1. グリーンマイル
《ネタバレ》 合わず。序盤から中盤は面白い。しかしジョンを連れ出したシーンあたりから全く納得できず、加速度的に面白さが萎んでしまった。 そのプラスとマイナスの中間をとった点数とさせていただきます。 何か深い解釈の仕方がありそうだが、初見ではわからなかったのでシンプルに思ったことを書きます。 上映時間約3時間のうちちょうど1時間くらいで突然ファンタジーが入り込むが、それ自体は全然受け入れられた。それまでの1時間が普通にドラマ的でありファンタジー要素など無くても面白そうな映画だなと思ったため、突然のファンタジー要素には「あー始まった」ではなく「この設定をどう活かすんだろう」という興味の方が強く、そのためその時点で面白さが萎むということはなかった。 しかし後半、ジョンを連れ出して所長の奥さんを回復させるあたりから「おいおい」という展開が続き、全く納得できないまま見終わってしまった。 ジョン・コーフィは作中字幕の表現を借りれば「自然」「神の奇跡」ですが、まあ当然そんなものはいないわけで、ジョンは何かを体現している存在であるにしても、普通に英語を喋り普通に物を食べる普通の人間であり、その結果「普通の人間に特殊能力が備わっている」と見えてしまうわけです。 で、他人の痛み?を吸って自分に溜める、それだけなら本人が苦しいだけなので「偉いな」「いい人だな」もっと言えば「ご自由にどうぞ」と思うわけですが、それを吐き出して他人に植え付けるというのは、それがまさに殺人やん、と思ってしまうわけです。 近距離にいる善人と思われる人物ならいくら救っても良いしなんなら感謝もされるが、近距離にいる悪人と思われる人物には精神病を煩わせ、結果人を殺させても良しとするのか。仕方がなかったとするのか。周りは涙を流すのか。全く納得できません。 本人は「自分でもわからない」と言っていましたが、明らかに意志をもって行動をしているので全く説得力が無い。 自分の意志でパーシーの首根っこを掴み、悪を注入し、結果廃人にし、人を殺させた。自分の中で完結する能力ならまだしも、他人にマイナスを付与することができる能力。傲慢甚だしく、こんな危険分子は処刑して正解だっただろ、とさえ思えた。 ジョンは冤罪で、ただただ自然で愛があるだけの存在、なのに人間の愚かさ故に処刑されてしまった、のだったのならそれは悲しいとなりますが、普通に意志を持ってパーシーという人間を壊し人を殺させているため、それはもう殺人やろ。同情の余地なし。と思ってしまいました。 登場人物たちがジョンをどう思いどう行動するかは勝手ですが、納得できるかと言ったら全くできない。そんな作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-11-04 22:25:49) |
2. プライベート・ライアン
iPad、つまり小さな画面で見てしまったのが致命的なミス。本作は大きい画面で映像に圧倒されながら没入して見なければならない系の作品だった、と視聴途中で気づいた。そのため入り込めず、会話の分量が少ないことも相まって正直なところ退屈だなと感じてしまい、時間が非常に長く感じられた。内容を忘れた頃にまた見る時は必ず大きい画面で見てレビューを更新したいと思います。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-10-09 00:26:34) |
3. L.A.コンフィデンシャル
《ネタバレ》 めちゃくちゃ面白い。ストーリー自体も面白いし、キャラクターも良い。落としどころも良い。 バド、エド、ジャックの中ではエドが一番好きだが、それは最も感覚がまともで現代の考え方に近く、暴力や賄賂といったおもいっきり違法な行為をしなかったから。そのため途中で女と寝ているところを写真に撮られた際は「結局かよ・・・」と思ってしまったが、それにより逆にバドやジャックのキャラクターと近くなったおかげで、あるいは展開的に3人が接近していく描写と相まって、最終的にバドもジャックも好きになれたし、全体として良いバランスだなと思えた。 一連の事件の落としどころとして「ダドリーを英雄にするが自分も英雄にしろ」というのは、ダドリーを悪者にすると本格的に自分の身が危なくなるためその防衛策であること、自分の出世と警察の威信の交換条件であり互いに得があること、頭が良く「政治に向いている」というエドのキャラクターがより際立つ効果があることから、実に上手い落としどころだなと思いました。 「ロロ・トマシ」のくだりは鳥肌もの。面白かったです。 [DVD(字幕)] 8点(2023-10-08 19:58:51) |
4. グッドフェローズ
