1. 女の園
《ネタバレ》 必死で探して、ネットレンタルで予約して数ヶ月・・ようやく観ることができました。 噂にたがわぬ面白さでした。「実録・あさま山荘」もだけど「闘争モノ」ってヤバイかなと思うんだけど、そのテーマの中にある人間は変わらないというか、こういう状況だからこそ、激しく露出してくるんですね。 女性たちが皆さん、美しくて激しくて、激しいというよりもう・・「ギラギラ」と生命力があるのに対して 男性が大学の先生も、お姉さんのお婿さんも、田村さん演じる恋人も、ちょっと頼りなげで、ある意味、すごくリアルだなと思いました。 [DVD(邦画)] 9点(2009-03-06 00:16:55)(良:1票) |
2. 七人の侍
何をいまさら・・ではありますが・・面白いですね。面白いんだからしょうがないや・・。他の方と違うコメ書くとすると・・木村功が情けなくてカワイイ・・(って!撮影時30代で子どもが2人もいたなんてっ・・奥様が映画を観て「ウチの夫って結婚詐詐欺師みたい・・」と思ったらしいが、超同感です!奥様!)。あの恋愛エピは日本の恋愛映画の歴史にも残るリアルなせつなさだと思う。映画全体がすごすぎて見過ごされがちだけど、あの初恋描写はすばらしいわ。 [DVD(邦画)] 10点(2008-06-08 17:17:21) |
3. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 何度この映画を観たか自分でも判らないんですが、休日にふと時間ができると観てしまいます。 出てくる人で強い人は誰もいない、校長先生も男先生も時勢の中で学校や生活を必死に守っている優しい正直な中年男性にすぎない。 完全な「負け組映画」と言えるかもしれない。 大石先生はいつも愚痴って泣いて子どもたちの運命を変えることはできない。 「一緒に泣いてあげる」ことしかできない。 子どもたちが運命に流され消えていく(売られていく・カフェに身を落とす・奉公に出される)、あるいは自分のチカラで歩いていく(師範学校に進む・軍人になる・産婆になる)のを見守ることしかできない。 小学校の卒業式の後、自宅に訪ねて来た竹一に中学の制帽を愛おしく大切にかぶせ、予定外に奉公に出ることになった磯吉に、同じように鳥打帽を愛おしく大切にかぶせ、旅立ちの仕度をした二人を見つめる大石先生。 バス停まで歩く3人、背景には満開の櫻と菜の花。 数年後、満開の櫻の下、菜の花を教え子の墓標に捧げる大石先生。 その間に大石先生も母と夫を亡くし、愛娘を亡くしている。 そのたびに「あぁ、いやね・・」と泣く、何かの運動をすることも抗議におしかけることもない。 遺された者を守り、逝った人を思って泣くだけだ。 振り返って、私たちの世代は愚痴らず、泣かず目標に向かって努力することを美徳として、突き進んできた世代だ。 「見守る」・「泣く」という受動的な生き方を否定して成長してきた。 きっと「就職する磯吉」と「進学する竹一」に優劣を一瞬でつける。 同級生との「社会的地位」を逆転する方策を練り、磯吉を叱咤するだろう。 しかし、強いようでいて、見守る者として、大石先生のような「その子をそのまま受け入れる・信じる」強さを失っているのではないかと思う。 木下監督の映画は「弱者」の映画だ。 「二十四の瞳」も「喜びも悲しみも幾年月」「日本の悲劇」も人が人を見守り、育っていき、旅立つのを、メソメソと愚痴り、泣きしながら受け入れていく映画だ。 どんな社会になっても、木下作品が色あせることがないのはこの「弱い者・残された者」の持つ本質的な、「旅立たせる者」のもつ「痛み」と「強さ」なのではないだろうか。 観る度に、自分を「旅立たせてくれた人」を思い、泣き、いつか自分が「誰かを旅立たせる日」を思い、泣くのだと思う。 [DVD(邦画)] 10点(2008-02-17 16:32:18)(良:3票) |
4. 炎上
《ネタバレ》 レンタルリリースになったので早速、観ました。主人公の「家庭問題」「どもり」など内面的な面をシッカリと映像化されているのは上手い。監督もカメラも雷蔵もすごい。仲代は原作のイメージより顔が二枚目すぎるだろうぉ・・と思ったが演技は上手いわ。「春の雪」を観て原作を再読する気にはさらさらなれなかったが(ふざけんなよ~プンプン)、これはまた三島の世界を確認したくなる映画だ。それだけ三島の世界に近づくことに成功しているということなんだろうか? [DVD(邦画)] 7点(2007-09-22 14:28:05) |
