1. 探検隊の栄光
うーん…題材のインパクトだけ、という感じでしたねえ。どうにも面白くない。おそらく主人公は藤岡弘、をモデルにしたキャラクターなんでしょうけども、そのイメージと藤原竜也が合わない…。頑張ってはいましたが。小澤征悦も役とちぐはぐな感じはありました。作品全体の昭和感も足りなくて、当時TVであの手の番組を見ていた身としても、当時の雰囲気を全く感じられませんでした。残念。 [映画館(邦画)] 4点(2015-11-03 15:22:20) |
2. 俺物語!!
《ネタバレ》 原作漫画は未読。TVアニメは全話視聴。ただでさえ食傷気味の漫画原作映画ですが、最近TVアニメと実写版をほぼ同時に公開する例も増えていて、どうしても比較してしまいます。2人が気持ちを伝え合った後の展開は、基本的にのろけが続くだけの単調な繰り返しが多いんで、2時間弱の映画としてあそこで切ったのは正解だと思います(…の割に有名な砂とのラップキス練習を宣材に使ってるのはずるい)。各キャストも原作の雰囲気を忠実に伝えようという雰囲気は十分伝わりましたが、やはり少女漫画の非現実的なシチュエーションの数々を映像に落とし込む際に、どうしても無理矢理感があって、見てる側が気恥ずかしくなるというか(特に柔道のシーンや火事のシーンなど)。ただまあアニメの方を見ていなければ、これでも普通に面白いと感じたかもしれません。鈴木亮平はかなり猛男の雰囲気が出てましたね。坂口健太君は、ここんとこ本当に漫画原作に出ずっぱりですが、本作の砂に関しては、適役と思います。ヒロインの永野芽郁は初めて知りましたが、何か綾瀬はるかと蒼井優を足して2で割ったような顔で、見てる間ずっとそれが気になってしまいました。主題歌は…なんで槙原?TV版のTRUSTRICK(神田沙也加)の方が作品に合ってましたね [映画館(邦画)] 5点(2015-11-03 15:06:22) |
3. ギャラクシー街道
三谷監督・脚本の映画作品はほぼすべて見てきましたが、個人的には本作が最もつまらないと感じました(後でDVDを買おうと全く思わなかったのは初めてです)。長い上演時間、一度もクスリともせず…。状況的には『THE有頂天ホテル』の宇宙版。細かいシチュエーションコメディがそこかしこで発生し、部分部分を見せていく物語ですが、舞台がハンバーガーショップ店内しか無い時点で、映画向きではなく舞台演劇用の設定です。肝心の話の散らかり具合も、退屈かつ散漫で、本年公開された同様のコメディ『エイプリルフールズ』『明烏』に較べても面白くありません。妙な宇宙人ばかりということもあり、役者の個性もあまり生きていない。普段はあまり気にしませんが、あまりのテンポの悪さに、シーンのつなぎや音楽の使い方も全く心地よく感じませんでした。関わってる多くのスタッフ、誰か制作の途中で止めなかったんでしょうか、と思うほどの出来。フジテレビ製作映画の悪弊である「とりあえず豪華キャストを多めにぶち込んどきゃ数字取れるだろ」的な発想の典型的な作品になってしまったのが非常に残念。もう三谷氏にはさっさと本作は忘れて、来年の『真田丸』の方に集中してもらいたい。 [映画館(邦画)] 3点(2015-10-25 16:54:52) |
4. GAMBA ガンバと仲間たち
《ネタバレ》 とりあえず昔見た出崎版のTVシリーズの思い出はすべて封印し、完全に別作品として見るならば、これはこれでアリだとは思いました(そうは言っても思い出してしまいますが)。かつて幼児にトラウマを植え付けた宿敵ノロイの不気味さ・恐ろしさは、時代の変化とともに若干オネエ気味の野村萬斎のねっとりした演技で、前作とはまた違った怖さを具現化しており、劇場に来ていた子供たちからわき起こる悲鳴がそこかしこから聞こえました。登場キャラもストーリーも思いっきり整理し、6匹・90分でまとめたのは大英断。尺が短い割には話としては面白くまとまっています。若干ボリューム不足の感もありますが、まあでも本来子供向けの作品ですし、大人がTV版の思い出補正で文句つけるのは筋違いでしょうけどね。昨年度声優アワード主演女優賞の神田沙也加の演技は(声優学校に通っていただけあって、話題作りのタレント起用と較べれば段違いでしたが)、やはり実力派揃いのキャストの中では若干浮いてる気も。かつてのガンバである野沢雅子さん、かつてのノロイの大塚周夫さん(今年逝去)の子息の明夫さんのキャスティングは、かつてのファン向けのサービスもあるのでしょうかね。エンディング曲…何かジブリっぽいけどどっかで聞いたことあると思ったらオザケンだったとは。倍賞千恵子が歌うと全然違う歌に聞こえますな。 [映画館(邦画)] 6点(2015-10-17 17:59:04)(良:1票) |
5. バクマン。
