1. ラスト、コーション
《ネタバレ》 過激な性描写は、「ラスト・タンゴ・イン・パリ」への挑戦ではないのか、と感じています。見ている方は、主人公が死ぬのは予想されるのですが、最後をどう決着つけるか、という興味を観る者を最後まで引っ張っていきます。原題の通り、色と戒、で揺れる主人公の気持ちがよく分かる演出が素晴らしい。ベッドでの目線、ダイヤを見た時の表情、車中苦悩を語る男への眼差し……特に素晴らしいのは、娼婦をさせられるのが分かっていて、自分の気持ちを歌で伝えるシーン。そして、最後、「逃げて」という台詞が出る説得力。殺す相手を好きになるとは古典的なストーリーだが、恋愛というコンセプトのユニバーサルは大道「死と同価の恋」をアジアのテーストで大展開している気合い。「ラスト・タンゴ・イン・パリ」と「覇王別姫」への挑戦。ラストシーン、愛欲のシーツへ頭の影が映るのも、上手でした。 [DVD(字幕)] 8点(2013-05-12 12:14:13) |
2. おくりびと
《ネタバレ》 ストーリーがベタだの、盛り上がりがないだの、との声をここでたくさん見ましたが、作る方はそんな事は二の次で、映像で勝負、って所じゃないの。何しろまず、納棺師の仕事に見る儀式の静謐厳粛さを、主人公同様に見る方にも納得させなければならない。日本人が誇りとする、(って若い人に言っても分かんないのかな)様式美を示す。そこをクリアしているのが凄い。見ている方もすごいと思う。あっちこっちにメタファーをちりばめていて、その映像に厚みを与えている。タコの死から始まっている。海ではなく川に捨てられた。違う環境。自分も音楽という違う環境で死んでいたのに気がついた。鮭の話は、台詞で説明したからそのまま。食べるシーンが多用してあるのは、「生きること」の意味をそれこそ低音域で奏でている。詰め将棋に微かに感じる「終わり」の予知。命を表す白鳥。雪と白い山が見せる、ピュアさと生との対比、ラストの白い石と胎児のイメージの重なり。布団の白、ふぐの白子、ああ、白のイメージは大事だ。セロ弾きの宮沢賢治は岩手か、山形ではない。山形弁のごつごつしたイメージは広末の演技のイメージ(これは偶然か)。それでもって、やっぱり親子の情に涙するよな。良質のイタリア映画みたい。 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2012-06-02 13:06:57) |
3. イカとクジラ
《ネタバレ》 淡々と描く映画がある。作る側が解釈のためのサービスをしないので、観るものが解釈しなければならない。この映画は、普通の日常の、意味がありそうだと思わせるエピソードを意図的に重ねている。これぐらいのサービスが無いと映画として成り立たないし、また、そこのぎりぎりのサービスから解釈するのが映画の楽しみでもある。性的な部分と親子関係のエピソードが多いので、観ている方は、「精神分析医」になって、話を聞いているような感じがする。(私は臨床心理の専門家ではないので、そうなんだろうって想像ですが)。登場人物、特に息子二人の行動には、「意味」がありそうである。作者は映画にするんだから「意味」があるんですよと言っている。ここは、観るものの想像に委ねられている。登場人物がわがままだとか馬鹿だとかの感想を述べてもいいが、それで映画の内容の批判をしてもしょうがない。この淡々とした感じは、主題の普遍性の高さを物語るが裏付けである。みんな見ていて、理解できるところがあるでしょって。イカとクジラの意味は? さぁ、父親のマイ・アイドルの座からの陥落とそれによる自分の成長、今後さらに続く苦しい、藻掻くような人生の予感? セックスという行為自体のメタファー? 素人精神分析医はいろいろと考えたりするのです。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2011-06-26 11:47:08) |
4. バベル
《ネタバレ》 四つの話が、密接に繋がってないところがミソで、そうなるとどこか作って「お話」的になってしまう。ほんの少し掠る程度で、繋がっていることで、四つの話を一つの話に入れる契機としているだけ。この監督は、「不可避的、運命的出来事に押しつぶされる人間とそこからの再生の可能性」を歌っている。テーマを一般化するために、四つの話を並べているだけである。「バベル」というタイトルを付けたのも、言語は違うけど、人間同じなんだ、という人間の性を一般化したい監督の意図が伺える。最後のうまさは、見ている人は、「女の子」死ぬんだと思わせて(彼女は死に場所死に方を探していたのでしょう。その前に、アレを、ってことですね、最後に分かります)、実は、「救いの手」を差し伸べた点、ある意味、どんでん返し。監督の人間性を信じる姿を感じる。メキシコのおばさんが救われないのもワザとらしくなくていい。むしろ、ラストのどんでん返しの布石になっている。刑事さんの手紙は、きっと「私、死ぬのを辞めます」だったはずだ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-02 19:58:59)(良:1票) |
