1. 魔の刻
この母と子の一途な恋の深遠部には、清冽な母子愛が流れている。たとえそれが禁忌であっても美しいものは美しい。 『魔の刻』の岩下志麻は、『約束』の岸恵子に匹敵するほど美しい。 [DVD(邦画)] 10点(2016-05-05 14:51:13) |
2. ゴジラ(1954)
戦後九年目に撮られた戦災再現映画。 この戦災は、対ゴジラ戦における圧倒的敗北によるものであるが、当時の観客にとっては十年前に実際に体験した戦災であり、十年後に体験するかもしれない核兵器戦争の戦災でもあった。 戦後九年目であるから、俳優は主役から端役に至るまで戦争体験者である。ゴジラに次々と虐殺されていく市民も、逃げまどう群集も、その演技にはただならぬ「気」がこもっている。それに加えて当時最前衛の特撮技術である。この技術にも「気」がこもっている。だから面白くなかろうはずがない。当たり前の真ん中の大傑作である。 この映画を観て考えたこと、二つ。 (1)戦争の恐怖を実感しない世代は、むしろ不幸な世代かも知れない。 (2)二十一世紀にゴジラが出現するとしたら、それは電網界の深海からである。 [DVD(邦画)] 10点(2016-03-20 00:08:17) |
3. 約束(1972)
《ネタバレ》 さいきん「美熟女」という言葉を知ったが、日本映画史上の最高の「美熟女」はこの映画のヒロインを演じた岸恵子だろう。――いや、彼女を「美熟女」なんて呼ぶのはやはり失礼だ。『約束』の岸恵子は日本映画史上の最高の「美淑女」である。 いつもそうだが、この映画が始まると私は即座にショーケンに変身する。 そして40年前の「特急しらゆき」に乗車するのだ。私と 美淑女 は、一緒に日本海沿いを北上し、南下する。 この小旅行には岸恵子 との接吻がついている。。。。。 接吻と言っても、ドサクサの際の接吻である。『約束』のヒロインは女囚だ。ちゃんと監視員がついている。 それから後の私は、岸恵子の手をこっそり握るだけしかできない。――しかし、この束縛が私たちのエロスを昇華させる。饒舌だった私は、だんだん無口になる。そして突然の、遣る瀬ない大団円。 私は、ホーッと溜息をつく。 それからDVDを取り出し、日曜日のコーヒーを啜る。 [DVD(邦画)] 10点(2016-01-11 17:26:31) |
4. 人魚伝説
これが映画だ。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 10点(2016-01-01 01:16:02) |
5. 祇園囃子
溝口健二というサディスティックな女性賛美者が、鯛のアラをすわぶるように二人の女の受難を愉しんでいる。 [DVD(邦画)] 10点(2015-12-18 21:16:23) |
6. 戦争のはらわた
これは反戦映画ではない。むしろ、その対極を指向するバイオレンス映画だ。 どのように否定してみたところで、暴力は、人間の関係性の中に、確実に、恒常的に存在する。ペキンパーはそのことを認識しているから、虚飾的な戦闘場面は撮らない。戦場本来の、ありのままの凄惨、ありのままのグロテスク、ありのままの滑稽、そしてありのままの美を描く。 それにしても、ジェームズ・コバーンはカッコ良すぎる。ラストシーンのあの哄笑を覚えているかい? ―― 男として生まれた以上、一度はああいうふうに笑ってみたいものだ。でも、たぶん、それは無理。 追記1 化石時代の話であるが。。。。。 何という映画雑誌だったか忘れたが、サム・ペキンパーが前代未聞の戦争映画を撮っているという記事が特集された。『ワイルドバンチ』以来の Bloody Sam 崇拝者である私は、心が震えた。 この特集には監督自身のインタビュー記事が掲載されていて、その中で、劇作家であり、人類学者でもあるロバート・アードレイの著作に、最近の自分は影響を受けていると語っていた。そこで私も、この映画の封切を待つあいだ、アードレイを一冊読んでみた。おもしろかった。本の題名は、『アフリカ創世記 ― 殺戮と闘争の人類史』。 追記2 『戦争のはらわた』という邦題は、実に「言い得て妙」である。皆さま方には評判が悪いようだが、私は好きだ。 [映画館(字幕)] 10点(2015-12-06 11:11:21)(良:1票) |
7. 驟雨
煮炊きに練炭を使っていた時代。 そんな時代のフツーの庶民がフツーに洩らしていた不平、不満、愚痴を、銀幕の大スターに語らせる可笑しさ。 [ビデオ(邦画)] 10点(2015-11-14 15:40:02) |
