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1.  容疑者 室井慎次 《ネタバレ》 
東京のとあるバーの入口で、男性が死んだ状態で倒れていた。ある警察官が容疑者としてあがり取り調べが行われるが、その最中に彼が突然逃亡。大勢の刑事が必死に追うものの、警察官は飛び出してきた車に轢かれて亡くなってしまう。彼に対して違法な取り調べが行われていた容疑で、その責任者であった本作の主人公・室井が逮捕される。その背後には警視庁と警察庁の権力争いがあった…。  これまで『踊る大捜査線』にはほとんど触れたことがなかったが、2024年10月にテレビドラマ版の再放送があり、それと並行するように『THE MOVIE』『同2』『同3』・本作もノーカット放送された。かなりの話題作だったから観てみようかという好奇心に、今後はこんな機会もほぼないだろうという気持ちが重なり、よく似た立場の妻とテレビ版全話および『THE MOVIE』『同2』を視聴、その次の日に本作を視聴したのだった。  真面目で無口、堅物な室井の性質や性格を反映してか、『踊る大捜査線』のスピンオフとは思えないほどの暗いトーンで物語が進む。フィルムの色味も演出も固くて重苦しく、シーンによってはまるでドキュメンタリーのようでもある。警視庁と警察庁の静かな争いは舞台劇のようでありながらどこか生々しい。陰影を多用した演出はインパクトこそあるがリアリティに欠ける側面もあり、まるでATG映画を観ているようだ。どこか飄々とした雰囲気を持つこれまでのシリーズを観てきた者からするとかなりの違和感があり、当時、『踊る~』シリーズだと思って映画館に行った人はかなり面食らったんじゃないだろうか。  また、陰鬱な描写を積み重ね、やたら粘っこく物語が進んだわりに、事件そのものはシンプルであっさりと終了。拍子抜けの感があった。  ところで、本作の視聴後に強く感じたのは、本シリーズの魅力は、キャスティングそのものや、彼らにつけた演出によるものが大きかったのだということだ。  室井はもともと不器用だが、本作では物語の中心となるためか、その不器用さや無口っぷりが前に出過ぎてしまい、物語を停滞させてしまっている。彼の険しい顔も、これまでのシリーズにはものまねタレントがよく真似をするような剽軽さのようなものがあったが、今回はひたすら仏頂面なだけで表情のバリエーションが乏しく、感情移入しにくい。そもそも、いわれのない罪に問われている人間があれほど落ち着いていられるのだろうか。  主要な刑事を演じた哀川翔の甲高い声は聞き取りにくく、おそらく視聴者の気持ちをもっとも代弁していたであろう彼の言葉がはっきりと聞こえないのは致命的だったように思える。  田中麗奈演ずる弁護士は、走り方が不格好で話し方にも品がなく、およそ弁護士らしくない。本作のミスキャストナンバーワンだろう。  本作の拾い物は、桜井杏子を演じた木内晶子だろうか。一見おとなしく聡明そうだが、口を開かせたらただの身勝手なバ○だったという役はとても気味悪く、そして恐ろしく感じた。本作で彼女の印象が固定されてしまったのではと余計な心配までしてしまったくらいだ。
[地上波(邦画)] 3点(2024-10-28 13:04:59)
2.  踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 《ネタバレ》 
湾岸署の管轄内で、若い女性が首を噛みつかれる事件や――噛み痕は吸血鬼ドラキュラを彷彿とさせるものだ――家族ぐるみによるスリ事件が多発する。そんな中、さらに、会社役員の死体がSMプレイのように縛られた状態で発見された。ある捜査方法の導入を検討中の警視庁は、この殺人事件をそのテストケースとすべく、大量の人員を湾岸署に派遣して捜査本部を構える。この事件の指揮を任されたのは女性捜査官だった…。  これまで『踊る大捜査線』にはほとんど触れたことがなかったが、2024年10月にテレビドラマ版の再放送があり、それと並行するように『THE MOVIE』・本作・『同3』『容疑者 室井慎次』もノーカット放送された。かなりの話題作だったから観てみようかという好奇心に、今後はこんな機会もほぼないだろうという気持ちが重なり、よく似た立場の妻とテレビ版全話および『THE MOVIE』を視聴、その次の日に本作を視聴したのだった。  『THE MOVIE』の公開から4年経ってからの制作だったからだろう、特にテレビシリーズに顕著だった『新世紀エヴァンゲリオン』のオマージュはほぼみられなくなり、アクが少なくなった印象だ。演出の特徴が減損してマニアックさも少なくなったが、その分、観やすくなったと言えるかもしれない。  『THE MOVIE』と同じく、青島をはじめとする湾岸署員は3つの事件にあたることとなる。その中には、殺人事件を優先せよという上の命令にやむなく従いながらものちに反発する展開や、犯人からの電話を受けた捜査本部が現場の刑事に近隣の電話ボックスの一斉チェックをさせたりする場面など、テレビシリーズによく似たシチュエーションがあり、若干のネタ切れ感もあったりする。  