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自己紹介 映画って本当に良いですね、晴郎さんが言っていた。忠夫さんが熱く語っていた。荻さんは斜めに座って、ちと難しめな解説をしていた。土曜日には、テレビの前のあなたとお会いしましょうと、約束され、日曜日の夜には、さよならを、それも三回言われてしまう。その時まだ小中学生。今、その人達と同じ年齢になり、私も同じような事を言い始めている。追いつけたのか?それがこのレビュー。

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1.  ロシュフォールの恋人たち 《ネタバレ》 
「シェルブールの雨傘」と「雨に唄えば」と「ウエストサイドストーリー」が合体してました。それでもの凄くいいのかというとそこはハテナです。普通によくある「幸福感に満ちたミュージカル」でした。音楽やダンスよりも色遣いの方が気になって気になって。地色を白に統一してあります。建物の外壁、内装、ズボン、車の色など、白が基調になり、そこに、light, soft という色の配色。しかも、模様はかなり排除されて(ネグリジェくらい)無地。細かい所まで気を配ってあります。洋服だけではありません。例えば、広場の向こうの建物の鎧戸の色、売店の風船の色、町の消火栓の色、棚にある本の色、等々、隅から隅まで。フランス映画って、色を大事にしますが、ここまで徹底しているのは、執念だなと思いました。それから、ドヌーブは同時期に「昼顔」も撮っているのですね。こっちの少女少女したお色気と向こうの耽美的なエロチックと女性の魅力の双極を演じているのは、なんかスゴ過ぎませんか?
[DVD(字幕)] 7点(2013-01-14 14:36:19)
2.  穴(1960)
脱獄映画の傑作ではなく、映画の傑作でしょう。あんな音を立てて、との意見があるが、昼間の刑務所内はうるさい事は最初の方に提示してありますよ。別の部屋でとんとん音を立てて、トイレかなんか修理しているシーン。さて、見る者をすぐに釘付けにするのが、最初の穴を開けるところ。編集もCGも無しで、本当に最初から最後まで俳優が穴を掘って見せる。すごい。ポルノ映画を除いて、最初から最後まで一つの行為を完全に見せるものはないのではないか?ここにこの映画の剛速球がある。その後のディテールは言うまでもない。最後の方なんか、映画ファンの中には、すぐに先読みにして、「裏切るような演出だが、実際はその反対か、または、違う人が裏切る」、なんて思うのだが、その読みの反対で、普通のラスト。(でも、私は監督はそこらへんも計算しているような感じがするけどな)。私は、だから、驚いた。そして、さらに、監督は最後にもう一つ仕掛けをしてますよ。普通に空き部屋があったんですよ。さぁ、みなさん、偶々でしょうか、それとも……監督と勝負させられますね。
[DVD(字幕)] 9点(2012-05-20 13:13:54)
3.  リバティ・バランスを射った男 《ネタバレ》 
「シェーン」と同じテーマですね。西部の、無法の終焉とガンマンの終焉。西部の時代は、伝説として存在すると、ラストは語る。Jimmy は Jimmy らしく、「誠実」な男、the Duke は the Duke らしく、「強い」男、二大俳優を楽しむ。その他の登場人物も細かな性格分けがしてあって、酒ありギャンブルあり馬あり鉄火肌の女性あり拳銃の早抜きあり投げ縄ありと西部劇アイテムをも並べる、そして、白黒映画の美しさを引き出す、「サボテンの花」、フォード監督の余裕のさばき。モニュメントバレーがないだけですね。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2011-01-03 14:36:41)
4.  去年マリエンバートで 《ネタバレ》 