《ネタバレ》 「実話に基づく」という前提で視聴、かつその前提で感想を書きます。 少年の頃からギャング、ないしマフィアの世界で生きた男の人生録、といった本作ですが、正直に思ったこととして、結局主人公の言う「普通の人」「つまらない人」と同じやん、ということです。なんなら対価が命な分だけマイナスまである。 まあ「いや、だからそういうことを描きたいんだよ」と言われたらそれまでですが、それほどにマフィアの世界に魅力を感じなかった。 マフィアの世界に生きているからゴリゴリに金が入り優雅な生活が送れる。なるほど。で、その先は?となると、結局「家庭を持って落ち着け」「家族が大事」「家庭と仕事」「妻と愛人」「朝から晩まで仕事」「警察にしょっぴかれたらヤバい」「仕事を行うチームにも無能な奴がいる」「明らかなミスを犯しても仲間だから守ろうとする」 これ、全部そこらへんで四六時中よく聞く普通のことですよね。 マフィアに身を置こうが「一般」に身を置こうが結局同じと。じゃあ「死ぬ」というリスクを負っている分だけマイナスやん、と思ってしまいました。 グッドフェローズとは「良い奴ら」的な意味ということはなんとなく把握していましたが、一体どこが良い奴らだったのだろうか。 結局全員自分の身が一番大事で自分のためになる周囲の人間とつるんでるだけであり、それはもはや友達ですらなく「仕事上の仲間」と見えてしまった。 てっきり自分の不利益になっても感情的結びつきの強さが普通以上のためそれに沿って行動する、といった話かと思ったらそんなことはなく、世間一般の普通の感覚の舞台をマフィアの世界にしただけ、と見えてしまった。 仲間内を「家族」と言うが、それは「そこから外れたら死ぬから」という理由があるからそう言わざるを得ないだけ。 誰かが結婚した、子供が生まれた、昇進した、その他諸々のいちいちのイベントでパーティが開かれ祝い金を持って半ば強制参加。 本作では描かれていないが「ダルいんだけど」と思っている者も当然いるはずで、職場の飲み会には参加するのが当たり前、という古代の常識と何が違うのかと思わされてしまった。 ここまでの感想は酷いものですが、約2時間半の作品にもかかわらず退屈はせず普通に最後まで見れた、展開的にやりすぎ感も入り込めなさも無かった、といった映画的な面白さから7点とさせていただきます。 [DVD(字幕)] 7点(2023-09-23 03:47:03)(良:1票) |
5. タイタニック(1997)
《ネタバレ》 これだけ有名になった映画だから、史実的にどうか、物理的にどうか、というのは当然研究されていることでしょう。 でも、最初に見た時に感動した。数年経って再視聴した時に感動した。そしてそれから10年以上経った今見ても感動した。それが全てです。 以下専門的知識ゼロで書きますが、ヒューマンドラマ、パニック映画、どちらの側面を取ったとしても素晴らしい。 それどころか世界観、BGM、キャラクター、展開、演出、全てにおいて素晴らしいと思わざるを得ません。 登場人物の主要キャラは、主人公2人を最初から最後まで軸に描きながらも、その次点に位置するキャラクター、その次々点に位置するキャラクター、その次々々点に位置するキャラクターにまでもものすごく丁寧に描かれている。 主人公のライバルだったり、成金おばさんだったり、母だったり、仕事人であったり、船長であったり、音楽家であったり、鍵を開けてくれようとした人だったり、最後まで絵本を読み聞かせようとしたお母さんだったり・・・ 数え上げればきりがないが、史実的に見れば「死亡した○○人」とある種冷たく機械的に捉えられてしまうその「○○人」にも丁寧に焦点を当て、それぞれのドラマを描く。しかもそれが千差万別であり、みんなの気持ちがわかる。皆に共感させられる。凄い事です。 パニック映画としても、本作を幼き頃に見た後に他の海洋パニック映画を見て、どうも物足りないというか、あれ、こんな感じだったっけ、という感覚を覚えたのをよく覚えています。 それもそのはず。今考えると何のことはない、本作が凄すぎただけのこと。 本作はジャンルとしては「パニック映画」ではなく「ヒューマンドラマ」なわけだけれども、その「パニックシーン」の描き方、パニックシーンに至るまでの経緯が実に上手い。 それまでの描写があるからこそ、パニックが単なるパニックではなく、「人の人生と人生のぶつかり合い」になっている。 すなわち、主人公視点で言うところのモブキャラにも、それぞれ今まで生きてきた人生がある。それまでの思いがある。だからそう行動する。それまでの人生があるからこそパニックたり得る。そう思わせられました。 BGMが素晴らしいのは言うまでもなく、世界観の描写も素晴らしい。誰もがロマンを感じざるを得ない豪華客船という舞台、果てしない海と星空。果てしない自由。 クソ有名な「タイタニックのポーズ」も、ローズが手すりという束縛から手を離し、本当の自由を目にしたという神シーン、だったわけですね。 本作の素晴らしいシーン、素晴らしい演出、素晴らしいBGM、素晴らしい描写、素晴らしい構成等々を挙げればきりがないですが、少なくとも、10点を付けさせていただくに余りある作品と感じます。 [DVD(字幕)] 10点(2021-09-12 18:22:07)(良:2票) |
