1. チャップリンのニューヨークの王様
《ネタバレ》 チャップリン最後の映画ということでしたが、イマイチ何を描きたかったのかよく判らない作品になっています。色々と考察等読んでみると、どうやらアメリカの政治や社会に不満があってそれを皮肉っているようですが、イマイチそれも届いていないように感じます。そもそもアメリカを追放された後にそのようなメッセージを発しても負け惜しみにしかならず、このようなことはすべきではなかったようにすら感じました。 本作と併せて見た「ライムライト」のほうがずっと地に足がついた作品に仕上がっています。ただ、本作も酷評するほど悪くもなく、まあいってしまえば可もなく不可もなくといった凡唐な作品でした。チャップリン最後の作品として映画ファンとしては押さえておきたい作品ではありますが、個人的には本作ではなく「ライムライト」のほうを押さえるべきだとも感じます。 想像の域を出ませんが、第二次世界大戦が終わり10年も過ぎた時代です。アメリカ的にいうなら”アメリカの黄金期”ですので、色んな意味で新しい価値観や生き方が芽生えていた時期でしょう。そういった新しいジェネレーションの中で、チャップリンの価値観ではもう世の中にはついていけず、アメリカからもつまはじきにされた彼の心情をつづった作品なのかもしれません。しかしそれすらもイマイチ観客の心には届いていないように感じる寂しいラストを飾った作品だったといわざるを得ないです。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-14 16:52:54)《新規》 |
2. ライムライト
《ネタバレ》 名作を知らずに死ぬのは惜しいということで、チャップリンとヒッチコックを見ています。80作品ほどあるチャップリンですが有名作品は大分網羅しつつあります。 本作「ライムライト」はとても良かったです。しかしこの映画は全盛期のチャップリンを知っているという前提で見るべき作品です。カルヴェロ=チャップリンの過去の栄光を深く知っていればいるほど、この映画でカルヴェロが置かれている状況に共感できる作りになっています。また、年齢的にもカルヴェロに近いほど共感を呼ぶウマい作りにもなっています。 設定自体はかなりご都合主義で、まず自分の子供より若い女性とこのようなウハウハなシチュエーションになることなどまずあり得ないし、しかもそれがプリマを約束されるような才能豊かな美女では、、あまりにも出来過ぎた話です。まあこの映画で描きたかった部分はそこではないのでしょうから、そこは華麗にスルーすべき部分だとは感じますが。 この映画で一番に描きたかったのはやはり無償の愛だと思います。いわゆる本来人間としてあるべき「愛」の形を映画に残したかったものだと思います。カルヴェロとテリーのバックボーンが詳細に描かれていませんので、彼らの過去は想像で補完するしかありませんが、真に誠実な二人が出会い、真に誠実に、、互いを思いやった結果の物語なのだろうと感じます。また、バレエのシーンがこれ単体で見てもとてもよくできています。モノクロであるが故、テリーの姿が余計に美しく見えます。半面前半のカルヴェロのお寒いシーンは見ていて少々痛々しく、これが計算で成り立っているとするならお見事ですが・・。 ストレートに、、愛、生と死、老いに真正面から向き合った名作。嫌味がなくて美しい作品ですので、雑念や疑念を捨ててこの世界観に飛び込んでみてください。映画ファンでしたら見るべき名作の一つなのは間違いないです。 [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-14 16:23:59)(良:1票) 《更新》 |
3. 泥棒成金