5. 瞳の奥の秘密
《ネタバレ》 画面が黄色みがかっている。古写真を見るような感じで、古めかしい。でも、それもわざとでしょ。時々、スタイリッシュ。冒頭の横切る人だけが、残像とか。ほら、なんか、ちょっと「セブン」風。そうそう、サッカー競技場の上空から、ずっと降りてきて、観衆の中の主人公のアップまで、ワンテイク。あれ、CG使うんだ、とアルゼンチンを少し馬鹿にしていた自分を反省。役者の老けた顔もCG? どうなのかな。いろいろと仕掛けがあって、嬉しくなる。「終身刑」って言葉がその筆頭。きたね、これ。それに、みんな気がついたかな、上司の婚約パーティーの写真に写った主人公の顔。好きな人をじっと見ているの、犯人の写真の中の視線と同じで。もう、映画のタイトル通り。「好きだったら、何も言えないさ」みたいな台詞もあった。ミステリー的には、どうだってトリックはないけど、これ恋愛映画、それも、大きなテーマを投げかける映画。「過去」をどう捌くのか。最後の5分前まで、過去は過去だ、忘れなさい、って話で終わるとみせて、あああら、大変。過去は忘れられるものではないさ、ならば、それを直視して、未来に向かおう、って、どんでん返し。メモ用紙に一字足してさ。そして、さぁ、生きようって、最後にドアが閉まるんだ。僕は「セブン」より好きだな。 [映画館(字幕)] 9点(2010-10-04 20:34:43) |
6. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 スラムの話を語るのに、クイズ番組を通してっ、というアイデアが良くて、それでOKじゃないですか。暴力に偏ると、やーい、あのブラジル映画の二番煎じだ、って言われますからね。二点ほどコメントを。トイレの「あの」中に落ちるというシーンに笑いましたが、後で映画のデータを見ると、「トレインスポッティング」の監督さんなのね、まぁ、やれやれ、また、って思いました。もう一点、ラストの方の、作る側と見る側の駆け引き、が面白かったという点。お兄さんが携帯を渡した所で、見る方はもう「これはライフライン、来るな」と予感させて、ま、その通りになって、でも彼女が「私も知らない」と来て、見る方はヒックリ返ってしまう。作る側の思惑通り。で、問題が「三銃士」に関して、実は、これ、多くの人が誤解している問題ではないのですかね。だいたい、ダルタニャンという名前が有名で、もう三銃士の一人は彼だっと思っている人が多いはず。で、彼が選んだ、選択がA、でした。そうじゃないだろう、と多くが突っ込んだ。でも、「正解でした!」と来る。また、ヒックリ返って、ね。作る側の思惑通り。そして、映画が終わって、踊る、という、えっ、という映画でした。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-05-11 20:29:30) |
7. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 意味がわからない、とのコメントが多いですが……そうでもないんじゃないかな、そういうコメントを書きましょう。これ、見ていたら、アンデルセンの「マッチ売りの少女」と同じだなぁ、と思いました。不幸の中での一瞬の幸福、その瞬間の喜びと対比される生きる辛さ、同じテーマですよね。方やマッチ、これはリズムを刻む音。主人公の理不尽なまでに不幸な様子に、救いようがない、とのご意見が多いですが、救いようがない不幸を用意しているのです。この映画に救いようがないからどうかしろ、と言うのは、マッチ売りの少女を助けないからつまらない作品だ、と言っているのと同じようなこと。私たちは不幸の中にこそ人生の真実の断面を感じます。結末は見えたようなもの、ただ興味は最後のマッチはどういうマッチかということ、自分の心臓の音とは!参りました。調べてみると、この監督、デンマーク出身とか。アンデルセンの国です。 [DVD(字幕)] 8点(2009-05-05 17:32:36) |
