1. 牛泥棒
《ネタバレ》 傑作ですね。テーマは「冤罪」、裏テーマは「法(良心)」でしょうか。現代日本でも往々に起こりうる冤罪というテーマを通し、良心を説く。 ラストシーンの手紙の「法こそは良心なんだ」。深いですね。捉え方によってはそんなわけない、ともなりそうです。「法こそは良心」つまり「良心こそは法」であると。手紙の「法」を「良心」に読み替えるとすっきりします。「法(=良心)とは正義のすべて、そして善悪のすべてだ」「人々が良心(=法)を持たないと文明は成立しない」。なるほどその通りだなと。この場合の「法」は法律とかの成文法のことではなく社会一般のルールのことですね。 また、冤罪にされた男が手紙に記した、自分に私刑を施した連中に対しての「彼らは善い人だ。あおられていたんだ。彼らが可哀想だ」という一文。一番の良心を持っていたのは、良心に従わない者たちによって私刑に処された彼だったと。なんというか、グッとくるものがあります。 本作は登場人物が多く上映時間も短いですが、それぞれきっちりとキャラが立っており、会話劇の面白さがより際立ちます。 なおDVDでの視聴ですが、パッケージ裏のあらすじは開幕からほぼ閉幕までの完全なるネタバレでした。笑 [DVD(字幕)] 8点(2015-07-02 22:57:25) |
2. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 あらすじを見た段階での予想:主人公はお人好し。周りの全員はそれ故に主人公を好きでもあるが、ここ一番って時に自分優先でそれを利用しようともする。ついに心が折れた主人公は自殺を図るが、天使が現れる。天使の力で、主人公は死んだものと見せかけつつ幽体離脱的なことが可能となる。天使となり客観的に自分が死んだ後の世界を見た主人公は、本当は自分は愛されていたんだということを知る。天使の力で一度だけ生き返り、大団円。 実際:何もかも上手くいかない主人公がいっそ死んじまえ!となるが、天使の力で自分がこの世に生まれてない世界を見せてもらい、結果、あ、自分なんかでも生きる価値あるんだ、と思い直し、心を入れ替えて大団円。 要は、期待した内容とは全く違ったということですね。笑 ファンタジーはファンタジーなんですが、天使要素は割合的にかなり少なく、リアルな人生描写がほとんどです。夢があるのに周囲のしがらみがそれを追うことを許さない。その鬱憤を抱えたまま家族を持ち、いよいよ引き返せないって時にその「現実」のほうも絶望的な状況になる。俺の人生は何だったんだ!という感情、しかも自分が死ねば他人は幸せになるのではという状況がプラスされて、ついには自殺を図る。いやーリアル、リアルです。まさに現代日本じゃないのかこれはと。しかしそれ故に、「その程度で死ぬな」「もっと辛い人間は大勢いる」という発想が頭の隅に浮かび、どうにも共感しづらいまま後半に突入。 しかしそれでも、後半のさらに後半、最後の最後の怒涛の恩返し幸せラッシュでうるっときてしまった。今までの人生の不幸をその一瞬で帳消しにしてしまうほどの他人からの暖かさ。これがあるから、素晴らしき哉、人生、ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2015-06-27 03:58:28) |
3. カサブランカ
《ネタバレ》 恥ずかしながら今更初見。いやーうん、素晴らしいですね。タイトルは嫌というほど聞いたことがあり、恋愛ものということも知っていました。そしてこの年代の作品なので、まあ今でいうベタで王道、先読みが効いてしまう系の作品なんだろうなーと思っていたら、そうではなかった。 メインテーマは恋愛なんだろうけどそれと同じくらい時代背景がかなり強く出ている作品だった。「恋愛もの」というより「第二次世界大戦下の恋愛もの」です。いわゆる名作で未見のものは前情報無しに見ることにしていますが、見終わった後気になったのが製作国。で、本サイトでアメリカ作品と知って「あ、やっぱりね」という感じ笑。みなまで言わないまでも、そんな作品でもありました。 さて内容に関して、「納得いくか」と言ったら納得できない点はやはりある。焦点はズレますが、最も納得できなかったのは「情」によってルーレットで当たりを引かせるシーン。