1. シェーン
《ネタバレ》 リバイバルで久しぶりに鑑賞。子供の頃にはよく分からなかったシェーンの魅力を堪能できた。この映画は、ただの撃ち合いでもつ西部劇のレベルを軽々と超えている。 まず、僕が子供の頃抱いた印象と違ったのは、シェーンは決してかっこいいばかりじゃないということだ。そもそもなぜ彼がここに流れ着いたか分かったものじゃない。その理由は決して褒められたものではなかったのだろう。彼の拳銃の腕も、彼がどちらかというと暴力的な生活を送ってきたことを明確に示している。ジョーの家に来てからは、「暴力も使いようだ」と殊勝なことを言うが、今まで彼がどのようにそれを使ってきたかを考えれば、内心忸怩たるものがあったのではないか。彼は、おそらく何かのきっかけで改心した悪党に過ぎないのである。 そして、彼と中年を迎えようとしているマリアンの気持ちの交錯も美しいだけじゃない。それはマリアンにおいては、ど田舎に閉じ込められた人妻の単にありふれた貞淑のよろめきであり、シェーンにとっても自慢できるアヴァンチュールでもなんでもない。厳しいことを言えば、盛りを過ぎた彼らの交情は、世間から見ればみっともない部類にすら区分できる。 そして、僕がこの映画を優れていると思うのは、まさにこういうしょうもない男と女の話がものの見事に傑作に仕立て上げられているからである。昼ドラにでも出てきそうなストーリーを、役者陣の丁寧な演技と余情漂う慎み深いシーンの積み重ねでとても上手に一つの美談に変えてしまった監督の手腕は恐ろしいほどだ。子役の活用方法も独創的だ。子役を中心に据えて、ストレートに涙を取りに来る映画が多い中で、この作品は子役を脇役として効果的に使っている。シェーンとマリアンとジョーの三者を料理の原材料とすれば、ジョーイはそれを調理する火に当たる。ジョーイの存在が、彼らの気持ちの触れ合いやすれ違いを分かりやすく炙り出しているのだ。 終盤は名シーンの嵐で、ウィルソンやライカー兄弟との撃ち合いのシーンはもちろん素晴らしいが、その前段のシェーンとジョーの殴り合いでシェーンが最後に拳銃の台尻でジョーを殴り倒すシーンに感動した。スターレット一家に対するシェーンなりの仁義の切り方にただ涙するのみだった。そして、あまりにも有名なラストシーン。涙が止まらなかった。 [映画館(字幕)] 8点(2011-11-15 23:42:08) |
2. 楢山節考(1958)
《ネタバレ》 原作既読。姥捨ての習慣が残る極貧の寒村を舞台にいのちの尊さを真正面から描いた傑作だ。淡々とした筆致ながら、深い感動が残った。この映画は歌舞伎仕立てで、その世界観を汲み取ろうとする。ナレーションは全て長唄である上、セットはセットらしく、舞台をイメージした演出は徹底しておりユニークだ。 ただ残念なのは、どうしても人情が全てに先行してしまったところだ。非情とも呼べるほどの原作のスタンスがこの趣向によって綺麗に崩されてしまっているのは惜しい。原作と映画は全くの別物という立場に立てば許容できるはずなのだが、どうしても手放しでは褒められないと感じてしまう。また、原作で印象的だった美しく残酷な自然というテーマが舞台では生きてこないのもつらい。母性の神々しさが際立つつくりは悪くないが、この作品のメッセージは、前述のとおり、他にもある。その取捨選択は手堅いが、捨てられたものの大きさを考えると残念としか言いようがない。 [DVD(邦画)] 7点(2011-09-13 22:44:03) |
3. エデンの東(1955)
《ネタバレ》 聖書のカインとアベルの挿話を基にしたスタインベック作品の映画化。親子・兄弟・男女関係が深く掘り下げられたシリアスドラマ。 個人的にはアブラが自分の父親の葛藤をキャルに話すシーンが印象的だった。父親と後妻の結婚に反抗した彼女は大切な指輪を川に投げ捨て、父親に怒られる。父親の気を引こうとしての行為だったが、結局その後も特に父親は優しくならなかったと彼女は言う。しかし、それから彼らは「普通の親子関係」になることができたのだとも言う。親からの愛情が足りないと感じる子供は親の気を引きたいがために更に問題を引き起こす。そして、それをきっかけに状況は好転することもあれば暗転することもある。 この映画はこの「暗転」を題材にしたわけだが、最後に一抹の希望を描くあたりがうまく作られている。はまり役であるジェームス・ディーンの名演と相俟って味わい深い作品になっている。 [映画館(字幕)] 7点(2010-08-01 23:55:37) |
