1. 蜘蛛女のキス
《ネタバレ》 同性愛者と政治犯の刑務所もの。同性愛者モリーナは実は政治犯ヴァレンティンの情報を引き出すためのスパイであるが、二人の心の交友は見ていても痛く心悲しい。 ■二人の対照的な生き方が、しかし交わりそうで交わらない関係と共に描き出されている。自分の殻と頭の中の世界に生きる男、現実を変えるためにすべてを投げ打とうとする男、好対照な二人の間には友情(愛情)が芽生え、最後にはモリーナは密告の任務を捨てて連絡役を負うまでになる。 ■しかし、やっと現実で生きようと思ったモリーナは、実は当局におとりとして使われているだけであり、それに気付いた地下組織に殺される。一方現実のために戦っていたヴァレンティンは、拷問の末に最後には幻想の世界へと羽ばたいてエンディングを迎える。何とも言い難いラスト。 ■同性愛ものはなんかとっつきにくいものが多かったが、これはかなりスムーズでそして美しく描けているように思った。 [DVD(字幕)] 8点(2013-11-21 00:01:56) |
2. デビルゾーン
《ネタバレ》 Youtubeにて原語鑑賞。一つ一つは20分ごとと短く、また内容も非常にオーソドックスなので、ホラー慣れしている人にとっては物足りないかもしれないけど、冗長にならずにテンポよく進むので見ていて快適。 ■一話目:これだけがほぼ唯一現実で起きそうな話。全編嫌な雰囲気は漂っているが、ラストはあっけない。ハッピーエンド的だったのも意外。 ■二話目:流れ的に大体オチは予想できたが、これだけはホラー色は弱い。しかし冷静に考えると唯一の完全バッドエンドではあるのだが。 ■三話目:展開はほぼ「激突!」、しかし地中から飛び出してくる車というのはさすがに予想を上回ってビビった。これで信仰取り戻すのかよとも思ったけど。 ■四話目:「ジョーズ」「トレマーズ」の系統。お化けネズミが出てくるわりには、子供返すとあっけなく退散して、あれは一体何だったんだろうとは思わなくもない(そもそもなんで最初にあの家にいたし) ■全体的に教訓めいているのも特徴的か。「煙草はやめろ」「ゲームしすぎるな」「信仰を持て」「動物は大事に」ホラーでこういうのも珍しいような [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-03-21 01:11:12) |
3. 動くな、死ね、甦れ!
《ネタバレ》 ソ連時代に生きるイタズラ好きの少年と賢明な立ち振る舞いを見せる少女の物語。すごい盛り上がりがあるという感じではなく、日常の中に凄まじさを描き出すような構成になっている。電車の脱線も、強制収容所の女も淡々と描き出される。 ■問題のラスト。監督の指示の音声がそのまま入るというなかなかな「脱構築」ぶり。しかしラストは一体何なのだろうか。発狂した女、唯一少年の視点がどこにも存在しない、すさまじく非現実的で浮いたシーン。分からない。ラストはとにかくどんよりと歯切れ悪く終わった。全体を振り返ってもやはりよくわからない作品。 [映画館(字幕)] 5点(2013-01-29 22:55:36) |
4. シャーキーズ・マシーン
《ネタバレ》 正直微妙だった。展開としてはダレているし、アクションとしてはあまりに中途半端。謎を解くという感じでもなければ、人間の描き方が深いという感じでもない。全体としてどこに行きたいのかよく分からない感じであった。 [DVD(字幕)] 6点(2012-02-09 01:05:21) |
5. 黄昏(1981)
《ネタバレ》 なるほど、「老いる」とはこういうことなのかなぁ、と20代になって少しの自分にさえも感じさせてくれた映画。少しずつずれていく人間関係と互いの心、以前とは違う勝手、そういう中でどういう風に生きるのか、それを決して過剰な演出ではなく、静かに見せてくれる ■ただ、途中でジェーン・フォンダがいなくなってしまったのはいただけない。ヘンリー・フォンダだけの話ならビリーとの関係で考え方が次第に変わっていくという話でよかったのだが、そうではない以上、やはりジェーンはずっと居続けて、対立を繰り返しながらも溝を埋めていく、という感じの展開にしないと、あれだと最後の仲直りが唐突にすぎるように思えた。 [DVD(字幕)] 7点(2011-08-29 00:29:16) |
6. マルサの女
