1. サリュート7
《ネタバレ》 面白い。実話に基づいた、というだけあり超エンタメな作品とはもちろん異なるが、それでも「元々困難な任務」「次々に起こる問題」「政治的な判断との葛藤」「ちょいちょい軽口を叩くやり取り」「え?どうなるの、というハラハラな展開」「作品のテンポ感」等、充分面白いと感じさせる。 飽きず、退屈にもならない。 何より「宇宙空間が舞台」というだけでスリリングなのは言わずもがな。 「アクロバティックな方法でどうにかする」といった描写は元々求めていなかったので、その点は逆に良かった。むしろ「ちょっとしたことが大問題を引き起こす」の方が納得できます。 なおBGMについては、これは完全に感性の違いによるものだとは思いますが、全く合っているように感じなかったですw [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-29 03:27:11) |
2. パニック・マーケット3D
《ネタバレ》 「サメ映画」と聞いた段階で、もはや「B級全開やりたい放題、いかに適当な展開をいかに適当に見ながらいかにサメ映画の中ではこの作品はあーだこーだと論じつつ、結局はまあサメ映画だからな!、という適当な結論に帰着する」、という印象を持っていたので、その印象のまま見ました。 で、見た結果、「う~むそうですか」、となりました。 これは予想外な展開があったわけでも予想外にくだらなかったわけでもなく、もちろん予想外に傑作であった、というわけでもなく、より短い文字数で言い表せば「ほう」という表現になるのとイコールです。 誰にも頼まれていないのに勝手に本作の弁明をするならば、 まず第一に、 「スーパーマーケットにサメがいる、とかそんなわけねーだろ」という点については、スーパーマーケットは海岸付近浜辺沿いにあり、その海域にはホオジロザメが出現する、ということは予め示されているため、「予想外の津波により海岸付近の建築物一帯が海に飲まれ、その海に生息していたホオジロザメさんが拡張された自分の領域を闊歩するのは当然であるので、当然スーパーマーケット内にサメはいる」ということになります。 第二は、特にありません。 最終的な結論として、「ほう」とか「はい」とかいうこれ以上短い文字数は思いつかない作品である、ということを感想として、本作の一口コメントとさせていただきます。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-09-23 00:41:21) |
3. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 <原作のネタバレあり> 原作既読。映像化されたオリエント急行を見たのは本作が初。 上映時間の関係からというのは当然あるだろうが、それ故「本来は別の人だった2人(医者と大佐)が1人にまとめられている」「1人ずつ話を聞く過程の詳細が省略」といった作りになっている。 原作は「事件発生→クローズドサークルなので警察等外部の協力者の手を借りられない→1人1人丹念に話を聞く→答を導き出す」というもの。 ポアロは元々会話によってそれぞれの不審な点に目を付ける、矛盾に気づく、要素を繋ぎ合わせて1本の線にする、という型の探偵。 故に「1人1人からしっかり話を聞く」という原作の描き方が重要かつ面白いポイントになるわけだが、そこが省略されていたのはまあ仕方ないとはいえ残念。だったら冒頭のシーンとか謎に追加されてるアクションシーンとかバランス(卵やネクタイ)のくだりとかを入れなきゃ良かったのでは、と思ってしまう。 また、原作は「殺されたラチェットは社会的にとんでもない悪党であり、アームストロング事件を知る者すなわち世間一般の全員から嫌悪される対象で、例の事件を起こしながらも金の力で無罪判決を得た。それ故事件に強く関係した人物12人が陪審員12人に成り代わり、ラチェットに社会的制裁を下す(死刑を執行する)」というもの。 本作の描き方でも結果としては変わらないが、そのくだりの主張が相対的に弱く感じる。 また、ポアロは警察でも検事でもないため、「真実を明らかにする」ことを目的とし、行動する。つまり、真実は明らかにするがその後犯人をどう扱うかについては自分の関与するところではない、というスタンスであるため、原作では本事件が成り立つ「推理A(外部犯説)」「推理B(全員が犯人説)」を提示するが、そのどちらを取るか、どういう裁定を取るかは責任者であるブークと検死を行った医者(原作では犯人の1人ではない)に委ねる、という形になる。 