1. 007/リビング・デイライツ
《ネタバレ》 ティモシー・ダルトンのボンドは「消されたライセンス」を先に鑑賞したが、「リビング・デイライツ」の方がストーリーやアクションは個人的に好みであり、率直に面白かった。ロジャー・ムーアとは対照的なボンドとなっており、ジョークやユーモアを期待してはいけない。当時のソ連KGB内部の腐敗や汚職、権力闘争の状況やアフガニスタン侵攻など国際情勢をストーリーを反映している点も楽しめる。今回はボンドの相手となる女性は実質1人であり、硬派なボンドにも好感が持てた。当時のダルトンは41歳で、ちょうど「カジノ・ロワイヤル」のダニエル・クレイグと同世代である。ボンドはこのくらいの年齢が良い。アクションにも切れがあり(本人が積極的に参加した模様)、ロケ地もジブラルタル、チェコスロバキア(ブラチスラヴァ)、オーストリア(ウィーン)、モロッコ(タンジール)とどこも異国情緒あふれ、あたかもボンドと各地を回っているような気分に浸れた。とくにタンジールはボーンアイデンティティでも使われているが、迷路にように入り組み、独特のアラビア風の雰囲気はあの街でないと醸し出せない。Qの発明道具やアストンマーチンも活躍し、いろいろな要素をバランス良く取り入れた作品だと思う。人によっては、ティモシー・ダルトンに華がないと言う人もいると思うが、私はダルトンの演じるボンドに好感が持てた。 [DVD(字幕)] 8点(2008-06-22 13:34:42) |
2. 007/美しき獲物たち
《ネタバレ》 ロジャー・ムーア演じるボンドの最後の作品にふさわしく、シリーズ内では良作の部類に入るでしょう。個人的には非常に楽しめました。しかしながら、作品の醍醐味であるアクションはスタントが演じているため、(当時、ムーアは57歳)スタントのシルエットと当人のムーアがあまりにも違うので、いかにもスタントが演じているのが露骨にわかるのが残念。冒頭のシークエンスでアラスカでのスキーやスノーボー(当時は珍しかったはず)によるチェイスは見もの。またエッフェル塔からのパラシュート降り、その後のタクシーによる追跡、悪役ゾリンとの乗馬中の格闘、サンフランシスコでの消防車でのカーチェイス、飛行船やゴールデンブリッジ欄干での格闘と見所満載でした。007では必ず、敵側の手下にユニークなキャラクターを置いていますが、今回のメイデイ役のグレース・ジョーンズは、ゾリン以上の存在感でした。もちろんゾリンを演じたクリストファー・ウォーケンの不気味さもかなりのものでしたが。この回を最後にマニーペニー役のロイス・マクスウェルもムーアと同様降板しており、ひとつの時代の区切りとなっています。ムーアボンドを始めて観た時、コネリーと比較するとアクションに今ひとつキレがなく、ラブシーンだけがやたらうまくて、キザでかっこつけすぎと少々違和感を感じましたが、7作品観ているうちにすっかりムーアボンドに魅了されていました。彼ほど、ユーモアを多用し、女性を落とすツボを押えている、品のあるボンドはいないでしょう。今日のボンドシリーズの成功は彼の功績が大きいと思います。最後にロシア(当時はソ連)から勲章をもらうシーンになっていますが、これは降板するロジャーへの花道になるようなストーリーで閉めているのでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-06-15 23:48:48) |
3. 007/オクトパシー
《ネタバレ》 レヴューワーの皆さんの点数は辛めでしたが、私は結構おもしろく鑑賞できました。ただし、ロジャー・ムーアの体力の衰えが露呈した印象です。インドのジャングルでのボンド狩りのシーンも余裕がなく息が上がっている感じでした。特典映像でも言われていますが、この作品からムーア自身、体力の限界を感じており契約も複数年契約から1作品ごとの契約になり、この作品についてもなかなかサインをしなかったとか。本人が一番分かっていたのかもしれません。1983年の作品ですから当時のムーアは56歳。かなりきつかったと思います。 ボンドガールのモード・アダムスは「黄金銃を持つ男」(1974年製作)にも出ていたスウェーデン人の女優です。