1. グラン・トリノ
男イーストウッドの俳優人生の集大成とでもいうべき遺言的傑作で、老境を迎えた頑固親父の人生の締めくくり方を、ユーモアと、皮肉と、カッコよさと、残酷さと、激しさと、温かさと、美しさと、悲しさと、過去と、現在と、未来を織り交ぜながら描き出しており、男が決断した死にざまの美学と、若者に残した人生の指標には、もう男泣きに泣き崩れてしもうた!これぞまさに男の生きる道!! [ブルーレイ(字幕)] 10点(2011-12-22 10:20:09) |
2. 月に囚われた男
映像面や細かなガジェットなど表面的なセンスはそれなりに感じさせんねんけど、いまいち芯がないっちゅうのが正直な感想で、なんか奇抜そうに見せかけてはいるんやけど、そのじつ中身はめっちゃ保守的でおもしろみのないありきたりなものやったし、後半の展開には少々納得でけへんところも多々見られて、とくにラストのオチは完全に不要。デヴィッド・ボウイの息子っちゅうことで過度の期待をしすぎたんかなぁ……。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2011-12-22 10:13:25) |
3. 闇の列車、光の旅
途上国の貧困層における悲惨な現実とかすかな希望を描いた意味のある小品やったとは思うねんけど、途中から愛の逃避行のような展開にしてもうてたんはおいら的には失敗で、全体通してとにかく脚本が弱いと感じたし、主人公ふたりの行動にもどうにもうなずけないところが多々見られた。淡々とした列車の旅と、容赦のないバイオレンス描写はよかったんやけどねぇ……。 [DVD(字幕)] 5点(2011-12-22 10:07:25)(良:1票) |
4. フローズン・リバー
日本以上に厳しいアメリカにおける貧困層の実情や、そんな彼らのささやかだけど切実な夢、そのために手を染めてしまう犯罪行為、子供への大きな愛情、女の友情など、自分と家族のために必死に生き抜こうとする女のドラマを、さまざまな格差を軸に静かでせつなくも力強く描いとったんやけど、ちょっと地味すぎるんちゃうかなぁっちゅうのが正直な感想で、社会性はあるんやけどエンタメ性が薄かった。もうちょいサプライズがあったらなぁ……。 [DVD(字幕)] 5点(2011-12-19 21:10:30)(良:1票) |
5. ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
いわゆるおバカムービーとしてはほぼ文句のない仕上がりで、誰もが多少の覚えはあるであろう羽目をはずしすぎたことによるとんでもない醜態を、映画的にカリカチュアライズして最高に下品で情けなく描き出してくれとったし、意外と脚本がしっかりしとったのも高評価で、暇つぶし映画としてはホンマにほぼ完璧な内容。根底にあんのは男同士の友情であるっちゅうところもええしね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2011-12-19 21:00:46) |
6. 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
《ネタバレ》 男同士の熱い友情、食事シーン、芸術的なまでの照明と撮影技術、激烈なる銃撃戦、バイオレンス描写など、いつもどおりのジョニー・トー印にはおおいに楽しませてもらったんやけど、海外資本が入っているせいかどっか無難な仕上がりで、『エグザイル/絆』のようなとことんまで突き抜けた感じがあらへんかったし、アンソニー・ウォンたちジョニー・トー組があっさりと死んでしまってからの盛り上がりもいまいち。主人公の記憶障害っちゅう設定もちょっと活きとらんかったしなぁ……。 [DVD(字幕)] 6点(2011-12-19 20:58:08) |
7. ゾンビランド
ゾンビに支配された週末的世界観のなかで、他者の存在、コミュニケーションの回復、疑似家族の形成っちゅう人間間における問題に焦点をあてた作品で、ダニー・ボイル監督による『28日後…』に似通ったところがあんねんけど、同じようなテーマを超絶ハイテンションによって描き出したバカバカしいノリがよかったし、残酷描写のえげつなさもゾンビ映画としてはグッド。しかしビル・マーレイのカメオ出演にはびっくりやったなぁ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-12-18 17:21:35) |
8. (500)日のサマー
あんまなかったリアルな男子の失恋映画で、いまだに恋に恋しとるような青年の目から見た女子の不可解さと魅力をじつにリアルに描き出しとったし、彼女に振り回されることによって実体験としての恋愛、失恋を経て成長する男子の通過儀礼ドラマともいえる。そして直線ではなく断片的な構成、スプリットスクリーン、ミュージカルとアニメーションの挿入など、演出的にもポップなセンスが光っとってんけど、基本的にはあんま趣味やないかな。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2011-12-18 17:19:24) |
9. バッド・ルーテナント
オリジナルの宗教くささが抜けたぶんグッとエンタメ性やブラックジョーク感が増しており、人間のダメさ加減を哀れみながら愛するっちゅう、狂気と愛と普遍性が入り混じった快作っちゅうか好編へと仕上がっとったし、主役のアンチヒーローを嬉々として演じとるニコラス・ケイジのハマり具合も抜群で、彼にとっては久々のあたり役。おいらの趣味的にはオリジナルよりもこっちに軍配が上がりますねぇ。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-18 16:51:58)(良:1票) |