全くヒッチコックらしくない映画でしたが、テクニカラー&ビスタビジョンで美しいヨーロッパの景色が鮮やかな色合いで堪能できる素敵な作品。シネスコと異なり圧縮されていないビスタビジョンは非常に美しく、70年ほど前の映画とは思えません。またWikiによるとヒッチコックとしては初のワイドスクリーン作品だったようで、車での長回しのシーンなども凝っていてとても美しく記録されています。 特筆すべきはダブル主演の「ケーリー・グラント」と「グレース・ケリー」のスーパーカップルがとにかく優雅で美しいということ。この甘美なカップルが美しいヨーロッパの景色を背景に華麗に振る舞う姿はまさに浮世離れした美しさで、スクリーンの中だけで繰り広げられる夢の世界に酔いしれることができる稀な作品です。 フランシス・ドッジの推理小説を原作にしているだけに話にも安定感があり、宝石が盗まれる過程や準備、謎にも破綻がありません。確かに21世紀の感覚で見てしまうと少々陳腐な部分もありますが、前述のケーリー・グラントとグレース・ケリーの圧倒的なスター性から陳腐さは些細なことのように思えてしまいます。また、彼らがランチデートでドライブするシーンの車のギミックも素晴らしく、到着した丘の上からモナコ市街が一望できるシーンは最高すぎました。鳥の足を食べた後にキスしたら鳥の味しかせんやろな~とか、、なぜ合成にしちゃったのかとか、、色々意味深なシーンです。有名な話ですが皮肉にもこの美しいシーンが撮影された付近でグレースケリーは車を運転中に亡くなっています。(脳梗塞&転落) ラストの対決が少々退屈しますが今の時代感覚で見てはいけません。真犯人もお決まりの展開ですが、本作はジャンル的には一応「サスペンス&コメディ&ロマンス」なので、結末としてはまあこんなものです。どちらかというとケリー嬢の圧倒的な美しさから「ロマンス」が一番強調されるべき部分ではないでしょうか。 本サイトのレビューでは低評価ですが、映画ファン、グレース・ケリーファンでしたら一度は見ておくべき名作です。後の大ヒットシリーズ「007ジェームズ・ボンド」にも多大な影響を与えたはずなので、007ファンも見て損のない作品です。(というか本作のほうがより007ぽいかも) [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-03 11:54:19) |
4. ダイヤルMを廻せ!
《ネタバレ》 死ぬまでに名作をみておけ、ということでヒッチコックを見ています。皆さん、ハズレを引きたくなければヒッチコックを選んでおけば基本的には大体どれも面白く、さすがヒッチコックといった抜群の安定感です。 本作「ダイヤルMを廻せ!」はミステリとしては極めて完成度が高い作品でした。まさにクラシックで正統派の映画、倒叙方式であるがゆえにとにかくハラハラドキドキしっぱなしです。またグレース・ケリー嬢の美しさといったらもうね・・ シミ―ズ姿で首を絞められるシーンは名シーンに認定しておきます。 ただ気に入らない点も少しあります。まず「時計が止まっていた」というのは解せない。パーティ会場であれば幾らでも他に時計はあったハズだし、犯行当日に犯人が自分の腕時計に固着する必要など全くなく、むしろタイミングが重要な犯行を犯す前であればしきりに時計を探すのが自然だったと思います。また鍵のカラクリにしても、幾ら7~80年前とはいえ他人のマンションと自室の鍵が見分けがつかないというのも少々無理があったような気がしました。 ラストがハッピーエンドになっていますが、皆さんご指摘のように不倫の末のアレですから私もモヤっとした感覚が残りました。不倫の末にお金持ちの令嬢で超絶美人のグレース嬢をさらっていった訳ですから、私でも軽く殺意が湧きますw 結果的に若干整合性が取れない部分もありましたが、とにもかくにも犯行間際のあのドキドキ具合ったらないデス!!本当に素晴らしい映画ですので未見の方はぜひ一度はお試しください!(本作の監督カメオ出演はかなり笑えますので必見) PS 余談ですが、 Wikipediaによると”ダイヤルM”とは(Murder=殺人の頭文字M)だそうです。また、原題:Dial M for Murder を「殺人はダイヤルMまで!」とせずかなり飛躍した「ダイヤルMを廻せ!」にした邦題のセンスは本当に素晴らしい。あと鍵に関してもWikiに書かれていて、当時の英国アパートはホテルと同じ形式で、鍵を持たずに外にでると自動的に締め出される仕組みになっていたそうです。このラッチタイプのドアの関係から、どのお宅も同じ鍵の形状であった可能性はありそうです。。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-24 17:42:46) |
5. 北北西に進路を取れ
