1. 晴れて今宵は(1942)
《ネタバレ》 鎧姿が一瞬出てきて、極めて当たり前ながら、それとは逆のミュージカルのしなやかな身体性を浮き彫りにする。この身体性と音(音楽)のコラボが、かつてトーキーの必然性の後押しをしたのだった。リタ・ヘイワース、頑張ってるなぁ。踊れるフィルム・ノワールの女、なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-13 21:51:51)★《更新》★ |
2. マン・ハント(1941)
《ネタバレ》 ジョーン・ベネットのことだけで高評点とする。主人公が暗い路上で敵方に挟まれ万事休すかと思いきや、もたれかかったドアがふいに開き(ドアが内開きだからこそ可能)、建物の中に隠れる。その真っ暗な空間にやがてジョーン・ベネットが現れる。これは本当に素晴らしい。まさに亡命してきたフリッツ・ラングと組むために。 [映画館(字幕)] 9点(2025-05-19 13:36:12) |
3. 都会の叫び
画面が綺麗に作り込んであるし、ちょっとイタリア・ネオリアリズム的な雰囲気(フィルム・ノワールというより)も備えていたりするのだが、どこか「ゲーム」というか「遊び」なのだな。たかが映画じゃないか、そう、たかが映画なのだが、マジになれない核心という少しザンネンなものを感じる。以上、直観的な印象にすぎないが。 [ビデオ(字幕)] 6点(2025-05-16 22:33:56) |
4. 過去を逃れて
《ネタバレ》 これぞフィルムノワールの女で、見事に利己的・自律的に男たちを利用する。夫を「主人」と呼んでおだてて仕えてみせるが実は思うがままに操る世の「主婦」たちの鑑だ(笑)。裏切ったな、と、彼女のプライドが主人公を撃ち殺すのも凄いし、主人公が殺されて終わる映画(男社会)のイサギヨサの見せかけも秀逸だ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2025-05-11 08:41:04) |
5. 脱出(1944)
ボギーの、躊躇というものがないひたすらスピーディーな決断と行動が全編を貫く。そんな人間はいないし、いても困る面もあるだろう(周囲の者には)。まあ、銀幕の中にしかない憧れのようなものだ。『カサブランカ』とは違って、すでに戦況が定まってきている安心感という外的事情が大きいのかも。だが皮肉なもので、敵は内側にありで、3年後には赤狩りで、ボギー夫妻のたたかいもある。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-05 13:01:23)《更新》 |
6. 曳き船
《ネタバレ》 1941年の、フランスにとっても過酷な時代に、この古典的な名品。古典的といえばスタジオでの制作の感じが強いし、筋もまた禁欲的な節度を保つ。こういう「古典的」なものが戦後はリアルな表現によって乗り越えられていくわけだ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-04-10 13:51:54) |
7. 偉大なるアンバーソン家の人々
《ネタバレ》 『市民ケーン』が閉じ籠もった名作だとすれば、これは身近に感じられる名作だ。甘やかされて育った高慢な男(とうぜんながら母の貞操の番をきわめて子供っぽく行う)の転落を待ちうける筋、の筈なのである、作中幾度かそうほのめかされる、が、このダメ男が分不相応な大人の対応をしてもらえるエンディング、それが最大のアイロニー。ジョセフ・コットン、おいしい役! [ビデオ(字幕)] 8点(2015-11-15 11:19:42) |
8. 女(1948)
《ネタバレ》 ダメ男からついには「必死に」逃げる女が、逃げても逃げても捕まるように逃げている、のが腐れ縁における内的葛藤というところだが、正直、いいかげんにしろである。この永遠の不徹底な逃げだけで映画を作るのは大胆すぎる(観客のほうが逃げる)。その代わりといおうか、大エキストラ起用の火事のシーンがものすごく気合いが入っている。要するにこういうことだ、徹底的に寄りの(世界喪失的な)撮影のきわめて個人的な別れ話に、それとはまったく無関係な社会的騒動を目覚まし的に衝突させてみせるという面白さ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2015-11-02 11:03:37) |
9. 犯罪河岸
《ネタバレ》 「フランス版フィルム・ノワール」なる呼称自体が奇妙ということになるが、モノクロの美しさ、殺人理由のリアルな偶発的些末さ、遊び心のある重厚さ、つまり立派な「フィルム・ノワール」作品である。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-11-01 11:28:31) |
10. ローラ殺人事件
《ネタバレ》 美しきローラの肖像画をバックに眠りに落ちた警部の前に、死んだ筈のローラが現れる、となると以下はユメかウツツかという曖昧さで引っ張りたいが、あっさりウツツで、これでは恐怖のダメ出し監督プレミンジャーにこそダメ出ししたいではないか。名高いほどでは残念ながら、ない。 [ビデオ(字幕)] 5点(2015-07-01 17:35:27) |
11. 僕は戦争花嫁
《ネタバレ》 恋が成就するまでのギクシャク(想像界)の可笑しさに比べて、結婚してからの障碍、つまり女性として登録される男存在の矛盾による宿無し状況(象徴界)には笑えない深刻なものがある。1947年以降の「赤狩り」の真っ最中でお先真っ暗であること(現実界)が影を落としているとみる。以上ラカン用語でまとめてみました。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-02-14 18:09:29) |
12. 浜辺の女(1947)
あのルノワールであり、ジョーン・ベネットであり、ロバート・ライアンである。最高の顔合わせで、雰囲気も盛り上がるのだが、スジが足りない、惜しい。フィルム・ノワールの女ジョーン・ベネットの登場で、ルノワールの「ノワール」な部分に触れることが出来るのかなと期待したが、スジ違いの期待であったらしい。 [DVD(字幕)] 6点(2012-10-01 06:38:38) |
13. ヒズ・ガール・フライデー
《ネタバレ》 字幕を追うのがたいへん。言葉だけの世界であることの「残酷さ」も売りになっていて、高所から落下した人物を見て「まだ動いている」。スクリューボールコメディの猛威。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-24 16:53:44) |
14. 晩春
《ネタバレ》 揺れる立木のショットが意味ありげに入っている。ゆったりとした、自然と人生という感じが溢れている。描き込みの多い『麦秋』に比べて簡素な構成により、小津の最高の作品となっている。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-21 10:50:28) |
15. 還って来た男
《ネタバレ》 自主上映の催しで、はるばる大阪まで足を運んだ甲斐のある映画だった。この映画にはまさに足を運びたいのであって、路上で人同士が「偶然に」出逢うことの多い映画なのである。「雨男」も居るし、道案内(これが主役の男女カップルの縁、「こっちです」との案内がきっかけ)もある。「こっちです」に観客も引っ張られるしかない。なんともほのぼのとした味の締めくくりとしてラストの石段シーンがある。ここでも「偶然に」出逢ったくだんの男女、男のプロポーズらしきものも含んだ長広舌がだらだらとあるなかで「終」マーク。この終わった感じのしない終わり方が良かった。痛快な川島、いい映画だと思う。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-02 19:45:14)《更新》 |