1. ザ・ブルード/怒りのメタファー
《ネタバレ》 本サスペンスの見どころは、コトの真相が明かされるまでの過程にありました。一体何が起きているの?殺人鬼は何者なの?様々な可能性に思いを巡らせます。いよいよ種明かしされた後は早仕舞い。それはもうアッサリしたもの。そういう意味では如何に真実をカモフラージュするかが重要でした。然るにこのタイトルはどうでしょう。完全にネタバレじゃないですか。ブルード=一腹の子。もっとも横文字が苦手な私は全く気づかす何の問題もありませんでしたが。もし邦題が『怪奇!黒雪母と7人の小人』だったなら、ボンクラな私でも流石に気付いたでしょうけども。見終えてみれば、雰囲気はあるけど、いまいち捉えどころのない映画。オープニングの音楽は如何にもサスペンスな趣で良かったです。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-04-16 13:50:17) |
2. ハウス/HOUSE(1977)
《ネタバレ》 これは攻めました。攻めましたねえ。真剣を滅多矢鱈に振り回している丸裸の大林監督の姿が目に浮かびました。裸ですから防御力はゼロ。しかしながらその剣圧は凄まじく、外野の小言など物ともしません。これぞ狂気の沙汰。いや攻撃は最大の防御なり。一見支離滅裂ではあるものの(バナナってそんなバナナ)、筋立ては明快で芯が通っており、どこを切り取っても完璧に『大林宣彦』印なのは流石であります。監督の映画にかける情熱と、小林亜星の大玉スイカと、紀世彦の極太もみ上げと、妖しく光る猫の目と、クンフーちゃんのさわやかヒップと、ガリちゃんのサプライズヌードと、池上季実子譲の極上エロスで、(主に後半の要素で)最後まで画面にくぎ付けでした。もっとも、これ程やりたい放題が出来るのは、名のある監督だからこそ。『踊る大捜査線』の和久さんではありませんが、正しいこと・やりたいことをしたいのであれば、偉くなるしかないのは道理です。一応『ホラー』にカテゴライズされるのでしょうが、シュールコメディであり、エログロであり、音楽映画であり、反戦ドラマありで、要するに唯一無二のオリジナルテイスト。邦画史上類を見ない怪作なのは間違いないでしょう。映画ファンならば、教養のひとつとして必ず観ておくべき作品と考えます。ちなみに私は黒沢清監督の『スウィートホーム』とごっちゃになって、既に観た気になっていたので(同類のうっかりさんは)ご注意ください。なお採点は放棄しています。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-08-20 12:26:48) |
3. ヒッチハイク(1976)
《ネタバレ》 終始流れている陽気?呑気?なBGMや、粗い描写や展開につき(何せ拳銃の弾が当たること当たること!)、厄災型クライムサスペンスにあるべき悲壮感や絶望感が相当に目減りしています。これがイタリア式サスペンスの味でしょうか。言い方は悪いですが、エンタメ志向のシチュエーションAVを観ているようでした。主演の女優さんも元衆議院議員の金子恵美似のキツメの美人さんですし。そのため胸糞な内容の割には『見易い』との印象を受けます。サスペンス映画に対して褒め言葉にはなっていないかと思いますけども。ストーリーの方は、王道の監禁逃亡劇から一転、最後の最後に意外な展開を見せます。これまた超胸糞ではあるのですが、それまでのフリ(伏線)が効いているので、怒りよりも納得感が勝るばかりか”座布団一枚”なオチまで用意されています。それにしても、DVDパッケージのネタバレは酷いです。 [インターネット(字幕)] 7点(2019-08-25 18:55:29) |
4. 八つ墓村(1977)
