1. 見わたすかぎり人生
《ネタバレ》 出色のコメディ。今年前半でみた映画ではもっとも面白かった。主役も知的でシャイでかつ大胆で魅力的。他の登場人物もみな魅力と欠点をもっていて人間的。描かれている社会問題も、大学院生の就職難、華やかに見えてダークな新興企業、ひとり暮らしの老人などなど多岐にわたっており、イタリアにも日本にも共通の解決すべき課題があることを教えてくれる。これらを告発調でなく、コメディの中に自然に組み込んでいる脚本の力もすばらしい。アメリカ映画のようなおきまりのハッピーエンドではなく、これからも甘くはないけれど希望を持って行こうよと呼びかけるイタリア映画らしいラストもよい。ところでこの作品、レンタル店でエロティックの分類になっていたのにはびっくり。もっと作品をよく見てほしい。 [DVD(字幕)] 9点(2012-11-12 03:30:32) |
2. オーケストラ!
《ネタバレ》 フランスでヒットした作品ということで期待してみましたが、酷い内容でした。どたばたであればもっとスピード感や奇想天外な展開がなければなりません。30年のブランクをかかえて寄せ集めたメンバー、やる気もはっきりしないメンバーが、リハもなしに演奏できるわけもなく、また、演奏会開催までの主催者側の情報管理の杜撰さもありえない展開、バイオリニストの出生の秘密も政治体制がもたらした悲劇として安易に仕立てられており、クライマックスのリアリティが全くありません。みんなの力で演奏会をつくりあげていくすばらしさをみせるのなら「ヴィットリオ広場のオーケストラ」を見習うべき。旧社会主義体制への告発をドラマとして描くのなら、「善き人のためのソナタ」のような人物造形やエピソードのリアリティを確保すべき。陳腐で政治色が強くて笑うに笑えない作品です。つまらなかった映画の投稿はあまりしないのですが、がっかり度が大きかったのであえて書きました。 [DVD(字幕)] 2点(2012-11-12 03:09:45) |
3. 大統領の陰謀
《ネタバレ》 米国はこういう事件が起きる国であるが、これを暴いていったジャーナリズムがあった。そして、映画化もされた。米国の良質な面を示す作品だと思った。しかし、こうしたジャーナリズムが今あるだろうか、と思いながらみた。 [地上波(字幕)] 7点(2011-10-01 00:22:21) |
4. 愛を読むひと
《ネタバレ》 一つ一つの場面は重厚で迫真の演技だと思う。二人の心のゆれ動きが静かに伝わってきた。重い犯罪、明らかにしたくない事実を背負った女性とその女性に関わってやはり心に大きな傷を負った男性の長い人生の映画と見応えはあった。しかしながら、ナチの犯罪という歴史的事実とからませたフィクションの犯罪(えん罪?)が物語のキーになっていることに違和感を感じる。ナチの犯罪が男女の物語の舞台回しの材料と扱われているように思われるからである。 [DVD(字幕)] 6点(2010-08-31 02:13:46) |
5. ホワイト・ライズ
《ネタバレ》 この映画、1回目はマシューとリサが主人公の映画と思ってみたのですが、マシューはいい加減で身勝手な男だし、リサは余り性格が描写されていないのできれいだという以外魅力がよく伝わらなくていまいちだと思いました。しかし、2回目の途中から、アレックスの映画としてみるとなかなかいいと思い直しました。ローズバーンの演技がとてもよくみえたのです。もちろん身勝手な女性なのですが、恋愛に臆病な女性が「一目惚れしたら正気でなくなる」という心の動き、一目惚れしたマシューをリサにとられてしまったつらさ、偽りにせよマシューといっしょになることができたうれしさ、ローズバーンがとても美しく見えたり、とてもみすぼらしくみえたりして、ローズバーンが魅力的にみえてきました。ただし、そうみた場合には最後の再会の場面は収まりが悪くなってしまいます。 [地上波(字幕)] 7点(2010-08-03 02:37:40) |
6. クローサー(2004)
少ない登場人物、たくさんの台詞。舞台劇のような展開にひきつけられて最後までみてしまった。医師は通俗すぎる、ストリッパーは知的すぎる、という点で違和感を感じましたが、恋愛感情が絡み合ってどうしようもなくなっていく状況を提示してみるものにもいろいろな思考・感情を引き起こすことには成功しているのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-05 00:41:54) |
7. トウキョウソナタ
《ネタバレ》 小泉今日子も香川照之もいつものようによい演技をしているのですが、ストーリーがいただけません。いま街で起きているホワイトカラーの失業、米国の戦争の現実はもっと深刻かつ複雑なものなのにパターン化されています。スーツを着て、炊き出しに並んでいるのもおかしいし、いっしょに並んでいる失業者の人々もただの風景で同じ人間としては扱われていなし。小泉今日子の出奔も唐突な感じ。息子の天才が発見されるというエンディングも、そんなにうまくいくわけないぞ、と突っ込みたくなります。 [DVD(邦画)] 5点(2009-11-17 00:36:18) |
8. 歩いても 歩いても
よいところもある悪いところもある普通の人物、でもそれぞれ少しずつなにかしらの事情を抱えた家族が集まり、別れるまでの2日間をゆっくり描いています。ドラマチックな展開が何もないのに、だらだらした感じはなく、最後までみることができます。地味ではありますが、家族関係についていろいろ考えさせられるよい作品でした。 [DVD(邦画)] 9点(2009-11-17 00:17:29) |
9. おくりびと