《ネタバレ》 原作既読。アニメ版も全話見ていました。キャストが発表された際に、シュージンとサイコーは逆じゃないかという声が多数ありましたが、私もその例に漏れず。見た結果的には、このキャストもありかと思いました。この2人が高校生役ということで、原作11巻(叔父さんの墓参り)くらいまで話を進めて成長させるのかと思いきや、原作6巻の最高退院あたりまでの話で、最後まで高校生のままでした。尺が短いなりにまあまあ原作を端折ってそれなりに破綻せずにまとめたな、という印象はありますが、亜豆さんの扱いだけは…ちょっと腑に落ちない感じ。まあ20巻分の原作を2時間でハッピーエンドには持ち込みにくいでしょうが。そして原作終了して4年近く経つので、持ってるのが携帯からスマホになったり、例える漫画が「進撃の巨人」になったり、若干今風にアレンジされている一方、登場する漫画家の誰一人デジタル作業なしで今どき全員手描きなのはちょっと違和感(原作のままではありますが)。全体的にはまあまあの作品と思いますが、原作読んでない人には端折りすぎて分かりにくいかも。びっくりしたのは、女性が亜豆一人しか出てこないこと。秋人の彼女として長年支えた見吉も(当然彼女が考案した「亜城木夢叶」のペンネームもなし)、ライバルである蒼樹紅も、岩瀬愛子も、アシの加藤も全く出さず、ヒロインを紅一点に絞ったのは興行的にも思い切ったな、と。キャスティングは原作の雰囲気に似せた人を優先したようで、それぞれかなりハマっていました。スタッフロールの工夫は面白かったですね。惜しむらくは…やはり尺の短さかな。 [映画館(邦画)] 6点(2015-10-07 21:18:12) |
6. 心が叫びたがってるんだ。(2015)
《ネタバレ》 見に行く予定は無かったんですが、前日たまたま「あの花」ドラマ版をラストシーンだけ見て、「そういや新作やってたっけ」と思い出して、行ってみました。結論から言えば「まあまあ良作」という感じ。はっきり言って「あの花のスタッフが作った」という宣伝文句は(まあ興業上は当然言うべきなんでしょうが)、マイナスでしかないな、と。見え見えのストーリーながらも大泣きしてしまった「あの花」と較べることで、不必要にハードルが上がってしまいますし(実際、本作はあの花のレベルには届いてません)、見ながら全く似ていないにも関わらず、キャラの雰囲気的に、順にめんまを、拓実にじんたん/ゆきあつを、仁藤につるこのイメージをどこか当てはめてしまいたくなる(そしてそれは全く徒労というか、ちっとも似てない)ので。むしろ普通のジュブナイル映画として、『思い出のマーニー』に近いものを感じました(内向きな少女が作り出した幻想が核となる作品として)。ラストの「悲愴」と「Over the rainbow」の合唱は音楽の方が気になってしまって、歌詞が頭に入ってきませんでしたが、全体的に雰囲気・音楽・話とも悪くない出来でした。乃木坂46は…うーん、確かにあまり合ってませんね。 [映画館(邦画)] 6点(2015-09-23 10:07:07) |
7. 天空の蜂
《ネタバレ》 原作小説は未読。話はなかなか面白かったと思います。あの高度であんなアクロバティックな救助は無理だよなぁ、等とは思いつつも、手に汗握って見ました。話の山もいくつもあって、飽きないよう作られていましたが、難を言えば、登場人物が多すぎて(なまじ豪華キャストだけに)話の本線が見えづらいというか、散漫な印象も。たとえば現行犯を追い詰める刑事は、柄本明である必要があったのか(柄本氏自体の演技には全く問題ありませんが)。もっと軽いキャスティングで良いのでは。光石研や佐藤二朗あたりも役不足で、この人はこのキャストだから重要な役なんだろうと身構えて見てたら、そうでもなかったという。総花的でなく、もっと重要な役に絞ったキャストの方が、話が見えやすかった気がします。それと時節柄、題材的な宿命ですが、どうしても原発というテーマ自体が政治臭が強く、原発反対派から見れば行政や電力会社の現状・怠慢を擁護・宣伝しているようにも見え、賛成派から見ると100%の安全というありえない理想を基準点に難癖つけてるだけの青臭い主張にも見え、どちらからも批判されそうな作りとも言えます(ただこの作品はそういう社会派的な主張を訴える映画というより、純粋にパニックエンターテインメントとして楽しむべき作品と思います。むしろ両側からの圧力を排して、よくこのご時世に公開したなと。あまり深く考えてないだけかもしれませんが)。終わった後のスタッフロールで「脚本:楠野一郎」というのを見てびっくり。ラジオ放送作家時代を知ってただけに、ずいぶん重厚な話を書くなぁ、と驚きました。 [映画館(邦画)] 7点(2015-09-15 08:00:33) |
8. 映画 みんな!エスパーだよ!
