1. シェーン
《ネタバレ》 誤解があります。当時は異色ウェスタンだったのです。いわば水戸黄門風な映画のラッシュの中、悪役にも存在理由を与え、一件落着でも悲しいラストになるという西部劇はそれまでなかったのです。また、ガンアクションの少なさを指摘した方もいらっしゃるようですが、意図的に抑えて、アクションシーンの記憶が強くなってるよう効果を狙ってるはずです。だから、子供に手本を見せるシーンの発射がびっくりものになるわけで。例を挙げていいかどうか、「リーサル・ウェポン」シリーズは弾丸何万発、爆薬何百kgとかいうフレーズで10何年前には大ヒットしましたが、今観てる人はおたく系だけでしょう。 ペキンパが「ワイルドバンチ」への批判に対し「俺が悪いんじゃない!シェーンのジャック・パランスが西部劇を変えちまったんだ!」と発言したそうです。 ただ、TVの映画放映がテレビ局のドル箱だった時代、淀川さんの解説付きで年一回くらいやってたそうです。本家のアメリカの著述家からしたら「日本での異常人気」だったそうですね。大正生まれのシェーンファンだった祖父ももう亡くなりました。シェーンも伝説的な付加価値はもうないんでしょう。 [DVD(字幕)] 10点(2006-07-23 20:32:01) |
2. 戦国自衛隊1549
《ネタバレ》 皆さんのレビューの通り、駄目ですね。どんな理由にせよ、時代を遡らせた以上ショッキングな場面がないといけません。有りえない条件下なら、完全装備の兵士一人で一つの城なみでないと。地勢や兵力配備の説明もなしに、森さんや嶋大輔が死んでいきますが、感情は動きません。とかくの噂のある角川春樹ですが、千葉版の格調高さにはとても及びません。荒唐無稽(だが半村良は実に良心的なSF作家です)なのは最初からわかってることなのだから、もっと無茶をやってよかったはず。そんな条件下でこれでは、製作サイドのイマジネーションの貧しさでしょう。 [DVD(邦画)] 3点(2006-07-23 19:21:23) |
3. マルタの鷹(1941)
《ネタバレ》 基本的な誤解があります。「男は黙って・・・。」ではなく、ボガートはお喋りなんです。この映画は(もちろん字数が許されるなら途中のことも書きたいです。ファットマンにブラフをかました後の手の振るえ、クック・ジュニアに煙草の煙をぶっかけるところ、ローレとの掛け合いなどなど)。結局ラストでメアリー・アスターに一席ぶつところにつきます。で、「男は相方を殺られたら・・・。(訳文はいろいろあると思いますが)」(その女房と出来ていながら!)全部一方的に言い切った後、エレベーターでの乾ききった別れ。「三つ数えろ」もボガートの芸達者振が見映えしますが、私はこちらを採ります。「私を愛していたんじゃないの?!」「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」という風な台詞が頭に残ってますが。 [DVD(字幕)] 9点(2006-07-08 20:31:45) |
4. 裁かるゝジャンヌ
名作と聞いてましたが、すんなり観て「あーそう。」でレンタル返却。2、3週間経って、なんか記憶していたカットが蘇りはじめ、1月過ぎたらようやくもの凄さに気が付きました。ある映画評論家は「観てて泣けるのはボロ映画」と言ってましたが、まさに。映画は人が造るものだ、というのは抽象的な言い方ですが、画面に出ている人、カメラ外で演出する人、雑用を片付けていく人。当たり前ですが、クールな映像でありながら人肌を感じさせます。この時、トーキー撮影も可能だったが、あえてサイレントを選択したと後から知りましたが、正解だったのでしょう。この乾きながらも中身の濃い映像。ご覧あれ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-07-01 21:00:13) |
5. ジャンヌ・ダルク(1999)
私はベッソンをほとんど評価しない少数派です。「ニキータ」は一応の水準だとは思いますが。このジャンヌ・ダルクはこの人の箱庭内の個性に過ぎず、いかにも現代の視点であることがあからさま(「グラディエイター」とほぼ同じ)で、歴史的事実の重みが全然伝わってきません。ジョヴォビッチは好きなんですけどね。 [DVD(字幕)] 3点(2006-07-01 20:38:31) |