《ネタバレ》 あー、脱税ってこうやってやるんだぁ、というのと、それを暴こうとする者との知能戦を見せてくれる作品。といいつつも、地味に地味に動き続けてガサ入れ一発で終わりというのはまあ非常にリアリスティックだが同時にあっけなく終わってしまった感はあるかも。 [DVD(邦画)] 8点(2011-08-26 00:51:32) |
7. バーディ
《ネタバレ》 戦争の後遺症と青年期の絆とを交互に描き出す秀作。展開や描写の不足を感じる面もあるが、ラストの展開がおおと思わせる。 ■ラストについては、要するに「バーディにおける正常/アルにおける一喜一憂」という対比を明確に打ち出しているわけで、つまり「バーディが変だとか異常だとか言って勝手に騒いだり心配したりしているけど、バーディにとっては常に普通なのであって、バーディの以上云々を言う側の心の問題なんだよ」ということを示しているのかな、と解釈した。 ■確かに、「空を飛びたい」という純朴な心を、大人は理性とか常識とかの名で押しつぶしているのかもしれない。純朴に生きていくには、社会はあまりにもつらい。「あいつにかける言葉はない」とバーディが言うのもそういうことかもしれない。 [DVD(字幕)] 6点(2011-04-16 01:39:23) |
8. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
《ネタバレ》 劇場版は未見。レビューを見ると劇場版の方が評判がいいらしい(しかもシーンの意味付けが結構変わるらしい)が、個人的には完全版でも十分楽しめた。 ■子供時代をアルフレードと心を通わせ、青春時代にエレナとの恋に落ち、そして村を出ていって三十年後に再び戻ってくる。まさに人生そのものという感じ。映画と人生を重ね合わせつつ「人生の方がはるかに複雑だ」と語るアルフレードは印象的。個々のエピソードが決して押しつけがましくもなく、すっと入ってくるのは脚本のうまさか。 ■そして本作を盛りたてているのは音楽。この音楽を聞いただけでなぜかノスタルジーを感じてしまうのは私だけではあるまい。音楽と内容が噛み合って、最高のハーモニーを奏でている。 [DVD(字幕)] 10点(2011-01-06 00:49:56) |
9. 殺人に関する短いフィルム
《ネタバレ》 主人公と、主人公が見ているもののみを明るくし、周りを暗く押さえる映像法で徹底して「見える世界」を限定しつつ、それでいて淡々と殺人を描き出していく手法はなかなかのもの。 ■「なぜ殺したのか」は一切描かない(というより、ない)。殺人はあまりに淡々と、突き放して描き出される。その代わり弁護士の心中はくっきりと描かれる。同じカフェにいたのに、もう少しうまく弁護できたかもしれないのに、依頼人は自らの目の前で絞首刑になる。 ■タクシー運転手についても殺されるまでを描いていたが、そこはあまり利いてない気がした。これほど短い作品ながら、前半は冗長さを感じてしまった。代わりに、彼女に「この車どうしたの?」と詰め寄られるシーンの後を、個人的にはもっと見てみたかった。 [DVD(字幕)] 5点(2010-12-31 19:40:02) |
10. ミッシング(1982)
《ネタバレ》 軍事クーデターが起きているチリで失踪した夫/息子を探す物語だが、最後に再びの再会を果たしてハッピーエンドというような展開を考えているとガツンとやられる。 ■山場はラスト付近、チャーリーが死んだことを知った後の、白々しいアメリカ側とのやりとりではなかろうか。結局のところアメリカはチリ政府に処刑のGOを出し、見殺しにする。それを悪びれることもなく堂々と認めている。空港での「アメリカは許さないぞ」とのセリフもむなしく、最後のテロップで告訴却下の旨が観客には知らされる。 ■しかし、展開としては前半は時系列がなぜかねじれていて見づらく、ラストまでは別段情報が増えることもなく淡々と聞き込みを繰り返すだけという平板な展開なのはあまり頂けない。時系列をひねったのは「始まったときにはすでに終わっていた(処刑されていた)」という風にしたかったのかもしれないが、余計な演出の印象。平板なのは実話だから仕方がない面もあるが、同監督で同じく実話ベースの「Z」の緊迫感と比べても、本作の単調さは否めない。いい題材なだけに残念。 [DVD(字幕)] 7点(2010-12-29 23:43:14) |
11. 偶然