4. 生きる
《ネタバレ》 黒澤映画はどうも自分にとってはムラがあるようだ。この映画のストーリーは嫌いではないのだが、全体的に退屈だった。なるほど、愚鈍になりきった志村喬の演技は素晴らしいのかもしれないが、愚鈍な人を見ているといらいらしてしまう僕にとっては、逆にこのうまさが苦痛だった。ボソボソしゃべるし、目はいつも下を向いている。彼がその鈍重さを生かしたまま、公園事業を貫徹する様はすごいことなのだろうが、どうも気持ちが乗り切れなかった。死ぬと決まる前から、もっと早くから仕事やれよ。としか感じられない。数十年間給料泥棒をしてきた人が最期だけ働いてもあまり感動を覚えないのである。 役所に入った友達の話を聞くと、今でも仕事をしない老人は職場に数多くいると言うことで、きっとこんな感じなんだろうなと同情してしまった。僕なら小田切さんみたいにさっさと辞めてしまうだろう。 [DVD(邦画)] 5点(2010-03-11 21:37:11) |
5. 七人の侍
《ネタバレ》 長い映画だ。百姓達が七人の侍を雇い、村を略奪に来た野武士と一戦交える。ただそれだけの話なのだが、侍一人ひとりの個性、百姓達の意識、そして異なる身分同志の交流と反発、様々なテーマを取り扱い、しかもそれらをきちんと、しかも適度なユーモアを以って描き出すにはこれくらいの時間はやはり必要なのだろう。確かに削るべき場所がほとんど見当たらない。 この作品を観て一番思ったのは、最後に勝つのは百姓なんだろうけど、自分は武士でありたいなあということだ。まさにラストの勘兵衛の台詞は「武士は食わねど高楊枝」の考え方がストレートに表現されており、苦笑を浮かべながらも彼は満足(仲間を失った悲しみはあるが)だったのではないか。他人を守り、そして黙って立ち去る。そこに武士の本懐が垣間見えて、僕もそんな人間でありたいと思った。偉ぶらず、人のために役立つことができる人間でありたいと思った。 そして、今だったら、それぞれ誰が演じるだろうと考えた。勘兵衛は寺尾聰、勝四郎は妻夫木、久蔵は寺島進、菊千代は…。いない。彼の演技はアクが強くて普段はあまり好きじゃないけど、三船敏郎って凄いなと改めて感じた。彼の最期のシーンはアクションなのに涙が出そうになった。百姓を捨てきれない男の怖ろしいほどの執念が見えた。 長かったけど、観て良かった。 [DVD(字幕)] 8点(2010-02-16 23:10:39) |
6. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 物凄くエロい映画だと感じた。昔のお公家さんのようなメイクで、現代では全くエロく見えないはずの京マチ子が凄くエロく見えて仕方なかった。意識的、無意識的を問わない記憶の美化や荒廃した世界におけるヒューマニティなど、多くの抽象的な事柄を扱った作品であることは理解できるが、個人的には女性のつかみ所の無さ、そこから来る怖さに最も惹かれた。そしてそれがたまらなくエロいと感じた。 木こりは別として、結局生き残るのは女一人であり、女の行動が話のキーとなる部分であり、そして女の行動自体が一番意見が分かれるところなのだ。この話は男が語る「女」の話であり、この「女」は男(僕)から見た女性一般を表象している、様な気がする。怖ろしや怖ろしや。 [DVD(邦画)] 7点(2010-01-10 16:58:33)(良:1票) |
7. お早よう
《ネタバレ》 小津作品の中でもコメディー色の強い作品。何となくジャック・タチの映画を思い出した。どうでもいいおしゃべりこそが大切なのだと言う説教臭いテーマを見事に軽妙なコメディに昇華した傑作だ。 同じシーンの繰り返しのような展開が笑いを誘う。近所づきあいというものの難しさを軽妙に描く実力は流石だ。ただの口さがない女たちのおしゃべりを芸術作品にしてしまうのだから凄い。ここでは、杉村春子の圧倒的な演技力が光る。 また、本作の主役は子供たちなのだが、彼らの使い方もうまい。いつも親が子供たちに甘いのは小津作品に共通なのだが、この子供たちもやりたい放題で観ていて微笑ましい。くだらないことに一生懸命になっていたあの頃を思い出した。 最後に、ラストのオチが素晴らしい。明日から知らない人にも挨拶したくなる。そんな映画。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-03 17:31:21) |