6. デーヴ
《ネタバレ》 何回見てもやっぱり面白い。どストレートなエンタメ、コメディ、人間ドラマ。 こういった作品にはありがちですが、真面目に「いやそれはおかしくね?」的な穿った見方をすると損をします。だってそういう映画なんだもの。感情的に入り込めればOK、それだけです。 とその上で真面目な考察をすると、現実ではやはり困難でしょうね。理想はもちろんこの映画のようにあってほしいと思っちゃうわけですが、大統領が直接国民の選挙で選ばれるアメリカと違い、総理が多数党、つまり議員から選ばれる日本では、総理はあくまで多数党の代表であり、それゆえ議会との結びつきがより強いのが日本です。で、日本において国民が選挙で決められるのは議員までなんですから、本作のような展開になる可能性はアメリカよりも遥かに低いわけですね。建前として「あくまで個人」なのがアメリカ、「同じグループの中からリーダーやってよ~→うーんオッケー!」なのが日本です。 予算削減の検討シーンはすごく面白いところで、ここら辺のツッコミポイントは日本とそっくりですね。ず~っと道路工事してていつまでも道路が完成しないのは、「いや予算もらったら消費しなきゃなんないからとりあえず道路工事でもしとこう」「道路工事しなきゃ予算がもらえないから道路工事しよう」という理由です。行政は縦割りであり、部署が違えば会社が違うのと同義で、「いかに予算を引っ張ってくるか」「いかに予算を減らされないか」が重視されます。予算を消費できなければ「あ、んじゃ来年度以降はその部署にはそんなに予算は必要ないんだね。んじゃ削ろう」となってしまうから、それを恐れて「とりあえず予算は消費する」という発想になります。ハッキリ言ってアホの極みというか、そんな無駄な予算割いてる暇あったらまだ人件費に回した方がマシだろ、と思ってしまいます。 で、ズバリそれを言うのがデーヴ。マスコミが入っており、周囲から支持を得ているあの状況だからこそ自らのおかしさを認めざるを得ないでしょ?というある意味ゴリ押しで予算案を通す。「あなたの買った車は良い車です、と伝えるより家の無い子に家を与える方がよっぽど大事でしょ?」。カッコよすぎるでしょさすがに。現実的には「でもそれやると経済的に~」とか色々あるでしょう。だからこその映画。理想のゴリ押し。素晴らしいと思います。 「君のためなら死ねる」、いやこれむさくるしいオッサンがオッサンに言ってるわけだから笑いどころなのかもしれませんが、すみません、カッコよすぎて涙が出ました笑 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-06 06:06:14) |
7. フェイス/オフ
何点かつっこみどころはありますが、そんなの関係なく面白かったです。これぞアクション映画!という感じで、「ダイ・ハード」と似た雰囲気を感じました。顔を始め手術で全身を入れ替えるという発想はぶっ飛んでいますが、このぶっ飛びは他の部分、テンポの良さや展開の進み具合、自然な伏線や上手い台詞等々によって全然気にならず入り込めます。細部が丁寧に作られているのがものすごく好印象です。その上でやはりアクションに見ごたえがあり、空港でのvs飛行機、刑務所からの脱出、家の中での攻防、そして水上での戦いなど盛りだくさん!アクション好きな方には是非見てほしい作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-16 17:36:46) |
8. ヒート
《ネタバレ》 テンポが悪く展開がのんびりとしているため、ただでさえ長い本作がさらにものすごく長く感じました。そこが逆に味を出している、とも言えるのかもしれないですが。また、登場人物の心理描写も雑駁としていてイマイチ伝わらず、感情移入もできず・・・。主人公二人の間柄でいえば、確かに視聴者からすればお互い似ているが、本人たちにとってはあの程度の絡みで相手をリスペクトしたり共感を覚えたりはしないのでは・・・と思ったり。また、どの登場人物も自分の生き様と愛という2つの側面が描かれていますが、どのカップルも魅力がない・・・。特にパチーノの奥さんに至ってはあんた自分で浮気しといて開きなおっとりますがな!とつっこみたくなりました。アクションシーンは良かったのですが、全体的にぼやっとしていて私にはちょっと合わない作風でした。 [DVD(字幕)] 5点(2016-02-16 13:25:54) |
9. ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
センス系の映画ですね。真面目に構えて観ると損をする、そんな感じでした。気楽に見て、そんなわけあるか!とツッコミを入れて、でもじーんときて・・・。コメディ+群像劇+ロードービー、そしてセンス。そういう作品かと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2015-12-31 02:30:40) |
10. フェイク
《ネタバレ》 【2015年1周目視聴/6点】 実話を基に、というのはしっくりきます。つまるところ、「え、ほんとに!?」となるほどの衝撃はありませんでした。大人のマフィア物という感じ。人への愛はあるがマフィア世界での仕事はいまいちパッとしないマフィア育ちの男、FBI捜査官でありながらマフィア世界での仕事にはピシャリとはまるが、一方で家族から見ると愛がない男。もしこの主人公二人の境遇が全く逆だったら、また別の未来となっていたことでしょう。 ジョニー・デップの本作での演技は、私にとってはマイナス評価でした。実話を基にしているからなのか、意図してそう演じているのかはわかりませんが、終始同じ表情なので逆に不自然というか、簡単にいえば「いやお前がFBIやろ」と一発でバレる気がします。また、緊迫した場面のはずなのに緊迫感が伝わってきませんでした。実際にどう振る舞ったかはともかくとして、これは映画なので、映画らしい演出がもうちょっとあっても良かったのかなあと思います。 【2023年2周目視聴/8点】 8年前の自分、我ながら浅すぎて笑う。まあ今でも別に深くなったわけではないけど、前の投稿も記念に残しておきます。 8年前と同じ感想なのは、実話が基になってるから仕方ないと言えば仕方ないけど、リアルではあるが衝撃的な展開は少ない、という点。欲を言えば、なんらかの形で報われる展開であってほしかった。船を買ってほしかった。 8年前の自分にツッコむ点としては、マフィアとFBI捜査官の仕事と家庭の違いって、いやそんなことが言いたい映画じゃねーから!という点。視点は面白いと思うけど。 本作の良い点はもう何といっても人間ドラマで、ドニーのジワりジワりと変化する心理、レフティという人物の詳細な描き方、これが素晴らしかった。ドニーのレフティへの思い、これをもっと伝えてあげてほしかった。 8年前の自分が評した「大人のマフィア映画」、これはしっくりきた。今見ると評価が上がり面白いと感じるのは、自分が歳をとったせいなんだなあと感じたり。 自分のレビューに自分でツッコむという新しい方式。我ながら意味わかんないけど当時の自分の感覚を知れて面白いので今回は前回のレビューを残したままでの変更レビューとさせていただきます。 [DVD(字幕)] 8点(2015-12-30 05:37:28) |
11. レザボア・ドッグス
《ネタバレ》 面白い、面白いです。とにかく構成が見事で、「この中に裏切り者がいる!」という、内容によっては致命的なネタバレなんじゃないのかと思う煽り文句でさえ置き去りに、面白いと思える作品でした。ただし、ラストシーンが腑に落ちないというか、深く見せてそうでもないというか、何度か見直してあ~そういうことか、と納得する必要があるかというか・・・その一点だけが惜しい。ラストシーンまでは完璧なだけに、例えば主張としては「結局合理的な奴が得をする」「立場を超えた友情の熱さ」とか色々描けた気がするが、実際はオール無視。では何が主張なのかと言われると・・・う~んやはりもう1回見ないといけないようです。 マフィア物は苦手ですが、それは違法者集団がドヤ顔でカッコつけて問答無用の犯罪を犯しっちゃってるからであって、本作の場合は登場人物のキャラクターがかなり立っているために、全然そんなこと気になりませんでした。下ネタ多めで冒頭はガッカリ感が漂いますが、キャラクターを知った上で見るとまた一味違う。それにそもそも、下ネタなんか意に介さないような面白さがある。 「パルプ・フィクション」は私の肌に合わなかったので、初期作品にもあまり期待していなかった。それだけにこの面白さに衝撃でした。「キル・ビル」「ザ・ロック」といい、タランティーノ監督の作品はそれぞれ「単発」として観るのが良さそうですね。 [DVD(字幕)] 8点(2015-12-29 04:14:48)(良:1票) |