《ネタバレ》 一言で言えば「なんじゃ、こりゃ?」。原作漫画は未読。一昨年のTVドラマは話題になっていたので3話から見ていました。てっきりドラマ版の続篇かと思って見に行ったのですが、そうではなくて、キャストをほぼ同じまま(美由紀のみ夏帆から池田エライザに交代)で、再び物語の最初から始まるアナザーストーリーでした。とはいえドラマ版も十分不条理な作品でしたが、今回の劇場版の展開はさらに意味不明で、もはやストーリーの体を為していません。1話の区切りのあるTV番組なら、全体の筋をそっちのけにしても、シチュエーションごとの見せ場が小綺麗にまとまっててまだ見られたのですが、映画だとメリハリが全く無く、単に演技力皆無のグラドルを集めてお色気成分をプラスしただけの、園監督のおふざけを2時間見せられた感じ(まあある程度は予想してましたが)。正直、筋だけで言えば学園祭で上映されるムービーのレベルでしたね。まあそれでもところどころ笑える場面はあったので、辛うじて4点てとこか… [映画館(邦画)] 4点(2015-09-06 12:51:42)(良:1票) |
9. 日本のいちばん長い日(2015)
《ネタバレ》 特に意識した訳でもなく、たまたま8月15日に鑑賞。同監督・同主演の「あさま山荘事件」の時にも思いましたが、全体としてドキュメントタッチにしたいのか(それにしては事実が飛び飛びで精緻でない)、それともヒューマンドラマにしたいのか(それにしては淡々としすぎて物語性が足りない)、位置づけが中途半端だと思いました。元々原作の半藤氏からして、史料を広く渉猟している点では学者にも劣りませんが、若干思い込みが激しく結論ありきの印象もある方でして、本作でも阿南陸相の自決を良く描きすぎの感はあります。ただ全体としては右にも左にも傾かず、淡々と語られています(そこがドキュメント風で中途半端さを感じる原因でもありますが)。昭和天皇の描かれ方は、ロシアの「太陽」に較べるとまだ踏み込みが足りない気もします(本人役は一瞬しか登場しない「終戦のエンペラー」の方がある意味多角的に描かれていました)が、終戦過程にさほど詳しくない方に見せる分には十分かもしれません。キャスティングは重厚で文句ありませんが、終戦工作のキーマンの1人である迫水書記官長の扱いが若干軽すぎて、鈴木首相の書生のような感じに見えてしまいました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-09-06 12:32:27) |
10. ラブライブ!The School Idol Movie
《ネタバレ》 TVシリーズは1期・2期とも一応見ていましたが、それほど熱心なファンでもなく…見に行こうかどうしようかと迷ってたくらいな私にとっては、なぜ彼女たちがスクールアイドルという形態にそこまで頑なな思いを抱いているのかが、いまいち伝わらず…(μ'sというグループ自体へのこだわりの方は分かるとしても)。むしろA-RISEの考え方の方が自然に感じます。が、この劇場版をラブライブというプロジェクトの集大成・結節点ということで考えれば、この劇場版の結論は定まったものなんでしょうね(2期終盤もそうでしたが)。ニューヨークでの話はTV終盤からの流れとはいえ、あまり必然性を感じられませんでした(あるいは単に花陽ちんの白米話やりたかっただけと違うんかい、と)。所々挟まるPVシーン・ライブシーンはなかなか良かったと思いますが。高山みなみ演ずる謎の女性シンガー(彼女は穂乃果の未来像なんでしょうか?)という幻影が要所で話を進める点が、やや唐突さを感じさせるものの、総じてファン向けコンテンツとしては、無難にまとまった出来かと思います。良くも悪くも春香と可奈の2人を軸として、他のアイドルの出番が割を食った感のある昨年のアイマス劇場版とくらべると、μ'sの方は9人それぞれ均等に出番もセリフもあった感があり、配慮されてるなぁ、と感じました。とりあえず完全にファン向けの映画なので、ラブライブをご存じ無い方には辛いかと思います。 [映画館(邦画)] 5点(2015-07-15 00:06:27) |
11. バケモノの子