8. 東京物語
《ネタバレ》 この映画は何回も観てきたけれど、そのたびにボロ泣きなので、今回も泣くかと思いきや、意外に泣かなかった。分析的に観てしまったせいがあるかもしれない。そのせいか、小津監督の映画作りのうまさを改めて感じたし、やはりこの作品が代表作とされるのはその様式美が遺憾なく発揮されているからだろうと思った。同じカットを映しながら、人や物の配置を替えたり、あえて配置しないことで、その違いを際立たせたり、同じ人物を近くから撮ったり、遠くから撮ったりすることでその心象風景を描き出したりと、この映画には彼のテクニックがてんこ盛りに詰め込まれている。 話の構成・展開も見事だ。老夫婦が東京に来てから少しずつ際立つ違和感、彼らの子供たちの生活に投げかける波紋が残酷なほどに丁寧に描かれる。子供たちとて歓迎したくないわけじゃない。ただ忙しいだけなんだ。だが、その「忙しい」という言い訳がどこまで通用するのか?彼らはそれにかまけて逃げているのではないか?小津さんの追及は厳しい。長女しげを演じる杉村春子の演技はあまりにも見事で身につまされるが、僕らの大半は彼女なのだ。悲しいことに。 しかし、彼らは背景に過ぎない。本作の女神は紀子だ。親不孝な僕たちにとっては美しくも怖ろしい。怖ろしいほどイノセントで神々しい彼女が最後に漏らす「私、ずるいんです。」という一言は見るものすべてに止めを刺す。それがずるいのなら、僕らはどれくらいずるいのだろうか。と僕たちは感じざるを得ない。キリストが人間だとしたら、尚更その神性が際立つようなものだ。 今の世界に小津さんがいたら、果たして彼は何を描いただろう。観終わってそんなことが気になった。しかし、ちょっと考えると、彼はまた同じ物語を作ったのではないか?とも思った。それほど時代を超えて(あるいは国を超えて?)普遍的な物語がここにある。 [DVD(邦画)] 9点(2009-10-25 00:49:56)(良:1票) |
9. 情婦
《ネタバレ》 こういう映画があるから、昔の映画を観ることはやめられない。まずもってウィルフリッド卿のキャラクターからしてイカす。前半はほぼ彼のキャラクター紹介に終始すると言っても過言ではないが、これがその後に活きてくる。彼と自分が同一化し、彼のユーモア、直感、そしてその後の焦燥感すべてを観客は共有する。彼の思いを観客はしっかりと受け取る。ここはチャールズ・ロートンの名演が光る。 そして、衝撃のラスト。「ユージュアル・サスペクツ」を超える衝撃をお約束する。余計な伏線が一切無いだけに尚更最後の衝撃は物凄い。ああ、そうだったのか。そういうことか。 ラストの衝撃の後に残る一抹の哀しさは観なくては分からない 。「情婦」という安っぽいタイトルをつけた日本の配給会社に対しては怒りを感じる。「検察側の証人」、この原題で十分だ。そもそも全然「情婦」じゃないし。 [DVD(字幕)] 9点(2009-10-23 19:34:57)(良:1票) |
10. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 確かに、風景は本当にきれいでいつまでも観ていたいほど…。なんですが、いくらなんでもここまで風景を観せられ、唱歌を聞かされだと退屈なのも事実。何回か観るのをやめようかと思いましたが、何とか最後まで観ました。結局は「ああ、観てよかったなあ」と思えましたが。 教師よりも「せんせい」という呼び方がぴったりくる大石先生は、映画の後半以降ほとんど泣きっぱなしなのですが、確かに泣かないとやっとられんだろうなあと心底思いました。僕も泣きました。結局12人の教え子のうち、3名戦死、1名病死なんですから。安易な反戦映画は眉に唾して観るようにしている僕ですが、これは「実際こういうことってあったんだろうなあ」と大石先生の心境に共感できました。