《ネタバレ》 地上波TVバージョン(つまり編集版)は何度か観ておりますが、この度フル尺を初めて鑑賞しました。正直2時間半は長い!と感じつつも、同じような描写が延々と続き、遅々として物語が進展しない“もっさり感”が、むしろ田舎社会の旧態依然とした淀んだ空気感を正しく表現していた気もします。本作の金田一は渥美清。正直、違和感が無いと言えばウソになります。しかし『ナイル殺人事件』のピーター・ユスティノフも原作のポワロのイメージとは程遠い見た目。馴染んでしまえばそれもアリ。ただ渥美さんの場合は寅次郎のイメージに悪影響を及ぼすことがあってはなりません。金田一を継続しなかったのは正しい判断であったと考えます。聞くところによると『八つ墓村』は金田一シリーズの中で最も多く映像化された作品だそう。それだけキャッチーかつインパクトの強い設定なのでしょう。主役は名探偵・金田一耕助ではなく、旧家の跡継ぎ・寺田辰弥。演じるはショーケンです。存在感と雰囲気は抜群ですが、演技が上手いのか下手なのかよくわからない、いつものショーケン流。そこに小川真由美の妖艶さや、違和感ある寅さん風味、印象的な音楽が相まって、形容し難い独特の空気感の作品に仕上がっております。それが横溝正史の世界観とマッチしていたかどうかは謎ですが。ところで本作の金田一は物証に基づく論理的な推理を披露していましたっけ?ミステリーというより、オカルトホラーであったことに今頃になって気づきました。 [インターネット(邦画)] 7点(2018-04-15 07:57:21) |
5. サスペリア(1977)
《ネタバレ》 脚本の良し悪しだけで評価するなら、本作は“どうということはない映画”になってしまいます。しかし、鮮烈な印象を与える建築・内装デザインや色彩演出、そして場の空気を創るBGMのセンスの良さが、本作をA級ホラーの域にまで高めていると考えます。バランスの良い平均的な良作より、飛び抜けた個性が際立つ奇作の方が、観客の心を掴むもの。忘れることのない映画だと思います。刺激を追及するあまり、醜悪でグロテスクな描写で埋め尽くされている昨今のホラーと比べると、その品格の高さが窺い知れる“美しい”映画でありました。白状しますと、あまり面白いとは思わないのですが、良い映画です。(以下余談)ラストは完全にドリフだなと思ったのは、内緒にしておいてください。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-12-18 18:57:55)(良:2票) |
6. サブウェイ・パニック
《ネタバレ》 特筆すべきはラストカット。これほど爽快感のあるイヤラシ~イ表情に、私は今までお目にかかった事がありません。見事な余韻。このワンカットのみで本作を傑作認定してしまいたい程です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-05-30 20:59:19)(良:2票) |
7. デス・レース2000年
《ネタバレ》 ジェイソン・ステイサム主演の2008年リメイクの方は観賞済み。しかしリメイクとは名ばかり。全くの別物でありました。“デスレース=生死を賭けた命がけのカーレース”という意味ではなく、単に人殺しコンテスト。殺した人間の性別や年齢で得点が違うというクレイジーぶり。下手なスプラッターホラーより悪趣味だと思いますが、悲壮感など微塵も感じさせない徹底したバカ映画の体裁ゆえ、怒る気にもなれません。これはこれで高度な演出手段なのかもしれません(考え過ぎかな?)。ただ、これだけは確信を持って言えます。ラストの社会風刺や当局批判は、取ってつけたオマケであると。監督が描きたかったのは、単純にカーアクションだけであると。翌年製作された『バニシングIN TURBO』の方が、個人的には好みです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-13 19:27:30)(良:1票) |
8. ロング・グッドバイ