だが、本作で一番残念なのは、女性捜査官の無能っぷりだろう。彼女の行動や発言があまりにもカリカチュアされ過ぎていて、有能な指揮官として見るにはあまりにも無理があるのだ。この指揮官は、人心掌握術も柔軟な思考回路も、さらに言えば沈着冷静に自らを律するメンタルも持ち合わせていない。彼女の起用には、警視庁が男女を平等に登用しているというアピールの目的があったと劇内で語られているが、この作劇法は女性の地位を却って下げていることになりはしないか、女性視聴者の中には怒りのような感覚を持つ者さえいるのではないかと余分な心配までしてしまった(本作が公開されてから20年ほど経ったことで、我々はこういったことに敏感になっているのではないかと思う)。  一刑事である青島が劇中で注目され過ぎている、ヒーローとなり過ぎているのではないかという気はするが、今回も事件は無事解決。今回は犯人の言う「かめだ」で野村芳太郎監督の『砂の器』のオマージュが描かれており、こちらにも思わずニヤリとさせられた。劇中で『砂の器』のビデオテープとともに、前作でオマージュされた『天国と地獄』のビデオテープもちらりと見えるカットがあったのも嬉しかった。
[地上波(邦画)] 6点(2024-10-27 12:57:46)
3.  スカイ・クロラ The Sky Crawlers 《ネタバレ》 
原作未読、予備知識全く無しでの鑑賞ゆえか、展開に一部分かり難い点があったものの、押井監督ならではのテーマと作品のメッセージ、そして時代性が見事に一致した傑作。序盤は(作画やデザインも含めて)のっぺりした印象を持ってしまったキャラクターが、酒を呑み、タバコを喫むなどの細かな描写によって、充分な存在感を持つに至ったのにまずは好印象。そしてその存在感が、鑑賞後のやり切れなさをさらに強くしていることに感心。また、効果音や音楽も素晴らしく、音響設備の整った劇場で観るに値する素晴らしい作品に仕上がった。尚、これから劇場で観る方々へ。エンドロールが終わっても、絶対に席を立ってはならない。その後のエピローグが、さらにやり切れなさを強くしてくれるはずだから。
[映画館(邦画)] 9点(2008-08-03 01:08:37)
4.  崖の上のポニョ
「面白い」ではなく、「凄い!」の一言に尽きます。ストーリーはあって無いようなものですが、その一方で子供の視点から見た世界観を、手描きアニメーションの技術を駆使して見事に、そしてゴージャスに描ききっています。映画の隅々まで気を配った作りでない分、大人の視線で視る人達からは非難されそうですが、子供の心で観れば、充分に楽しめることは間違いありません。宮崎監督がまだこれほどの力技を持っていたことには、本当に驚かされます。また、耳に残る主題歌アレンジやオーケストラ、そして久石氏のおなじみなメロディーも聴ける音楽も素晴らしく良かったです。うちの子供はまだ小さいので映画館には連れて行けませんでしたが、DVD発売の折には是非親子で楽しみたいと思っています。
[映画館(邦画)] 8点(2008-07-20 00:32:14)(良:1票)
5.  ミヨリの森(TVM)
今、日本のアニメ制作現場はかなりの人材不足です。制作スタッフ、特に背景の人達にはもっと別の、良い作品を作って欲しい。
[地上波(邦画)] 1点(2007-12-16 16:45:43)
6.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 《ネタバレ》 
TVシリーズの壱~六話が再構成されているこの映画で、「監督は『ヤシマ作戦(伍話と六話)』を全面的に作り直したかったのだな」というのが第一印象です。前半はTVシリーズ壱~四話の総集編的な作りで、壱話と弐話の良作画部分は殆ど残し、参話と四話の作画ほぼ修正されています。さらに随所に新カットを入れたり、つじつまの合わない描写が変更されており、なかなか手の込んだ作りでそこそこ楽しめました。ただ演出のタメが少なく、シーンを追うのに精一杯で(弐話の構成は本当に素晴らしかったのだと改めて思いました)、またセルアニメ独特の重みがややスポイルされていた事に若干不満を感じました。ところが、ヤシマ作戦に入ってからその不満はどこへやら。作戦進行のシークエンスにも手に汗を握らされましたが、何よりラミエルのビーム発射時の変形がめちゃめちゃカッコいい!これはCGが無ければ制作出来ない、正に「新劇場版」の名に相応しい名シーンでした。余談ですが、宮崎駿監督をはじめとする、名アニメーターの係わるCGカットのタイミングは、凡百の人間には真似の出来ないものなのだと改めて強く感じます。それから、ここまで読んで下さった方々に一つ。エンドロール途中での退席は絶対にしてはいけません。理由は……観れば分かります。とにかく傑作。この作品に興味のある(あるいはかつてあった)人は必ず劇場で観ましょう!
