1. モンパルナスの灯
《ネタバレ》 母はモディリアニの絵が大変なお気に入りだが、少女時代の私はただ不気味としか思えなかった。そんな頃に鑑賞した本作、フランスってすごい美男美女をキャスティングできるんだなあ、とまずそこに感心したが、芸術家っていうのは自尊心ばかり高くて、勝手で理解できないもんだな、と思った。お客様は神様なのよ!評価してくれてるのに、贅沢言うんじゃありません!特に養ってる家族がいるならなおさらでしょ!って感じで。なので、こういう部分では芸術を解さないと感情移入しにくいものの、病気が進行しだすあたりから、目が離せなくなってくる。そしてラスト・・・思わず息を詰めて観てしまい、鑑賞後しばらくショックでぼっとなった。あの残酷さはただものではない。今まで観た映画の中でも最大級だ。衰弱した画家の背後に死神のように迫りささやく画商。画家がついに行き倒れる場面も壮絶だが、さらに画商はその死を見届け、画家の家におもむく。家には夫の死を知らずに待つ妻。画商が夫の絵を買い漁る様を見ながら、とびきり美しい微笑を浮かべる。あなた、絵が売れたわよ、と言わんばかりに…。この微笑が、心臓を突き刺さんばかりだ。そして画商がひたすら絵を繰ってるシーンで映画はそのまま終わってしまう。なんと容赦ないことか。妻はその後夫の死を知り自殺・・・事実ではさらに悲惨な結末を辿るが、敢えてそれを見せない本作なのに、この容赦なさがトラウマになってしまった。モディリアニの絵が現在何億と言う値で取引されている事実が、さらにやるせなさを増強させる。余談だがこの映画を観たせいなのか、今はモディリアニの絵を見ると、何か独特の感慨がある。 [地上波(字幕)] 7点(2009-04-18 13:09:45)(良:1票) |
2. 5つの銅貨
《ネタバレ》 心温まるジャズマンの伝記映画。ジャズをよく知らない私でも面白いのだから、スタンダード・ジャズのファンにはたまらない映画なんじゃないだろうか。ダニー・ケイの芸達者ぶりには感心させられる。前半はサクセス・ストーリーだが、音楽シーン以外もこじゃれているのがいい。私のお気に入りは、練習する父の周りをうろちょろして中々寝ない、まだ幼い娘とポーカーをする場面。しらっとした顔で掛け金代わりのピーナツを追加する娘の、こまっしゃくれぶりのかわいいことかわいいこと。この後、バンド人気の絶頂期に娘は病気から障害を負ってしまい、主人公はジャズをやめる。そこから再起するまでの物語が後半の核となっているが、子役が変わってしまったのが(時の経過から娘は大きくなっていなくてはおかしいので、むろん仕方ないのだが)少し残念だった。久しぶりに手にしたコルネットから出た調子はずれな音。落胆。取り戻せない自信。ここから娘や仲間の励ましで再起していく過程は少し出来すぎの感もあり、実話がどうだったのか気になるところだが、やはりラストのコンサートは感動的だった。口ずさみたくなる主題曲がいい。 [地上波(字幕)] 7点(2009-03-25 13:06:11) |
3. 眠れる森の美女(1959)
ディズニー・クラシックの三大プリンセス、白雪姫、シンデレラ、そして眠れる森の美女オーロラ姫。小さい頃絵本で馴染んだ経緯から、古いディズニー作品には甘い(だってええ、懐かしさが先にきちゃうんだもん)私だが、なぜかウチには眠れる・・・のディズニー絵本はなく、オーロラ姫のキャラもずっと知らなかった。ということで、不公平だが(笑)キャラもアニメも今になって見た感想で。スマン。 原作童話から矛盾(王子は90歳以上年下かい!王国は滅びなかったのか!と突っ込まれそうな“100年の眠り”をただの“眠り”に)や無駄(12人の魔法使いを3人の妖精に)を排除し、王子との経緯を思いっきりロマンチックに脚色したストーリーは正にディズニーの真骨頂。だが、フィリップは自分の身分を隠して、オーロラは自分の身分を知らずに森の中で恋に落ち、実は生まれながらの許婚の王子王女でしたあ~っていくら子供向けってもご都合主義が過ぎるんじゃないかなぁ。うーむ。大活躍の妖精のおばちゃんたちは実に可愛いんだけどね。 いや、本当のところ、人魚姫ほどは原作童話に思い入れはないのに(どころか、グリム童話はなんか不気味でコワイ。王女の眠る茨の繁茂した城に入ろうとして、勇者が次々命を落とすんだもんな)、なぜかケチつけたくなっちゃうのは、実はオーロラが16歳にしちゃ老けすぎで、なんかかわいくないからなんだよね。いや、皆さんが綺麗、美しいと散々言っているところ申し訳ないんだが、ごめん、私にゃそうは思えん・・・。 [DVD(字幕なし「原語」)] 4点(2009-02-11 13:27:50) |
4. ローマの休日
《ネタバレ》 うーんうーん、ごめんなさい。そこまで高く評価できないの。名画だということはわかる。何故皆に愛されてるのかも、高い評価を受けてるのかも、わかる。でも、初見時母に絶賛されて見せられ、半ば拍子抜けしたとこから中々脱却できません。。。非常にシンプルなストーリーだから子供にも理解できた。以下、その時の印象(まあ、私は多分にひねくれた子供ではあったが・・・)。 →そこまでいい?このストーリー、少女漫画レベルじゃん(自分が愛読者だったくせに)。いい大人が絶賛するような話?・・・悲恋?これって悲恋っていうの?お姫さんが旅先で街に抜け出して、遊んで、ロマンスも楽しんで帰っていきましたとさって、それだけじゃん。女優さんはとてもキレイ。でも、男の人、かっこよくないし(マセガキだったんで、男性の好みははっきりしていた)、大体ローマが一番とか言わせるなら、イタリア人にしたら? ・・・あんなに絶賛されてから見せられたのでなかったら、もう少しよかったと思うんだけどね。今になってみれば、非常に青臭いこと言ってたとは思うんだが、第一印象って結構残るんだな。初見時の感想に+2点ということで、それ以上は・・・ごめんなさい。 [地上波(字幕)] 6点(2009-02-09 13:31:04) |
5. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 すごい陳腐な表現で申し訳ないんだけれど、名画中の名画であり、名画の名画たる所以が解る作品。ってか、初見は多分NHK教育の字幕だったと思うが、まだ小学生で、それほど深くは背景が解ってなかったのだ。裁判終わったのに討議するの?陪審員?普通の人なの?お母さんも陪審員になるかもしれないの?なんて聞いた記憶があるし(笑)。そんな子供にはどう考えても退屈なはずの映画なのに、惹きつけられた。それぞれの陪審員が個性だっていて、展開に目が離せなかった。ちょっと主役がカッコよすぎに描かれてるのには反感を持ったのだが(笑。ひねくれた子供だったので)、結末は素直にやった、と思った。そして名乗りあって握手を交わし別れるラストのすがすがしさ。 さて大人になって観ると証拠検証のレベルの低さなんかに驚くのだが、そういう時代だからこそ、冤罪を防ぐためにこの議論が必要だったのだなあ、と更に納得したり。疑わしきは罰せず、は近代国家司法の基本中の基本だが、じゃあ逆に、泣き寝入りをなくすにはどうしたらいいんだ、なんてことも考えてしまうけどね(本作でも主人公にも少年が真犯人である可能性も言わせている)。陪審員には不真面目な無責任発言もあるのだが、こんなヤツもいそうという、リアリティがある。最後まで有罪を主張し続けた陪審員が私情をさらけ出して激昂し、「落城」するに至ってはホロリとくる。ただ論議するだけの密室劇を、飽きさせず最後まで見せるのは本当にすごい。実にしっかり作りこまれた、力のある名画。 [地上波(字幕)] 10点(2009-01-29 13:11:15) |
6. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 私は「昔の邦画」(モノクロの頃)がちょっと苦手である。どんなに名画といわれても、あの棒読み(特に女優)がめちゃくちゃ気になってしまい、中々ストーリーにのめり込めないのだ。経緯あってソフトが手許に来たのだが、羅生門か・・・評価の高い作品だよなあ・・・と思いつつ気が引けるところがあった。そんなわけで恐る恐る?鑑賞したのだが、この作品は、ストーリーにちゃんと入っていけた。演技はまあ、やはりあの頃特有の下手さだが(でも若い三船敏郎のバカ笑いは結構よい)。思えば事件の4つのバリエーションはほとんど同じなのに、微妙に各語り手が自分を擁護したエゴになっている、この描写は上手い。原作の「藪の中」は未読なんだけどね。最後にこれも人間のエゴイズムを書いた「羅生門」の一部を追加しているのが面白く、エゴは人間の自然である、しかし情もまた人間の自然であるという救いある結末にしたところに、作り手の人間的良心を感じる。 [DVD(邦画)] 7点(2009-01-19 13:40:56) |
7. シンデレラ(1950)
クラシックなのだが、白雪姫よりは現代的視点?が入っていて、シンデレラがやられっぱなしの弱い娘になっていない。ただ、最近のディズニーのように、ヒロインの強さや意志があざとくなりすぎない(笑)さじ加減が良い。まあ結果的には魔法とか動物とかの他力本願だが、元々おとぎばなしだからこれでよいのだ。って原作相当変えてるが、幼い頃から慣れ親しんだのはディズニーの絵本のシンデレラだもん(個人の事情ですいません。原作を先に知っていたリトル・マーメイドは正反対の評価になる)。絵本だけでなく映画もあの頃観ていれば、きっと夢中になったろうなあ。近年作られた続編はこの名作を汚した犯罪級の駄作。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2009-01-13 13:45:49) |
8. 禁じられた遊び(1952)
深く悲しい。子供の頃から放映されるたびに観て(ほとんどがNHK教育字幕)、その度に泣いた作品。でも好きではなかったのだ。子供にはあの結末は可哀相過ぎて、何とかハッピーエンドにならないかと思ったりした。あの頃の思いは今もあるが、何故あのラストなのか、が解るので大好きな映画だ。戦争の直接描写は最初だけなのに、きっちり反戦映画となっている。二人の子役は素晴らしいとしか言いようがない。予算が足りなくなってギター一本のバック・ミュージックになったというエピソードは驚き。映画音楽含め名作だが、怪我の功名?だったとは。「嘘つき!場所を言ったらうちで引き取るって言ったじゃないか!」の辺りからラストにかけいつも号泣。 [地上波(字幕)] 10点(2008-12-23 15:12:24)(良:1票) |
9. エデンの東(1955)
母が絶賛するのですごく期待して観たのだが、肝心のジェームス・ディーンにイライラさせられっぱなし。これが母性をくすぐるって言うのか~???と、彼の良さが解りませんでした。っても映画はそれなりに良かったかな。今の時代だったらちょっとベタだが、雰囲気出てました。にしてもあの結末は兄ちゃんがかわいそすぎ!まあ、ディーンがツボにはまる人にはたまらん映画なんでしょう。私には兄ちゃんの末路の方が気になったが・・・。 [地上波(吹替)] 6点(2008-12-18 13:10:28) |