8. 地球が静止する日
《ネタバレ》 ある勝手な想像。これはアメリカの民主党が大統領選挙の資金稼ぎに使うために作ったと見た。We can change. とあのキャッチフレーズが強調される。そう、変われるのだ、と選挙民に刷り込もうとした。だが、あまりに出来の悪い映画のために、その効果が逆になると判断した。ヤバイ、これは地球が静止した日ではなく資金が静止した日になる。だから、公開を選挙後の今にした……私の1800円は民主党員の選挙勝利新年パーティーの料理代にでも回されるのだろう。人生初の政党への資金援助。落涙。 [映画館(字幕)] 3点(2008-12-27 09:50:35)(笑:2票) |
9. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 「マトリックス」以降、「メメント」「ドニーダーコ」「エナーナルサンシャイン」などと流行りの多重世界もの。バタフライ効果、昔、ブラッドベリーだかアシモフだかのSF短編でタイムマシンで行った過去の恐竜世界に足跡一つを残したために現代に戻ったら世界が変わっていたという話があったが、その発想と同じ。確か藤子不二雄も同じような短編があったと思うが、それは近所の花の色が変わっただけだった。その発想が元になって、black out と絡めてアイデアを捻り出した時点で勝利。脚本はあれこれといろいろな設定ができるので楽しかっただろうなと想像。演じる方もいろいろな人生を演じられるので楽しかっただろうなとこれまた想像。そして、見ている側もどう終わるか、また、どう終わるべきか、といろいろと想像ができて、楽しい。人生がころころ変えることができる映画が出るなんて、「失敗したらリセット」という、RPG世代ならではの映画なんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-11-30 12:19:58)(良:1票) |
10. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
《ネタバレ》 赤茶けた荒涼とした土地に「石油」が眠っている。ブラッド…見えない所に熱く堪り、事があれば吹き出す石油への比喩。日焼けで赤茶けてざらざらしたオイルマンの顔、その下にも「血」が流れている。石油と血、というどろどろした液体のメタファーで、潤いの無い大地と人間性の欠片もない人間を繋げ、二重映しでドラマは進む。結末は悲劇になるより他はない。ただし、インチキ宗教家をやり込めるラストは予想外。人間の少しはあるはずの良心/宗教心(インチキ宗教家をいいように捉えての提示)を完膚無きまでに蹂躙して終わる。だからといって救いがないのではない。救いの無い人間を描くのは、ヒューマニズムを信じたい事の裏返し。「血があるのだ」と最後にタイトルが出る。制作者の裏返った願いがこもる。人によってはボギー主演の「黄金」の人間の強欲の虚しさを思うだろう。結末に「ジャイアンツ」のJ・ディーンの末路と重ねるだろう。心の闇とその転落のドラマに「市民ケーン」を見る人もいるだろう。市民ケーンの幼少の傷は、このオイルマンでは無神論/物欲主義として、摺り合わせてみるのも面白いかもしれない。 [映画館(字幕)] 8点(2008-05-19 19:51:17) |
11. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 彼の心変わりが分からない? そんなコメントを散見しますが、それならば、の私なりの一言。盗聴の後、街灯の明かりも暗い、静かな街をこつこつと歩くシーンがあります。こつこつと、です。皆さんも夜歩かれたら感じると思います。そんな時頭の中のいろいろな思いが奥へ奥へと沈んでいくのを。まさに、その象徴。自分の足音を聞きながら、彼は考えが深まっていきます。最初は女優が好きだったのでしょう、次に芸術家が自分の理想に近い社会主義者であるのも知ります。それだけではありません、芸術家の人生を見て自分の心の中にも芸術の心があるのが分かってきます。(映画の中の芸術家分析のタイプ4とは彼のことでもあるのでしょう、また、ソナタはそのことの象徴でもあります)。自分の孤独と愛し合う二人の幸福も比べます。最後に、体制側の腐敗も(見て見ぬ振りをしてきたのでしょうが)我慢ができなくなってきます。夜の道をこつこつと一歩ずつ進む姿は、その音一つ一つにあわせ、彼の頭の中でそんな思いがこつこつと重なるのです。それは、限界点に来ます。ある時、そう歩いて、エレベーターに乗り、子供と居合わせます。「ボールの名前は?」この瞬間こそ、彼が全てを覚悟した瞬間だと分かるのです。迷いが消えます……人間の(優しい)思惑のため(たとえば、彼女を巻き込みたくない、たとえば、今回は見逃してやろう)少しずつ少しずつズレができて、ドラマが進み。クライマックスへと向かいます。「私のための本です」の二重の意味で、ラスト、画面は止まります。彼の人生に、見ている私達もプレゼントを(本のプレゼントもモチーフです)してあげた気持ちになりました。涙が止まりませんでした。 [DVD(字幕)] 9点(2008-03-11 23:26:17)(良:2票) |
12. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 ロックスターの本当の恋に嬉しく思い、少年の走りに声援を送り、その父の悲しみの立ち直りに安心し、夫婦の危機で妻の心が痛く分かり、首相の恋は王子様物語のように夢を見させ、アメリカへの妄想兄ちゃんの成功に苦笑いし、言葉を越えて愛が成り立つ事を再認し、仮の愛が本物になる裸の二人にくすりと笑い、身内を優先させて恋を駄目にした彼女に自分を重ね合わせ、紙芝居で語る男に一番かっこいい失恋を見る。Love acutally is all round. 「愛は実に周りにあふれてるではないか」そう映画は言う。たくさんの愛の形を揃えて、そう映画は言う。愛の素晴らしさを心の宝物のように大事にしている人は、幸福感で胸が一杯になったことでしょう。個人的には紙芝居の兄ちゃんの台詞 Enough. は一番心にしみたなぁ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-03-05 23:36:48)(良:1票) |
13. ライラの冒険/黄金の羅針盤
「ダイモン」っていうのをお勉強して見て下さいな。あっそういうことか、って分かった時には映画は半分以上終わってました。この発想一点で、これを思いついたもの勝ち、的な映画です。考えたな、お主、とそこは誉めたい。字幕は「ダイモン」でしたが、発音は「デーモン」でした。本の翻訳の時点で、「悪魔」と間違わないように表記変えたのかな? 変な所を気にしました。スペルは daemon ですよ、ほら、エラーメールの時に来るでしょう。Mailer-Daemon だぁ、と変なところで感心。だからって何?って話ですがね、映画公式ページでは、自分のダイモンが占えますよ。私はアライグマでした。で、これもどうでもいいか。さて、映画ですが、どうしても LOTR と比べてしまわれるので、損なのですが、それなりにってところでしょうかね。あっ、もしヤッターマンのハリウッド版ができるなら、ニコール姉さんいけるんじゃないの、なんて思いました。 [映画館(字幕)] 7点(2008-03-03 23:01:46) |
14. 幸せのちから
《ネタバレ》 映画史上一番ダッシュが多い映画なのではないでしょうか。ロッキーよりもダッシュしてるぞ。サンフランシスコのダウンタウンを走ってばかりでしたね。坂の街だから大変だったでしょう。Happyness がスペルが間違って、何か意味があるのかな、と思っていたけど、特に何もなかったので、(あったのかもしれませんが、私は分かりませんでした)勝手に、Happyness には i (自分の事)は要らない、y(ou) (あなたのこと)が必要なのだ、とか来るのかなと想像してました。you は子供でしたね。お父さんは大きなセールス品の箱をぶら下げて、子供はバスケットボールを入れてレジ袋をぶら下げて並んで歩く。微笑ましいったらありゃしない。洞穴だ、のシーンですが、子供の寝姿を見て、なんと可愛いのだと思った事がある人ならば、ジーンと来たはず。ちょっと「クレイマー・クレイマー」のようなところが、ああそう言えばダスティンホフマンも怪我した子供を抱きかかえて走るシーンがありましたね、損なことを思い出しました [DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2008-02-17 16:32:17) |
15. ゴーストライダー
《ネタバレ》 ゴーストライダーが凄いバイクで、ばああああんと炎と衝撃波を残して疾走するのが格好いい、とそれだけの映画でした。強いんだか弱いんだか。映画会社の会議室で「パート2は止めた方が」「そうですね。なんか良い展開でもあれば」「む、それはどうも…」「ならば、無しでしょう」「ま、アメコミは他にもあることだし」「ケイジさんが調子に乗ってパート2とかいいませんかね」「君、そこを上手いこと言っといてくれたまえ。若いのがしたほうが良かった、なんて言ってはだめだぞ」「はぁ、なんとかやってみます。私の方がゴーストになりそうです」こんな議論があったはずです。 [DVD(字幕なし「原語」)] 5点(2008-02-01 18:53:57) |