死ぬまでに名作をみておけ、ということでヒッチコックを見ています。皆さん、ハズレを引きたくなければヒッチコックを選んでおけば基本的には大体どれも面白く、さすがヒッチコックといった抜群の安定感です。 本作「北北西に進路を取れ」(North by Northwest)ですが、まずタイトルがやたらとカッコいい。調べてみるとこの表記の仕方は存在しない方位を示しているそうで、Wikipediaによると、北北西は「North-NorthWest(NNW)」が正しいようです。存在しない方位を示してあるのもまた余計にカッコいいです。またアカデミー脚本賞、編集賞、美術賞にノミネートされているだけあって、脚本が非常によく出来ていて最初から最後までずっと面白いまま突っ走ります。特に後半に向けてサスペンス色が深まる飛行機爆破のペーシングシーンは本当に印象深くて素敵なシーンでした。 ただ、ツッコミ所は色々と多めです。普通の広告マンだった主人公ロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)はいつも冷静沈着で、なぜか毎回うまくピンチを脱します。マザコンでバツ2の広告マンにしてはちょっと度胸がありすぎるし、とにかく落ち着いていて貫禄がありすぎます。また美しいイヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)も、もとは普通の人だったと語られますが、まるで峰不二子ばりの本格スパイを地で行っています。26才でこの落ち着きはちょっと異常なくらいだし、ストーリー上、タウンゼント(フィリップ・ヴァンダム)についていく気満々だったようですが、それほど惚れているようにも見えません。結果的に終始よくわからないキャラを貫いていて、まさに峰不二子を地で行っていて少々不自然でした。 007シリーズに多大な影響を及ぼしたといわれますが、ホントにその通りだと感じました。初期のボンド作品よりずっと007なのが軽く笑っちゃうくらいです。粗はあるものの倒叙システムもよく効いていますし、結果的に面白ければ問題ないと言わしめるくらい脚本がよく出来ています。ちゅっちゅウフフで反転ハッピーエンドラストも本当に素敵でした。まあ文句なしでしょう!(ちなみに本作の監督カメオ出演は油断してると見逃がしますよ、私も見逃しました) [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-24 17:35:44) |
6. お熱いのがお好き
脚本がよく出来ていて、マリリン・モンローの美声と美貌も併せて堪能できる三拍子揃った作品となっています。説明なしに各キャラクターの性格を見せる匠技も上手く機能しており、流石ビリー・ワイルダー監督脚本といったところです。まあそもそも論、各キャラの設定自体に割と無理がある訳ですが、この時代特有のワザとらしい作り物のノリにシレっと乗っかるのが正しい鑑賞方法でもあったりします。 全ての出演陣が魅力的ですが個人的には緩衝材的な役目を担ったダフネ(ジャック・レモン)が素敵でした。ジョー・E・ブラウン扮するオズグッド・フィールディング3世に惚れられるシーンが極めて重要で、この設定のおかげで話が何倍にも広がっています。ダフネが嫌な顔をしてもなんだか憎めなくて素敵なのですが、対するジョセフィン(トニー・カーティス)は美味しいところを全て持って行ってしまって、、軽く腹が立つレベルでした。しかしながら確かに男前で度胸もあって頭も切れるので仕方がないところでしょうか。。船でのラブシーンは彼の騙しの真骨頂といった感じで腹が立つシーンだったりもしますww ラストがキレイにまとまり過ぎていますが、それは近年の凝り過ぎた映画に慣れてしまった弊害で、本来楽しい映画体験には「ハッピーエンド」が欠かせない要素の一つです。カサブランカのように悲しい結末を迎えるのもアリですが、本作は喜劇なのでやはり夕陽をバックにハッピーエンドが正解です。 気になる点としては、アメリカ特有の自由奔放&O型気質(いわゆるヤンキー気質)が目立つ点です。嘘をつきまくって平気で自分を正当化しますし、結果的に上手く収まれば経過は関係ないだろという強気なヤンキー気質が強く出ています。この点において誠実さに欠けると見るか自由奔放で楽しそうと見るかで評価が別れるかもしれません。まあ喜劇作品なので難しい話は抜きにして楽しんだもの勝ちでしょうけど。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-21 12:32:40) |
