスシーンがないのでずいぶんと雰囲気の違う出来ですが、歌唱力と演技力を兼ね備えた出演者がそろっているので、音楽付きコメディーとして十分楽しめます。ビング・クロスビー、サッチモ、シナトラにグレース・ケリーがうまい具合にからみ、ほんとにソフィストケイトされた作品になってます。まあ、後に何も残りませんがこういう洗練されたお気楽ミュージカルコメディは貴重です。 [映画館(字幕)] 8点(2006-07-09 00:57:10)(良:1票) |
3. 老人と海(1958)
原作を読んだときには巨大カジキとのやりとりを思い浮かべかなりわくわくして読んだのですが、映画を見ると今ひとつ盛り上がりに欠けます。制作された年代を考えれば映像に関してどうこう言うのは酷というものでしょうし、基本的に小さなボートの上での一人芝居みたいな物なので、仮に現代の技術で作り直しても映像的なインパクトはそれほど増さないような気がします。この映画に限らず、「翼よ!あれが巴里の灯だ」や「太平洋ひとりぼっち」のように狭い空間での一人きりの世界は、本だと想像をめぐらせながら読むことが出来ておもしろいのに、映像として見せられると映像の具体性に引っ張られて想像の世界が広がらず、どうしても単調な印象しか残らなくなってしまいます。おまけにスペンサー・トレイシーの釣り糸を手繰る仕草がとても巨大魚を相手にしているようには見えないところも、のめり込めない要因の一つです。ですが、長時間にわたる格闘の末に訪れるちょっと物悲しい結末のおかげで、見終わった後はちょっとした感傷に浸れます。 [地上波(字幕)] 7点(2006-03-04 00:43:41)(良:1票) |
4. 雨に唄えば
《ネタバレ》 この映画、ジーン・ケリーが雨の中で歌い踊る「雨に唄えば」をはじめ大好きなミュージカル・シーン満載なうえ、デビー・レイノルズも可愛いし、ドナルド・オコーナーの芸達者ぶりも堪能できるのに、なんだか後味の悪さが残ります。一つは終盤の延々と続く空想のミュージカル・シーンが映画全体と全然マッチしてないというのもありますが、もう一つはトーキーに適応できない女優を単純に笑いものにしている点でしょう。このころのアメリカの映画は、容姿が悪い、何かの能力に劣るといった人々を笑いものや悪役にしてしまう傾向が強く、それが苦々しく感じられることが多いです。今の時代にこの映画を作れば、トーキーに適応できない女優の悲劇という側面も折り込んで単純な悪役にしないストーリー展開となったでしょう。とはいえ、ミュージカルとしての出来はすばらしく、嫌な点を減点しても8点です。 [映画館(字幕)] 8点(2006-02-23 22:12:20) |
5. 掠奪された七人の花嫁
数あるMGMミュージカルの中で一番楽しい作品です。予算が少なかったせいで映像的にはちゃちなところがありますけど、それがかえってお気楽なストーリー展開にマッチしていい感じです。ミリー役のジェーン・パウエルはとくに美人とか可愛いというわけではないのですが、ちょっと怖いけど優しいお姉さん&奥さんの雰囲気がよく出ていて、この映画を引き締めています。この映画、なんといってもお祭りでのダンスシーンが目玉ですが、ミリーが6人の弟たちに女の子の相手の仕方を教えるシーンは、「サウンド・オブ・ミュージック」の「ドレミの歌」に匹敵する楽しさだし、見終わった後に思わず口ずさむ曲がいくつもあってミュージカルとしては申し分ない上に、女の子達の歌に乗せて季節が進めるなどストーリー展開もテンポ良くする工夫がされています。意外と知られていない作品ですがミュージカル好きの人は是非一度見て欲しい作品です。 [映画館(字幕)] 9点(2005-12-07 00:42:09) |
6. 巴里のアメリカ人
ガーシュインの名曲がちりばめられ、ジーン・ケリーとレスリー・キャロンのダンスが素晴らしくて、なかなか楽しめるミュージカル映画です。パリの町中でくりひろげられる'アイ・ガット・リズム'や'ス・ワンダフル'の場面は楽しく、ロートレックの絵画の中で'パリのアメリカ人'にのせてくりひろげられるバレー・シーンも、駄目な人が少なからずいるようですが、私はかなり好きです。「雨に唄えば」の'ブロードウェー・ストーリー'、「バンドワゴン」の'ガール・ハント’などどうも冗長に感じられてあまり好きになれないのですが、’パリのアメリカ人'は曲に乗せた映像と映画のストーリーとの関わりもはっきりしていて退屈することなく見ることが出来ます。脳天気ミュージカルに芸術性を取り入れようとしたミュージカルは楽しめない物が多いのですが、これはうまくいった数少ない(唯一?)の作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2005-12-02 23:27:40) |
7. パリの恋人
オードリー・ヘップバーンのミュージカルとして貴重な作品。オードリー自身の歌や踊りがこれだけ見聞きできる映画は他にないでしょう。ガーシュインの曲もマッチしていてミュージカルファンとしては楽しめる作品です。 どうでもよい話ですが、この映画の中ではモデルになったオードリーより本屋の店員のときのオードリーのほうがずっと好みです。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-02 22:57:49) |