原作では、それまで理知的で合理的だった医者が、最終的に事件の背景、事情が明らかになり乗客たちの心情に触れたことで、「まあ私の検死結果も完璧ではなかったかもしれませんね」と言い、つまり12人の乗客の心情に傾く形、推理Aを取る形で幕を閉じる。 しかし本作ではポアロ自身が「今回は推理Aのパターンとしていいでしょう」としてしまっていて、それだと話というかキャラというかスタンス違うことになっちゃいません?と思ってしまった。 その他、原作では夫人にナイフが刺されるくだりは無いし、凶器の発見のされ方も違うし、夫人はペラペラ娘のことを喋りまくるお喋りおばさんと思わせて実は稀代の名女優だった、といった点も異なるため、結論は同じでも見え方が異なる。 マックイーンもアームストロング事件に関与する一人で計画のためラチェットの秘書になった人物だったはずだが、本作の場合横領という謎概念が入った結果そういう描かれ方がされていなかったような。それだと「社会正義を下す陪審員12人という強い信念を持った12人」じゃなくなっちゃうのでは?と思ったり。 原作は「犯人は1人、せいぜい共犯で2人という先入観があるでしょ?」という古典推理小説のメタを利用したところに名作と呼ばれる所以の1つがあり、それ故原作の超序盤で描写される「刺し傷が12か所、しかも右利きの刺し傷と左利きの刺し傷があり、致命となる深い刺し傷(男の力じゃなきゃ無理な傷)もあればかすり傷程度の刺し傷もある」というのがまさかそのまんま答(シンプルに12人が別々に刺しただけ)だとは思うまい、という点が衝撃ポイントだったはずで、原作が発売された当時、ある程度当時の推理小説を読んだ後で、当時の先入観がある状態で読んでみたかったなあ、と思わせる作品の筆頭だな、と感じます。 [インターネット(吹替)] 7点(2024-08-04 02:08:50) |
4. エベレスト 3D
《ネタバレ》 登山系の作品は初めて視聴しましたが、凄まじいですね。 「頂上からの景色が綺麗」「体力的に大変」とかそういう次元じゃなく、もう完全に人体vs自然。 敵は自然そのものであり、いかなる好条件を揃え配慮したとしても各々のちょっとしたズレが文字通り致命となると。 もちろんそれはエベレストだからであり、現在とは違う当時だからなのだとしても、当時の「エベレストの登頂に成功」という一文がいかにとんでもないことなのか、ということを学ばせていただきました。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-12-27 00:34:47) |
5. 祈りの幕が下りる時
《ネタバレ》 原作未読。本シリーズは初。こういうシリアス系、親子愛系の作品は全然視聴したことがない。 面白かったですし、普通に泣けました。 ただ一点納得できなかったのは、最後の殺人のシーン。 これまで自分を犠牲にして守り続けてくれた人が望んでおり、状況的に仕方がないから、全てこれまで通りとするためにその恩人を殺す。 ふざけるな、と思いますけどね。 自分だったら絶対にそんな感覚や発想にはならない。かつて彼がそうしてくれたように、今度は自分が同じように守ろうとする。他のいかなるものを犠牲にしてでも、いかなる手段を取ってでも彼を守る術を探し、最終的に無理だとしてもあらゆる手を尽くそうとする。 手段については今パッと思いつきませんが、少なくともあの場面でいきなりその判断にはならない。 というか仮に発想したとしてもとてもじゃないが実行できない。 親は子を思うもの、というのはよく聞きますが、子だって親のことを思っているんですけどね。 自分が犠牲になることで親の病気を取り去れるなら、親が一日でも長く生きられるなら、喜んで死にますけどね。 そういう感覚の自分にとって、唯一そこだけが納得できないシーンでした。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-12-16 19:22:39) |
6. マスカレード・ホテル