自分の教え子が貧困や徴兵によって次々と失われていく先生としての気持ち、病気で母を亡くし、戦争で夫を亡くし、事故で娘を亡くした一人の女性としての気持ちがとても良く伝わってきました。 映画としては6点以上はつけられませんが、小さな島を舞台にここまで「反戦」というテーマを色濃く浮かびあがらせることができたこの映画は素晴らしいと思います。特に、先生を職業にしている方には是非観ていただきたいですね。貴い職業だと思います。 [DVD(邦画)] 5点(2009-08-02 21:23:26) |
11. 欲望という名の電車(1951)
《ネタバレ》 この映画を初めて観たのは、まだ小学生か中学生の頃で、当然ながら隠喩的な表現などはよく理解できなかった。しかし、うまく説明できないが、当時から大きな魅力をこの作品に対して感じていた。登場人物たちの性格描写がとても鮮やかで、そこに惹きつけられたのだろう。時を経て、このたび改めて鑑賞したが、自分が成長して、ストーリーの背後にある欲望や醜い感情の蠢きが良く見えるようになっているだけに、鑑賞後は重い気持ちになった。 本来のラストは、ステラがスタンリーの下に戻るものだったとか。倫理的な圧力によって、ステラが「二度と戻らない」と独言するラストに変えられているが、そのつぶやきにリアリティを感じないのは私だけではないだろう。むしろ彼女にそうつぶやかせることで、更に彼女の複雑な心情が表されている。彼女は結局スタンリーの下に戻るはずだ。それを言外に表した表現の素晴らしさは賞賛に値する。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-08 02:16:14) |
12. 近松物語
《ネタバレ》 いわゆる王道の悲恋モノなのだが、全く泣けなかった。泣くとかいう次元ではなくて、完全に圧倒されてしまった。特に構図が美しすぎて、もう何とも言えない。以春の二階、船で漕ぎ出すシーン、おさんが山中で茂兵衛を追いかけるシーン等々、まさに一幅の絵のようで、言葉を失う。日本の映画ってこんなに凄い(凄かった?)んだと改めて感じた。 キャストの演技力にもしびれる。特に船中のシーンでの香川京子の演技は鬼気迫るエロティシズムを感じて、ぞくぞくした。「死にとうない!生きていたい!」と叫ぶ彼女の顔には、妖艶を通り越して一種の恐怖すら覚える。あと、個人的には、茂兵衛役の長谷川一夫は顔が甘すぎて、ちょっといただけないと感じた。 鑑賞後、何点にしようか迷ったが、率直につけると7点止まりになってしまう。凄いものを観たというのは分かるのだが、なぜか彼らに感情移入できなかった。映画として、あまりにも完璧である故なのかもしれない。気持ちの面で、消化不良のまま、置いていかれた感じがする。認めたくは無いが、洋画に毒されているのかもしれない。たまには日本のものを観かえして、感受性を養っておこうと思った。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-01 18:36:06) |
13. サンセット大通り
昔の映画だけに軽快な感じはなく、ひたすらに重々しい。冒頭に結末を持ってくる手法はなかなか良かった。何と言ってもノーマの眼の恐ろしいこと!あのメデューサのような眼だけで10人は殺せそうだ。でも、一方で人殺しまでやっちゃうにしては、いかれ方が足りない気がする。1950年ではしようが無いが、ヒッチコックくらいの時代になると、もっと赤裸々な感じになってきて僕好みなのになあと思った。 やっぱり、印象が強烈なのはラストシーン。マックスのことをデミルと呼ぶラストは恐ろしいと同時に悲しい。一つの時代の終焉。先日鑑賞した「大いなる幻影」と共通する部分が多く、興味深い。シュトロハイムは両方で輝いている。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-02 00:23:50) |
14. ぼくの伯父さんの休暇
