1. セイフ ヘイヴン
《ネタバレ》 ストーカーから逃げる話。映画脚本の教科書のような構造、並行編集。逃げる間に新たな恋愛相手を巻き込む。映画である以上どのみち2時間以内に捕まる。このストーカーはホンモノの迫力。 [DVD(字幕)] 6点(2025-05-24 07:02:20) |
2. ゴーストライター
《ネタバレ》 一番身近なところに敵が居る、というミステリーの基本はやはり欠かせない、効果的だ。ネット検索で重大な機密を知れるとは脚本甘目。とはいえ、味方がほぼ見つからない分厚い現実の壁というものを構築した佳品。CIAからの逃げ道(外部)というものはないのだ。国家が相手のたたかいはあのフィルム・ノワール『キッスで殺せ』のごとくゼッタイ無力。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-22 22:38:38) |
3. 灼熱の魂
《ネタバレ》 凄すぎて評点を付け難いくらいだが、映画館に配給されるという検閲をパスした、「市民化」・ゴラク化されたものなわけなのだ。オイディプスの悲劇の連想がこの暗鬱・苛烈な映画世界を文化的に救出している。ギリシャ悲劇はエライ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2025-05-18 13:42:53) |
4. コリーニ事件
《ネタバレ》 日本の戦後処理との比較でドイツは自らの手でも戦犯を裁いたとはよく引き合いに出されることである。だがそれも十分ではなかったという、厳密なメスが入れられたのがこの作品、というところ。法廷で、戦時の暴力が確認される時、三度ほど「シーン」となるのがこの作のクライマックスである。「シーン」が。事実は事実だ、なかったことにはできない。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-18 13:27:29) |
5. her 世界でひとつの彼女
SFではなくすでに現実に近い世界を地道に(リアルに)作品化した感じ。この映画を観てちょっとデカルトのことを考えた。AIは思考はできるが身体がないということが、まさにデカルトを批判するメルロ=ポンティの指摘する点である。AIはまだ今のところは「我思う」だけのデカルトだが、まさに身体的に(ぎこちないロボットのレヴェルではなく)「我存り」となる未来も遠いことではないだろう。 [DVD(字幕)] 6点(2025-05-15 23:08:51) |
6. メランコリア
《ネタバレ》 作品の形式はいかにもアンバランスだが、前半のニヒルなヒロインが自身の社会的体面をぶち壊す迫力や、後半の迫り来る滅亡に対処する人物たちの姿勢の逆説的な変化などにおいて、個々の表現自体は充実している。 [DVD(字幕)] 8点(2025-04-27 22:32:15) |
7. さざなみ
《ネタバレ》 日常的な平凡な些細な事柄が、深掘りするとこんな深刻な話になる。深掘りの技法こそがだから大切なのだ。昨今の映画のように、特別に突飛な「無い話」に依存したり、筋や人物の交差を殊更に複雑にしたりすることよりも。 [DVD(字幕)] 7点(2025-04-23 12:20:33) |
8. ブルックリン
《ネタバレ》 ヒロインからすればぜんぜん「ハッピー」エンドではないのを、さりげなく見せているのであって、これがリアルということなのである。一途の恋であったはずのものも、諸事情の影響を受けてブレずにはいないのである。恋愛至上主義・原理主義(?)からの抗議の声をさりげなく受け止める覚悟はできている映画だ(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2025-04-14 22:23:15) |
9. 雪の轍
主体(意識)と無意識ということだ。主体というものが無意識的に前提している自己満足の楼閣が切り崩され始める(姉や妻やその他従えている人々などによって)、という普遍的な話である。人はこういう映画を観て、自分の生が無意識的に依拠している(踏み付けている)構造を反省するのだ。教訓的なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2025-04-10 18:04:29) |
10. 街の上で
《ネタバレ》 硬派な他者性が貫かれていることが、この一見穏やかな名作の根幹をなしている。主人公が相手の言葉をすぐには受け入れずに頻繁に反復して咀嚼する間(ま)、これが実に曲者である。細かい誤解や諍いがジャズのように反発と仮初めの投合を繰り広げながら束の間のハーモニーを奏でる。 [DVD(邦画)] 9点(2024-10-06 13:39:58) |
11. ジャンゴ 繋がれざる者