原作未読ですが、面白かったです。現時点で平均点が5.40点ということにびっくり。 終始ホテルが舞台の大衆向けエンタメ作品なので、そういう感覚で観ることをお勧めします。 深いテーマがあるとか、ミステリーとして特筆すべき点があるとか、そういうことではない。 言うなれば踊る大捜査線とかそういった類のエンタメ作品を見た時に感じる面白さと同様の感覚。 互いに違う職業に就いている2人があるきっかけで場を共有することになり、徐々に互いを理解していき、なんやかんやで問題をなんやかんやする、という作りは県庁の星とそっくりなので、そういう系が好きな方には刺さる作品かと思います。 一部本気でウザいことを言ってくる「いるよな~こういう客」的なキャラが登場し、その解決シーンも「現実的にそんなわけないやろ」となるところなので、日々の自分と照らし合わせて見てしまう見方は向かない。 マイナスな所を探すように観るのではなく、本当に単なるエンタメ作品を観る時のようなぼや~っとした感覚で観ることをお勧めします。 文鎮、バッジ、ポケット、所作、そして笑顔など、こういう言外に表現される心理描写ってすごく好きです。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-12-02 22:51:08) |
7. ボーダーライン(2015)
終始シリアス。展開がわかりづらい部分が徐々にわかっていく系。「どういうことだ?」と考えつつ観るうちに入り込む系。 その視点は本作の主人公ケイトの視点のようであり、主人公はどちらかというと巻き込まれる側で、主体となって立ち回る側ではない。 「毒をもって毒を制す」を警察視点で描いた作品。つまり、法を根拠として設置されている警察が超法規的な手段をもって目的を達成しようとする様を描いた作品。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-12-02 20:12:49) |
8. マッドマックス 怒りのデス・ロード
絶対に大画面で見た方が良いです。 台詞が少なく、ストーリーもほぼ無いに等しく、とにかく映像とアクション、それのみ。 ひたすら改造車vs改造車であり、一部白兵戦。 なので映像に圧倒されつつ空気感に入り込めれば高評価だったのかもしれませんが、iPadで見てしまったために画面の大きさ的な意味で全く入り込めず、面白いと感じられませんでした・・・。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-11-15 17:57:41) |
9. ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-
アニメ本編を全て見た後に続けて視聴。 美しい景色、ゆっくりとした描写、温かい気持ちになる点など本編と同様。 若干異なったのは、本編はヴァイオレットが主人公として色々な人に関わり、成長していく、という視点だが、本作は前半と後半に分かれ、手紙のやり取りをする2人がそれぞれのパートの主人公となり、その2人にヴァイオレットやベネディクトが関わる、という視点となる点。 そのため「外伝」という表現は相応しく、しかし決して本編から逸脱せず期待した通りの作りとなっていた。 そもそも本作を含む「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品は、いかに情景に入り込めるか、世界観に入り込めるか、という点が評価に大きく影響する作品であるように思う。 自分のイメージとしては、日が短くなってきた肌寒いくらいの涼しい日の夜に、自分の心が落ち着きすぎているくらい落ち着いている時に、時間を忘れてゆっくりと、余裕がある状態で見ると突き刺さる作品、というイメージ。 アニメ本編を見た時も本作を見た時もまさにこの状態に当てはまり、それ故自分にとって最高に素晴らしい作品、という評価となった。 泣くために見るわけではないが、世界観に入り込んでいるうちにいつの間にかホロリと涙がこぼれる、そんな作品と感じた。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-10-13 22:31:49) |
10. 最強のふたり
《ネタバレ》 「良い作品」という表現が一番しっくりくる。やりすぎる描写も無ければ何もないというわけでもない。不快な描写も無ければスカッとする描写もない。ただ心は温まる。そんな作品。 昔クラスメイトに障害を持った子がいて、無口な子だったが、どういう会話の流れか「同情するのが一番失礼だろ」的なニュアンスのことを言ったとき、その子が嬉しそうに「そうなんだよ!」「気を使わないでくれるのが嬉しい」みたいなことを言ってくれたのが強く印象に残っている。 全ての人がそういう発想ではないのかもしれないけど、本作のフィリップもそういう気持ちだったんじゃないかな。 [DVD(字幕)] 7点(2023-10-07 23:34:17) |