《ネタバレ》 正直、脚本の出来が良いとは思いません。物語の継ぎ手となるエピソードが不足しており、唐突な印象を受ける流れが散見されます。クライマックスにしてもそう。主人公が何故あのような行動を取ったのか分かり難いです。脚本を主体に採点すると、高得点は付け辛いと感じます。しかし映画の価値は脚本だけにあらず。本作の場合、それ以外の特長で作品の印象を随分と良くしています。例えば人物造形。飼い猫を欺こうとしたり、ガラス扉に鼻柱を押しつけてみたり、主人公は茶目っ気たっぷり。これがハードボイルドの代名詞、フィリップ・マーロウ?!ヤクザも奇天烈。いきなり愛人を空き瓶で殴り飛ばしたかと思えば、今度は全員裸になれですって?なんという理不尽さ。でも何故か怖くない。手下のオトボケぶりも可笑しいです。魅力的なキャラクターを取巻く環境がこれまたイカしています。まさかの『死霊の盆踊り』状態。あっけに取られました。ハードボイルドミステリーにコメディと不条理のスパイスが香る不思議な味わいでした。この雰囲気はたまりません。本作が松田優作の『探偵物語』の原型と聞いて納得です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-05-24 19:26:00) |
9. バニシングIN TURBO
《ネタバレ》 横転、クラッシュ当たり前。ジャンプ爆発なんのその。片輪走行どんと来い。挙句民家も大崩壊。徹頭徹尾カーアクションで押しまくる、掛け値なしの馬鹿映画でした。さながら『お笑いウルトラクイズ』を観ているような(あれ?ホメ言葉になってない!)。存分に楽しませてもらいました。振り切れている映画は素敵です。脚本はクレイジーですが、コマ落としや車載カメラでスピード感を出したり、カット割りを集中させ刹那のインパクトを強調したりと、演出は手堅くオーソドックスな印象を受けました。このミスマッチ感がたまりません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-24 18:59:00) |
10. 少林寺三十六房
『努力は必ず報われる』とはAKB48高橋みなみの言葉。勿論真実ではありません。無駄な努力は無いと信じたいですが、報われない努力はあります。残念ながら。だからこそ、努力が報われた時の喜びは何ものにも代え難いのです。修行の行程を35の房(クラス)に別けることで段階的な達成感を創出し、修行の成果が実戦で活かされる様を明確に見せました。よくみればツッコミどころ満載で(とくに敵がしょぼい)、それぞれの修行も淡泊で物足りない部分もあるのですが、多くの支持を受けている一番の要因はこんなところかと。かく言う自分も好きですが。中国拳法最強の武器は三節棍だと子供心に思ったものです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-10-18 19:15:35) |
11. 悪魔の棲む家(1979)
《ネタバレ》 雑音で通話を妨害したり、受話器を持つ手に火傷を負わせたりする件は納得出来ます。一応電話線であの家と繋がっているので。でも遠く離れた教会の神父への攻撃や、家に向かう車に対する妨害は、いくらなんでもやり過ぎだと思いました。それがOKだと際限が無くなってしまいます。厄災は家屋敷地内に限定した方が、「家」に問題があることを印象付けられたと思いますし、“家から逃げれば大丈夫”という希望を残すことが重要だったと考えます。敵が強大過ぎると諦めが生まれます。諦めてしまえば、恐怖は消えてしまうのですから。諸悪の根源は地下の隠し井戸にありました。ですから、井戸発見後は時間を置かずに畳み掛けた方が、物語としてスマートだったと思います。先住人の殺人鬼と夫の顔がウリ二つであった事実だけでは、オチとしては弱いです。ディテールは、王道のオカルトホラー。雰囲気は悪くないと思いますが、如何せん物語に核がなく散漫な印象を受けました。 [DVD(字幕)] 4点(2011-11-03 21:26:32)(良:1票) |
12. 伊豆の踊子(1974)