《ネタバレ》 まあ、普通に面白かったです。前作(おおかみ)・前々作(サマー)よりは良かったかな、と。 あらを探せばいろいろあります。一郎彦の掘り下げ方がちと足りなかったとか、そもそもバケモノって一体何なの?とか、ラストの猪王山一家の行く末とか…説明が足りない部分はありましたが、話としてはまあまあ面白かったと思います。毎日渋谷を通ってる身としては、わざわざ渋谷を舞台にしたのは何故なのかも気になりました。ゴジラ的に大都会を破壊したい衝動だったのか、単に海外にも知られる名所にしたかったのか。バケモノ界にトレースされてるのが、大スクランブル・109前・百軒店とおぼしき附近だけだったのは残念。 声の演技ですが、役所広司は吹き替え経験もそこそこあるので安心の演技でした。大泉洋もレイトン教授の頃は聞くに堪えなかったのですが、だいぶ板についてきた感。リリー・フランキーは本人にしか聞こえませんでしたね。主人公の宮崎・染谷は…うーん。いまいちかな。広瀬すずは期待してなかった分、意外にまあまあでした。総じて、夏休み映画としては無難な出来で、見て損は無いんじゃないでしょうかね。 [映画館(邦画)] 7点(2015-07-12 21:50:14) |
12. 映画 ビリギャル
《ネタバレ》 原作未読。ここでの評判が良かったので見に行きました。何だろう。話としては全部想定できる範囲内で、展開もベタベタですし、特にサプライズもなく、何の衒いもなく、まさに王道と言える予定調和なストーリーなのに、確かに見ていて面白いし、確かに泣ける、不思議な作品だと思いました。ここまで平凡な物語を退屈せずにちゃんと見られる作品に仕上げているというのは、実話としてのバックボーン云々というよりは、何より映画作品として一シーン一シーンの作りが丁寧なんでしょうね。細かい積み重ねの総和として、全体の作品のバランスが取れていると言いますか。また役者も無理なキャスティングが無く、みな自然な感じ。有村架純も伊藤敦史も田中哲司も安田顕も…どの役者もぴったりはまっていました。そこまでずば抜けた優秀作とは言えないものの、普通に「良作」と言ってもいい出来かと。 [映画館(邦画)] 6点(2015-06-29 22:55:14) |
13. 予告犯
《ネタバレ》 悪くない。ラストの携帯動画のどんでん返しも悪くないんだけど、視聴後どうも今一すっきりしない… それはおそらく、派遣切りや外国人労働者の描き方が極端に戯画化されすぎて鼻白んだせいでも、一本調子な戸田恵梨香のイラつき芝居を延々見せられたせいでも、1つのOTPトークン頼りな犯行で警察に足が付かないってのは安易だなというストーリー的な不満でもなく。つまるところ、主人公2人(ゲイツ・吉野)の主張が極論過ぎて、いずれにも共感できず、見る側がどちらにも感情移入できないせいかも。社会の不寛容を責める割に最終的に自らの死を選んでしまうゲイツも、己の努力不足を怒り他者を徹底的に詰る吉野も極端過ぎて、それは話の構図としては分かりやすいんだけど、観客はどっちの味方もできない(肯定する気にならない)のよね…。逆にそれがこの作品の狙いかもしれませんが。生田斗真は役にはぴったりでしたが、戸田恵梨香はちょっと合わなかったかな…。年上の部下の刑事に威張り散らしてるだけのように見えてしまいました。想像してたよりも遙かに豪華なキャストでビックリしましたが、それよりもキャストロールの大トリが荒川良々だったことの方がもっと驚きました。 [映画館(邦画)] 6点(2015-06-08 00:06:53) |
14. 明烏 あけがらす
《ネタバレ》 まあまあ面白かったんですが…ギャグが少々くどすぎて「ここで笑え」と指示されてるようで、今一入り込みにくかったかも。まあ福田作品らしいといえばらしいか。福田組おなじみのムロツヨシ・佐藤二朗の大量のアドリブを含む仕草は安定の面白さでしたが。ほとんどすべての場面がホストクラブの事務室内だけで展開するため、映画よりも、どちらかといえば舞台演劇向きの話だなぁと思いながら見ていました。突如現れた吉岡里帆が最後に新オーナーとして再登場するのは、容易に想像できて意外性は無いものの、まあシチュエーションコメディのような作品なので、筋に文句をつけても仕方ないかな。初っ端から落語の「芝浜」みたいな話だなぁと思ってたら、サゲのセリフがそのまんまでしたね(そういや新宿末廣亭のすぐ近くのバルト9で見てました)。余談ですが10年前「逆境ナイン」で組んだ羽住・福田両監督が同時期に、同じ役者(菅田将暉)を使って「暗殺教室」「明烏」をそれぞれ公開してるのは、ちょっと面白いと思いました。5.5点と言いたいとこですが、四捨五入で6点。 [映画館(邦画)] 6点(2015-05-16 22:23:58)(良:1票) |