11. バーフバリ 王の凱旋
残念ながら、自分の感覚に合わず。 登場人物は全員真剣そのものだが、描写がぶっ飛んでいる。 展開の速さ的にも物理法則的にも1つ1つのシーン的にも「いやそれはないやろ・・・」のオンパレードであるが如何せん真剣な雰囲気なので「え、これ笑うとこ・・・?」のまま最後まで行ってしまった。 映像のスケールはすごく、風景や街、戦闘の俯瞰的な視点があることで規模の大きさ、迫力が把握しやすい。 しかし前情報無しでiPadで視聴してしまったことでその空気感に入り込めなかった感がある。これは自分のミス。 全体として「どう見たらいいのかわからなかった」というのが正直なところで、そのモヤモヤ感が最後まで継続してしまった。 [インターネット(吹替)] 4点(2023-09-16 21:52:45) |
12. 劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ
《ネタバレ》 アニメ本編の正統な続編。「リズと青い鳥」を見ていなくてもアニメ本編を見ていれば全く違和感なく続編として楽しめます。 「リズと青い鳥」を見たことによる補正はあるかないか程度、あっても+0.1点、みたいな印象。 劇場版だからといって何か特別なことはなく、主人公が2年生になった世界を描いているだけ。 アニメ本編では上級生の間で問題が発生し、それに主人公が関わり、なんやかんやする、といった形だったが、本作はその対象が新1年生になっている。 新1年生の間で発生している問題が見受けられ、それに主人公が関わり、やはりなんやかんやする。 「劇場版だから」といってアニメ本編の流れとは異なる尖った演出や展開を差し込まれたら「え?」と思っていたところですが、それが一切なく本当にアニメの続き、という作りとなっているところが素晴らしい。 ~以下自分にとっての本作品の見え方~ 「響け!ユーフォニアム」シリーズの凄いところって、何かを突き詰めようとする人間の感覚ないし本質を見事に描いているところ、それに尽きます。 本編でも劇場版でもはっきりと明言されていない、というかボカされていますが、結局「好きだからやってるだけ」というそれに尽きるんですよね。 この言葉は本質を突いていて、やってる理由は「好きだから」「面白いから」というただそれだけ。そこには目的も前後関係も無いんです。 つまり「周囲の人が~」とか「周囲の人からどう見られるか~」とか「それをやる意味は~」とか「将来は~」とか、まあそんなのどうでもいいとは言わないまでも、関係ないというか、考えてないというか、自分にとって発想の外なんです。 そういう打算でやってるわけじゃなく、好きだからやってたらなんか上手くなっただけなんですけど、的な。 だから質問されると困るというか面食らうというかポカーンとするというか、その答が自分自身でも良くわかってない、というのが本音で、「確かに何でこれをやってるんだろう」と自問自答を繰り返した結果辿り着く答が「ああ、好きだからやってるだけだわ」になるんですよね。 そしてそこから演繹的に発展する思考が「楽しい→自分の成長が楽しい」、「楽しい→せっかくだから何か目標作るか→将来誰かのためになればいい」といったもので、これらを表現してるのが主人公と高坂さんの思考。 しかし現実には周囲の人間がいるわけで、特に本作のような個人の技量のみではどうにもならずチームの技量が問われるジャンルについては常に周囲との関係が付きまとうし、周囲に影響されそうになるし、なんなら周囲も高める必要がある。 「好きだからやってるだけ」なんて人は僅かで、人には人それぞれの事情や考え方があり、立ち居振る舞いが異なる。 それを見事に描いているのが本作。 本質である「好きだから(周囲関係なく)やってる」を表現しているのが高坂さん、「技量はあるが周囲との関係を気にしちゃってる」のが新1年生の2人、「好きだから」をストレートに表現しているのがみどりちゃん、「好きなんだけど技量が追い付いてない」のが葉月ちゃん、「好き」のベクトルは違うが努力の積み重ねでハイレベルに到達したのが鎧塚さん、「好き」云々以前に部活としてやってるのが多くの人たち、といった描き方。 