1. 永遠の0
《ネタバレ》 大ベストセラーの原作小説は600ページ弱の長編ながら、読み手をグイグイと引き込む魅力的な作品であり、最後の数十ページは活字が滲んで見えてしまう程に感動を誘う。筋立ての素晴らしさもさることながら、宮部のかつての戦友だった老人達の口から語られる闘いの場面も、数ある戦記物に記された内容と相違なく、ミステリー仕立てでありながら大東亜戦争の史実をも知る、という二重の意味で素晴らしい作品となっている。この長編小説を約2時間20分の映画作品として仕立てる場合、どの場面を削るかではなく、どの場面を選り抜くかという難しい作業になる事は想像に難くなく、その手の映像作品は骨抜きになった駄作になる確率が高い。実際に多くの場面が省略されているし、改編された部分もあるが、尺に制限のある映画化作品としては秀逸だと感じた。CGも邦画としては十分なレベルにあったし、空母赤城の勇姿も実に素晴らしい。ただ、登場する空母は赤城一隻だけであり、加賀、蒼龍、飛龍、等を含めた空母機動部隊の映像が見たかった、というのは少し贅沢だろうか。日清・日露とは違い、先の大戦である大東亜戦争は敗北に終わった。それが故、ゼロ戦や連合艦隊、戦艦大和等を題材とした映画作品は戦後に植え付けられた自虐史観によって「日本は侵略戦争をした悪である」「絶対に戦争はいけない」という誤ったテーマが物語を覆ってしまい、思想的に偏ったものとなってしまうケースが殆どだろう。そんな中、本作品は左にも右にも寄らず、極めてニュートラルな視線で語られている。現在の豊かに繁栄した日本を我々は当たり前だと思いがちだが、今の世はかつて国を守る為、家族や両親を守る為に戦い、散華していった英霊達が夢見た未来であることを忘れてはならない。中国は爆発的な軍拡を背景に尖閣諸島や沖縄を虎視眈々と狙っており、可能な限り戦争を避けるためには軍事力の均衡を保ち、侵略を阻止する事でしか平和を守る事は出来ない。この映画作品を多くの人が鑑賞し、守るべきものは何か、なすべき事は何かに気づくことを願う。 [映画館(邦画)] 9点(2013-12-26 22:03:21) |