7. 麗しのサブリナ
《ネタバレ》 地上波4K字幕、100インチスクリーンにて鑑賞。「アパートの鍵貸します」「お熱いのがお好き」のビリーワイルダー監督・脚本の本作。主演にオードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガート、ウィリアム・ホールデンという完璧な布陣で非常に良くできた面白い作品でした。ただ皆さんご指摘のように、ボガートとホールデンがオッサン過ぎて違和感ありまくりです。この点は本当に残念でしたが、当時他にボガートのレベルで演技ができる若手が居たかどうか。。 ポールニューマン、ロジャームーア、チャールトン・ヘストン、マーロン・ブランド、クリストファー・リー、チャールズ・ブロンソン、ビック・モロー、マックス・フォン・シドー等、挙げてもキリがありませんが、みんな微妙に合わないような気はします(兄ロジャームーア、弟チャールズ・ブロンソンとかウケるし)。。とにかく、、ボガートのように哀愁漂いつつ仕事と家族と好きになっちゃった女性の三者に挟まれた複雑な演技ができる人はなかなかいないでしょう。言葉少なに、それぞれの状況をよく理解し最後まで自分を犠牲にして落としどころを探る演技は見事でした。 ヘプバーンがフラフラし過ぎという意見も見られますが、22歳設定おフランス帰りの美人さんならこれくらいは当たり前だと思います。そもそも論、問題なのは10代のサブリナ(ダイヤの原石)を見抜けなかった兄弟二人の目は完全に節穴だったということ。とにかく、年齢問題を抜きにすれば脚本や設定は非常に面白い作品でした。 昔の映画らしく随所にちりばめられたセリフも素晴らしかったです。帽子ネタも美しいしバナナの歌も最高、バラ色の人生の歌も素敵、フランス語の美しさから言葉を伝授する流れも今見ても洗練されており、もう何から何まで画面に酔いしれたい美しさです。今時の映画と違ってよく考えられていましたが、惜しいのは料理修行に行ったのにそれが反映されていなかった点、サブリナがレディに成長するきっかけとなった男爵ネタも手紙だけで終わりなんてもったいなさすぎました。 総じて年齢問題以外は素敵な作品、不動の名作認定で間違いないでしょう。 [地上波(字幕)] 8点(2024-08-15 12:31:13) |
8. 七人の侍
《ネタバレ》 一生に一度は見るべき名作ですが、人生の後半に差し掛かってようやく鑑賞できました。かなりの長時間作品でしたので見る前は腰が重たかったのですが、一度見始めるてみるとあっという間、噂通りの素敵な作品でした。(4KTV録画にて) 字幕必須ではありますが、導入部も非常にスマートで分かりやすい。もちろん中盤の人集めも楽しくてワクワクさせられますが、「7人」は少々多すぎてキャラ渋滞が発生していたように感じました。勘兵衛(志村喬)、菊千代(三船敏郎)、久蔵(宮口精二)、勝四郎(木村功)、七郎次(加東大介)の5人で十分で、五郎兵衛が平八を見つけてくるという、無駄な人物が無駄な人物をつれてきた感はぬぐえませんでした。 菊千代の演技が少々鼻につきますが、でも彼のおかげで緩急のバランスが良くなっていたのもまた事実。また彼が実質的な主人公で、最後の最後で壮絶な見せ場が待っています。「絶対何か問題が起きるだろうなぁ」という、志乃(津島恵子)と勝四郎のパートも面白くて目が離せませんが、何となく最後は適当に終わってしまいました。(まあ男と女ってこういうものなのかもしれない) 終盤の戦いパートも非常に丁寧に描かれていて、順に墨で×をつける流れや大雨の流れは心底胸アツでした。 オチのつけ方が賛否ありそうな流れでしたが、まあ・・「侍ってカッコいいよね」で終わらせてもいい映画じゃないでしょうか。定年したらもう一度ゆっくり見たい名作でした。 [地上波(邦画)] 8点(2024-03-21 17:20:26) |
9. めまい(1958)