《ネタバレ》 ラストシーンとか作りがしゃれてて、音楽もよいんだけど、今の時代には少し退屈。ネタ集の域を出ていないため、僕にとって、「映画」ではない。でも、こういうおっさんがいたら隠れファンになりそう。恐妻家のおじさんが握手を求めてくるシーンが一番笑えた。最後は少し悲しい。出てきておくれよ、マルチーヌ!それにしても、この映画のポスター、いろんなところで見るけど、この映画自体を観た人はどれくらいいるんだろう?貼るならちゃんと観ろよ!とか思う。 [DVD(字幕)] 5点(2008-01-26 15:33:38) |
15. めまい(1958)
《ネタバレ》 いや、正直もっと面白いのかと思っていたけど、ちょっと拍子抜けしました。話のテンポがあまりよくないし、脚本も練りが足りない。説明が多すぎて萎えます。もっとうまく見せられると思うんですが。また、ミッジの使い方も中途半端。登場人物がみんな少しずつイッちゃってるんですが、突き抜けてはいないのが何とも歯がゆい。どちらかというと失敗作なんじゃないかなと思います。やっぱ、サイコがベストなのかなあ。 [DVD(字幕)] 6点(2007-08-06 22:18:09) |
16. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 人間観察が趣味とか言う奴にろくな奴はいないと思う。たいていそんな人間は、自分が観られて笑われた時にヒステリックに反応するものだ。人を観るのは結構だが、自分のことも笑い飛ばせるような人間でなければ、そもそも人を「観る」資格などありはしない。。。 とかそういう話はどうでもよくて、これは単なる覗きの映画です。精神的に圧倒的に有利な「覗く」側が「覗かれる」側に転落した時、何が起こるのか。まあ、結局たいした事は起きないんですが、きれいにまとまっていて個人的には大好きな作品です。グレース・ケリーが尋常じゃなく綺麗です。こんな設定ありえね~!! [DVD(字幕)] 8点(2007-07-22 01:21:11) |
17. ローマの休日
《ネタバレ》 僕は初対面の人と会うと、趣味の話をします。映画か本か音楽の話をします。本と音楽に関しては、趣味が合わないのもしょうがないかなと思います。しかし、映画だけは。少なくとも、この映画だけは、嫌いだという人とは友達になれない気がします。それ以上何について、どういう風に話せばいいか分からないからです。この映画を好きか嫌いかということは、それくらい僕にとっては重要です。人間の愛と成長をこれほどまでに美しく、そして楽しく切り取った作品を、僕は他に知りません。 「Rome, by all means, Rome!」。ペックと共に呆然。そして涙。 <追記>念願の映画館で鑑賞!オードリーが美しすぎて、ストーリーが楽しすぎて、ラストが感動的すぎて泣きました。何回観てもこのラストシーンは大好きです。 [DVD(字幕)] 10点(2007-05-21 00:18:45)(良:2票) |
18. 禁じられた遊び(1952)
《ネタバレ》 深くて非常に重い物語。この映画はよく反戦映画と言われますが、戦争は背景に過ぎません。主人公たちの「遊び」にリアリティを持たせるための「道具」に過ぎません。ルネ・クレマン監督の意図は何も知りませんが、私はそう感じました。 私は、この映画が描いているのは、宗教と子供の関係性だと思います。宗教の世界は、大人たちの世界です。もちろん、子供のミシェルもお祈りも告白もしますが、その精神は理解できておらず、習慣に過ぎません。しかし、大人の信者は教義を理解し、それを実践する(少なくともしようとする)義務があるのではないでしょうか?ミシェルの家族は敬虔なクリスチャンですが、その生活は(滑稽さというオブラートに包まれてはいますが)不貞・暴力・憎悪・暗愚・嘘などに満ちています。彼らは決して「悪い」人間ではありません。だからこそ、宗教上の「罪」を犯し続ける彼らの姿は余計に哀しく映ります。 つまり、宗教はこの映画の中の大人を全く救えてはいません。この映画は、そのような環境を物語の背景に置くことで、子供の持つ純粋さを効果的に描いています。子供は大人(宗教)に戦いを挑み、敗北します。だが、彼らの「貴さ」は宗教の「聖性」を遥かに凌駕して、より深く私たちの心に訴えかけます。 [DVD(字幕)] 8点(2007-05-12 19:28:21) |