6. カサブランカ
《ネタバレ》 嫌いな映画で、世論と反するもののうちの一つです。 なんぼ戦意高揚映画でもドイツ人がそろいもそろって馬鹿ではないでしょうし、ナチズムの恐ろしさは一つもない。 仮に恋愛映画としても、「サム、その曲は弾かないでくれ。」なんて三流の男の台詞です。 ボガートの名声を決定付けた作品なのでしょうが、皮肉にも一番だらしがない役どころですね。「マルタの鷹」のボガートが私の最高のボガートです。 初めて観たのは20代前半ですが、腹が立って仕方がなかったのをよく覚えています。 [DVD(字幕)] 2点(2006-07-01 19:57:59) |
7. 望郷(1937)
《ネタバレ》 古い映画に甘い私でも、感興なしです。ガルボやデートリッヒ、あるいはギャバンでも、出ているだけで高評価する向きがありますがいかがなものでしょう。もちろん好きなものは好きだということで構わないんですが。私はギャバンには好意を持ってますが、これは受付けません。ただ白々しいな、と思っただけです。 [DVD(字幕)] 4点(2006-06-11 20:05:50) |
8. 白い巨塔
《ネタバレ》 田宮版のTVドラマを観てしまうと、これは低い評価にならざるをえません。財前の攻撃的な部分をのみ描いてるだけですから。外観の強さに隠れた心中の苦悩、気持ちの弱さ、もろさをTVでは存分に描写できています。 他の方が「ダイジェスト版」と仰ってますが、まさにそのとおり!(原作に最も近いとも言えますが)。私はTVドラマでの鑑賞(レンタル店ではかなり普及してます)をお奨めします。財前、里見、柳原、中村玉緒、里見の兄、ケイ子などなど、今でいうキャラ立ちの群れですから。中村伸郎、加藤嘉、小沢栄太郎、岡田英次他々、邦画ファンにはたまらないキャスティングです。特に最後の数回は臨界点を突破した爆流になってます。ドラマ史上最高傑作だと確信しています。 よって、大好きな山本薩夫、小川真由美でプラス1点でこの評価になりました。 [DVD(邦画)] 6点(2006-06-11 18:24:07) |
9. ファニーゲーム
《ネタバレ》 私は映画を理論的に学んだわけでもなく、特別な知識もありませんが、他の方の高評価が信じられません。「リモコンはどこだ?」の後の巻き戻しの時点で作者の意向がようやくわかりました。感想は一言だけです。「ナメてんじゃねえよ!」 [DVD(字幕)] 2点(2006-05-27 13:38:08)(良:1票) |
10. 眼下の敵
《ネタバレ》 大好きです。私の思いとだぶる投稿をメモしてたんですが、あんまり多くなったのでやめにしました。 これはスポーツで、限られた条件下でしかありえない世界かもしれません。。 ユルゲンスにしろ、ミッチャムにしても、最も気にしているのは部下の士気です。特に好きなシーンは、ユルゲンスが魚雷室で恐怖に怯えた船員を「死も任務の一つだが、我々は死なない。・・・。私を信じるか?」 その後、ハイニにドイツ民謡(?)のレコードを大音量でかけさせるところです。 当然米駆逐艦が気づきますが、この瞬間にミッチャムは相手の評価をマックスに感じたのではないでしょうか。 互いに敬礼をした後、ドイツもアメリカもなく、船員達が危険を冒して彼らとハイニを助けにに向かいますが、この辺はたまりません。 ユルゲンスとミッチャムに、私は敬礼します。 [DVD(字幕)] 10点(2006-05-02 23:13:55) |
11. 戦略大作戦
《ネタバレ》 20番さんにほぼ同意。音楽はラロ・シフリンですが、ラストの三人がタイガー戦車(風)の指揮官へ向かっての行進には、いかにもマカロニウェスタン風のメロディが流れますしね。 最後、勲章をたくさん抱えた米国将校がケリーズヒーロー達に追いつこうとしますが、明らかにパットンを皮肉ったものです。 娯楽戦争映画って最近ないですね。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-30 13:49:19) |
12. ダイナマイトどんどん