12. ザ・エージェント
《ネタバレ》 こういう作品、大好きです。見直すたびに印象や評価は変わるかもしれないけど、それは高得点への変化であってほしいと自分に対して願うばかり。 仕事と恋愛、友情、ないしは男女の違いという永遠のテーマを、映画としての表現のメインを別に据えつつも、なおかつそれをおざなりにすることなく非常に上手く描いている、そういう作品です。 主人公(男)は仕事に対しては非常にハートがあるが、恋愛にはハートがない。元々仕事の繋がりだった友人(男)は、恋愛にはハートがあるが、仕事にはハートがない。ハートがないとはつまり理知的に行動するということですが、それだけでは互いに何かが不足している。それが何かを本音をぶつけ気づかせるのが友達であり、友情というものだ。 一方で、男は仕事をメインに据え、女は恋愛をメインに据え行動する。これは何も、互いが「そんなのは後回しだ」と思っているわけではなく、「でもやっぱりこれがなくては」「自分にとってはこれも大事なんだ」と思うが故の齟齬。互いが互いを尊重しているのに、どうしても生まれてしまう齟齬。 それを踏まえて本作の結論は、「君が僕を完全にする」、この一言に尽きます。自分にとっての人生、相手にとっての人生、それを誰にとっても完璧に、最高のものにするためには、仕事と恋愛、ハートと理屈、それらをどちらを優先させるかではなく、どちらも優先し、他方を自分にとってのプラスとすることで、1+1を3にも4にもできる、6:4を7:5にも8:6にも昇華できるんだよ、という、まさに「理想」を突きつける作品であるといえます。 では、そんなことどうやったらできるんだよといえば、本作で描かれたとおり、根本の根本は、「心の底から思ったよう、自分の信念を貫け」ということですね。主人公や奥さん、ロッドは皆そのように行動しています。ただし「提案書」のように、「自分にとっては完璧でも、それを絶対視しすぎるなよ」というのが前提で、要は、周りの意見にも耳を傾けろよ、ということですね。助言をくれる友人は大切。異なる価値観を教えてくれる異性は大切。う~ん、ループしますね。 最後に、トム・クルーズかっこいいですね。かっこよくて何やってもサマになってしまうのはずるいというのはさて置いて、「理知的」「野心家」「外見的にはかっこいい」が、実は寂しがり、という主人公のキャラクターを、見た目含めて雰囲気まで、見事すぎるほどに表現していたと思います。常に冷静で、それでいて妹を愛する姉さんも、全体バランス的な位置を含めて凄く良いキャラクターでした。 若干説明的な部分もありますが、ほんと、作りが上手い作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2015-12-26 05:02:17)(良:1票) |
13. カジノ
マフィアものというより、人間の本質に焦点を合わせた作品、そんな印象でした。タイトル買いした作品なので、てっきりラスベガスのカジノ内部の描写がメインで、イカサマがどうとか、胴元(ディーラー)vsプロの腕の差がどうとか、はたまた結局勝つために必要なのは揺るぎないハートだ!(オカルト)、とかそういう作品かと思ったら、全く違った。笑 一言で言えば欲に支配され、飲み込まれていく人たちのお話。主人公級が3人でそれぞれの思いあり、立場ありで、互いに歯車がかみ合わず、結局自滅の道を歩む。で、そうなった原因は何か、根底にあるのは何かといったらズバリ「人の欲」、という描かれ方でした。3人の欲が満たされている状況では誰も損はせず誰も不満はないけれど、一旦その均衡が崩れると、根底にあるのが「負」なだけに、ボロボロに崩れ去っていくという・・・。 そして根底の負、人の欲の対極として描かれたのが愛=信頼。互いが互いを信頼すればこそ全ては上手くいくのだけれど、人間というのは欲に支配されてしまうものなんですよと。例え本人が信頼を最重視しているとしても、本人も無意識なところで、自分の都合・欲に動かされている・・・そんな役割を担ったのが主人公でした。 この作品の見所は登場人物の立場と考え方を前提にした上での会話劇、展開の面白さ、上手さにあると思います。それ故に「どこが面白かったか」を人に説明するとなると難しい。見ているうちに入り込む系の作品なので、少しも共感できないと尺の長さが仇になりそう。(逆に色んな立場、考え方の人が出てくるので共感できる確率は高そう。)私はマフィア系で無駄にカッコつける作品はあまり好きではないので、むしろ本作は好印象でした。 [DVD(字幕)] 8点(2015-12-07 04:25:49) |
14. ブラス!
