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1.  ロスト・ハイウェイ 《ネタバレ》 
わかりにくい映画は減点ですが、監督はこの映画を「わかりにくい映画」に作ってないです。乱暴な言い方をすれば、男女の「よくある話」をリンチ流に映画化しただけというか。  現実の記憶以外に、ひとの頭の中には詰まっているもの。 夢の記憶、何かで観たイメージの断片、誰かに聞いて想像したこと、願望、妄想...これら非現実に属する事柄も、「ストーリーを語る上で有効」と思えば、当然の如くに現実と並列に映像化するのがリンチ監督です。 前半で、刑事にデジカメを持っているか訊かれて、主人公のフレッドがこう答えるシーンがあります。「I want to remember things in my own way.=自分の見たとおりに記憶しておきたい(から、デジカメはいらない)。」  この映画に描かれているのは、全編がこのクレイジーなサックス吹き、フレッドの世界観です。彼は自分がうすうす察知していることも、自分にとって好ましいことでなければ無視する。行動を起こすなんてとんでもない、察知したことさえ否定したい人間。 その類まれなる内向性のせいで、当然もやもやしていく感情を、ただサックスにぶつけて生きている。彼は深刻な性的不能に陥っていて、妻の浮気を疑っている。でも、気づいていることを自分自身にさえも言わない。そういうことが絶対にあってほしくないし、あるわけはないと信じ込もうとしている。非常に危険な男です。 この映画にはフェロモンとかエロとかセクシーとかいった軽いノリではない、ものすごく真剣で重苦しい、1人の女への男の愛(と呼んでいいのかどうか..)が描かれています。 解釈にはいろんなバージョンがあると思いますが、私の解釈はフレッドという男が、自分の女を殺したあとも自分の中でそのことを認めず、自分だけの妄想の中で、いろいろなバージョンで彼女を登場させ、愛していく。愛する彼女が(ヒロミ・ゴーの唄ではないですが)少女で娼婦でAV女優で金髪で黒髪で妖精で悪女で…イメクラですか?というほど妄想を広げます。そこでは、彼はもはや性的不能ではないし、むしろ精力旺盛な男(ロラント)の女になっている彼女を寝とる、スーペリアーな存在と化しています。フレッドのスイートかつ狂った妄想が終わりを告げそうな所で、映画はラストを迎えます。真実を認識したフレッドがどうなったか...刑務所でサックスを吹ければ、こんなことにはならなかったのかも。
[DVD(字幕)] 9点(2009-05-06 02:06:46)
2.  デッドマン(1995) 《ネタバレ》 
9をつけたい大好きな映画だけど、それじゃ思いやりがなくて自分勝手な感じがするので7、いや、やっぱり8はつけたい。 この映画が自分にとって最もリアルなインディアン映画で、アメリカの当時の原住民の生活を感じることができて好きなのと、音楽がやっぱりいいですよねえ。 女装の野蛮人も、すごくリアル。滑稽で、恐ろしい。本当に恐ろしいものはジョーカー然り、このように滑稽な姿をしているのですよね。 でも何より、映画を流れるこのタイム感覚がいいです。知らない場所、拠り所のない場所に来てしまい、少しずつ、自分のタイム感覚が侵食され、壊れていき、最終的に人生が純粋なプロセッシングと化していくブレイクさん。 電車の中で居眠りすると変な正夢を見たりするように(自分だけか)、夢かうつつか、現実か幻か、前世か来世か、キョクタンな話なのか、勘違いなのか、いろいろなことが何がなんだかわからなくなってくる不思議な感じ、とてもいい。 登場人物の名前が米英の詩人とかってとこが気に食わないけど、何かメタファーでもあんのか?ほんとにあんのか?あったとして、ほんとに映画に活きてくんのか?とかが気になるんですけど、追及する気にならず。意味ないんだったらステキだけど、意味があるならなんか嫌だな~。 最後、ノーバディの銃弾戦を目の前に、ようやく死へと旅立つブレイクさん。破壊、崩壊のピークがこれかい。しかし拍子ぬけはしなくて、圧倒的な美を感じますね。サイレントで。ウツクシイ。ポエム。ラストではこうして、おかしなフランス人になってしまう自分でした。 ジャームッシュ監督、最初の二作とこれ以外はなんだか全然だなあ。自分的には。もうちょっと、作るのかと思ってたけど...。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-01 05:10:39)
3.  タイタニック(1997) 《ネタバレ》 
娯楽映画の傑作です。史実であり、実際、人が大量に死んでいるのに娯楽映画とは不謹慎な気もしますが... 恋愛映画にはほとんど興味がないのですが、ディカプリオとケイト・ウィンスレットの演技がリアルで、軸となる若い二人の物語にすんなり共感できました。 普通に演じたらケイトの添え物にしか見えないだろう役を、ディカプリオが自分で肉付けして、すごく素敵な青年(死語)に作りあげていて感動します。ケイト・ウィンスレットも、今ものすごく株が上がっていますが、やっぱり当時から抜きんでていたんですね。今の若い女優にはなかなかない、あの線の太さがとてもいい。可憐でもセクシーでもない魅力。貴重な存在ではないかな。 いろいろツッコミどころはありますが(例えば、二人が船内のクルマの中で結ばれるシーン。私にはギャグとしか思えない演出がありました)、タイトル通りのスケールの大きさに爽快感を感じます。 文字にしてみると単なるメロドラマのようですが、ケイト演じるローズは、貴族の名を捨てても自分の信じる生き方を貫こうとする清廉な女性。無名で無一文の画家とつきあい、相手の才能に惚れこんで、あの時代にヌードにまでなる。若さゆえのハジケ方とも言えますが、なんだか気持いい。 ディカプリオ演じるジャックは、浮浪児のようでいながら、出自など気にせず、借り物のタキシードで貴族のディナーに堂々と乗り込み、楽しんで帰ってくる。 二人ともマンガや偉人伝に登場するような大物系キャラクター。 この若い二人が劇中、最初から最後まで一生懸命生きている感じがして、とても魅力的です。
[DVD(字幕)] 9点(2009-03-10 02:53:44)(良:1票)
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