映像が物の客観を伝えるもの。しかし、事柄は、各人格の主観のからみでしか、浮き上がらせることはできない。男の主観が語る、女の主観が語る、現在を描写する客観が挟まる。その客観をカメラが補足する、もう一人の男の話が客観として割り込む。そういう構成で、作者は考えた。後は、どう組み合わせるか、この組み合わせのはめ込みに、工夫を懲らそうか、む、それが芸術だねって感じでおしゃれに行こうか。ばらばらにはめ込んでね。時間という客観を破壊しなきゃ。舞台が同じだから、過去と現実をちょっといじくってみようか、ほら、過去の回想場面に現在の会話をいれるとか、その逆だとかおもしろいんじゃない? マイナーな役の人は、ちょっとじっと静止してくれない。そうすると、ほら、なんかマネキンを配したみたいに、映像に立体的な感じが出るし、全く本件に関係ない外野って感じもでるし、思考が回る瞬間の一瞬を表していそうで、頭の中がくるくる回るって感じが出るでしょう。それに、フランス語の語感も、なんか、アンニュイな感じ、これを繰り返すと、不思議だが、心の苦しみの感じでたりしてね。バラック風なBGMも苦悩を表現するのにいいよね。画面のシンメトリーも映画自体が細かく作られていることを表すのにいいよね。または、人間心理の構造を示しているし、心理主義かって…… なんて、考えて作った映画なのじゃないかしら。話は、三角関係でどっちを選択するのかって、単純なんですけど。でも、最初は、男性の妄想と、女性の恋に対する、恐ろしいばかりの、忘却、って、平行線で最後までいくのかな、とか思ったら、(そこら辺を「羅生門」を参考にしたんでしょうけどね)、それなりに、女性の葛藤があって、普通のエンディングになりました。平行線のままのほうがよかったりしてね。
[DVD(字幕)] 9点(2010-05-05 22:30:17)(良:1票)
5.  8 1/2 《ネタバレ》 
作家の苦悩が映像に映し取られているという表現の凄さ。映画とは外面を切り取るだけのものです。人物の内面を表現するなら、演技表現はもとより、夢や妄想という頭の世界かメタファーを配置するしかないのでしょう。これはその映像表現の頂点と言える作品。おそらく、幾万の映像作家が挑んだテーマなのでしょうが、タルコフスキーやベルイマンあたりを除いて自爆したのではないでしょうか。難解な映画?、いえいえ、そんなことはないですよ。心の中の苦しみ、を丁寧に拾って見てもらえれば、だんだんと周りの人物もが疎ましく思えるようになってきますよ。そうなると、どうにも救えない映画なのですが、ラストでちょっと光を与えてくれます。喜劇なトーンを見せてくれました。私たちはこの映画は「人生は祭りだ」そういう事が分からない男の喜劇なんだと少し安心したりする訳です。
[DVD(字幕)] 10点(2009-03-31 11:46:01)(良:1票)
6.  暴力脱獄 《ネタバレ》 
いろいろと映像的なメタファーがあって、いろいろと想像するとおもしろい。並んだパーキングメーターの頭を落とすのは、どこかのグループの仲間を一掃したのではないか。車掃除のおねぇさんのシーン、ホースはもう男性器の象徴、ルークがぶら下げた栓抜きは、十字架を茶化したもの、最後の教会への「神の救いの無さ」へと繋がり、サングラスは非人間、卵50個喰いは囚人50人の数とかけて、彼がその場のトップに立つことの象徴……などと見るとニューマンのニヒルな演技とあわせれば、この映画が名作といわれるのも分かるのではないでしょうか。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-01-25 12:12:02)
7.  突然炎のごとく(1961) 《ネタバレ》 
愛の形を教えよう、とこのフランス人監督。唯愛主義というのかな。カトリーヌの自分の心に忠実な、心がころころ変われば愛のベクトルも変わる、その心のままに愛を貫く。ジュールはただ愛すために愛する人を自由のままにさせる。複雑な愛が存在する。ジムは考えて考えて常識的な愛を求める。妊娠だの、友情だのを気にしている。私達が知っている愛は、否定されているようだ。人間の形を借りて、愛というものが、縺れ合うのを見せる映画なのか。人間よりも抽象的な「愛」である。映像にどこか夢のような、実態の無い、浮いたような感じがある。ニュースの映像を入れたり、空撮を入れたり、一瞬のストップを入れたり、早い展開……人間という物質の重さを排除し、実態の無い愛を表現するための工夫かもしれない。音楽はただただ明るい。安物の紙芝居に会いそうな、なんの象徴にもなっていない音楽。これも妙に人間の無化に役立っている。映像はお洒落だ。紙に火をつけて服が燃えたシーン、突然河に飛び込んだシーン、戦場が墓地に変わってそこを歩くシーン、この三つがラストシーンにつながっている。この監督、映像の詩人でもある。
[DVD(字幕)] 9点(2008-03-17 22:52:43)
8.  仮面/ペルソナ 《ネタバレ》 