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-03 01:24:26)
7.  イノセンス 《ネタバレ》 
確かにストーリーにひねりが足りないし、衒学的な台詞も殆ど意味が分からない。  だが、好き嫌いがはっきり分かれると思われる押井監督作品のお馴染みのテーマ (目の前にある現実は本物か・ここにいる自分は本当に存在しているのか、等) を私は支持している。また、映像や音響のクオリティは大変高く、特に作画や美術の 美しさ、物凄さにはただただ圧倒させられる。  以下は個人的な話となるが、製作やプロデューサーにスタジオジブリが絡んだ事に より、ジブリ映画並みの宣伝をして貰い、監督関連の書籍が大量に発売された。 果ては監督のサイン会まで開催され、仕事を休んで出掛けてサインと握手を して貰い、声をかける事も出来た。本当に嬉しかった。あの期間は自分にとっては、 正に”押井守祭り”だった。  作品評価は8点だが、この楽しかった思い出による2点をプラスし、 10点献上させて頂く。
[映画館(邦画)] 10点(2007-01-03 04:27:57)
8.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
映画の内容に関しては何の予備知識も無いまま、細田守監督のファンとして 観に行きました。  序盤は監督らしさ(観念的なアングルや同ポジの多様・作画のケレン味)が少なく、 各キャラもとっつき難かったのですが、主人公の真琴がタイムリープを使い始めた 辺りから、ストーリー・演出ともに加速を始め、同時に各キャラへの親近感や魅力が どんどん強くなっていきました。最終的にキャラの「浄化」をここまで心地良く 感じられたのは、TVで未来少年コナンの再放送を観た時以来20年ぶりで、 本当に気持ちの良い映画を観られたと、心より思います。  ただ、私の理解力が不足していたのか、終盤での時間軸が把握出来ず、完全に ストーリーを追いきれませんので、満点から1点減点させて頂きます。  余談ですが、映画の「夏という舞台」に入り込んで観られたからでしょうか、 映画館から出て来た時のリアルな暑さと蝉の鳴き声に何故か心が震えました。 上映館は決して多くはありませんが、まだ観ておられない方には、是非とも一度 劇場で観る事をお勧めします。
[映画館(邦画)] 9点(2006-08-06 02:52:12)
9.  映画ドラえもん のび太の恐竜2006 《ネタバレ》 
公式HPの予告編に只ならぬ物を感じ、観てきました。 公園の湖に野次馬やマスコミが押し寄せたシーンや、タイムマシンに乗っての 恐竜ハンターとのカーチェイス(?)シーンなど、物語全体から見ると明らかに 浮いてしまっているシーンはありましたが、声優や制作スタッフを総入れ替えしての リメイクがこれほど上手くいくとは、正直思っていませんでした。 声優入れ替えにより、これまでのお助けマン的存在から、のび太と一緒に悩んで 動き回る友達的存在へと変化したドラえもんの性格や立場をスムーズに受け入れられ、 制作スタッフ入れ替えにより、これまでのドラえもん映画では観られなかった、 生理的快感を生む素晴らしい作画を観られ(特に作画の線を、手のぬくもりが 感じられる微妙な描線で描いた事により、線自体が演技をし、各場面でのさらなる 感動を生み出した)、大いに感心・感動させられました。 これらがドラえもんの映画に新たな可能性を生み出した事は間違いないでしょう。 ピー助との二度の別れのシーンにはいずれも泣かされましたが、特に最後の シーンでは、それまで隣の席で両親の膝上に乗って退屈そうに遊んでいた3歳くらいの 子供が、突然「ドラえもんかわいそう~」と館内全体に響くくらいの大声で 泣き出し、こちらもさらにつられてしまいました。また、前に座っていた親子連れ (両親・8歳くらいの男の子と6歳くらいの女の子)の、両親二人は時折ハンカチで 涙を拭き、上映終了後に女の子は「私、最後までちゃんと寝ないで観たよ! おもしろかったよ!」と誇らしく家族に語っていました。 これまで色々な映画を映画館で観てきましたが、「(この作品を)映画館で観て 良かったなあ」と、他の観客と直に感動の共有が出来た体験をこれほど嬉しく 思った事は初めてです。 作品評価は9点ですが、この気持ちをプラスして10点とさせて頂きます。
[映画館(邦画)] 10点(2006-04-23 05:04:06)(良:3票)
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