《ネタバレ》 駅で「電車に乗れる/追いつけない/駅員に止められる」という3つの場合、それぞれ主人公がどうなってしまったかを3回にわたって見ていくという、運命のいたずらを見せつけてくる作品。 ■とりあえず3つの運命は「体制派/反体制派/中立(政治にかかわらない)」と色分けできるだろう。それぞれ決してうまくいくわけではなく、それぞれなりの悲劇的結末を迎える。 ■カギなのは「あのときこうしてたら・・・」型のパターンではないということではないだろうか。主人公の意図が介入する余地はゼロで、電車に乗れるかどうか、駅員が止めるかどうかは完全に運命の手に委ねられている。運命の番人はこの3つの結末のどれになるかを決めることが出来る。どれであってもうれしいものではないのだが・・・裏を返せば自分が運命を超越出来たところで、やはり悪い事態は悪いままということかもしれない。 ■ただ、3つのストーリーの連動性が低く、ただ3つの対照的なストーリーを並べただけに終わっているのが残念。もう少し「主人公がこうした/しなかった」ことがゆるやかに利いてくるような、つまり複数話をまたいで登場するイベントなどがあった方が、全体としては面白くなったのではなかろうか。このままでは一つ一つの物語が単調で面白味にかける。残念 [DVD(字幕)] 6点(2010-12-29 01:01:59) |
12. 風が吹くとき
《ネタバレ》 主題は「核の恐ろしさ」なんだろうが、個人的にはむしろ「無知・不勉強の恐ろしさ」の方を強く感じた。 ■はっきりいって、前半の夫婦のやりとりはギャグにしか見えなかった。扉外してシェルターとか作っている段階であれは「秘密基地ごっこ」と同一地平。あれは「無垢」というよりは「無知」でしかない。もっとも、「アトミック・カフェ」などを見ると、こういうのが案外普通に信じている人が多いのかもしれないが。 ■そして被爆地にとどまり続け、結局放射線障害で死ぬ(のだろう)。ほのぼのした彼らの生活はしかし、恐ろしいというよりも無頓着という印象がぬぐえない。無知であることは時に自らの命をも奪う。「目で見ればわかる」というのは近代以前であり、現在は科学も発達し見えないところにも悪魔は潜んでいるようになった。そうした悪魔は「無学」の頭に住み込んで彼らを内から蝕んで殺す。我々には無知でいる権利はない。 [DVD(字幕)] 8点(2010-12-07 23:58:56) |
13. マスク(1984)
《ネタバレ》 障害者ものはあまり好きではないのだが、本作では障害をメインに出さず、むしろ好き勝手しているが息子のことを思っている母親との葛藤を描いた部分の方が大きくなっているところが特色だと思う。あのような病気を抱えながらも常に前向きに生き続ける(ただ「希望を見て、優しい人」とかじゃなく、本当に普通の青年のように遊んでいる)のが極めて印象的だ。 ■しかし、彼を根本的に受け入れてくれるのが、ある意味「不良的な仲間」になってしまっているというのは皮肉だろう。世間的には「まっとう」とされている人々ほど、実は上っ面でしか人を見ておらず、単なる外見でロッキーを蔑み、他方「不良・アウトロー」な人々の方が、外見ではなくその心で人を見ようとしている。 ■けど、ラスト直前の展開は悲しい。好きな子とは遠く離れることとなり、ヨーロッパ旅行はなくなってしまう。学校は再び居場所がない。すべての歯車が悪い方向にかみ合い「生きたい」気持ちが失われたことが、彼の最後を引き寄せてしまったのだろう。 ■ところで、彼女は目が見えたとしても、果たして彼のことを受け入れてくれただろうか。。。。。。 [DVD(字幕)] 8点(2010-10-11 22:20:21)(良:1票) |
14. ソフィーの選択
《ネタバレ》 ホロコーストの問題と、現在における三角関係の問題とが、重心の定め方を決め切れずにどっちつかずになってしまった印象。ネイサンの精神病など、重要な返し部分があまりというかほとんど生きていないし、逆にホロコーストの話としては前半がただのロマンスになっており退屈。よさそうなシーンもいろいろあるだけに「絞る」ことの重要さを感じた。 [地上波(字幕)] 6点(2010-09-29 01:07:01) |
15. 東京裁判