これを読んでいる人、この映画何だったんだ?って思って読んでいるでしょ。で、解説が欲しいでしょ。残念でした。私も分かったわけではありません。お役に立てずに申し訳ありません。でもね、映像で人間存在を表現しようとしているのだけは分かります。ただ、それを、ドッペルゲンガーよろしく、二人の人物の内面を混ぜて表現し、(混ぜることでに二者の同一と対比を表しているのでしょうか。それは結局人間存在の究極部分なのでしょうか)、しかも、夢と現実とが交錯し、さらに、映画自体にも、ストーリー外から作者のイメージの挿入がきたり、と、まぁ複雑。その複雑なところを味わうのが良いとも言えるんですが。最初は二人の人物の対比の映画かと思っていました。心を隠す人とさらけ出す人。しかし、ガラス事件から変わってきます。隠そうがさらけ出そうが、心の奥は同じだよって。二人の交錯が始まってきます。交錯させ、同化させるからこそ、同じだよって言ってるのかな。そういうことだ!と映像で迫ってきます。冒頭の意味不明なシークエンスの連続。これも映像の力で行きますよ、って監督の宣言じゃないのかな。心の奥底なんか映像にすれば、こんな映画になるでしょうよ。ほら、この映画以上に私たちの心の方が難解なんですから。
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-21 22:39:06)
9.  欲望(1966) 《ネタバレ》 
映像が分割される。柱や壁や家具や、その物の縁が区画線になっている。そこに人間がいる。窮屈な形でいる。現代人の孤独を表すのか、物と対比された存在だといいたいのか。色遣いも鮮明な明るさを要求している。公園の緑さえどこか人工の緑に見えてくる。あくまで映像は人間の手によるものであるとの主張。いろいろと意味の仕掛けをだしてくる。モデルにマウントポジション、あれこれは○○シーンだね、とか、公園の風、あれは、内面での心が騒いでいるか、不吉の予兆か、ってね。適当に想像しろ、と監督は言っているようだ。プロペラも何かだ。紫の紙の中での○○シーンも何かだ。ライブも何かだ……死体も意味があった。主人公が本当に見たものは何か。否、見るとは何か。そこにあると思っているから見える、とでも言いたいのか。テニスボールのように。現象学的な事を言う。写真家だってとろもミソだな。見る商売だからね。私達もつい主人公と同じように見てしまうしね。ま、監督の仕掛ける罠かな。見る事にどんでんがえしを用意していた。最後は、私はここで主人公が消えたらおもしろいのになぁと思っていたら、あれ、本当に消えた。映画自体も「あると思っているからあるんだよ」と最後の最後まで、見る者を煙に巻く
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-17 17:04:57)
10.  甘い生活 《ネタバレ》 
この監督は、映像にメタファーを散りばめているんですね。ストーリーなんか二の次。真の映像作家。そう思えば、難しくもなんともない。一シーン、一シーン、あ、これはそうだ、あれはこの例えだ、と勝手に思えばいい。冒頭のキリスト像の宙づりから、あ、もう、宗教をコケにしているな、と思うし、それが、ローマの街だと思うから、ほほうって、そういうことね。トレビの泉のシーンも、ベッドシーンの代わりと思おうが、歴史を無視している現代性と思おうが、それも自由。パパラッチ(この映画からこの言葉は出たのかしら)なんて、腐った物(退廃した貴族とインテリ)にたかる蠅とでも思えばいいし、主人公のお父さんも、善人を狂わせる街ローマって言いたい材料かもしれない。そんな街早く逃げなさいって、ね。ひっきりなしにアメリカへの傾倒があるが、どこか明るいアメリカをローマの対照物と出しているような感じ。最後の魚、それは、主人公の姿でしょうし、最後の少女、健康的な正常な世界へ戻る差し伸べられた救いの手、正常になる最後のチャンス。それに背を向けた。夜の世界でしか生きられない。踊らないと生きられない。酒だ、女性だ。そして、この監督、横の動き、横長に人物、物を配置する構図が好きですね。それに横といえば、行列好きだなぁ。アメリカ女優で一回、田舎の屋敷で二回、最後のパーティ退場シーンで三回、もっとあったかな? この行列になんとも哀れさと滑稽さを出すのを発見したんでしょうね。8 1/2 でもやってたなぁ。この退廃映画、不思議なのは、こんな不道徳いかんと思うのではなく、どこか憧れてしまうんですね。映像の魔力ですよ、きっと
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-06 22:31:42)(良:1票)
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