1. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 本作はチャップリン作品の中ではイマイチですが、それでもギリギリ楽しむことが出来ました。誤解を恐れずにいってしまえば、本作の作風でしたら明らかにヒッチコックのほうが楽しめるし、ヒッチコック向けの題材でもありました。 個人的にはチャップリンはやはり無声映画時代が最高だと思っていますので、この年代の作品はストレートに心に入ってきません。彼がしゃべってしまうと、それだけでもうチャップリンである必要性がないようにすら感じてしまうのです。 【K&K】さんもおっしゃるように、原題「Monsieur Verdoux(ムッシュヴェルドゥ)」を邦題では「殺人狂時代」としており、なかなかウマいです。本作はフランスに実在した殺人鬼を元にオーソン・ウェルズが脚本を書く予定だったそうですが、結果的にチャップリンが仕上げたようです。後にオーソン・ウェルズ本人が自分が原案だと吹聴したような話がWikiに掲載されていますが、横取りしたチャップリンもチャップリンかもしれません。 映画全般、騙しの五重生活はまあそれなりに楽しめますが、問題はラスト付近で見られる有名なセリフ、「一人を殺せば殺人者だが、百万人を殺せば英雄だ。私などアマチュア」等のシーンです。あまりにも取って付けたようなセリフで違和感を感じずにはいられません。これでは遠巻きながら共産主義と呼ばれても仕方がないとすら感じました。この作品をもって「平和主義」とは少々無理があります。。また、中盤、出所したての若い美女をなぜ生かしたのかの行動心理がイマイチ理解できなかったところも解せません。まあ結果的に彼女のおかげで罪と向き合うことになるキーマンな訳ですから、もう少し丁寧な心理描写や説明が欲しかったところです。 個人的には、、やはり映画に政治的理念を含んだ難しい解釈を持ち込んではならないと感じた作品でした。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-14 16:19:00)《新規》 |
2. チャップリンの独裁者
面白いシーンもありましたが、総合的に考えるとラストの演説以外はイマイチだったように感じます。チャップリンの映画の中では最も売れた作品だそうですが、個人的にはマンセーするほどではありませんでした。いえいえ十分に面白い作品でしたが・・ 彼がしゃべるのが嫌なのです。個人的には1920年代までのしゃべらないチャップリンが好きです。 やはりこの作品の肝は1940年代当時、全世界に向けて自分の顔と名前を晒して、、(暗に)正々堂々と批判するのが凄いです。批判する相手が相手なだけに、、ほとんど正気の沙汰とは思えない行動です。ただし、演説のほうは決してヒルケン(ヒトラー)や独裁だけを批判している訳ではなく、民主主義や機械主義(産業主義)からくる貧欲によって世界がゆがんでいることを憂いています。また人類は知識や富を得たことで他人を思いやらなくなったとも。 人種を超えてもっと扶助精神で助け合って対等かつ自由であるべきといいいますが、この理念は一歩間違えば共産主義とも思えなくもない考え方です。最後には肌の色や上下は関係なく互いが互いの犠牲にならないよう、お互い様の精神で自由な人生を楽しめと締めくくります。非常によく出来た演説ではありますが、お金持ち&権力を持った人からこの理念を遂行しないといけない訳なので、やはりちょっと理想論過ぎるかなと感じてしまいました。(ゲットーの人たちは自分の命すら危うかった訳で、他人を助けている場合ではなかったはずです) で、本作のお笑いポイントはやはりコインのシーンや、ヒルケンがイタリアの首相に頭が上がらないところなどでしょうかw あと地味にヒルケンの秘書たちの態度や仕草も笑えました。。ヒルケンとゲットーの床屋が瓜二つの姿であった説明が一切なく少々違和感を覚えますし、本作は喜劇というには少し真面目過ぎる印象です。政治色が強い作品なのであえて厳しめの点数にしておきます。(評価的には7点ですがあえて6点としました) [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-08 17:38:27) |
3. レベッカ(1940)
名作を知らずに死ぬのは勿体無いということで、ヒッチコックを見ることにしました。手始めに有名なのに見ていなかった作品から。 【なんとなく微妙にネタバレしています】 「レベッカ」ヒッチコック映画の中でもゴシック調で正統派の作品。私=ド・ウィンター夫人(ジョーン・フォンテイン)は一般的な日本人が考えるであろう理想のシンデレラ像を演じていて必見の美しさ。残念ながら私は原作を知りませんが、ストーリーは非常に丁寧かつひねりの利いた流れになっていて後半は目が離せません。序盤のぬるいシンデレラストーリーは微妙ですが、、ダンヴァース家政婦長(ジュディス・アンダーソン)が出て来てから一気に話が面白くなってきます。 ネタバレするので多くは書けませんが、1940年の作品でこれほど凝ったシナリオと二転三転する流れには当時の人はさぞ驚いたことでしょう。2023年の現代でも全く色褪せないシナリオ、というか、時代を超えても陳腐に見せないヒッチコックの手腕を称賛すべきなのでしょう。荘厳なお屋敷と美しい海がカラーで見られないのは本当に残念。 他の方も書いてらっしゃいますが、題名にもなっている「レベッカ」故前夫人が一切でてこないのも素晴らしいです。普通なら霊的な何かでレベッカを見せたくなるはずですが、そういったそぶりは一切見せません。そのくせ、やたらと”R”と主張した物品が画面に多く登場し、キャストらのセリフからもいかにレベッカが素晴らしかったのか(過去形)が作中しきりに語られます。