10. インビクタス/負けざる者たち
アパルトヘイト撤廃直後の南アフリカにおける人種的対立、緊張関係、そして和解を、どちらに寄ることもなく公平かつ真摯に描き出したイーストウッドさすがの横綱相撲で、とくにラストの決勝戦の迫力とスリリングさは凡百の監督では永遠に出せんであろうダイナミックさ。しかしイーストウッド特有の毒やブラックさがほとんど感じられず、近年の彼の監督作のなかではインパクトは薄め。よくも悪くも普通にいい映画やったって感じかな。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 16:47:37) |
11. ぼくのエリ 200歳の少女
北欧の寒々とした美しくも寂しい雪景色をバックに、孤独な少年と少女(?)の生きるための選択を描いた作品で、甘酸っぱい初恋的要素を含みながらも、ここで描かれとるのは生きることのつらさと厳しさっちゅう紛れもない現実であり、そんななかで互いに寄りそってなんとしてでも生き残っていくことを決断したふたりの姿は、正直どっか哀れですらあった。結局は他者を犠牲にしなければ生きていけないという、悲しい現実やよねぇ……。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-18 16:45:09) |
12. ハート・ロッカー
パンチドランカーならぬ戦争ドランカーを描いた作品で、戦場っちゅう過酷な状況に長期間さらされた結果、人間に芽生える両極端な感情を非常に冷静に描き出しとったし、ドキュメンタリータッチの臨場感あふれる戦場描写も秀逸で、とくに視線の扱い方がめっちゃうまかった。しかしこういう撮り方はデ・パルマが『リダクテッド 真実の価値』ですでにやってもうてるので、ちょい二番煎じ的な印象はぬぐえんかなぁ……。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-12-18 16:42:04) |
13. 瞳の奥の秘密
サスペンスを軸としながら人間ドラマ、ラブストーリー、コメディ、アクション、社会的メッセージなども内包して見事にまとめあげた極上のエンターテインメントで、過去と現在を複雑に行き来する構成や、二転三転するスリリングな展開がホンマにすばらしかったし、最終的なオチのなんともいえん衝撃は強烈やったんやけど、そのあとのエピローグが見事にそれを救ってくれとった。しかし中盤の追跡劇のワンシーンワンカットの長回しにはおいさん感動してもうたなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:30:05) |
14. 第9地区
アパルトヘイトのメタファーとしてエイリアンを使うのはややベタやねんけど、フェイクドキュメンタリー的な手法や細かな設定、エイリアンの生活形態などによって見事なリアリティを付与しとったし、主人公が生体実験をされ出したあたりからいっきに映画が加速し、エイリアン、政府軍、そして地元ギャングによる三つ巴の血みどろ合戦のカオス状態なんて圧巻で、夢見る男子のハートはもはや灼熱状態。唯一いらんかったのはラストのカットかな。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2011-12-18 16:27:20) |
15. 白いリボン
上から下へと流れていく抑圧の連鎖っちゅうか、それによって村全体を覆っていく不穏な空気や不安、恐怖、憎悪、嫉妬、猜疑心、そして形成されていくナチズムの萌芽を静かで不気味で美しいモノクロ映像によって映し出しており、なんちゅうかこのいかがわしさは只事ではなかったし、謎を謎として解決しないまま放置している物語もまさにハネケの本領発揮。ホンマもうロクデモナイ人間しか出てけーへんねんなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:24:56) |
16. 息もできない
劣悪な家庭環境から発生していくどうしょうもない暴力の連鎖と、それでも他者のぬくもりを求める悲しい人間の性を、遠近を巧みに使い分けたカメラワークによって鋭く切り取っとり、そこで描かれる暴力描写の痛さと哀れさは半端やなかったし、後半はやや予想どおりで国民性である粘着系のしつこさが出て失速してもうたんやけど、暴力が生み出していくどうしょうもない現実っちゅうもんをいやおうなしに突きつけてくれとった。 [DVD(字幕)] 8点(2011-12-18 16:22:12) |
17. 私の頭の中の消しゴム
忘れていく苦しさと、忘れられていく悲しさちゅう、若年性アルツハイマーを扱ったテーマはまあまあよかったんやけど、後半の悲劇を際立たせるために重要な前半のラブストーリー部分があまりにベタクサでひいてしもたし、中盤からの展開も正直キレイゴトのオンパレード。彼女が夫に対して宛てた別れの手紙にはさすがにウルッときてしもたんやけど、同じ韓国製の難病純愛ものである『八月のクリスマス』のようにもうちっと上品に描けんもんかねぇ……。 [DVD(字幕)] 4点(2011-12-18 15:58:09) |
18. 笑う蛙
展開的にはちょっとベタな感じもすんねんけども、淡々とした進行がけっこういい間を演出しとったし、のぞき見的視線によるエロティシズムや、人のアホさ加減を浮き彫りにするという狙いも成功。そして大塚寧々のなんとも気の抜けた、それでいてどっか妖艶な演技はめっちゃハマってて、ラストの一言もネタバレはしてんねんけどオチとしてそないに悪いもんではなく、全体的にパンチはないねんけどぼちぼち良質な作品へと仕上がっておましたね。 [地上波(邦画)] 5点(2011-12-18 15:53:29) |