山口百恵主演のザ・アイドル映画。ソフトフォーカスを多用し、山口の美貌を強調します。ただ、残念なことに(あるいは当然のことながら)演技は芳しいものではありませんでした。しかし映画そのものは、作中当時の風俗や価値観が偲ばれる丁寧なつくりで好感が持てました。恥ずかしながら原作未読ですが、読んでみたいと思わせる映画でありました。ところで、あのラストカット。アイドル映画の甘ったるさを払拭したかったものと推測しますが、単に後味を悪くしただけの結果に。締めで塩胡椒を効かせたいのなら、それまでの味付けを調整しなくてはいけません。現実の厳しさは、既に織り込み済み。“過ぎたるは及ばざるがごとし”です。最後に一言。宇野重吉のナレーションは神。TVアニメ版『家なき子』を観たくなってしまいました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-09-10 19:22:06) |
13. 鬼畜
《ネタバレ》 他人を殺すのは何故いけないのでしょう。それは、自分が殺されたくないからです。殺人を認めると、自分が殺されても文句が言えない。では、どうして親が子を殺すのはいけないのでしょう。それは不利益だからです。遺伝子を残す事を宿命付けられた生物にとって、その逆ベクトルの行為など論外です。他人を殺すのと、子を殺すのとでは、同じ殺人でも意味が違うと考えます。子を傷つけるのは、自らを傷つけるのと変わらない。親が子を愛するのは、自分自身を愛することと同じとも言える。ですから、血の繋がった息子を手にかけたとき、宗吉は自分自身を殺したのだと受け取りました。一命を取り留めた息子を前にして、土下座して詫びる父。その胸中に渦巻いたものは何か。泣いて詫びたとき、宗吉は初めて人の親になれた気がします。もっとも、もし本当に子供を殺す気ならば、あの状況で仕損じは在り得ない。やっぱり彼は息子を殺したくなかったのだと思います。いや、そう思いたい。先に述べたように、生き物は自らの遺伝子を残す事に貪欲です。その為になら何だってする。あまりに合理的。清々しささえ感じる厳格な規律。しかし人間だけはこのルールに縛られません。他人を殺さないのは、殺したくないから。血の繋がらぬ子だって我が子のように愛おしい。動物と人間に差があるとすれば、この部分だと思う。ほんの僅かの差です。善人だって皮を一枚剥けば鬼か畜生が隠れているのではないか。自分の中に宗吉やお梅は居ないか。この映画を観て自問します。わたしは人間だろうか。わたしは人間だろうか。自らを疑っていられるうちは、自分は人の皮を脱がないでいられる気がします。 [DVD(邦画)] 8点(2010-11-21 20:46:05) |
14. 悪魔のいけにえ
《ネタバレ》 ホラー・スプラッターのジャンルで、名作の誉れ高い本作。それ故に鑑賞を躊躇してきたのですが(気分が沈むのが嫌だから)、ついに観てしまいました!監禁や追いかけられる恐怖は、類似作品とそんなに変わらないし、残酷描写のエグさは『SAW』シリーズの方が上だと思います。飛躍的に技術が向上した視覚効果の分野では、70年代作品に勝ち目はありません。にも関わらず、本作はこの先も名作であり続けるであろうことを確信しました。本作の何がスペシャルなのか。それは“理解出来ないモノ”で溢れているからです。例えば、印象的な瞳の接写。これだけ執拗だと確かに気色悪い。けれども、監督の意図は理解出来ます。理不尽な監禁と容赦ない虐殺。でも殺人鬼ならそれくらいやるでしょう。理解できるものは、克服できる。しかし、キーパーソンと思しき車椅子の男をアッサリ殺したり、ミイラ爺さんに無理やりトンカチを握らせたりするのは、意味が分かりません。親父が女性を捕えたときに“ほうき”を使ったのも。完全にツッコミ待ちのボケですもの。実際、ミイラ爺さんがタライにトンカチを落とす度に爆笑しました。笑いながら、気分が悪くなりました。怖かったはずなのに、笑うって何なのさ。隣り合わない2つの感情が同居した事が不快でした。監督のセンスが、自分の許容範囲を超えていたのだと思います。極めつけは、レザーフェイスのダンス。何それ。何だお前。これ、一歩間違えば、いや半歩間違えばクソ映画です。でもその半歩を外さない手堅さも感じます。クソ映画と傑作が紙一重とは。良い映画とは何なのでしょう。 [DVD(字幕)] 8点(2010-09-19 21:27:21)(笑:1票) |