「天使にラブソングを2」の大人版ですね。「天使にラブソングを2」より比重的に人間ドラマ>音楽、といった印象です。 炭鉱閉鎖を軸に据えながらも、オヤジ達の哀愁・今にも無くなりそうな夢への情熱・現実との葛藤という三位一体を静かにしっとりと、しかし熱く描いた良作かと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2015-08-01 05:06:40) |
15. アポロ13
面白い!結果どうなるかは誰でも予想がつくところだけど、それを置き去りにしてなお引き込ませる緊迫感・臨場感が本作にはありました。いつの間にか見入り、「こちらオデッセイ」で一緒にガッツポーズですよもう。宇宙とか有人飛行とかの知識が全く無かったのがむしろ良かったのかも。逆にいえば、入り込めないと「結局こうなるんでしょ」となって退屈なのかもしれません。 科学的な専門用語は多いですが、一般向けのわかりやすい説明が随所に入ります。それくらいわかるよ笑、というところでも入ってきます。なので、知識が無くても無問題と思います。医療ものじゃないのに医学に対する批判が若干強めで「ん?」と思いましたが、結果的な事実に基づいた映画的演出と考えれば、あ、そういうことか、となります。 それにしても、自分の無知さがはっきりわかると同時に、新しい知識もつきます。「月に行く」「事故の映像」だけ見ると、発射さえ成功しちゃえば言うて大丈夫なんでしょ?といつの間にか思っちゃってた恥ずかしさ。実際は当然そんなことはなく、各分野のプロフェッショナルが一体となって全身全霊を賭して挑むのが「月」という夢なのだと。自分の全力を発揮して、でも一人じゃどうにもならないから協力して、一つの目標に突き進む。これは綺麗すぎる見方ですが、でもやっぱり熱いし、そういう環境に身を置けることが羨ましい。クルーでも管制塔メンバーでも、あの一員になりたいなーと思わせられる今日この頃です。 【追加4?周目】 最高。「宇宙ものSF」の時点で好きなんですが、いやー何回見ても良い!というか、実話なんて信じられないです。ていうかほんとに実話ならSFじゃねえし。それほどに「マジで!?」と思うシーンの連続。「演出的に強くいったんだな」と強がりつつも、それを抜いてもハラハラドキドキ、皮一枚スレスレ。演出も演技も、何よりキャラクターが素晴らしい。「こちらオデッセイ」時のガッツポーズが周回を重ねるごとに派手になっていく私。 トムとジーンが最高にカッコイイ。というか、管制室の皆(一部除く)がカッコイイ。トムは悔しかったはずなのに、本当に悔しかったはずなのに、それでも仲間の生還のために死力を尽くす。何が何でも電力を絞るためにたどり着いた発想「LEMからオデッセイへ電力を」はもうさすがとしか言いようがない・・・。ジーンは判断力がやばい。自分の身分がどうのとかそんなことは知らんが、とにかくあんな判断できんて。そして皆が皆全力を尽くす。1つの目的のために全員が全身全霊全力で挑む。元々頭の良い奴らが集まって、それでも対処がわからないそれまでのパターン外の状況でも、諦めず、積極的に、強気に、できる限りの力を尽くす。いつパニックになってもしょうがない状況でも冷静に思考し、振る舞い、動く。カッコイイとしか言いようがないよ。 [DVD(字幕)] 9点(2015-06-22 03:11:52) |
16. 遠い空の向こうに
《ネタバレ》 シンプルに良い作品、という印象です。一口に夢といっても色んな形があるんだなぁと思いました。周りの誰もが応援してくれて、自分も迷いなく突き進んでいたら実現した夢、周りには反対する人も賛成する人もいて、自分自身も迷い、決断した結果成功した夢、周りはほぼ皆反対で、最悪全てを捨てる覚悟で自分を貫いた結果実現した夢。本作は2つめにあたると思います。1つめと2つめ、3つめの決定的な違いは、周囲の目です。1つめならば迷うことなく夢を目指せば良いだけですが、2つめと3つめは必ず迷い、葛藤し、苦しみを味わうことになる。そしてまた、夢の実現を考えるとき必ず考慮しなければならないと思うことは、成功した人の影には数限りない無数の挫折・失敗した人がいるということだと思います。そういう意味で、本作はその挫折の描写が若干不足していたように思います。もっと主人公に絶望を味わってほしかった。この上なく苦労する描写がほしかった。もっと深く考え、計算して動いてほしかった。その上で、成功してほしかった。もちろん現実にはそんなものは無いに越したことはないのですが、映画として描く以上、そういった描写が深ければ深いほど感情移入し、感動できたのでは、と思います。 [DVD(字幕)] 7点(2015-04-05 00:39:28) |