気持ちはわかるけど、オーナーとして特定の客に意図的に利益をもたらす行為は(事前に賄賂を受けたとかいう個対個の事情を除いて)絶対にやっちゃいけないことだと思います。客にもそれぞれ、遊び目的で捨て金でやってる客、ちょっと腕に覚えがある客、そして素人ながら人生を賭けている客と様々です。過去の経緯はともかく、それらは実力が同じなら確率的に平等に扱われなければならない、それがいわゆるギャンブルの大前提だと思います。この場合の確率はもちろん「ディーラーは意図的に特定の目に振れる」ことを前提とした確率です。ディーラーの腕、イカサマの可能性、そして自分の腕、それら全てを総合してなおかつトータルプラスにすることこそが実力だと思います。 ・・・逸れましたが、結局、「納得いくか」の減点を超える面白さが本作にはありました。恋愛ものの十八番である心理描写の深さもやはり良く、男女の考え方の違いや立場の違い、「この立場だったらこう考える」の表現が絶妙でした。そこに友達、商売仲間、恋人、というどっちかというと「個」主体の関係だけでなく、戦争、国という「全体」主体の関係が見事にそれぞれのキャラクターに集約されて、誰が出てきても飽きさせないし、どのシーンをとっても魅入らされる作品になっていると感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2015-05-13 00:33:44) |
4. カリフォルニア
《ネタバレ》 面白いですね。特に台詞回しが良い。お互いの煽り合い含む1対1での小気味良い言葉の応酬がそのまま面白い。オシャレな台詞あり、遠まわしの嫌味あり、ちょっとした笑いあり。中でもファビアンのおっちゃんの「男は危険に身を隠さない」という台詞、しれっと言っちゃってますがかなりカッコ良いです。危険に身を隠さないことが正しいかどうかはどうでもよく、西部劇の主人公達は確かに皆危険に身を隠してないですもんね。また、この作品のポイントである怖さに打ち勝つという点とも一致していて二重に美味しい。本作の登場人物達はそれぞれに過去の恐怖と戦っていますが、最後まで打ち勝てなかったのは悪玉だけです。 展開的には幌馬車隊、カリフォルニアの金、汚い奴らに牛耳られた町、強権力vs民衆、強気の女との恋愛、カリフォルニア独立か合衆国参入か、と小さなものから大きなものまでありがち含め様々な要素があり、前段の台詞の面白さと相まって飽きさせません。むしろ97分の中で綺麗にまとまっていると思います。主人公は当然の如く合衆国参入派、最後は銃で決着とかは様式美。好きな作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2014-12-21 07:15:23) |
5. コロラド
《ネタバレ》 面白いですね。感情vsシステムという構図は大好物。ただ本作の場合それはあくまで表面で、問題の真の原因は人間の中身そのもの。「戦争によって性格が変えられた」よりもむしろ「戦争はその人の本質を剥き出しにする」の方がしっくりきます。戦争によって皆が皆デヴァローのような殺人に快感を覚えるような人間なるわけはないですからね。むしろデヴァローの場合戦争を言い訳にしてる感さえある。デヴァローとデルは友人であり、戦友であり、恋のライバルでもある・・・その辺の描きと鉱山の所有権を巡る強権力と法vs民衆と感情の構図の絡め方が見事。最後のまとめは結局主要人物が死んで大団円かよってつっこみを入れたいのは山々ですが、なんかもうその辺はパターンですね。過程良ければ全て良し? あと見終わってから気づきましたが、アクションがほとんどなかった。それほど中身にのめり込めたということだし、人間ドラマで魅せるこういう作品こそ西部劇!ということで、全く問題なしですね。 [DVD(字幕)] 8点(2014-07-09 07:26:02) |
6. アパッチ族の最後