15. SF/ボディ・スナッチャー
《ネタバレ》 (モロネタバレあります。ご注意ください。)地球外生命体に体を乗っ取られた人間は、眠っている間に記憶と体組織をコピーされる。キャベツ畑人形の如く謎の植物から出てくる新しい体。コピー完了と同時にオリジナルは消滅する仕掛けです。イメージ的にはデジタルデータのダウンロード。コピーが成功するまで、バックアップは保持するあたり抜かりない。この発想はかなりキテルと思います。人面犬はコピーエラー?サヤ製造工場なんてのも面白いです。何よりラストの余韻が絶品。よく考えれば当然のオチですが、ドキリとしました。間髪入れずに無音のエンドクレジット。痺れます。アクの濃さ・惹きの強さはリメイクの『インベージョン』(2007)を遥かに凌ぎます。ただしその分、細部の創り込みは粗い。コピーは表情が無いと言いつつ人間と大差無かったり、“眠ったらアウト”という重要な設定が十分観客へ周知されていなかったり。リメイクを知らなかったら理解し辛い部分が散見されました。ですから、これら不具合を改善した『インベージョン』は、意味あるリメイク作品と言えそうです。個人的な好みを言えば、事の真相を伏せたまま出来るだけ引っ張りたい。初っ端から解答をさらけ出すより、妄想説や病気説、ドッキリカメラ説等いろんな選択肢を残したほうが面白いかなと。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-08 19:18:49) |
16. 修羅雪姫(1973)
『キル・ビル』に代表される昨今流行の血飛沫どっぱー系ソードアクションの先駆け的作品でしょうか。復讐劇の筋立て自体はかなり濃厚で、とてもじゃないけど娯楽作品に適さないと思われますが、これがなかなか良い塩梅に漫画チックに味付けされていると感じました。多すぎる血糊。荒唐無稽な特訓。妙にヌルイ歌謡曲主題歌。リアリティを削ぐ要素が豊富なのです。さらに梶芽衣子の演技!大きく眼を見開き眼力全開。大味過ぎて上手いとは思えませんが、その大雑把な演技プランが、本作からシリアスさを奪っていて逆に好都合。結果的に娯楽色豊かな復讐チャンバラ映画が出来上がったというわけ。面白いです。21世紀の今こそ、この感性を楽しみたい映画。 [DVD(邦画)] 7点(2010-04-28 22:51:18)(良:1票) |
17. 悪魔のシスター
《ネタバレ》 映画知識に乏しい自分でも“デ・パルマタッチ”という呼び名は耳にした事があります。技術的な考察は出来ませんが、本作を観てデ・パルマ監督らしいとは思いました。画作りに特徴アリです。で、自分が注目したいのは“画面分割”や“瞳のアップ”ではなくて、“死体を隠したソファに血が付いているシーン”。何気ないカットなのですが、妙に気になりました。血の染みは事件を立証する決定的な証拠。でも登場人物の誰一人として気づきません。知るのは観客のみ。当然その心境は「記者よ、早く気づけ!」となる訳です。ドリフで言えば「志村!うしろ!!」状態。でも、探偵役の記者は気付かない。まあ、これは当然の成り行き。お約束です。でも、犯人には気づいて欲しいと思います。あるいは後々の展開で、証拠として活かして欲しい。何故なら、“ソファの血にカメラが寄る”というフリに対するオチが必要だからです。ラストのトボけた味わいにしても同じような事が言える。もう事件の焦点は其処に無いんですよと。「腑に落とさせない」微妙なスカシが本作の隠れた味わい。それが結構面白いと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-20 20:24:00)(良:1票) |
18. 地球最後の男 オメガマン