気持ちよくみられる映画の典型ともいうべき作品です。人の生と死を大切に扱っている、差別的な目で見られる納棺師という職業に光を当てている、葬儀を美しい営みとしてみせている、悪い人はひとりも出てこない、話の展開に大きな破綻はありませんし、クラシック音楽、美しい東北の風景がよく生かされている、エンディングもすっきりしています。 たいていの映画にはなにかつっこみたいところとか物足りないところがあるのですが、そういったところのない作品はそうあるものではありません。アカデミー賞をとったということで米国で受けを狙った作品かと思ったのですが、そうではありませんでした。 [DVD(邦画)] 10点(2009-11-16 23:59:10) |
10. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 地味で暗い重たい作品かと覚悟してみましたが、最後まで飽きずにみることができ、エンディングがほっとする設定で後味もよい作品でした。「善き人」に変わっていく主役も、普通なら敵役のイメージぴったりの俳優が演じてとてもみごとでした。ただ、出だしであれほど冷酷だった人間がわりといやにあっさりと変わってしまったように感じました。また、部長も主人公の行動を見逃しているのに処分されずにすんでいますが、現実はもっと厳しかったのではないかとおもったりもしました。 [DVD(吹替)] 8点(2008-05-31 12:25:58) |
11. 耳をすませば(1995)
《ネタバレ》 公開当時はみておらず、はじめてみました。ジブリ作品ならではの映像美で多摩ニュータウンの生活や風景がリアルな感じで映し出されていましたし、主人公はさつきの顔、ナウシカの顔ですから親しみあるし、どんでん返しはないわけですから安心して楽しめるということでしょうか。ただ、話の内容は青春胸キュン物語であまりにもかるーい感じです。良くも悪くも、ラブレターなどの岩井俊二作品と似ているなあと思いました。 [地上波(邦画)] 7点(2008-02-23 00:39:02) |
12. 四月物語
松たか子のプロモーションビデオとしてみると、美しくつくられていて、さすが岩井俊二だと思いますが、それ以上ではないと思いました。 [DVD(邦画)] 5点(2007-11-11 01:23:31) |
13. 椿山課長の七日間
《ネタバレ》 入れ替わりものというのでしょうか、人の心をのぞき見る楽しみと素性を明かせないもどかしさがあり、1つ1つの場面は飽きずにみ続けることはできましたから娯楽映画としては及第点なのだと思います。しかし、大人の登場人物がそれぞれ好き勝手にやっていて、最後にさらりと収まるのはいかにも軽すぎますし、大人に振り回された子どもの心がどれだけ傷つけられているかもさらっとやり過ごしています。ほのぼのとやさしそうにつくられているようでいて、振り返ってみると、あまり心地よいとはいえないように思います。和久井映見の語り口が慇懃無礼で登場人物を皮肉っているようにも聞こえたのですがそこに制作者の意図があったのでしょうか。 [地上波(邦画)] 5点(2007-11-10 12:02:33) |
14. 春の日は過ぎゆく
《ネタバレ》 イ・ヨンエの出演作品の中でもっともよいと思います。恋愛経験の少ないいちずな若者と恋愛に懐疑的な年上女性との心の動きをたんねんに追っています。そして韓国の人々の生活が背景としてしっかり書き込まれています。とてもリアリティを感じる作品でした。ただ、この映画はあくまでユ・ジテ演じるサンウの側から描かれたように思います。最後の桜並木のシーンが秀逸だと思いますが、DVDに別バージョンとして収められているイ・ヨンエ演じるウンスを正面から撮影したシーンはいただけません。ぼんやりした後ろ姿の中に女性の心が描かれていたのにこのシーンも発表してしまった監督の心の揺れに1点減点です。 [DVD(字幕)] 7点(2007-10-08 04:21:11) |
15. かもめ食堂
《ネタバレ》 みている間、心地よい時間を過ごすことのできる映画です。フィンランドの空気が伝わるような清浄感のある映像と小林聡美やもたいまさこの淡々とした、さすがの語り口でストーリーが流れてゆきます。お店もいつの間には繁盛してしまうし、フィンランド人の学生はずうずうしすぎないかとか、細かいことを気にしてはいけないのだと思います。 [DVD(邦画)] 8点(2007-10-08 03:41:32) |
16. Love Letter(1995)
《ネタバレ》 公開当時、旅行中の機内上映でみて、きれいな映画だったとの印象があり、今回BSでの放映を改めてみてみました。やはり映像、音響の美しい映画でした。中山美穂が実に美しく撮影されており、しかも二役ででずっぱりなのですから、彼女のプロモーションビデオともいえる作品です。神戸、小樽の美しい街、雪や山、ガラス工芸家という職業、卒業写真、学校の図書館という舞台などなどストーリーは胸キュン青春ラブストーリーのツボをしっかり押さえており、多くの人に受けるよう(しかも海外市場まで)考えられている感がありありなのですが、それでも心地よく感じてしまいます。篠原勝之はじいさん役には若すぎ、酒井美紀(きらいな女優ではないのですが)は垢抜けず中山美穂とイメージが違いすぎて納得がいかないなど不満な点はありますし、手紙のやりとりに至る設定もあり得ない(同姓同名を同じクラスにはしない、卒業アルバムの名簿は男女別だった)のですが、こうした小さな違和感も含めて、見る側を引き込む計算がされた作品であるように思いますし、繰り返してみる気になる作品でした。 [地上波(邦画)] 8点(2007-07-31 03:16:30) |