1. ラ・パロマ
この奇怪で妖しい魅力こそが映画の魅力であると断言してもいいような、空前絶後の作品であることには間違いは無いが、その魅力を言葉で表現するのは困難である。冒頭、帽子をかぶった煙草を吸う女のクロース・ショットから始まるが、そこで繰り広げられるのはいかがわしいクラブの緩慢な日常である。カメラはあくまでのろのろと動き、人々は歌や踊りを繰り広げる。この序盤に注目すべきは、これこそが主役といっていいようなランプシェードであり、人間よりも目を引きつける存在である。そこから一転して死期の迫るラ・パロマ。鏡を使って一瞬のムダもなく入る医師は一目見るだけで診断してしまう。この荒唐無稽さこそがシュミットの演出の真骨頂で、映画であることの徹底なのである。同様に、母親がラ・パロマと同じくらい若く、息子と違ってフランス語を話すのもおかしいが、だからどうしたというのか。そして脈絡のない山頂でのデュエットは、一度観たら決して忘れることはできまい。なぜ歌うのか、なぜ二人で歌うのか、なぜ場所が山頂なのかは全くわからぬまま、その当惑と共に一生脳裏に刻み込まれる。そしてラストシーン。このマジシャンのセリフがこの映画を端的に表している。決して忘れることのない映画。 [映画館(字幕)] 10点(2014-07-15 07:37:57) |
2. フォロー・ミー
いい映画。ミア・ファローはこれ。 [DVD(字幕)] 7点(2013-09-04 23:42:58) |
3. こわれゆく女
描かれているのはジーナ・ローランズ演じるメイビル、ではなく実際はその周りにいる人々だろう。夫のピーターフォークはもちろん子供、実の母親、後に父親、義母、同僚たちとの関係は、仮借なく彼らの人柄、場を映し出している。その意味でメイビルは鏡のような存在である。ところで彼女は本当にこわれているのか?私は「こわれゆく」女という邦題はやりすぎだったように思う。すぐにキレて暴力を振るうピーターフォークだってふつうではない。under the influenceという原題のニュアンス。そして帰ってきたメイベルに対してピーターフォークが「ありのままの自分でいろ」と訴えるシーン。そしてラストシーン。これをどう解釈すべきか。子供たちにとって彼女は女神なのである。the influenceは一般的には酒やドラッグを示唆するが、この映画はまた違う「影響」を感じさせる。それは人間と人間の関係に入り込んでいる常識や「ふつう」といった見方なのではないか。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-30 00:57:05) |
4. 暗殺の森
《ネタバレ》 青、青、青、青。真っ赤な鮮血が流れるはずのシーンですら、ほとんど赤は登場しない(クアトリ教授の暗殺シーン)。アンナは不自然なほど顔中が血だらけになった。この違いはなにか。冒頭の明滅する赤い光はなにか。ラスト、炎に赤く照らされた主人公の顔。 [DVD(字幕)] 10点(2013-08-23 22:27:14) |
5. JAWS/ジョーズ
まぁ文句なし [DVD(字幕)] 9点(2013-07-20 10:29:06) |
6. がんばれ!ベアーズ
ほほえましい映画。テイタム・オニールの輝き。ターナーも非常に良い演技をしていた。勝利市場主義ではない結末が好み。 [DVD(字幕)] 6点(2013-02-21 08:17:08) |
7. タワーリング・インフェルノ
どきどきハラハラ。ポセイドン・アドベンチャーと双璧ですね。これらを越えるのはまだない。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-11 23:08:32) |
8. ミツバチのささやき
素晴らしい。子どもを通した世界の見え方はこうなっている。子どもの視点を借りて都合の良い子ども観を押し付けるエセ子ども映画とは完全に一線を画す。フランケンシュタインをきっかけとする魅惑の世界。 [映画館(字幕)] 8点(2013-01-17 23:37:31) |
9. 幸福の黄色いハンカチ
家父長的イデオロギーが非常に鼻につく点が大幅にマイナス要素だが、ラストは確かに感動的。武田、桃井の二人も素晴らしい。 [DVD(邦画)] 6点(2013-01-07 23:12:24) |
10. 犬神家の一族(1976)
いやー、たまらん。スケキヨの存在でもう勝負ありという感じ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-11-27 11:30:03) |
11. カプリコン・1
佳作。 [DVD(字幕)] 6点(2012-06-02 09:01:24) |
12. 鏡
