1. 女王陛下の007
《ネタバレ》 1969年製作ですが非常に良く出来ていると思います。当時はコンピュータによる編集は無く、スタントマンやカメラワークを効果的に使うことによってスピードやスリルを演出しているのでしょう。それが十分に感じることが出来ました。この一作で降板してしまうジョージ・レーゼンビーは、確かに前作までのコネリーボンドのイメージが強いせいか、地味な印象は否めません。しかし、モデル出身で俳優経験はほとんどないものの見事なアクションであったと思います。ダイアナ・リグ演じるトレーシーは美人だとは思いませんでしたが、どこか魅力のある女性でした。ボンド同様運動神経にたけており、カーチェイスやスキーテクニックもプロ並みという活発な女性でした。おてんばな反面色っぽさも持ち合わせており、実にボンドらしい女性選びだと思います。アルプス山頂で敵ブロフェルドに隔離され治験の餌食となる女性達が40年前にすでにカーリングに興じていたのも驚きでした。我々日本人の多くは長野五輪で初めてカーリングの存在を知った人も多かったのだから。また敵に追われスキー板1本、ストック無しで急斜面をかけ降りるボンドや雪崩を背にして斜面をかけ降りるボンドとトレーシーのシーンは圧巻でした。ボブスレー攻防もこの映画の見所でありハラハラさせてくれます。ボンド映画にありがちな特殊兵器は影を潜め、非常に現実的でイアン・フレミング小説に忠実なボンドを目指したと監督のピーター・ハントはメイキングビデオで述べています。監督ピーター・ハントはすでに過去5作のボンド作品の編集を手がけており、すでにボンド映画を熟知していた人物です。今までの路線を踏襲しながらより現実に近いボンド像を目指したのが良くわかります。ボンドのまれにみる真剣な恋愛から結婚に至る過程もさりげなく、結婚式でのマニーペニーの涙など粋な演出も見逃せません。この作品以降の派手なアクションや秘密兵器満載へと方向転換されたので王道とは言えないかもしれませんが、クオリティの高い映画だと思いました。1度限りのボンド役であったジョージ・レーゼンビーでしたがこれでよかったのかもしれません。一部では興行的には振るわなかったと報道されたようですが、実際の数値上では「ロシアから愛をこめて」とほぼ同数の高い興業収益を記録しています。 [DVD(字幕)] 8点(2008-04-29 00:07:20)(良:1票) |