《ネタバレ》 名作を知らずに死ぬのは勿体無いということで、ヒッチコックを見ています。「めまい」ヒッチコックの中でも特に人気が高そうな作品でしたので、、大いに期待しましたがイマイチでした。私の価値観では本作「めまい」と「鳥」は世界七不思議に数えられそうなくらい微妙な作品でした。 個人的に”アメリカの良心”ことジェームズ・スチュワートはあまり好きではなくて、本作も彼が主役であることに軽くめまいが・・ また、裏窓ではグレース・ケリー、本作ではキム・ノヴァクとちゅっちゅウフフなシーンがあって、そういった側面からもなんだかむかつく俳優の一人だったりもします。 ストーリーのほうもやたらともったいぶった前半と、ネタが割れてからの後半のスピード感があまりにも違い過ぎて疲れました。特に前半のもたつき=”情緒的”と好意的に考え楽しんでいましたが、森に行ったり海に行ったり、急に熱いキスでメロドラマ風味になったりと、終始訳ワカメで落ち着きがありません。 めまいを利用したトリックも少し無理があって、もしもあのままファーガソンが上まで上がってきてしまったら逃げ道がない点は大いに文句を言いたいです。また、元刑事のファーガソンがあの程度のことで死人が出た現場から不自然に立ち去ることも違和感があるし、その彼がその後神経衰弱に陥るのもあまりにもご都合主義です。極めつけは、元刑事を利用しておいて同じサンフランシスコで生活しているキム・ノヴァクの設定は無いです。普通ならエルスター(トム・ヘルモア)のように外国に逃亡すべき案件です。 文句たらたらですが結論しては見て損したという感じは全くなく、名作を見たという充足感が強めなのが不思議な作品です。世界的名作に敬意を表してかなり甘めの点数です。 [地上波(字幕)] 7点(2023-12-29 18:27:09)(良:1票) |
10. 理由なき反抗
かの有名な、、 ジェームズ・ディーンの赤ジャケット&白Tシャツ、ジーンズ姿が見られる名作。名作と名高い割には作品自体の価値はそんなに高く無く、ジェームズ・ディーンの自動車事故死の直後にアメリカで公開されたという特異性のみで神格化された作品なのではないかと思われます。(小森のおばちゃまには申し訳ないですが、そもそもジェームズ・ディーンの主演作って3本しかないんですよね) そうはいっても内容的には見る部分は割と多く、家族の在り方、男の在り方、年長者(父)の振る舞い方など、泥臭い”何か”を感じ取ることができる作品でもあります。(まあ似たような作品はほかにも沢山ありますが) 主演三名のどの家庭でも男が弱くて女が強い印象がありますが、日本でも昔から「かかあ天下」のほうが家庭が上手くいくという話は定説として語られています。へらへらしているようで、いざという時には男を発揮する必要があるのはどこの世界でも同じようです。 言いたいことは判るのですがとにかく粗削り、時代背景もあると思いますがかなり荒くて暗い。チキンランや革ジャン、飛び出しナイフをみていると、20年近く後に公開されることになるアメリカン・グラフィティを思い出してしまいました。久しぶりにアメリカン・グラフィティも再見してみたくなりました。 印象的だったのはジェームズ・ディーンの笑い方。ブラピは彼を意識しているんだなということが判りました。とにかくジェームズ・ディーンがカッコいい。これに尽きる作品ですし、映画ファンならやはり一度は見ておくべきアイコニックな作品であることは事実です。歴史的な作品ということで少々甘めの点数にしておきます。 [地上波(字幕)] 7点(2023-10-18 12:34:30) |
11. 見知らぬ乗客
名作を知らずに死ぬのは勿体無いということで、ヒッチコックを見ることにしました。手始めに有名だけど見ていなかった作品から始めます。 「見知らぬ乗客」私にとってはもう満点以外の点数がありませんでした。私の中ではヒッチ映画の代名詞的な作品になってしまったと思います。極めてシンプルな構図ながらその仕掛けは非常に巧妙で、現代でも十分に通用する映画だと思われます。 誰しも旅の途中で知らない人に話しかけられた経験があるはず。たまたま仲良くなった相手から交換殺人を持ちかけられ、冗談だと思っていたら相手は犯行を実行してしまうというとても恐ろしい映画です。「さあ、次は君の番だよ!恩恵を受けたんだからきちんと返せよ」と殺人を迫られる恐怖はすさまじいもので、脅しの理由付けも”共犯関係””動機””嘘の自供”と、無理がありません。 本作でもヒッチコック・タッチが存分に発揮されていて、メガネに犯行が映っていたり、階段の上にたたずむ男だったり、テニスの観客で一人だけ首が動かない、テニスの試合とライターを拾う流れをシンクロさせたりと、ハラハラドキドキの連続です。ラストに賛否があるようですが、これでいいと思います。いや、これじゃないといけないと思います。 本作のカメオ出演も比較的優しくて誰でもすぐに見つかると思います。文句なし10点作品! [インターネット(字幕)] 10点(2023-10-03 12:38:13) |