《ネタバレ》 サム・ウッド監督の遺作。「アパッチ族の最後」という邦題から「ジェロニモ」的な作品かと思いきや、全くそんなことはなかった。軍とアパッチ族との交戦よりもむしろ軍内部での人間関係がメインでしょう。それくらい人間関係の描写に力が入れられています。三角関係はまあド定番中のド定番ですが、本作はその三角形が二つある点が面白い。キンズマン―アン―ロリソンの三角形がひとつとライナス―マーサ―トムの三角形がひとつ。そこに軍内部での上下関係やキンズマン・ライナス・トムの関係が加わって単純にそれぞれのやりとりを見ているだけで楽しめます。終盤までそのやりとりを楽しんだ後にようやくアパッチとの交戦に入りますが、こちらはこちらで緊張感があって良い味出してます。ロリソン大尉とアパッチのディアブリトのシーンなんか(今でいうフラグは立っているといえど)、どうなる!?と見入らされました。最後の最後のまとめは若干腑に落ちない感もありますが、それまでの中身で充分楽しめたので問題なしです。 [DVD(字幕)] 7点(2014-05-31 00:16:55) |
7. 西部の男
《ネタバレ》 判事としてやってることは酷過ぎるのにリリーには首ったけ、そんなロイ・ビーンのキャラが良すぎますね~。いやほんとやってることは酷過ぎる(2回目)のに嫌いになれないのはなぜだろう。最後とかもなんとかリリーに会わせてあげて!と応援したくなるレベル。ポスターを撃ったから死刑にしたとかリリーの髪をゲットするために牛を引かせるとかほんっとやってることは酷過ぎる(3回目)のに・・・。リリー一筋なのがこのじいちゃんだからってのはあるのかな。イケメンガンマンが一人の女のために・・・ってのだったらここまで応援したくはなってないような気がしますね笑 [DVD(字幕)] 8点(2014-04-29 23:24:18) |
8. 腰抜け二挺拳銃
《ネタバレ》 く、くだらん(笑)もちろん良い意味で。何も考えず頭カラッポにして見て良い系西部劇でしょう。最初の数分こそシリアスですが、ペインレスが登場してからはコメディ全開。というよりペインレス以外の皆さんは真面目でペインレスのみがふざけている。いや、本人としては真面目にやってるのか・・・w 笑ったのは指輪を神父にはめるとこと馬車を出発させようとして吹っ飛ぶところの2点。ただ吹っ飛ぶところは2回目以降は蛇足な気がしますね~。1回で良かった。それにしてもセルフ引きまわしになるあの画は面白すぎた。 全体的にテンポは良かったのですが、冒頭の歯医者のくだりと最後のインディアンのくだりが若干テンポ殺しだったような気がします。 [DVD(字幕)] 6点(2014-03-10 19:36:50) |
9. 拳銃の町
ミステリー色がかなり強い西部劇。事件が起こり謎解きをし、最後に種明かしが入って全てが一本の線に繋がるという、まさにミステリー小説を映像で観ているという感じの西部劇でした。メインの見どころは当然ストーリーですが、そこに女性関係という変数が絡み主人公にとって重要な働きをするというのはいつも通り。駅馬車で爆走や酒場シーン、銃要素も当然ありますが、それらを期待して観るというよりはストーリーを楽しみたいという人向けの作品かと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2014-01-17 19:15:51) |
10. 拳銃無宿(1947)
《ネタバレ》 8割まったりシーンな西部劇。銃の撃たなさでいえば9割5分平和。こういうキャラのジョン・ウェインは初めて観ましたが、こちらの方が好みまである。作品の流れとしてはベタですが、ベタなの好きです。 この映画を貫くテーマはなんといってもトーマス家の教えである暴力の否定、隣人を愛せの心・・・なんですかね?名の通った無法者のウェインがトーマス家で生活を共にするにつれ人の暖かさや銃を持たない暮らしの良さに気付いていく。水を通したことで人から感謝されたり、それによって人の輪が広がったり、それによって教会で聖書をもらったり・・・。お馴染みの一目惚れ恋愛も当然大きな意味を持っていますが、私はそれよりもあったか系シーンの方が好きでした。 また、こんなの俺じゃねえ!といわんばかりに飛び出すも結局銃を使わず女にものめり込めない揺れる描写も良かった。というか、そういうキャラをジョン・ウェインが演じてるというのが良かった。 ただひとつ、最後のシーンがあれじゃペニーとの愛がこの作品のメインテーマになってしまうのでは・・・いやそれで全然良いんだけど、前半の暖かい生活に触れるシーンの意味が単に「農夫の暮らしもいいなぁ」になっちゃうのでは・・・。ペニーが生きてるとわかったから銃を渡すのではなく、ペニーが生きてなくても「責任は自分にある」「暴力の否定」の教えを思い出し、銃を抜かないとかのほうが納得できた(というかそのほうが自分の好み)気がしました。 あ、でもペニーを見たから復讐心が消え、大切なものを思い出したっていうのも綺麗ですね・・・うーむ・・・ [DVD(字幕)] 7点(2014-01-15 00:53:39) |