キャラクターそれぞれの「ジャンル」に対する愛の濃度、それに付随する技量が異なり、それを前提とした上での環境や考え方の違いがある。 それが見事すぎるほど見事に、非常に現実的に描かれている。 故に本作は素晴らしい、それが私の見え方です。 何よりすごいのは、「原作者さんって何かのプロ?ないし何かを極めた人?」っていうくらいに、よくその感覚を知ってるな、という点。 私は某ジャンルで瞬間最大風速世界1位を経験した人間なので、そこに至る過程を知っています。 周囲からは「将来が云々」と言われ、「それやって何の意味があるの?」と言われ、「あまりにそう言う人が多いから自分が間違っているのか?と」自分を疑い、そのプレッシャーがクオリティに影響し、でも自分を信じ、最終的に辿り着くのは「自分がそれをやる根拠?・・・楽しいからだ、好きだからだ」という結論ないし心理の流れに行き着く。 そんな私にとって、本作は「よくそんなこと知ってるな」「よくそれをここまで上手く描けるな」という感想になります。 好きなキャラクターは高坂さん。 特に初期の高坂さんの考え方はピシャリ。その通りだと共感できます。 本劇場版を見た感じ、苗字を気にする新1年生のくだりが回収されていないし、主人公の2年生編が描かれたのなら3年生編があるはずだし、といった点から、続編を強く期待しています! [インターネット(邦画)] 9点(2023-05-28 08:20:35) |
13. リズと青い鳥
静かで、美しくて、心に響く作品。 逆に言えば、動きがほぼ無く、抑揚も無く、展開の移り変わりもキャラクターの言葉すら少ない落ち着いた作品。 映像の美しさは折り紙付き。 アニメ本編を視聴後に観賞したが、本編は多くのキャラクターに焦点を当て、心理描写が非常に深く細かく、展開もテンポよく移り変わる群像劇的な様相を呈していたところ、本作はその逆で、スポットが当たる登場人物は主人公2人が大部分でそれに加え周囲のキャラクター数名のみ、台詞も多くなく、美しい映像の描写に尺が割かれ、しっとりとした空気感が終始流れ続ける。 心理描写に力が入れられているところは本編さながらでその点は安心。 本編とは違う本作特有の静かな空気感に入り込めるか否かで評価が大きく分かれそうな作品と感じた。 イメージとしては深夜の静かな環境で心の尖りがない穏やかな気持ちの状態で温かい飲み物でも片手にゆったりと視聴すると刺さる、そんな作品と感じた。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-05-28 05:04:28) |
14. 花とアリス殺人事件
原作や前後作の存在を全く知らず、ネットで高評価だったから、という理由のみで視聴。その通り、高評価です。 花とアリス「殺人事件」と言うくらいだから、日常の中に突如として訪れる事件、殺人事件。それを女の子2人が解決していくミステリ系映画かな、とか思いましたが、全く違う。断じてミステリ映画ではなく、というかミステリ要素などなく、「中学生(なんなら小学生)時代の自分にしかわからない思い出」を描いた作品です。 中学2年生時代に自分が見えていた目線、見えていた世界、その中でも特に記憶に残った出来事をものすごく丁寧に、共感できるように描いた、という感じの本作。大人になると当然大人目線の見方ができるようになるわけですが、この映画は当時の感覚を思い起こさせられる。いつも通りの日常の中に、ちょっとだけ違ったものが紛れ込む。それは転校生だったり、いつも空いていた机だったり、何考えてんのかわからない同級生だったり。 その「ちょっとだけ違ったもの」について、それに入り込むか、よくわかんないけどスルーしてなんとなく時が流れるか。その「ちょっとだけ違ったものに入り込んだ」のが本作の主人公です。中学生の時に「ちょっとだけ違ったもの」は大人の目線からしてみれば「ああそういうことね」となってしまうようなこと。だから、当時の記憶に没入して、主人公の視点に入り込めればぶっ刺さる、ものすごく良い映画だ、ということになります。 今ならわかる「周りの大人たちの優しさ」「中学生だからこそ感じたワクワクドキドキ」「中学生だったからこその無鉄砲さと自己中心さ」「解決したこともあれば、結局あれはなんだったんだろうと思いながら過ごす日々」、そこに共感させられざるを得ない。 じっとりしっくり、良い映画だと思わせられるのが本作。 360度シーン、鳥肌です。 [インターネット(邦画)] 8点(2021-02-07 18:30:52) |
15. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 日本人なら皆知ってる1945年の8月6日と8月9日、そして8月15日。 変な視点かもしれませんが、そこに生きる人々は、環境が違い、環境からくる行動が違い、環境からくる感情が違い、表現の仕方が違う。それでも根っこにあるものは今生きる人と変わらない。そんな印象を受けました。 本作のすずさんの日常的な感覚が当時の日常を生きた人の感覚と捉えれば、今の日常を生きる人の感覚と比べて何ら違いは無い。自分の信じた選択をしてガンガン前へ向かっていく人もいれば、ぼや~っとしてて周囲に流されるままの人もいる。頭ではゴチャゴチャ考えながらも、結局周囲に流されるままの人もいる。昔本当は好きだった人がいても、結局その想いは心に残したまま、全然別の人と結婚する。毎日毎日同じ作業の繰り返し。その中で自分とは折り合いがつかない人もいる。 歳と経験につれて死は日常になりつつも、自分の家族の死にはやはり涙する。 自分の選択を後悔する。しかし後悔しても何も変わらないという事にも気づく。 死んだ人が自分の息子だとは気づかなかった。遠くで突然光った光は「ん?何?」程度に思う。玉音放送に怒りを覚える。 なんというか、すごい「日常的なリアルな感覚」が詰まっていて、当時の人は現代の自分とは違う、と心のどこかで思っていた自分が凄く恥ずかしくなりましたね。違うわけないのに。 日本の戦争映画というジャンルにはまるで詳しくありませんが、見て良かった。 今は日曜日。自分はどうせきっと2日後にはそんな感覚も忘れて仕事してる。自分の日常に埋没する。でも、この映画を見るという選択をした自分を、少なくとも今この瞬間は褒めてやりたいね。 [地上波(邦画)] 9点(2019-08-04 18:48:11) |
16. GANTZ:O
《ネタバレ》 漫画で最初の方だけ読んだことありますが、最初の感想は「暗~w」です。世界観もそうなのですが、人の思考そのものが暗い。人の思考には暗い部分もあることはもちろん事実で、それをリアルに描いている、とは言えると思います。しかしそれはあくまで一面であり、いくら何でもそんなに極端じゃないだろwと思ってしまい、特に読むことにより無駄に暗くさせられる感覚があり、端的に言えば肌に合わなかったので読むのをやめてしまいました。 しかし一方で引き込まれるものがあったのも事実で、時を置いて映画を視聴。世界観はまあ暗いですが人の思考そのものは暗くない。原作どおりなのかもしれませんが、アクションにかなり振ったのが良かったのかも、と思いました。逆にアクションに振ったせいで人の思考のリアルさとか何かしらのテーマとかは見えず、まあ現代技術によるアクション映像を見る映画、という印象でした。 実写化もしてるらしいですが、これどうやって実写でやったんだ・・・w 真ん中のあの黒いボールは何なのか、あの敵は何なのか、どういうシステムなのか、等々謎すぎる部分がありまくるため、なんだかんだ次作が出たらまた見てしまうんだろうなあ。 [DVD(邦画)] 6点(2019-05-23 21:18:13) |
17. GODZILLA 星を喰う者
《ネタバレ》 面白かった。他のゴジラ作品の知識、いわゆる「思い出補正」が一切無かったのが逆に良かったのかも。 本作は「観る小説」と「現代宇宙ものSF」の融合体。派手なバトルアクションがメインに据えられた映画ではない。故に、派手な破壊シーンや戦闘シーン、映像的な動きやシンプルなストーリーを求めて観ると後悔するかも。ゴジラやギドラはあくまでも象徴や概念として描かれ、個体としての強さを主張するようには作られていない。本作の面白さは会話劇とそのテーマ自体にあり、それらが向かない、あるいは何言ってるか理解できない場合は置いてきぼりをくらう可能性が高い。作品のあり方としては、アクション映画よりもむしろ「2001年宇宙の旅」や「インターステラー」に近い。大分類はそちら側で、方向性として「人類とは」「人類の進化の帰結とは」「人類の本質とは」「仮に帰結が○○だとしたらどうするか」といったベクトルに振った印象。 ▸ゴジラ:人類が進化・発展していく上で必然的に生まれる存在であり、人類の上位種。 ▸エクシフ:超長期の宇宙漂流、超高度な演算能力、および高次元体であるギドラ(エクシフのいう神)に接触することに成功した種族であり、人類が発展しゴジラが出現したさらにその後の論理的・必然的結末(滅び)を知るものであり、それがわかっているんだから「せめて幸福な死を」と考える種族。 ▸メトフィエス:滅ぼされたエクシフの星の生き残りであり、ギドラが星を食うまでの事務員、窓口として星に干渉するもの。 ▸ギドラ:高次元体の存在であり、時空間を超越していることからおそらく四次元以上の存在であり、当然、三次元に生きる人類やゴジラにとっては干渉不能なもの。 ▸ビルサルド:高度な文明を持ち、感情という要素を廃し論理のみに生き、その科学力を持ってしてより高度な進化を遂げようとするもの。 ▸設定:人類が進化発展する→ゴジラが生まれる→星自体がゴジラと一体化しているレベルになる→高次元体(=神=ギドラ)の事務員であるメトフィエスが高次元体を召喚する条件を満たす→高次元体がおいしく星をいただいてめでたしめでたし 第3部である本作で言えば、要するに「いやうちらは高次元体先輩(神)を知ってるし、演算の結果人類は100%滅ぶことを知ってるんすよ。苦しんでどうこうしようとした結果、結局滅びるってことを知ってるんすよ。だったら無駄に苦しまずに受け入れて、神への供え物としてああ生きてる価値あった~と思って死んでいった方がまだ良くない?」というのがエクシフの主張。それに納得できないのがハルオ。 ここで面白いのが、より未来を知り、人類の結末を知っているエクシフの方が、現代に生きる我々にとってはより精神的な主張をするということ。知識量、科学力の多寡で言えば「エクシフ>ビルサルド>地球人」となるわけだけれども、より知れば知るほど、科学が発展すればするほど「論理的」ではなく「宗教的」になっていくということ。というより、「論理的帰結として最終的に行きつく先は宗教(=どうせ滅びる前提での、ささやかな精神的拠り所、ないし幸福)」ということ。宗教といえば「うわぁ・・・ないわぁ・・・」っていうまあ偏見オンリーな感覚しかなかったけど、そいういう見方もあるのかと思わされた。新たな考え方が1つ増えた感じ。もちろんハマりはしない。 ハルオはハルオできっちり主人公らしい役を与えられ、主人公らしい立ち回りをしている。第3部まで騙され続け、全てを知った上での最終シーン。解釈がわかれそうだが、メトフィエスらエクシフが主張するのが要は「自らを供え物として受け入れた上での幸せな死」であるところ、ハルオは最後までその死に方に抗った、という解釈。死んでるのかどうかは描かれてないけども。 設定について、ギドラとは高次元の存在で、三次元に生きる我々からすれば干渉不能な存在。時空間や既存の物理法則に捕らわれない存在。二次元から見た時の三次元と同じ。・・・にもかかわらず、三次元と高次元の連絡役であり事務員(窓口、ビーコン)としてなんで脆弱なメトフィエスを選んだ?と思うし、エクシフがいなければ今宇宙に干渉不能ならなんでエクシフ側はそれを受け入れた?と思うし、そもそも星を喰うことに何か意味あんの?wと思うし、そこらへんの練り込みがあるならば知りたいと思った。 1~3部を見たけれど、ビルサルドの考え方にもエクシフの考え方にも非常に共感できる。だからこそ考えさせられる。だからこそ面白い。 次元という概念についてニワカ程度の知識はあり、他の洋画SF作品が好きであり、かつゴジラ作品への思い出補正が無かった私にとって、非常に面白い作品でした。 [DVD(邦画)] 8点(2019-03-18 04:56:37)(良:1票) |
18. GODZILLA 決戦機動増殖都市
《ネタバレ》 面白い。が、面白いと感じる部分は映像の美麗さと「理屈vs感情」という本作のテーマの2点。単純な対ゴジラの戦闘シーン、圧倒的なゴジラの力の描写、という点ではない。 ビルサルドの言う論理的帰結とエクシフの言う知性・感情・本質。この間に揺れ動くのが主人公ハルオ。この構図は他の映画でもまあよくあるものなんだけれども、やはりそれは永遠のテーマとも言うべきもので、故にそれを上手く描けている作品は私が面白いと思ってしまう作品なのです。 ビルサルドの言う「え、ゴジラが人類の上位互換なら、それを模してさらにその上を行く道を選べば良いじゃない。その個体にしか存在しない肉体だの感情などに捕らわれる意味ってなんかあるの?」という主張は、非常に理解できる。