16. アメリカン・ギャングスター
《ネタバレ》 狙いは分かります。「フレンチコネクション」のセッティングで「ゴッドファーザー」風のセンチメンタリズムとバイオレンスの味付けに「デパーテッド」の役者の重量感で押し出そうとした?んーん、どれも駄目のようです。有名ラーメン店の良いところだけ取り入れて、結果、麺・スープ・具どれも不満足、なんとも間抜けなラーメンが出来た、そんな感じでした。善悪の差配も、最後俳優ワシントン君の持つ個性、正義感、に合わせたような感じで(彼、最後のあの展開がなかったら役を引き受けなかったのかな)、カタルシスもなければ、悲哀もないという中途半端さ。クロー君も「ビューティフルマインド」であなた知能派と違うでしょ、という意見を聞かなかったのかな。そんなこんなで、スコット監督頼みますよ。 [映画館(字幕)] 6点(2008-02-01 18:28:19) |
17. アレックス
《ネタバレ》 下手なホームビデオを見ているようで気分が悪くなるが、まさに酔いそう。でも、それは作り手の作為。映画を見る者を神に、超越者に、してしまった。神は、未来を知っている、その辛さが体験できる。「こいつ後で不幸のどん底に落ちるんだけどね」。時間を超越する神だが、しかし、どうやら、普通の人がその超越を味わうには、スパイラルなトンネルを経験しなければならないようだ。それを体感させるために、車酔いしそうなグルグルな映像。トンネルのメタファー。「2001年宇宙の旅」のラストのまねのラスト。そして、「見る」者は、どんな事にも目を背ける事も許されない。そのため、性も暴力も映し、長い長い長いカットを用いる。残酷な事にも超越して見る者は堪えよ、という具合。今時点では、ほとんどの方には不快な映像でしょう。しかし、数十年後、時代を先取りした映像という評価になる可能性も少し有り。映像にどっぷり浸かり、少々の刺激では喜べない、未来の世代が待っている。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-21 22:21:27) |
18. 300 <スリーハンドレッド>
《ネタバレ》 マンガをアニメする日本。マンガを実写するアメリカ。マンガの雰囲気を残そうとするから、シン・シティと同様、風変わりな映像に拘る。新しい映像路線って意気込みは感じはありますけど、どうでしょう。その芽がどう育つか、興味もありますが、新表現主義とでもいえば格好良いですけどね……300もいるようにはみえませんで、30位の感じで、相手も100万とかじゃなくて、1000位の感じで、ハリウッドともあろうものが、NHKの大河ドラマと同じスケールでどうする? きっと、マッチョな役者300集めるのは大変だったのでしょう。それも、CGにすればよかったのに(俳優組合がNoでしょうけど)。 [DVD(字幕)] 5点(2008-01-17 22:35:43) |
19. ナイト ミュージアム
《ネタバレ》 駄目な人間がまともになりました。親子が仲良くなりました。悪人を苦労してやっつけました。うまくいかなかったけど仲間になりました。こけたりつまずいたりとドタバタがありました。特殊効果もたくさんありました。ちょっと恋愛もありました。ファミリー映画の要素全てが入っています。ファミリー映画を作る、という点では、OKではないのでしょうか? この手の路線の映画、ハリウッドには才能あるスタッフが集まっているなぁといつも感心します。 [映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2008-01-15 21:24:45) |
20. レクイエム・フォー・ドリーム
《ネタバレ》 四人の人生。四つの夢。四つの失敗。四つの鎮魂。繰り返される覚醒シークエンス。現実と幻覚と夢の交錯。幸福と孤独。善と悪。繰り返される覚醒シークエンス。子供のため、親のため、自分のため、恋人のため、野望と自分の人生の確認と。体を蝕むドラッグ、心を蝕むドラッグ。繰り返される覚醒シークエンス。崩れた夢への鎮魂。(この映画の斬新的コラージュを模した文体で) [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-01-15 21:09:19) |