11. 赤い河
《ネタバレ》 これほどカラーで観てみたくなったモノクロ作品は初めて。景色の雄大さもさることながら、なんといっても1万頭の牛!ただ集まってるだけでも壮観なのに、走り出した時の迫力といったら・・・。「牛の大移動」とだけ聞くとシンプルな響きですが、それがいかに大変か改めてわかりました。牛って意外と足速い&繊細なんですね。 この映画は牛を連れて仲間と移動するというアドベンチャー要素だけでなく、人間ドラマ要素もかなり強かった。長い旅の中で単発系の問題が発生するのと並行して溜まっていく鬱憤、旅立ちの前のウェインや暗闇や霧などで示す恐怖と不安、頑固男と優しい男の対比、頑固それ故の過去の後悔と現在の息子、ブレスレットと烙印等々、描き方が見事でした。 [DVD(字幕)] 7点(2014-01-09 00:14:20) |
12. 黄色いリボン
《ネタバレ》 「騎兵隊三部作」の二作目。個人的には前作より好みでした。 退役まであと数日の大尉(ジョン・ウェイン)のお話で、任務のために部隊を率いて遠征したりもしますが、やはりメインは人間ドラマでしょう。遠征の際部隊が危機に陥るようなような激しい戦闘は描かれず、直接の戦闘での死者などが出ない点にもそれが表わされています。 中尉・少尉・女性の三角関係を見守るある意味親ポジションのジョン・ウェインやお馴染みの馬で荒野を駆けるシーン、そしてBGMが良かったです。 [DVD(字幕)] 4点(2014-01-06 20:44:45)(良:1票) |
13. アパッチ砦
《ネタバレ》 恋愛シーンでのやりとり、コメディ要素、そして軍の規律など、とにかく自分の感覚には合わない作品だった。 中佐は最初から最後まで一貫して自分の考えを曲げず、完全に戦況不利な状況で自分の命が助かる最後の救いの手も取らない。最期まで「臆病者」にならず、軍人として名誉ある死に方をした英雄である・・・と、言いたいことはわかるのですが、感覚が違いすぎて共感ができませんでした。そこに至る過程の部隊の面々とのやりとりもそうですが、どうしても合理性に欠けているように思えてしまいます。こうこうこういう理由でこう、故にこうする、というのならまだわかるのですが・・・ また、個人的にフィルに全く魅力を感じませんでした。もちろん性格的な意味で。なんかかなりの地雷さんな気がする・・・ 良かった点はやはり騎兵隊ないし馬で駆けるシーン。展開はベタですが、それをものともしない疾走感と迫力があります。あと、音楽に合わせて外で踊る二人のシーンも良かった。 [DVD(字幕)] 3点(2014-01-05 00:23:18) |
14. 荒野の決闘
《ネタバレ》 2周目鑑賞。やっぱ素晴らしいですね!邦題が「荒野の決闘」だけにガンマン要素がメインな気がしてしまいますが、実際は全く違う。原題「愛しのクレメンタイン」が示す通り、弟が殺される→証拠探し→決闘という流れの中で描かれる人間ドラマこそがこの作品の見どころなのです!特にアープ・ドク・チワワ・クレメンタインの関係とそれぞれの気持ちの表現が秀逸。「女のプライド」とやらに従ってあっさり引き下がろうとするクレメンタインと命を張ってでもドクへの愛を貫くチワワの対比、クレメンタインに惹かれてはいるが無理にドクから引き剥がそうとしないアープなど・・・ 個人的に一番好きなキャラはドク。ビクター・マチュアが良い味だしてるな~。重い病を患い、半ばヤケ気味に大量の酒を飲み、事あるごとに銃を抜こうとし、死にたいとさえ思うが死ねない。その理由こそドクが助け舟で詠んだ詩の通り、「死後の不安ゆえ」なんでしょうね。ドクも臆病だったと。そしてチワワの死により死後の不安はなくなった(チワワがいるから)と。アープがドクの私事に干渉したようにドクもアープの私事に干渉し、OK牧場の決闘のシーンにつながると。う~ん見事。 [DVD(字幕)] 8点(2013-12-14 23:32:32) |