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1.  ざくろの色
とりわけ白い布に、赤いざくろの果汁が滲み広がるファーストシーンが鮮烈!。そのデサイン性と色彩からくる美術感覚が斬新。サヤト・ノヴァの生きた、古式アルメニアの伝統衣装を初め、絨毯や壺など、どれも時代性を忠実に反映・内包しながらも、抽象的表現の能舞台劇のように、演技の様式化がひとつの特徴。特筆すべくは女優、ソフィコ・チアウレリその人。イコンを思わせる顔の造形、特徴的な眉の形から、この映画の中で彼女が男役を含め、複数の役で多義的に演じ表現しているのが判る。  舞台劇を想起するものに、明確な正面性がある、例えそれが横向きであっても。常に一貫して、画面構成における形と配置を重視。詩人の生涯に沿ったストーリー展開は、抽象的省略表現のため、表出された全てを理解するのは難しいが、視覚的に、感性的にそれを感受すればいい。雨に濡れた図書館の書籍、水の排出作業から屋根での天日干し、その並べた本の配置すらデザイン的で美しいし、染色作業に伴う色の演出も目を惹く。  こうした独自性にとむ映像表現に、少なからぬ影響を受けた映画に『落下の王国』がある。パターン化された形象と色使いの類似、少し現実離れした鮮やかな彩度高めの発色。あまりの美さに思わず目を奪われるが、対して、本作の色表現は、日常の現実世界から切り取った実在の色、故に幾分彩度低め、代わり同じ赤でも多種多様な赤が蠢く感じ、様々な色と形が織りなす未知なる世界。特異な映像美に被さる音と音楽の響きがとても神秘的。
[DVD(字幕)] 9点(2017-01-18 19:34:37)
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