合理的ではあるが、合理的でしかない。人が人たる故に感情が存在し、その葛藤こそ知性であるとエクシフは言う(含みはあるけど)。エクシフの主張は、非常に主観的ではあるが共感はでき、そして傲慢でもある。本作では薄ーく隠し気味に主張される「傲慢」。これこそが現時点で寿命というものが存在する人間の本質であり「感情による理屈」の根源だと思うんだよね。 ・・・と、いったことを考えさせてくれる作品が、私は好みなのです。 作中の進行に視点を当てると、やや雑な点が目立つ。孤立無援かつ母船と連絡が付く状況で独断先行する意味は無く、まずは連絡して状況を完全に伝えるべきだし、相手に索敵されない上に圧倒的なリソースがあるのであれば索敵されない状況を維持しつつ完璧な準備を整えるべきだし、「皆の結束を」という理由のみで3機しかないヴァルチャーのうち1機に乗り込むべきではない(機体性能をフルに活かせる人物を優先するべき)等、おいおい、という点がある。 また、ゴジラはやはり圧倒的な存在感とその火力で人類を圧倒する、という点に魅力があるのも事実で、その描写が本作は薄かったようにも思う。あくまで人間ドラマ、テーマを提示するSFとして観るか否か、そのあたりで評価が分かれそうな本作です。 [DVD(邦画)] 8点(2019-03-13 02:17:34) |
19. クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ
《ネタバレ》 中々に面白かった。が、なんというかもったいねえw ▸アニメとはいえさすがに子供だけで宇宙船操縦すんのは無理やろw ⇒ まあ隣にいたシリリが教えたんでしょう、で一応納得できる。 ▸大人に戻るくだり ⇒ 子供っぽかったシリリが大人になる、その内面的なシリリの成長によってスクスクパワーが使えるようになる・・・という展開もアリだった気がする。まあわざと周囲を子供にしてスクスクパワーを使わせる、というのも頭脳プレー的要素があって良いとは思うが、それだったらスクスクパワーは親父のみ使える、もしくは大人にならないと使えない、という設定でも良かった気がする。シリリがスクスクパワーを使えないのは生まれつき、と思っていたが実は・・・と思ったがマジで生まれつきだったんかいw ▸ラストシーン ⇒ ED突入時、それで終わるんかい!?・・・いやそんなわけないよね、と思い、案の定後日談があったが、そこで迎えに来るのは母親ではなく親父であってほしかった。そしてシリリも嬉しそうに戻る的な。なんだかんだ言って家族愛がある、的な。親父が強がって横向きながら「帰るぞ、シリリ」って言ってる画が想像できるし、道中で親父は悪逆非道な男ではないという描写があったため、シリリがしんのすけから影響を受けたように、シリリの親父がひろしから影響を受けた、って描写でも良かったと思う。 ▸「戦争でもサービス残業でもすればいい」 ⇒ ワロタ。確かに同じレベルの罪だな、うん。 大人より子供が良い、クソみたいなことすんのは常に大人だ、というのはまあ確かにわかる。しかしではなぜそうなってしまうのかというと、その本質は「結局皆自分が一番大事」ってことだと思うんだよね。子供は、自分が一番大事・自分の得する行動を、と思っても、子供故に実行力が伴わない。だから現実に実行できないだけで、大人になれば影響範囲の差はあれど、ある程度実行力が伴うから、結果としてそうなる、的な。利他的に生きれる人間なんていねー、だからこそ利他的に生きられる人は正しい正しくないは置いといて、凄いと思うね。 [DVD(邦画)] 6点(2019-01-27 19:53:46) |
20. クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
《ネタバレ》 親父は家族の愛で強くなる、しかしだからといって親父も図に乗るんではなく他人の気持ちを考えろよ、という映画でした。 みさえとロボとーちゃんがすれ違う一瞬のカットと、最後の腕相撲シーンは良かった。笑いで言えば、五木ひろし(コロッケ?)はさすがに草。若い子にはわかんねーだろそれw しかし物足りなさを感じてしまうのは、今回の舞台や敵、洗脳された勢の影響範囲など、それぞれの規模が小さかったから、もしくは今作には思い出補正が無いから、そんなところかなーと思った。ただし、決してつまらなくはなかった。 [DVD(邦画)] 6点(2019-01-25 15:38:10) |