15. 百日紅 ~Miss HOKUSAI~
《ネタバレ》 原作未読。こういう、一本を貫くストーリーが無い作品は、評価に困るところです。なるほど映像や環境音(特に橋を廻る生活音)など江戸情緒を感じさせる仕掛けは多く、亡き杉浦日向子女史の豊富な江戸知識に裏打ちされた当時の風俗や生粋の江戸弁によるやりとりは、見ていて心地いいと思います。が、それをアニメでやる意義は今一消化できず…話題作りのために俳優の声を使うくらいなら、いっそ初めから実写映画でも良かったのではと思ってしまいます。辛口になりますが、杏・松重豊・濱田岳の声優ぶりは、正直及第点には達してなかったかと。演技自体は悪くありませんが、それが絵に乗りきってないため北斎・お栄・善次郎ではなく杏・松重・濱田にしか聞こえない。せっかくアニメの人物が話していても、背後の3人の俳優の顔ばかりちらつきました。高良健吾ら他の役者は言うに及ばず。 筋ですが、盲目の妹の看病と死、という事件はあるものの、それは主題ではなく、北斎・娘・弟子の3人の日常を描く、まさに「日常系アニメ」で、史実の北斎と応為の生涯をたどる訳でもなく、家族の絆や人物の成長を描くでもなく、ストーリーはあって無いようなもの。それだけにラストの「その後の人生」の説明は蛇足と思いました(日常のまま何気なく終わってもいいのでは)。小気味いい江戸弁は全体的につつっと耳に入ってきましたが、「○○みたく」「勉強になるから」「来れたじゃねえか」など今っぽい言い回しも二三あり…江戸通の杉浦さんが間違えるとは思えないので、脚本か役者の勇み足なんでしょうか?若干引っかかりました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-05-14 22:54:29) |
16. 龍三と七人の子分たち
《ネタバレ》 なかなかどうして、何も考えずに見て、笑って楽しめる映画になっていると思います。劇場でもかなり笑いが起きていました。まあストーリー的には、かつてヤクザだった老人たちが再び集って若い半グレ集団に戦いを挑むという、何の衒いもない予告篇通りの筋なのですが、こまめに笑えるポイントが仕込んであります。老人たちの言動や耄碌具合も、いささか大げさでわざとらしい感じですが、ギャグ映画として見れば許容範囲でしょう。難しい背景も複雑な構図もなく単純に楽しめる映画。老人役俳優たちも役に合っていましたし、まだまだ元気。今後も頑張ってほしいです。6点と7点で迷いましたが…思い切って7点! [映画館(邦画)] 7点(2015-05-04 00:44:28) |
17. THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦
《ネタバレ》 かつてアニメ版パトレイバーに熱中していた者として。今回の長篇だけでなく、短篇12話もすべて劇場で見ましたが、やっぱり押井監督はパトレイバーそのものが好きじゃないんだろうなぁ、と感じます。往年のファンへのサービスのつもりか、過去作の台詞をそのまま持ってくるシーンも多く、かつてのパトの雰囲気を感じられなくもないですが、時代が進んでしまったこととアニメでなく実写化によるリアルな質感によって、かつて我々が夢中だったパトレイバーのノリが、むしろ気恥ずかしさを生起させてしまっているような感じで。それでも押井脚本でない回はまあまあ面白いものもあったのですが、第5/6話の怪獣騒ぎや、第12話からつながる今回の劇場版を見ると、「押井さん…まーだ、こんなことやりたいの?」という、いささか食傷気味の感想しか抱けません…。