約10年ぶりのボンドガール復帰でしたので、やや老けた感じはしたものの綺麗な人だと思います。個人的には好みなのでOKでした。当時のアクションシーンは特撮なしのスタントマンによる本物ですから手に汗握るものがあります。列車シーンや飛行機の外での決闘シーンは迫力がありました。列車シーンのスタントマンはコンクリートの障害物に激突、腰の骨を砕く重傷を負ったにもかかわらず列車にしがみつき耐えたとか。このシリーズのスタントマンには本当に頭が下がります。同じ年にショーン・コネリーの「ネバーセイ・ネバーアゲイン」があり、やはり負けたくないという想いがあったようです。興行成績はこちらのオクトパシーに軍配が上がったようです。インドが主な舞台となっており異国情緒を感じることができましたし、ストーリーもしっかりしていたので、個人的には楽しめた作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2008-06-08 14:03:48) |
4. 007/ユア・アイズ・オンリー
《ネタバレ》 DVDの特典メニューからまず見てみました。やはり観る側以上に製作者側が「ムーンレイカー路線からシリアスなアクション路線に戻さなければ客に飽きられる」という危機感があったようですね。今回は硬派でQの特殊兵器に頼らず、真摯に戦うムーアボンドを楽しめました。 ただ他の方もおっしゃっているようにムーアの持ち味のユーモアやQの出番が少なくその点が物足りない感じでしたね。(女性との関係も淡白)その分、スタントマンのアクションは見事でした。当時はCG処理が出来なかったでしょうから、全てリアルなアクションです。オープニングのヘリコプターやスペインの田舎でのカーチェイス、イタリア北部でのスキーアクションやボブスレーシーン、ギリシアの僧院がある山でのロック・クライミングと十分楽しめました。ボンドガールは美人ですが、個人的にタイプでは無かったです。 [DVD(字幕)] 6点(2008-05-25 22:54:55) |
5. 007/消されたライセンス
《ネタバレ》 ムーアのボンドからダルトンのボンドはかなりイメージが変わりますね。すごく硬派で真面目なボンドになってます。女性との関係も控えめ。特に今回はアクション映画としてはかなりクオリティが高く楽しめました。また、鮫に足を食いちぎられる、サンチェスが部下を減圧室で頭部を膨張させ爆死させる、敵とのもみ合いの末、相手を粉砕機で切断する、最後にサンチェスを全身を火だるまにするなど、今までより残酷なシーンが多かったです。今の時代なら見慣れていますが、当時は相当ショッキングな映像だったでしょうね。シリーズ発のR指定だったみたいです。全体的に重めな作りになっており、ボンドは常にしかめっ面の印象があります。ユーモアや遊びがほとんどなかったのが少し物足りなかったです。またボンドガールもキャリー・ローウェル演じるパムは美人ですが、色っぽいタイプではなく共に戦うタイプ、ルペ(サンチェスの女)との関係も控えめといつもの女性との関係がとても淡白でした。その後いくつかのスパイムービーが作られましたが(ミッションインポッシブルシリーズ、ボーンシリーズなど)今思えばこのダルトンボンドの路線に近いのかもしれません。007にしか出来ないできない演出(ボンドガール達とのラブシーンやいかにも英国紳士という感じの上品で洗練た身のこなし、ユーモアやウィットもある)を期待する人には物足りない作品だったかもしれません。Q爺がロンドンから駆けつけていろいろな特殊武器を提供するのは微笑ましかったです。ボンドが心配でたまらないらしく「危ないから帰れ」と言われても帰らずじまい。足を食いちぎられたフィリックス・ライター役の俳優は『死ぬのは奴らだ』にも出ていました。同じ俳優なのですぐにわかりました。(いつもCIAのフィリックスは別の俳優が演じているので混乱してしまうのですが)個人的には好きな作品ですが、シリーズの中ではちょっと異色の部類に入ります。 これなら007でなくてもいいと思う人もいるかもしれません。長いシリーズですからこのような硬派ボンドもありで良いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-05-06 22:25:18) |