《ネタバレ》 (『アイ・アム・レジェンド』のネタバレを含みます。一応ご注意ください。)リメイクの『アイ・アム・レジェンド』と同じ世界観かと思いきや、全然違いました。『アイ・アム~』の“奴ら”はもはや人間とは思えません。凶暴な野生動物。アスファルトジャングルでのサバイバルといった趣です。一方本作の敵は人間。会話が成り立つ。生活様式や倫理観が違うだけです。それなのに相容れない事の不思議。少年はそれが理解できません。治療で光を取り戻す道は見つかった訳だし、それを拒むなら共生の道を探せばいい話。それが正論です。でも残念ながら現実は違う。それぞれの利益・主義主張を通すために、殺し合いも辞さないのが人という生き物。重火器を忌み嫌う彼らも、先の戦争から肝心なことを学んでいません。間違いなく人間。そして愚かなままです。主人公のラストの死に様は、まるでキリストのよう。旧世代の贖罪は叶ったのでしょうか。どうせなら、アルファの出現までを匂わせてくれたら、味わい深いものになったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-01-10 22:52:39) |
19. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 粗い脚本にまずビックリ。評価の高い作品という予備知識があったから尚更です。有り得ない、おバカと言っていい展開がチラホラ。人物の描き方も極端です。例えば千葉真一。ストレスのかかるポジションなのは分りますが、それにしてもテンパリ過ぎ。あれはプロの態度じゃない。新幹線乗務員もやるべき事をやってない。肝心の警察は問題外でした。観ていてじれったい。そんな中、魅力的だったのが宇津井健です。普通なら、無事に事態を収められた事で満足するところ。でも彼はそう思えなかった。爆破の可能性を払拭できないまま、新幹線を止めた選択が許せなかった。100%の安全は有り得ません。リスクは必ず付きまとう。最新のシステムを搭載した新幹線が凶器になり変わったように。でも100%に近づける努力はするべき。それが人命を預かる仕事の責務。1500人の命の重みを感じながら職務に当たっていた宇津井の感覚は正しい。ただ、最悪の事態を想定した「ゼロ地点」での停車という判断も誤りではありません。あの状況下ならやむを得ない。停車を指示した国鉄幹部はもっと大きな母数の命の重みを感じていたのかもしれない。それぞれの立場で、「最善」の捉え方が違うのは興味深いです。豪華スター競演の熱気ある映画でしたが、完成度は今一歩と感じました。「さよなら0系新幹線記念」で1点加算させていただきます。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-27 19:57:07) |
20. ネットワーク
《ネタバレ》 その職に固執するあまり、我を失ってしまった落ち目のキャスター。視聴率至上主義で暴走する女プロデューサーや重役。「ビジネスだから」では片付けられない執念が垣間見えます。彼らを突き動かした真の原動力。それは欲望だと思う。自己顕示欲や承認欲求、優越感、成功欲等々。人が欲して止まない要求を満たしてくれるものが、TV業界にはあるということ。それも頷けます。一度に数千万人を相手にし、その結果が視聴率となってはね返ってくる。これだけ大規模な成果を短期間で、かつ数値として確認で出来るのがテレビならではの醍醐味。成功で得られる快感は凄まじいと思う。手にしたものが大きいほど、そして得難いほど、手放したくないのが人情です。ただ今回のケースは度を越えている。予言者という名の道化に身を落とすキャスター。視聴率を守るために殺人を示唆する幹部たち。みな狂っています。マスメディアの力、というより、その先にある大衆の力に飲み込まれたのだと感じます。ラストの銃撃事件。一人は局の幹部から依頼された人間。では、もう一人は誰か?おそらくただの一般人。つまり大衆の一部です。大衆を欲し、大衆に祀り上げられ、大衆に殺された一人の男。その憐れな末路が大衆の前に延々と晒される皮肉。恐ろしいと思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-25 19:04:43) |