8. バンド・ワゴン(1953)
この映画、ここでは高く評価されている方が多いですが、私は駄目でした。初めて見たのは学生時代に名画座で、その後観る機会が無く、最近DVDを購入してあらためてみましたが、見終わった後の印象は同じです。ストーリー展開はこの手のミュージカルとしてはこんなものかなという程度ですが、ミュージカル・シーンがどうにもこうにも物足りません。曲として見終わって思わず口ずさみたくなるのが That's Entertainment だけですが、これもミュージカル・シーンとしてはいまいち収まりがよくありません。「三つ子」は印象には残りましたがそれほど楽しくも面白くもないし、おそらく最大の見せ場としているだろうガール・ハントもアステアとチャリシーが一緒に踊るシーンがまあまあ良いものの、全体としてみれば冗長なだけです。結局、最初から最後まで楽しめないまま終わってしまう映画です。ただ、まったくつまらないというほどでもないので5点です。 [映画館(字幕)] 5点(2005-12-02 22:27:43) |
9. 回転木馬(1955)
好きな曲が2曲あるものの、ミュージカルシーンもストーリーも今ひとつ楽しめないミュージカル。話しそのものは上手く作ればそれなりに面白くなりそうなのですが、脚本が悪いのか間延びした展開だし、ミュージカルシーンも全然見た後の印象が残りません。ミュージカル映画として、ミュージカルシーンの印象が薄いのは致命傷です。 [DVD(字幕)] 4点(2005-11-23 22:04:37) |
10. オクラホマ!
曲はいいのですが、ストーリー展開がちょっと。いくつかの恋模様が画かれてますが、どうも振られる側の人物設定があまりにステレオタイプになっていてちょっと厭です。空想シーンとして繰り広げられるダンスも余分な気がして、あまり好きになれませんでした。 ミュージカル好きにとって、一度は見て損のない作品ではあります。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-23 18:47:04) |
11. 王様と私(1956)
有名な 「Shall We Dance」をはじめ好きなシーンもあるのですが、どうもストーリー的に退屈してしまいます。とくに劇中劇の「アンクルトムの小屋」はあれだけ時間をかけてやらなくてもいいのにと思います。全編を通して何度でも見たいという作品ではないです。 [映画館(字幕)] 5点(2005-11-23 18:34:28) |
12. 南太平洋(1958)
好きな曲が多くストーリー的にもそれほど気になるところがないので、好きなミュージカル映画の一つです。初めて映画館で観たときは「サウンド・オブ・ミュージック」との2本立てだったのでどうしても見劣りしましたが、単独で観るといいです。 ブロードウェー公開時は人種的偏見の問題を扱っているということで話題になったようですが、日本人の目から見るとそれほど強いテーマ性があるとは感じられません。いくつかの曲のシーンではカラーフィルターをかけて着色してますが、これは余分な演出でしょう。素晴らしい曲の数々にいかにもヤンキー娘といったミッチー・ゲイナーの魅力もあり、ミュージカルファンにはなかなか楽しめる作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-23 18:16:38) |
13. ベニイ・グッドマン物語
けっして悪くはないのですが、「グレン・ミラー物語」と比較してしまうと、ストーリー展開が今ひとつだし音楽シーンもちょっと物足らずで、やや辛めの評価になってしまいます。ベニイ・グッドマン楽団の曲がもっとたくさん挿入されていればスウィング・ジャズ好きにとっては楽しめる作品になっていたのでしょうが。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-20 17:38:41) |
14. グレン・ミラー物語
いかにも古き良きアメリカを代表するようなジェームズ・スチュアートとジューン・アリスンのカップルを中心とした心温まるストーリーと、そこに挿入されるグレン・ミラーの曲の数々が展開に見事にマッチしていて、数ある音楽家の伝記映画の仲の最高峰というべき作品になっています。なかでも最後の「茶色の小瓶」のシーンはそれまでの伏線を受けて、思わず涙ぐんでしまいます。 スウィング・ジャズの好きな人にはもちろん、良くできたヒューマンドラマとしてなるべく多くの人に観てもらいたい作品です。 [映画館(字幕)] 10点(2005-11-20 17:27:50) |
15. 5つの銅貨
子供の頃にテレビで部分的に観てから一度全編を通して観たいと思いつつその機会が無く、学生時代に住まいからかなり離れた映画館で上映されるのを知り、電車に乗って2時間かけて見に行った映画です。レッド・ニコルズの伝記映画の形態をとっていますが、実話とは異なる点も多いようで、普通の音楽映画として観た方がいいでしょう。 ダニー・ケイの芸達者ぶり、サッチモの演奏をはじめとする音楽シーンが、家族愛を画いたストーリーと上手く絡んで、何度でも見たくなる作品となっています。 数年に一度、BSで放映されていますが、はやくDVD化されて欲しいものです。 [映画館(字幕)] 9点(2005-11-20 17:03:01) |