8. 鴛鴦歌合戦
「戦前」=「陰鬱なる時代」とする暗黒史観の嘘を払拭する傑作である。その明るさとバカバカしさに、大団円では爆笑しながらも落涙してしまった。 [DVD(邦画)] 10点(2015-11-03 11:56:49)(良:2票) |
9. プライベート・ライアン
素晴らしい娯楽映画でした。 [映画館(字幕)] 10点(2015-11-01 17:49:55) |
10. 洲崎パラダイス 赤信号
映画はタイムマシーンである。ぼくたちはこの映画と一緒に昭和31年の深川州崎を散策する。当時の人たちと一緒に。――それにしても、ああ、なんと愛しい人たちだろう。 [DVD(邦画)] 10点(2015-10-31 16:33:49)(良:1票) |
11. 転校生(1982)
オンナの子の日常って、なかなかタイヘンだなあ。。。。。 [映画館(邦画)] 10点(2015-08-03 20:35:25) |
12. 仁義なき戦い
○謝肉祭という言葉が実感として伝わってくる流血カーニバル。 ○人間として生まれた以上、誰も逃げることのできない権力構造。その実体を見事に描ききった傑作。 ○役者も凄い、監督も凄い、音楽も凄いが、忘れてならないのは笠原和夫の脚本。脇役も含め、登場人物のすべてがそのセリフによって躍動する。 [映画館(邦画)] 10点(2015-07-17 10:10:56) |
13. 百円の恋
こんなにカッコイイをんな、見たことがない。 [ブルーレイ(邦画)] 10点(2015-06-21 09:11:50)(良:1票) |
14. 砂の器
暗くて、重くて、救いがない。 [映画館(邦画)] 10点(2015-06-07 19:18:55) |
15. 魔女の宅急便(1989)
○宮崎駿の『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』という大傑作とは対比的作品であるが、対比的作品であるだけに、これはこれで間違いのない傑作。 ○つまらん話だけど、ジジのコトバが突然わからなくなる現象が議論されている。 ―― 私に言わせればそれは単純明快である。魔女は、子どもの黒猫とはコトバを交わすことが可能であるが、精通した黒猫とはコトバを交わせない。 ○もう一つ、つまらん話だけど、この映画の中でムード音楽ぽく流れる曲は『いつか王子様が』って曲に似てるって思わない? [DVD(邦画)] 10点(2015-06-03 20:55:48) |
16. 日本のいちばん長い日(1967)
日本が誇るエンタティンメントの傑作。 [DVD(邦画)] 10点(2015-05-31 20:59:45) |
17. 幕末太陽傳
○日本軽佻派を自称する川島雄三の傑作。けれども軽佻浮薄なニンゲンにこういう映画は撮れっこない。 監督の演出に10点。フランキー堺の神がかり的演技に10点。遊郭のセットに命を与えたすべての脇役陣(石原裕次郎を含む)に10点。合計30点を献上。 ○居残り佐平次が「相模屋」から逃走するのは、佐平次自身も気づいていないが、目の前に迫っている死を迎える場所を探すためである。 従って、最後の場面はこのほうがいい。幻のラストシーン(昭和32年の品川を走り去る佐平次)など不要である。 ○「地獄も極楽もあるもんけぇ。俺ぁまだまだ生きるんでぇ。」の捨てゼリフは、生老病死を宿命とする全人類に共通する呪文。この呪文だけでも10点。 [DVD(邦画)] 10点(2015-05-11 00:12:24) |
18. 日本の夜と霧
大島渚の最高傑作。 そして日本映画史上のとんでもない大傑作! [DVD(邦画)] 10点(2015-05-05 11:59:38) |
19. 豚と軍艦
○現在はもう存在しないが、かっては確かに存在した時間と空間。 戦後の、と言っても昭和30年代の横須賀。 それを的確に、見事に表現した歴史的傑作。 ○何という面白さ! まさしく重喜劇! ○であるが、その面白さを21世紀の人間が理解するのは困難かもしれない。 50年たって、2010年代の時間と空間が忘却されたとき、果たして『桐島、部活やめるってよ』を面白いと思うニンゲンがいるだろうか? [DVD(邦画)] 10点(2015-05-03 23:34:02)(良:1票) |
20. 麦秋(1951)
麦秋や嫁にかたづく二十七 [DVD(邦画)] 10点(2015-04-28 15:17:22) |