17. フォレスト・ガンプ/一期一会
《ネタバレ》 あんまり合わず。主人公フォレスト・ガンプの半生とアメリカの歴史を融合させた本作は、フィクションを超えた「おとぎ話」という表現がまさにピッタリかと思います。アメリカの歴史はよくわからんので内面に焦点を当てたレビューになりますが、ただ純粋に真っ直ぐなフォレストは結果として周りの人々を勝手に引きつけ、いつの間にか本人も大成功といういわゆる三方両得、win-winの関係を築きます。フォレスト自身が自分にピッタリと言うように、軍人のような真っ直ぐ(偏見ですみません)な人や信仰ランナーのような純粋な人への影響は早く、ジェニーのような幼少期から社会の理不尽に巻き込まれた人への影響は遅く、中尉のような成人してから理不尽に見舞われたような人への影響は軍人よりは遅くジェニーよりは早く訪れる、つまり全ての人はすべからく「プラス」の影響を遅かれ早かれ受けるという描き方がなされている、と思いました。もしフォレストのような人がトップだったら、大統領暗殺やベトナム戦争を回避できたかもしれないというおとぎ話としての側面も本作にはあるのでは、と思います。 ただ、純粋でない私が目に留まるのは、上手くいきすぎだろ、という点です。『ルディ』に影響されまくり、全くの無知識ド素人にもかかわらずアメリカンフットボールを舐めるな!と思ってしまったり、他の人生捧げてる漁師さん差し置いて運のみでエビ獲ってんじゃねえ!とか思ったり、幼少からの大恋愛を絶望状況から成就させてしかも幸せ全開で子ども育ててんじゃねえ!とか思ったり、大部分です。まあおとぎ話なんだから何やったっていいわけですが、如何せんそれが尺の大部分を占めすぎで、そこに目がいってしまいます。 もし伝記、ノンフィクションなら素直に感動するところだし、本作の主張はそこじゃないというのもわかりますが、単純な面白さでいえば初見5点、それが率直な感想です。 [DVD(字幕)] 5点(2015-03-27 01:48:19) |
18. ルディ/涙のウイニング・ラン
《ネタバレ》 やばいぼろ泣き。現在進行形であっても過去形であっても、夢を持ったことがある人にはグッとくるものがある、そんな作品だと思います。 主人公ルディは「熱意」だけは誰にも負けない選手として描かれる。しかしもうひとつ、夢の実現のために必要なのは「勇気」だと思うんですよね。ルディでいえば、例え彼女と別れても、親に反対しても、体格や運動能力に恵まれていないとわかっていても、夢の実現のためにここぞ!というターニングポイントで一歩踏み出す勇気。それこそが最も重要で、最も決断が難しい要素だと思うのです。例え勇気を出して一歩踏み出しても、それが報われるとは限らない。ルディのように夢を実現できなかった人たちが、それこそ数限りなく存在すると思うのです。しかしそこに全てを賭けるからこそ成し得る夢があるというのもまた事実。「人生とは賭けの連続だ」とは言うものですが、それが正しかったのかどうかは本人にしかわからない。逆に言えば、本人が後悔しなければそれは最上の選択なのではないでしょうか。だからこそフィールドの整備士さんの「今辞めたら一生後悔することになるぞ」「証明とは自分自身に対してするものだ」という言葉が突き刺さります。 また一方で、「自分の夢を追うことは他人を傷つけることになる」というのもその通りだと思います。他人の思いを犠牲にして、自分の夢に投資する。もちろんそれが正しいとは絶対に言えないし、自分の夢を犠牲にして家族や彼女の幸せをとる、それは全く間違ってない選択だと思います。だからこそ決断が難しく、自分だけにしか答えの出せない(しかも賭けを含む)難問なのでしょう。そういった意味で涙を禁じ得ない、なんともニクい作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2015-03-24 03:10:01) |