《ネタバレ》 この作品の構成には媒介項が不可欠である。まずは、黒人の味方をする白人が筋を引っ張る(黒人主人公と助力白人が捜索の旅に出る)→それを、白人の体制に忠実な黒人が妨害する→とうとう主人公の黒人の大活劇。プロップの『昔話の形態学』における、説話の必勝パターンのことを考える。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-28 21:57:43) |
12. フューリー(2014)
《ネタバレ》 戦争嫌いなインテリ(観客のことでもある)を戦争に無理矢理引き入れるという構図。まだこんな反ナチが大義名分の映画作っているのだな。 [DVD(字幕)] 4点(2016-04-03 09:57:11) |
13. 大鹿村騒動記
《ネタバレ》 阪本順治のよさで、なんとなくいい感じの出来に仕上がっている、ただただなんだかいい感じの映画、そんな映画があってもいいではないか。メリハリの利いたおもしろいストーリーの展開とかなんとかそんなものこの場合必要ない。手法的に印象的なのは、突如逆サイドからのショットが効果的に入ることがしばしばであることで、それは映画である以上当たり前のことであるかのようだが、舞台ものである分、おのずとそれとの差異化をはかっているとも思える。 [DVD(邦画)] 7点(2016-02-21 19:04:49) |
14. アーティスト
《ネタバレ》 トーキー映像部分(映画内映画)をもサイレントで描くという破天荒な試みもある(トーキーに慣れ切っている状況をあらためて相対化してみるのも悪くはない)。さて突然声が出なくなるというサイレント俳優の悪夢は、サイレント映画の中ではまさに声を根こそぎ奪われた感を表出する。 [DVD(字幕)] 7点(2015-02-20 13:21:23) |
15. 愛、アムール
《ネタバレ》 ハネケ映像のそっけない痛々しさは、ドキュメンタリー調とはまた違うものだし、ましてやフィクションの画調とはまったく縁がない。「そっけない痛々しさ」は、剥き出しになった危険な状態である。 [ビデオ(字幕)] 7点(2015-01-03 21:29:36) |
16. ハンナ・アーレント
《ネタバレ》 かたやハンナ・アーレントという人が凄いのは判っている。強烈な変化球だ(「悪の凡庸さ」などとたいへん穿った知見だ)。こなた「女性映画」ムーヴメントの中心にいまも居るのであろうトロッタは、しかし、世界を変革しようとするような積極的な「主体」が、皮肉にも映画向きではないことに夙に気がついている筈である。見るジャンル(映画)にあって主体というものはことごとく客体性へと転がされざるを得ないし、転がされてこそ生きる。だからトロッタもまた自覚的に変化球で勝負すべきだろうし、そうならたとえばヘビースモーカーであるアーレントという描き方は、もっともっと生かされなくてはならない。決して、立派な演説が映画なのではない。 [映画館(字幕)] 6点(2015-01-03 15:05:46) |
17. マン・オブ・スティール
《ネタバレ》 ビル崩壊の図であからさまに、9・11の悪夢がなぞられる。断絶し敵対的であるとされる異文化との間に媒介(なんとスーパーマン)が設定される。が、この媒介がCGレヴェルの超感覚の速度・破壊力で、結局は一方的な異文化排除になってしまう。 [DVD(字幕)] 4点(2014-12-29 19:22:44) |
18. ノルウェイの森
《ネタバレ》 この原作者の浅はかさ(学園紛争を「借景」のように使うのはその一例にすぎない)にはそもそも根本的な違和感があるのだが、映画は別物だという期待があった。しかしこの映画は残念ながらただの美しい風景の写真になっている。もっと室内で内容ある話をしろと言いたい(なんと単純な要請だろう!)。 [DVD(邦画)] 3点(2014-12-07 23:48:22) |
19. キャプテン・フィリップス
《ネタバレ》 手持ちカメラで単純に写しまくった感じの撮影。望遠気味レンズで背景をとばすとか、ピント移動とか、そういうのが無いので、画像的に飽きてくる。内容的には、海賊をはなから殺すつもりのアメリカの姿勢を告発しているのかなとも思ったりする(でなければ、ひどいなこれは)。そういえば、ソマリア人側にも多少寄り添う表現がなされるが、もうちょっとソマリアの現実と向き合う姿勢がなければ、映画になんかできないだろと思う。 [DVD(字幕)] 4点(2014-06-22 19:17:13)(良:1票) |
20. ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~
《ネタバレ》 ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」、という日本語標題が、売らんかなの気持ちがわかるがもっとなんとかならんかな、原題は、単に「ゲーテ」である。主役の野放図な感じがいい。「二十歳のときに若くない者が四十歳で若いはずがあろうか」(エッカーマンとの対話)というふうに作られている。 [DVD(字幕)] 6点(2014-04-28 08:29:27) |