12. 裏窓(1954)
《ネタバレ》 序盤から妙に面白い。この映画が色褪せないのはやはり「他人の生活をのぞき見る」ことの普遍性でしょうか。またミザリーを書いたキングが参考にしたかどうかは知りませんが、主人公がギプスで歩けないというシチュエーションは秀逸、否応なしに観客の期待値も上がるというもの。 主人公ジェフリーズ(ジェームズ・スチュワート)のグズっぷりがなぜか心地よく、個人的には「素晴らしき哉、人生!」よりも、「ロープ」よりもずっとらしくて好印象でした。対するリザ(グレース・ケリー)がちょっと浮いています。もちろん最高に美しいのですが、なぜ銀幕のスター、もしくはスーパーモデルの彼女がこんな裏ぶれた中年カメラマンに惚れているのか説明はありません。おそらくこのシチュエーションコメディ&サスペンスに理由などは野暮なのでしょう、ただの登場人物なのでしょうから。 表通りがほんの少しだけ見えているのは最高に素晴らしいです。ストーリー上も表通りが効果的に使われていますが、この”ほんの少しだけ見せる”塩梅が絶妙で、ほとんどのセリフを排し、管理人、ダンサー、ピアニスト、犬を飼っている夫婦、ミスロンリー、そしてメインの殺人窓をほんの少しのシーンだけで判りやすく表現しています。とにかく窓や音楽、夕日の赤などの使われ方が絶妙に上手くて飽きさせません。(皆さまご存知と思いますが、売れない作曲家宅の時計のネジを回すヒッチコックの顔も注目ポイントの一つ) ステラ(セルマ・リッター)のセリフも観客の気持ちを代弁していて最高です。皆さん同様、当時20代半ばグレースケリー様(カラー)のちゅっちゅウフフなシーンも拝めて最高。映画って脚本とアイデア、そしてワンポイントの輝き(グレースのことね)でここまで面白くなるんだという教科書のような作品でした。 終盤の女だけの冒険シーンで気分は最高潮に達し、そのまま対決→解決の怒涛の流れが素晴らしすぎます。真相をグダグダ説明しないスマートなラストシーンは現代でも十分通用するベストな編集です。結末を観客に委ねたおかげで後世まで語り継がれる名作になったと思います。ジェフリーズの部屋にやってきた男、両足のギブス、嬉しそうに看病するリザ、察するにはこれで十分です。とにかく文句なし喜劇作品の名作だと思います! [地上波(字幕)] 9点(2023-09-28 13:32:45)(良:1票) |
13. 十戒(1956)
《ネタバレ》 宗教映画だし超長いから一生見ることは無いと思っていましたが、何の因果かTV放送が録画されていたので見ることにしました。あんまり好きじゃありませんがやっぱユル・ブリンナーの存在感はピカイチでした。もちろんチャールトン・ヘストン(モーゼ)も安心して見ていられますし、全体的に出演者はかなり豪華で安定感のある作品だったと思います。 前半は全体的にまどろっこしい感じでゆったり流れますが、見方を変えれば丁寧で好感触でした。逆にインターミッション後の流れは少々強引で突飛な感じですが、まあ宗教映画といえばこんなもんでしょうか。ユダヤ民族が特別だと思いあがる価値観はやっぱり傲慢だよなぁと感じます。現代でもエジプトを挟んで地図の上側は先進化したのに下側は今も争いが絶えないというのは、、何だか意味深だなと妙に感じ入ってしまいました。 弱肉強食というのは生命の根本でもありますので、人間のようになまじ頭脳(心)が出来てしまったが故の争いが見られました。理性ができてしまうと使う側と使われる側(持つ者と持たざる者)に分かれるのは必然なのである意味し方のない争いでしょうか。皆が等しく他人に優しくすれば世界は平和になりますが、、まあそれは無理でしょうね。一番の罪人はやっぱり神様かなぁと。。 個人的には先日見たアラビアのロレンスよりずっと楽しめたので少々甘めの点数です。 [地上波(字幕)] 7点(2023-09-18 13:37:27) |
14. OK牧場の決斗