観客=(私)=新夫人(ジョーン・フォンテイン)の図式が見事に合致しており、新夫人と一緒に観客も映画の中で疎外された感じや恐怖感が味わえます。また、ダンヴァース夫人の見た目と雰囲気が素晴らし過ぎて映画をより一層深いモノへと昇華させていますが、これを下手な監督がやると途端にギャグになってしまうのでヒッチコック・タッチの魔法の一つでしょう。 序盤のぬるい恋愛要素、強烈な印象のホッパー夫人:フローレンス・ベイツが伏線になっていなかった点を考慮してあえて1点減点としておきます。ホッパー夫人に関しては手紙も含め、食材が余ってしまったような印象になってしまいました。※【tottoko】さんが指摘していますが、ラストにヒロインが犬を連れて再会するシーンはあまりにも陳腐でした。犬を引っ張ってくると安っぽい成金女にしか見えませんので、せめて犬は抱いていて欲しかったところです。劇中設定の通り、彼女の躾の悪さを感じてしまった一コマです。 [インターネット(吹替)] 9点(2023-10-07 10:41:05) |
4. ロープ
名作を知らずに死ぬのは勿体無いということで、ヒッチコックを見ることにしました。手始めに有名だけど見ていなかった作品から。 「ロープ」ヒッチコック作品では珍しい倒叙式、なおかつ舞台劇(シーンは室内のみ)という、会話が中心のお芝居型の作品です。殺しの動機とその後の行動心理がかなり強引なので違和感を覚える方も多いようですが、この強引な部分さえスルーできれば会話劇としてはかなり高い完成度で物語が成立しています。ヒッチコック本人は駄作だと思っているようですが、とにかくこの密室シチュエーションが非常によく出来ていて抜群に面白いのです。 ネタバレになるので詳細は省きますが、ミセス・ウィルソンさん(イディス・エヴァンソン)が手際よく後片付けしているシーンのハラハラドキドキ具合ったら!! 見つかりそうになるこのハラハラドキドキ感が夕食を食べながら小さなTVで見るには最高の塩梅で、人物表現もバランスが良く誰一人として無駄な人物が出ていません。会話にも無理がなく、見つかるかもしれないというギリギリの攻防が小さな部屋で繰り広げられる様はもう最高(笑)としか表現のしようがありません。 このドキドキ感は死体がどこにあるか知っている観客だけに与えられた特権で、同時に死体を隠した犯人たちの顔が徐々に青ざめていく流れも楽しむことができます。まさに倒叙式とワンカット風味の様式美が最大限に生かされた素晴らしい演出の賜物で、観客はもう居ても立ってもいられなくなります。ルーパート教授(ジェームズ・スチュワート)の推理をセリフで見せ切る流れも素晴らしいし、演奏家=ピアノで心情を表現できていて音楽も申し分ありません。ロープの使われ方も最高。ラストが少し説教臭いですが、今の時代の価値観で考えてはいけません。60~70年前の作品なので当時の時代背景を考えるとまあこんなもんでしょう。ほぼ文句なしの素晴らしい作品でした!これは最高! [インターネット(吹替)] 9点(2023-10-05 13:21:16)(良:1票) |
5. カサブランカ
《ネタバレ》 有名な「カサブランカ」!やっと見ることができました!皆さん同様、まずリック(ハンフリー・ボガート)の渋さとイルザ(イングリッド・バーグマン)の超絶な可憐さに尽きます!! ラズロ(ポール・ヘンリード)もかなりカッコいいのですが、リックと比べてしまうとやはり霞みます。ストーリーもよく考えられていて、二転三転する流れもスマート。戦争を戦場ではない外野側から描いている点もよくて、戦争(という背景)によって引き裂かれた男女が結構美しく描かれています。イルザに関しては少々不貞があるもののギリセーフという形で描かれていますが、結婚していたことを隠してリックと付き合っている時点でアウトでしょう。でもイイんですよ綺麗な女はこういうものなのですよ。キリ 昨夜はどこへ? そんな昔のことは覚えていないな 今夜会える? そんな先のことは判らないよ 君の瞳に乾杯 ×4 古いが故ですがB&Wであるおかげで本当にクールすぎる映画に仕上がっています。ストーリーも役者も結末も全てにおいてほぼ文句なしでしょう。しかしながら2022年では既に古すぎてネタ映画と化していますので、現代的な視点で見ると個人的には5点程度。サム(ドリー・ウィルソン)の「As Time Goes By」のピアノ演奏と歌声に+2点献上といたしました。(皆さん「ラ・マルセイエーズ」のシーンが高評価ですが、私個人としては特に何とも思わない程度のシーンでした。。) [インターネット(字幕)] 7点(2022-09-08 14:38:54) |
6. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 タイトルくらいは知っていましたが、今回ようやく鑑賞するに至りました。やたらと高評価が多いので期待しましたが、まあこんなもんかなといった印象でした。モノクロ作品に先入観も苦手意識もありませんが、やはりあまりにも古すぎます。まあモノクロでもチャップリンやヘプバーンの映画はそれなりに楽しめるので、やはり私には合わない作品だったというのが率直な感想です。 この映画が言わんとしていることはよく理解できますし大いに納得もできます。そういった意味では素晴らしい作品でしたが、だからといって「映画」としての総合的な高評価にはつながらなかったです。ただし、ちっぽけな自分(私自身)でも、もし居なかったら今の生活(自分の周りの世界)がどう変わるのか?といった意味ではなかなか興味深い作品でした。敬意を表してこの点数で。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-09-03 14:06:43) |