黒澤は「私はタルコフスキーを難解だとは思わない。ただ彼の感覚が鋭すぎるだけだ。」というようなことを言ったそうだが、黒澤の見る眼は確かであった。この映画は鋭敏過ぎるほどの彼の感覚が爆発した心象風景であって、ストーリーは存在しない。というのも、この映画は彼の記憶をそのまま再生したものだからだ。記憶にストーリーが存在する人は居ないであろう。だから過去と現在、歴史と創作が入り混じる。妻と母が同一人物なのもそういうことで、彼の頭の中で両者の人物像は一致するわけだ。観客はタルコフスキーの頭の中を体験することができるが、個々の出来事が何を意味するか、正確なことはなにか、を知ることはできない。それはタルコフスキーにも分かっていないからだ。流れる水と印象的な炎、セピア色、モノクロ、カラー、タルコフスキーはどの場面を切り取っても文字通り絵になる映画監督である。 [映画館(字幕)] 7点(2011-10-30 22:26:02) |
13. 惑星ソラリス
ストーリーは非常に分かりやすいが、この映画に何を観たかを説明することは非常に難しい。前半の約一時間は地上の自然を描くが、このシーンがあるからこそ一種の郷愁が宇宙で作用する。タルコフスキーの映画は常に郷愁、ノスタルジーが強烈な原動力になるが、それがあるからこそラストが特に際立つ。結局は良心の問題なのだ。タルコフスキー映画に通底する親子、良心、ノスタルジーといった諸問題を非常に分かりやすいストーリーで描ききった大作。最初にタルコフスキーを観るならこれだろう。 [映画館(字幕)] 8点(2011-10-30 22:20:48) |
14. オーメン(1976)
これはホラー映画ではなく、オカルト映画である、とあえて言い切ってしまおう。怖がらせるなんてことを狙っているわけではない、オカルトの雰囲気を存分に出しつつ、その人智を越えた恐ろしさを体感させる映画なのである。音楽の素晴らしさは言わずもがな。その聖書に裏打ちされたアイディアと、子供に悪魔をやつすという発想。犬という小道具も効いており、短いながらもものすごいインパクトの見せ場をタイミングよく挟む。謙抑的かつ上質なオカルト映画だ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-26 23:07:32) |
15. ロッキー
これはアメリカンドリームの体現などではなく、ベトナム戦争が終わった後の混沌とした世の中、何を描けば良いか分からなかった映画界と同様に、どう閉塞感から抜け出すかを苦悩する下流階級の人間たちの物語である。前半の虚ろな目をしたロッキーたちの惨めさはあえて描くまでもないが、その対比としてアポロ達が一流のビジネスマンであり、物欲の権化として描かれていることが意外と見落とされがちだ。彼がボクシングなんてどうでもいいと思っていたとしても不思議はない。彼は単なるボクシングの上手いビジネスマンだ。肝心のボクシングシーンもそれほど迫力のある、というよりは思い入れのある撮影のようには見えない(レイジング・ブルと比較せよ)。つまりこれはボクシング映画ではないということだ。やはりこの映画はアメリカンニューシネマの残滓を薄く引き伸ばしながら、新たな方向性を模索していった映画だろう。ラストシーンはハッピーエンドかのようだが、もう少し延長してみれば、きっとアポロが判定勝ちし、あの二人は「卒業」の二人のように虚ろな目で会場を去るに違いない。映画史的位置づけからすると、この映画は極めて過渡的なものだと言える。すなわち、ロッキーは非常に危ういバランスのもとで誕生した。そして今後の映画界の橋渡しになった記念碑的作品だ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-10-18 23:20:49)(良:1票) |
16. スター・ウォーズ
全ての原型がここに。やはり技術はあくまで補助的なもので、メインは見せ方だろう。デススターに突入するダイナミクスはさすが。 [DVD(字幕)] 9点(2011-10-02 23:33:13) |
17. 仁義なき戦い
おもしろい。 [DVD(邦画)] 9点(2011-09-05 15:19:17) |
18. アルカトラズからの脱出
緊張感を最後まで画によって持続できる数少ない映画。音楽や手ブレのような効果はかなり限定されている。画面の暗さも徹底しており、素晴らしい出来。 ショーシャンクの原案ってこれじゃないのか? 相当似ている。 [DVD(字幕)] 8点(2011-08-28 22:48:24) |
19. ワイルド・パーティー(1970)
ものすごい映画だった。意外なほど巧みな構成と意外なほどしょうもない最後のまとめは何なのだろう。ヒッピー全盛の時代とドラッグ、セックスといったロックンロールの栄光を背景にした映画は計り知れないエネルギーを持っている。個人的にこの時代が大好きなので、9点献上だが、人には決して勧めない。 昨日を過去だと思わなかったため、明日のことが見えなかった。とは何と素晴らしい箴言だろう。 [DVD(字幕)] 9点(2011-07-31 17:25:11) |
20. 荒野のストレンジャー
イーストウッドの映画を語る上で、恐ろしいほどの射程を秘めている映画だと思う。ペイルライダー、アウトローの原型が見える上に、彼独特のシニカルさというか冷徹な視点が見える。強すぎる主人公は、生身の人間ではない証左である。 [DVD(字幕)] 6点(2011-07-24 19:33:43) |