《ネタバレ》 ガッツ石松のおかげで日本では誰もが知っている「OK牧場の決斗」。決闘と書かずに決斗と書くあたりが渋い。マカロニ系だと思い込んでいて軽くスルーしていましたがTV放送を録画できる幸運に巡り合ったため、ついに鑑賞しました。結論から書くと十分楽しめたものの、巷の評判ほどの良さは感じられなかったのが率直な感想です。マカロニ系のようなドラマチックさやむさくるしさは感じられず淡々と物語が進む印象でした。要所要所、淡々とし過ぎていて端折りすぎな箇所も目立ちました。 当時、共演にあたってはワイアット・アープ(バート・ランカスター)とドク・ホリデイ(カーク・ダグラス)はどちらのほうがギャラが高かったのでしょうかね?物語的には圧倒的にドクのほうが魅力的で面白い役柄ですが、やはり主人公といえばワイアットだろうか?面白いのは後のマカロニウェスタンを代表する大役者リー・ヴァン・クリーフがちょい役のエド・ベイリーで出ていること、最後の美味しいところをもっていくビリー・クラントン役にも当時ほぼ無名のデニス・ホッパーがキャスティングされている点が興味深いです。 物語的には何故か理由もないまま街にやってきたローラ・デンボー(ロンダ・フレミング)との恋などはよく理解できませんでした。また、ドクの恋人ケイト・フィッシャー(ジョー・ヴァン・フリート)もかなりぞんざいな描かれ方で気の毒になるくらいでしたが、まあ当時のハリウッドといえば主演女優じゃない女はこんなものでしょうか。しかし台詞は素晴らしく「どんな早打ちでももっと早い者に会う(いずれ負けるという意)」、「どうせ死ぬなら唯一の友と死にたい(ドクが決斗の朝に発したセリフ)」、「俺とお前の関係などどうでもいい(ドクとケイトの関係)」など。名セリフが聞けます。 皆さん同様、差し込まれる歌がナレーションを兼ねている点は素晴らしかったです。ミュージカル映画が嫌いな私ですがこれは許容できました。やはりドクの咳のことやローラのその後など少々尻切れトンボ的な部分には不満が残りましたが、まあ概ね楽しめました。さて今から続けて録画されている「荒野の用心棒」も見て見ましょう。 [地上波(字幕)] 7点(2023-09-07 10:29:41) |
15. 間違えられた男
BSでやっていたので再鑑賞しました。昔見た記憶ではまあ大して面白くなかった印象でしたが、改めて見てみるとやたらと細部の完成度が高くて驚きます。改めて思いますがヒッチコックとチャップリンの才能には驚愕させられると同時に、その後やはり彼ら以上の監督は出てきていないんだなと感じます。 この映画はチョット重たくて暗い流れですが落ち着いて見てみると、、伏線の貼り方や主人公マニー(ヘンリー・フォンダ)の目線がいちいち素晴らしいです。彼が見た先の情景で自身の心情や絶望を感じさせる演出は本当に、本当に映画と小説が融合したような素晴らしさです。 時代背景もありますが、警察のずさんな捜査、善良な一般市民の身勝手さ、そして当の本人(マニー)のお人よし加減(馬鹿さ加減というべきか)、などなど、色んな意味で怖い映画です。 [地上波(字幕)] 7点(2021-06-24 17:50:51) |
16. ローマの休日
「名作」これ以外の言葉が思い浮かばないくらいの映画です。最初の靴のシーンから最後のThe Endの文字までずっと目が離せなくなるのはオードリーマジックでしょう。俳優陣の表情から仕草、映画の構成からカメラワークまで全てが本当に素晴らしい。(古典という意味であって、かなりワザとらしい安っぽいシーンもあったりします) マンセーするばかりではつまらないので一つだけ屁理屈を。素直に見れば確かに純愛で奥深いストーリーですが、裏を返せばスレたブン屋が純で世間知らずな王女をたらし込んだだけともいえます。したたかなジャーナリストであれば無垢な女性を落とすのはさぞかし簡単だったことでしょう。 しかしながらブン屋とカメラマンは全く強引じゃなかったし、コミカルで優しく、宮崎アニメに出てくるキャラクターのように憎めない奴らです。この映画が名作と呼ばれる所以はやはり最後の記者会見でしょう。彼ら三人のラストの判断は素晴らしく、とても深い余韻が残ります。アン王女の表情を見ているだけで涙腺が・・ ああ、やはりまぎれもない「名作」ですコレ(笑) 監督と俳優とヒロインの全てに拍手!(ブルーレイ化&カラーバージョン求む!) [DVD(字幕)] 8点(2019-11-29 20:32:35) |