《ネタバレ》 なんで投稿数少なく、評価も低いんでしょうか? 男というのはこういう生き物なのだ、と再認識させられたものです。石橋が魔球を投げられると思い込んで指を落としたり、嵐さんがその場でおさまりがつかなくて勝負を受けてしまったり、文太の策略にまんまと乗って田中邦衛が焼酎に走ってしまったり、もうわかってても笑わずにはいられません。まだありますが、きりがありませんので。 そして、沖縄に送られた(こういうことって講和の前には実際あったんですか?)野球用具を持った両方の組が向き合う形になりながら、文太側がきびすを返して同方向に歩き出すラスト。これからグラウンドで勝負! もうたまりません。 私は、少なくとも独立愚連隊シリーズのレベルには達してると思っています。 [映画館(邦画)] 10点(2006-04-30 13:20:01)(良:1票) |
13. 駅馬車(1939)
《ネタバレ》 12番さんと33番さんの投稿は私の思いとだぶります。 もうかなり出てますが、インディアン(先住民との訳が多はやりですが、過去の作品までやる必要はないと思います)について、フォードは他の映画であからさまに、差別的な描写をしています。ミッドウェイ会戦の時にも、記録映画を撮ってまして、有色人種についてはある傾向がみられます。でも、前科者や娼婦にはいつも優しいので、時代の制約と考えるようにしています。 それからですが、トーキーが出始めて会話重視の映画が数多になるなか、ウェスタンは落ち目になってたらしいです。この映画がウェスタンに再び活気を取り戻させたそうです。 12番さんと同じく、私のウェスタンベストは「駅馬車」「真昼の決闘」「シェーン」です(マカロニはまた別です)。 3つとも、当時としては「異色」だったのだそうです。 [DVD(字幕)] 10点(2006-04-29 15:26:46) |
14. グリーン・ベレー
と、皆さんおっしゃりますが、観終わった後画面に手近のものを投げそうになりました。 ジョン・ウェインは製作サイドにタッチしてはいけないんです。 フォードなりホークスなりと組んで名作が生まれるんです。これは、ウェインを貶めるものではないです。頭脳が優秀なものが製作したって駄目なものは駄目ですから。 [DVD(字幕)] 0点(2006-04-29 14:51:38) |
15. アリア(1987)
《ネタバレ》 言い出しっぺですが、こんなに早く登録されるとは思ってなかったです。スタッフ等で情報提供いただいた方にも感謝いたします。 私はこの映画を東京池袋のロサ会館で、15年くらい前に観ました。映画ファンとしては駆け出しの頃、ナイーブな若い頃でした(今は古い映画はかからなくなりました。DVD普及のせいでしょう)。 オムニバスで、複数の監督がオペラのアリアからのインスピレーションで短編を製作したものです。 が、私が語りたいのは、データ配列の順に出てしまってますが、フランク・ロッダムという人が撮った「Lovers」という一編です。 ワーグナー(私はワグネリアンと言われる分類に入るかもしれません)の「トリスタンとイゾルデ」のラスト(イゾルデの愛の死)を使用し、名前不明ですが男とブリジット・フォンダの日本語でいう心中を描いたものです。 死の前にこの二人は愛し合うのですが、この美しさは絶対に文章では表現できません。この時男の方にボカシが入ったのですが、これはいけないと思いました。それまで、表現の自由とボカシは最高裁までいって争われたことを知ってましたが、生まれてはじめてその意味がわかりました。一口に言って「こんな美しい映像に余計なことをするとは何事か!」です。 全部で9編あったはずですが、私はこれに痺れてフラフラしながら出口へ向かい、ブリジット・フォンダという名を、劇場前のプレスでチェック、メモして池袋西口の雑踏のなかに消えました。モツ焼きとホッピーをしたたかにやって、次の日は部屋で死んでました。 今考えると、いつの間にかブリジットは(天下をとりそうになりながら)、B級専門になっちゃいましたが。 高いお金を払ってレンタル落ちのVHSを入手しましたが、リージョン1(私はこのためにDVDリージョンフリープレイヤーを購入しました)でDVDを持ってます。 もしレンタル店のはしっこにでも見つけたら、騙されたと思って観てみてください。 あー、何かいけませんね。主観ばっかり。しかも長過ぎ。しばらくしたら書き直すかも知れません。 拝。 [映画館(字幕)] 10点(2006-04-26 21:36:23)(良:1票) |