《ネタバレ》 凄い。ときどき歴史映像を挟みながらも基本的に法廷の実際の映像とナレーションのみで4時間30分!それでいながら(単なる事実資料・歴史的価値だけでなく)並の作品より見ていて面白いという不思議。NHKのスペシャルでありそうな感じの展開だが、ナレーションと編集が秀逸で飽きさせない。 ■有名な、大川周明が東条英機の頭を叩くシーンも収められている。石原莞爾の「東条には思想も信条もない」発言はある意味で可笑しい。さまざまな裏取引も描かれていて、そんなだったのかと驚かされた面も。 ■しかし、事実映像のみだが、編集とナレーションによって、監督のメッセージはきちんと込められていることにも注意しておきたい。もちろんだから非難されるべきということではないのだが。 ■そうそう、南京事件の映像は実は偽物らしいのだが、あそこだけあえて出典を示して「この中国の映画から転用してます」って見せてたのは、あの映像は怪しいのではという作成者側の疑念があったからかな?。他の戦争犯罪、バターン死の行進の際のナレーションと比べても、あそこだけ不自然に非難調なのは、裏の映像が偽なのとリンクさせてそうした日本人批判の白々しさを皮肉な方法で示そうとしているのだとしたら驚かざるを得ないが・・・さすがに読み過ぎか。 ■日本史の授業で使われてしかるべきだし、日本人として「トラ・トラ・トラ!」「日本のいちばん長い日」と並んであの戦争を考えるために見られるべき作品だと思う。 [DVD(邦画)] 9点(2010-09-10 23:47:28) |
16. シャイニング(1980)
《ネタバレ》 人は終盤の一人を除いて全く死なない、そもそも登場人物もほとんど3人とむちゃくちゃ少ない。なのに存分にホラーとして成り立っている。 ■三輪車に乗った子供の視点から描いたホテルの画は、それだけで何らかの「不穏さ」を感じさせられる。カラフルであるにもかかわらずどこからか「異常さ」を感じさせられるホテルの雰囲気(おそらく「色の不協和音的なもの」があるのではにか)、そしてニコルソンの「狂気」は素晴らしすぎる。 ■しかしキーはシェリー・デュヴァルだろう。あの「きれいなわけでもかわいいわけでもないが、しかし不細工でもなく、けなげさと誠実さを感じられる人」という難しそうな人をよくもまぁピンポイントで探してきたものだ。あとあの恐怖に叫ぶ演技はさすが。 [DVD(字幕)] 8点(2010-09-02 01:15:43) |
17. 友よ、静かに瞑れ
《ネタバレ》 男たるもの、最後は潔く死にたいものだ、と思わされた。ラストだけ出てきた坂口は、まさに「死ぬために出てきたようなもの」。そして彼を男たらしめた新藤。二人の男の絆がこのドラマを作り上げている。 [DVD(字幕)] 6点(2010-03-05 23:33:14) |
18. ニューヨーク東8番街の奇跡
《ネタバレ》 ■ほのぼの未知との遭遇系の映画。立ち退き屋にいじめられているマンションにいきなりUFOが登場。みんなでわいわいいやっていると最後にはすごいハッピーエンド。 ■けど、個人的にはあのおばあちゃんがなんかうっとうしくて全然入り込めなかった。宇宙人も金属製で親しみがわきにくいし。悪くはないんだけどねぇ・・・ [DVD(字幕)] 6点(2010-02-11 00:15:47) |
19. 遠い夜明け
《ネタバレ》 普通に見てれば非常にいい映画。前半は黒人たちの受けているひどい境遇とその訴えに心動かされ、後半ではサスペンスフルな脱出劇。実際見ている間はすごい引き込まれて、時間の長さが全く気にならなかった。 ■けどすごい気になったのは「あれ、この映画ビコとウッズが力を合わせて戦い抜く映画じゃないんだ!」ってこと。途中でビコがあっさり死んでしまい、いつの間にか話がウッズの脱出劇になっている。そこを不自然に思わせないのは演出の巧さなのだろうが。 ■しかし考えてみる。もともとの目標は「黒人の受けているひどい扱いを打破すること」のはず。いつの間にか目標が国外逃亡に変わってしまっていいのか!?しかももともとならウッズは好き勝手に海外に行ける身だったんだから、落ち着いて考えてみればさっさと国外に文書だけでも送っておけばよかっただけじゃないか、という話になる。 ■そして重要なのは、ウッズのような白人は国外に亡命する資金も行く場所もあるが、現地の黒人はそうはいかないということだ。ウッズとビコは似たような境遇になったとはいえ、この点が決定的に違う。そこら辺を意識していないあたりがこの映画の弱さだと思う。同じアフリカ国外亡命系の映画ならその点「ブラッド・ダイヤモンド」の方がおススメか。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-01 00:42:04) |
20. 恐怖分子
《ネタバレ》 説明を最小限にして、映像だけで現し切った映画・・・といえばよく聞こえるが、要するに見ててもよくわからなかった。いくらなんでも説明しなさすぎ。最後のは夢オチですか、おい。。。 [ビデオ(字幕)] 3点(2009-12-06 22:23:31) |