19. アメリカン・ヒストリーX
《ネタバレ》 また素晴らしい作品に出合った。「人に影響を及ぼすのは常に人である」。そんな内容だ。本作で描かれるのは白人至上主義、人種差別問題であるが、それ自体は表面であり、本質はもっと深いところ、人の深層だ、と言っているように感じた。 現代日本でも、デレクやダニーのような人は身近にいる。主張が正しいとか正しくないとかそういうことではなく、「自分が絶対的に正しい」と信じて突き進む人。この場合問題なのは本人の中では理屈が成り立ってしまっていることと、それ故に方向転換が非常に効き辛いということだ。故に、発想は「周りが間違っている」であり、そこから自力だけでベクトルを移すのは容易ではない。とすると、つまるところ、自分もデレクやダニーと同じということを否定しきれない。デレクの場合は刑務所という強制力によってベクトルをずらすことに成功したけれど、特殊事例だ。つまり、逆に大多数の人はそれに気付けないことになる・・・。 ラストシーンで黒人が白人を射殺する描写は、いわゆる「黒人だって同じ人間なんだ」「人類皆友達なんだ」という、ありがちなある意味上から目線なテーマを退けている。黒人かどうかなど関係なく、結局重要なのは「人との相互作用による変化だ」と言っているように思える。まあ相互作用による良変化の結果行き着く先は、「人類皆友達」なのかもしれないけど。とにかく、シーツのシーンに集約されるように、荒っぽく(本作でいう「怒り」)だけじゃなく柔らかさをもって接しよ、というのがこの映画の主張なのだと思う。 本作では、白人主義や人種差別という、「潜在的自分主義」が最も顕著に表面化される(映像化し易い)イベントを描き、同時に人が人に影響を及ぼす過程を綿密に描くことで、入り込みやすく、考えさせられる作品に仕上がっていると思う。時にプライドを捨てて、納得できなくても他人の意見に耳を貸すこと。わかっていても、これが中々に難しいんですよね。 [DVD(字幕)] 8点(2015-03-07 03:24:36) |
20. シャイン
《ネタバレ》 後半はやや冗長(というか見ていて切ない)な感あり。あとピアノが上手いかどうか自体は全くわからん。しかし素晴らしい。私の中では傑作です。 親父は尽きるところ全て「自分のため」なんですね。そこに親子愛が絡んで複雑になる。要は自分は環境が悪く力を発揮できなかったんだ。だから息子には自分ができなかったことのリベンジをさせたい。そしてそんな息子を育て上げたのは俺だ。俺は凄い!という思考。だから自分の手を離れるのを極端に嫌い、最高難度とされるラフマニノフを弾かせたがる。その一方で、デイヴィットには親として離れてほしくないし、かといって純粋に腕を上げてほしいし、デイヴィット自らがラフマニノフの練習をしている(ピアノを好きになってくれている)のがすごく嬉しい、という側面もある。ここら辺のごちゃ混ぜ感が面白い、上手いと感じたポイントです。 親父はどちらかというと「自分が全て」なのに対してデイヴィットは「自分を押し殺している」という対比。そんな両者を繋いでいる絆的なものがピアノであるし、ただ繋ぎとめているだけではなく両者ともに「好きだから極めたい」と思っているのもまたピアノであると言える。ピアノは互いを距離を縮める要因となる一方で、互いを引き離す要因ともなっているのがあまりにも切ない。 デイヴィットがラフマニノフの3番を弾き終わったときの親父の涙は、「自分が成し得なかった“最高難度”の攻略」「自分の元を離れて正解だったという思いと寂しさ」「立派になった息子の成長が見れた嬉しさ」あるいは「息子への嫉妬」という全ての感情が入り混じった涙であり、故に、最高のシーンだったかと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2015-02-20 05:03:44) |