5. 地上より永遠に(1953)
《ネタバレ》 軍の腐敗ものは、この後、色々とリアルなのが出てますからね。正直、ちょっと色あせてしまった「元・名作」って感じ。バート・ランカスターがかっこいいんだけど「正社員になって家族を持つのなんてイヤー!バイトリーダーがいいやぁ」って感じに思えちゃって同意できない。モンゴメリー・クリフトはやることなすこと、おもいっきりガキだし。女性陣は端役の女性に至るまで全員が見事に「お母さんキャラ」。男子が観たら面白いんだろうか? 「ん?」と思ったのはラストの女性ふたりの会話で、死因が変えられていたことぐらい。 でも邦題はセンスいいですよね(内容に合っているかは、ともかく)。 [DVD(字幕)] 3点(2007-09-17 08:53:29) |
6. 戦艦大和
《ネタバレ》 大和を扱った作品はいくつもありますが、本作品は吉田満氏の「戦艦大和ノ最期」の忠実な映画化です。原作と比較してしまうと点が辛くなってしまうのですが(何しろ「戦艦大和ノ最期」は日本の戦争文学の至宝ですからね。)、他の「大和作品」と比較すると、出撃前の自ら葬送を行うかのような艦内の様子を丁寧に描いているのが、この映画の特徴と言えるでしょう。それぞれの士官、兵のドラマを深追いすることはありませんが、芥川也寸志の音楽が品位と抑制を保ち彼らの背景への想いを呼び覚まします。本作品が原作の心情を大切に「レクイエム」として成り立っているのは、関係者の原作への忠実な共感からだと思わされます。地味な作品ではありますが、思想文化的遺産として貴重な一本。 [DVD(邦画)] 8点(2007-08-19 00:26:20)(良:2票) |
7. 私は貝になりたい(1959)
《ネタバレ》 BC級戦犯の勉強をしていて資料のひとつとして観ました。(資料施設で資料として閲覧しましたが、視聴環境に該当するものがないので「DVD鑑賞」としています)。戦犯の皆さんの遺書(「世紀の遺書」)も何度も読み、ガリ版の巣鴨新聞も多くの手記も読みしてきましたが、この映像はディテールが非常に正確に表現されています。例えば「死刑になった人たちは、実は生きていて北海道で使役している」などの噂が死刑囚房で広がる。アメリカの祝日の前日の早朝に処刑が行われる様子(祝日にゆっくり休めるように「済ませておく」んですよ・・)。死刑囚が処刑房におくられる時におこる「賛美歌での送り」。特に賛美歌での送りは文面ではなく実際に男性のみの涙声での「主よみもとに近づかん」を聴くと鳥肌が立つ思いです。原作と言われる本を書いたK氏は毎朝、死刑囚が読経したり、賛美歌を歌う様子に嫌悪感を露わにし噂に一喜一憂する死刑囚に対してかなり冷めた記述をしていますが 戦後直後に収監され「戦後社会」を知らぬ戦犯と、何年も逃亡を続けて「戦後を生きた」K氏との違いでしょう。この映像で描かれているのは前者の戦後を知らない戦犯で思考は戦中の軍隊生活のまま、不条理の中、処刑されるという複雑さを抱えています。 もしよければ図書館で「世紀の遺書」をお読みいただくと、彼らの苦悩を知ることができると思います。城山三郎氏ではないですが、日本の組織社会は戦犯をうんだ軍隊組織とあまり変っていません。組織のの中で損をする人・得をする人・上手く逃げる人・・あなたの周りも、あなた自身も見つめてみてはいかがでしょうか? [DVD(邦画)] 9点(2007-08-18 21:03:27) |
8. キクとイサム
水木洋子の脚本にはずれはないんですが、本当に庶民のたくましさ・やさしさを書かせたら世界でも水木さん以上の脚本家はいないんじゃないかな? 貧しい時代の、過酷な運命の小さな家族ですが後味が悪くない。 登場人物が信頼できるから「この子なら大丈夫だろう」と、心のどこかで確信できるんだよね。 こういう映画をもっと日本人は観るべきだ。 [DVD(邦画)] 10点(2007-08-02 21:40:51) |