16. 黒いジャガー
きつい投稿が目立ちますが、これはアメリカ黒人の金字塔という観方もできるんです。今は大手を振って黒人俳優が高額なギャランティーで映画に出てますが、昔は違いました。 シドニー・ポワチエが道を造り出したことに異議はないですが、白人のインテリ層が認めただけという皮相的な結論にもなりかねない。 これは、コカ・コーラとポップコーンを手に映画を観に行く層(特に黒人)が圧倒的な支持をしたんです。(日本でもそれなりに入ったそうです)。S・M・ジャクソンで「シャフト」(2000)とリメイクされましたが、(R・ラウンドツリーがゲスト出演)、意味合いがわかると思います。 映画としての完成度はともかく、熱気が感じられます。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-22 17:03:52) |
17. 八つ墓村(1977)
これに出てくる「タタリじゃー」が流行した時には小学生でした。 何度かテレビで観たはずですが、記憶が曖昧。 で、最近DVDで観直しました。 渥美さんや萩原さんについては、他の方にお任せします(白塗り化粧の是非も)。 で、発言させていただきますが、今の言葉でいう「小川真由美萌え」ですね。この頃が一番色気があったのかも。昔はビッグネームだったんですよ。この中では山本陽子なんて全然小さい存在ですよね。洞窟内の濡れ場は油断するとよだれが落ちそうな。「復讐するは我にあり」時よりも味が出てます。点数はすべて小川真由美に。 [DVD(邦画)] 5点(2006-04-22 14:58:48) |
18. チャップリンの給料日
《ネタバレ》 子供の頃、NHKで三大喜劇王(サイレント)の短編集を夜に放映していた時期があったんです。これと「偽牧師」は鮮明に記憶しています。 奥さんがいる設定は多分他作品にほとんどないはずですし、レンガ積みのシーンは驚愕ものでした。しかし、いかに当時の喜劇王達の根性があったとしても(キートンは何度も事故を起こしてます)、レンガがあんな風に積めるわけはないんです。 サンタはいないよ、と言ってしまうようですが、あれはフィルムを逆回しにしてるんです。投げ落とすのを撮影しておいて、下から投げ上げるシーンをうまくつなぐとああなるんです。 でも、だからといって価値は変わりません。チャップリンはエンターテイナーそのものなんです。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-22 12:27:00) |
19. ミッドナイト・エクスプレス(1978)
《ネタバレ》 14,5年前の若い頃にレイトショーで観ました。ラストシーンが忘れられずに、最近DVDを入手しました。 これ、道徳的な善悪とか社会問題なぞ考えない方がいいですよ。ラストのジープを恐々やり過ごした後のダッシュ、飛び上がりのためにそれまでのフィルムが存在してるんですよ。あのラストから逆算してそれまでのシーンがあるんです。 あの飛び上がりが説得力を持つ(自由への渇望)のは、やはりスタッフの好演出があってこそです。 [DVD(字幕)] 10点(2006-04-21 21:08:27) |
20. チャップリンの独裁者
もちろん、チャップリンの芸を堪能できる映画ではありますが、この映画はある意味掟破りスレスレの最後の演説を軸に考えたいです。「JFK」の最後の演説を観た時に、「これは独裁者か?!」と思ったこともありました。 政治的なプロパガンダとするには、イデアリスティック(ナイーブ過ぎると批評した研究者もいます)、大衆民主主義への過度の期待と断じることもできるでしょう。 しかし、映画作家としての成功が前提ではありますが、ドイツの大軍隊を掌握する男に独りで喧嘩を売ったのですよ。 男として、人間としてその行動には敬意を払わずにはいられません。 他の方がもういろいろ書かれているので細かいことには触れませんが、ただ脱帽するだけです。 [DVD(字幕)] 10点(2006-04-21 20:44:35) |