歴代作品の中でも「最もレイバーが登場しない」とも言われるMovie2(1993年)の正統な?続篇ともいうべき、今回の首都決戦。やってること自体はあまり変わらず、前作で荒川が後藤に延々と語った青臭い「平和論」を今回は高畑が後藤田に語り続けます。でも22年の間に世の中はおそらく押井監督の想像以上に進んでしまっていて(なんせその22年の間にEVAも踊る大捜査線も、2つの大震災さえもすっぽり入ってしまいます)、正直その語りは古臭いし鼻につく感じです。サービスで声だけ登場した南雲さんも、あまり必然性を感じられず…この作品なら後藤さんは無理に出さなかったのは正解ですね(正直今回のテーマなら、南雲と柘植よりも、世界線が異なるものの、後藤と甲斐冽輝の方を掘り下げて欲しかった感も)。長くなってしまいましたが、今回の犯人(灰原)の動機も結局うやむやだし、テロで大騒ぎした割に解決もなく終わるんでカタルシスも不足…つまらなくは無いけれど、非常に残念な作品と思いました。 [映画館(邦画)] 5点(2015-05-04 00:41:19) |
18. 映画 暗殺教室
《ネタバレ》 原作漫画は未読。TVアニメの方は先月放映分の11話(イトナ転入)まで視聴済の状態で見に行きました。アニメがまあまあ面白かったのと、ここでの評判が良かったので見に行きました。かなり端折っていた前半は、どうにもテンポがイマイチな上、若手俳優たちの演技や知英の台詞が心許なくて「うーん…どうなんだろ、これ」という感じでしたが、クライマックスの殺せんせー大暗殺大会、イトナとの格闘に入ってからは、俄然テンポが良くなって面白くなった気がします。最終的には帳尻を合わせてきた感じがして、さすが漫画の実写化に定評のある羽住監督と思いました(ノリとしては『逆境ナイン』に近かった…かも?)。原作も読んでみたくなりました。何より感心したのは二宮君の声の演技ですね。アニメ版の福山潤に遜色ない怪演です。「to be continued…」は本当なんでしょうかね。どうせなら生徒役の面々が「中三」に見えるうちに撮って欲しいものですが。 [映画館(邦画)] 6点(2015-04-18 17:10:16) |
19. ソロモンの偽証 後篇・裁判
《ネタバレ》 原作未読。総じて、この映画は何をやりたかったのか、よく分かりませんでした。中学生の純粋な正義感か、逆転相次ぐ法廷ミステリーか、大人の欺瞞を暴くことか、若者の群像ドラマか…残念ながら後篇を見た限り、いずれの方向性も中途半端に見えました。法廷ものの醍醐味というのは、新たな証拠・証言・証人の登場によって、それまでの推論が二転三転していくことの面白さにあると思うのですが、この作品の場合、裁判前日までの会話で、観客にはほぼ真相が分かってしまうため、法廷シーンそのものには「大人の裁判劇を中学生がリアルに真似してる」以上の感想がありません。ではそれ以外の要素が重要なのかというと、肝心の神原君の正義感がどうにも後付け過ぎて理解できません。これだけの人数の生徒や大人を振り回して、自分の悔恨を滔々と述べ、ひたすら被虐を望む…その場で断片情報だけ得ていた傍聴者ならともかく、事件を一部始終を見ていた観客としては、中学生男子の自己満足につきあわされた疲労感が残りました。 [映画館(邦画)] 4点(2015-04-18 16:34:38) |
20. ソロモンの偽証 前篇・事件
《ネタバレ》 原作未読。レビューは後篇見終わってから書こうかと放置してましたが、後篇見たので改めて。大人の配役がかなり豪華なのにくらべて、子役の方は事件に関連する人数も多いため、なかなか覚えにくいかと思いましたが、それぞれのシーンでそれぞれの特徴が出ており、この手の話にしては覚えられました。いい子役集めましたね。とはいえ、やはり登場人物が多すぎます。それにやはり前半・後半に分けたせいか、全体的に冗長ではあります。各生徒の家にもそれぞれ家族がいて、それぞれドラマがある…のは分かりますが、いちいち全部見せなくても。ただ話全体として、後半の裁判シーンを盛り上げようとしているのは分かりました。(その期待は後半である程度裏切られてしまいますが…) [映画館(邦画)] 5点(2015-04-18 16:32:19) |